再生可能エネルギーによる発電事業に関する近時のニュースNo. 23

Renewable and Clean Energy
Tokyo
Client Alert
July 2014
再生可能エネルギーによる発電事業に関する
近時のニュース No. 23
1. 再生可能エネルギー発電設備を上場インフラファン
ドの対象にする政令改正が進行中
再生可能エネルギー固定価格買取制度が始まって 2 年が経過した。非住宅の太
陽光発電の設備認定容量は 63 GW に達し、その内、運転を開始した設備も 6.4
GW に達した(2014 年 3 月末時点)。これにより、原発 6 基相当分が稼働した
ことになる。太陽光発電所の開発事業者としては、完工した太陽光発電所を売
却して投下資本を回収し、新たな太陽光発電所の開発のための投資資本として
利用できるよう、資本をリサイクルすることが必要になる。
太陽光発電所の売却先として、上場インフラファンドが期待されていたところ、
金融庁は 2014 年 6 月 6 日に「投資信託及び投資法人に関する法律施行令の一
部を改正する政令(案)」を公表した。これは、投資信託及び投資法人が主と
して投資対象にできる「特定資産」に、(a)再生可能エネルギー発電設備及
び(b)空港や上下水道を運営する権利である公共施設等運営権を追加するこ
とを打ち出した改正政令案である。7 月 7 日まではパブリックコメントを受け
付けているため、改正政令の施行日(公布日に即日効力を生じる)は、パブ
リックコメントの受け付け終了から 1~2 か月後になると思われる。
政令の改正に向けた動きは、東京証券取引所(東証)が上場インフラ市場研究
会を設置して審議検討を行い、2013 年 5 月 14 日に「上場インフラ市場研究会
報告—我が国における上場インフラ市場の創設に向けて—」(以下「報告書」と
いう。)を発表したことから始まった。報告書では、上場市場を通じた民間資
金のインフラ運営への活用を進めることが打ち出されている。東証によると上
記政令の改正を受け、2014 年度中にインフラファンドの新市場開設を計画し
ており、順調に行けば、今年の冬頃に上場基準等を定めた要綱を公表し、パブ
リックコメントを開始できるとのことである。
対応する税制改正でも、租税特別措置法の改正によりインフラファンドの分配
金の損金算入を認め、投資法人レベルでの非課税(パススルー課税)が認めら
れる予定であるが、損金算入については下記の通り一定の制限が課される予定
である。租税特別措置法の改正案については上記政令改正施行後にパブリック
コメントの受け付けが開始されるとのことである。
(i)
再生エネルギー発電設備及び公共施設等運営権以外の特定資産の割合が
50%を超えること。又は
(ii) 上記施行令の改正の日から平成 29(2017)年 3 月 31 日までの間に再生エ
ネルギー発電設備を取得して賃貸の用に供した投資法人で次の要件を満
たすものは、再生エネルギー発電設備を取得して賃貸の用に供した日か
ら 10 年以内に終了する事業年度に限り、(i)を満たす必要は無い。
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①
公共施設等運営権の割合が 50%以上でないこと
②
設立に際して公募により投資口を募集したこと又は投資口が上場さ
れていること
③
再生エネルギー発電設備の運用の方法が賃貸のみであることが規約
により記載されていること
今後は東証の発表する上場インフラファンドの対象資産の基準を睨みながら、
太陽光発電所の完成後に、上場インフラファンドへの売却も可能とするよう、
太陽光発電所を設計、建設、運営することが望まれる。
2. 小売り全面自由化の改正電気事業法が成立
現在、東京電力、関西電力等の 10 の一般電気事業者にしか認められていない
家庭等への電気の供給を自由化する、いわゆる小売参入の全面自由化を 2016
年から認める改正電気事業法が 2014 年 6 月 11 日に参議院本会議で可決され成
立した。改正法施行後は登録を受けた小売電気事業者は小売供給契約を結ぶこ
とができるようになるが、その前提として供給能力の確保が義務付けられてい
る。このため小売電気事業を行おうとするものは、今後電源の確保に動き出す
ことが予想される。
今回の改正に合わせて、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関
する特別措置法(再エネ法)も改正されることになっており、再生可能エネル
ギー電気の買取義務者が一般電気事業者から小売電気事業者等に変更される。
再生可能エネルギー発電事業者としては、再生可能エネルギー由来の電源を求
める小売電気事業者との交渉により、再エネ法が規定する買取価格よりも高く
再生可能エネルギー電気を販売できるようになる可能性がある。
以上
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かるいずれかの法律事務所のオフィスを指します。
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