中東・アフリカニューズレター vol.9 エジプトのエージェント保護法制が

Middle East & Africa Focus Group
Tokyo
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May 2013
中東・アフリカニュースレター vol. 9
エジプトのエージェント保護法制がもたらす問題
近年、エジプトで事業を行うに際し、エージェントを採用して登録を完了させ
たものの、パフォーマンスの悪さなどの理由から、エージェントを解任して新
たに採用し直さざるを得なくなるようなケースが生じている。しかしながら、
従来エジプト人に独占されたビジネスであるエージェントを法的に保護し、解
任を非常に難しくしている法制度があるため、多くの外国投資家が困難に直面
している。
エジプトにおけるエージェント
エジプトの商事エージェント法(Commercial Agency Law No. 120 of 1982)によ
れば、外国企業がエジプトでエージェント1を採用する場合には、エジプト人
又はエジプトの法人(エジプト人が完全に保有し支配する法人)を採用しなけ
ればならない。この法制度により、エージェント・ビジネスは従来エジプト人
に独占されている。エジプトの公共事業の入札では、エジプト人のエージェン
トを採用していることが応札要件の一つとされることが一般的であり、エジプ
トでビジネスを行うに際し、エージェントを採用しなければならない場面は多
い。
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さらに、エージェントを採用した場合、採用したエージェント及びエージェン
ト契約を輸出入管理公団(General Organization for Export and Import Control)に
登録することが義務付けられる。この登録を怠った場合には、500 エジプトポ
ンド以上 10,000 エジプトポンド以下の罰金及び/又は 6 ヶ月以上の懲役を科さ
れる。登録を完了したエージェントには S 14 Form という登録証明書が交付さ
れる。
エージェント保護法制とそこから生じる重大な問題
上記のとおり、近年、パフォーマンスの悪さなどの理由から、エージェントを
解任して新たな採用を行いたいと考える外国企業が出てきている。しかし、期
限の定めのないエージェント契約の解除は、原則としてエージェントに契約違
反があった場合に限り可能であり、そうでない場合には、エージェントに対し
て金銭的な補償を行う必要がある。また、期限の定めのあるエージェント契約
であっても、これを更新しない場合には、裁判所が相当と認める額の補償を行
1
エージェントとは、本人のために役務を提供する者を意味する。取引の当事者とし
て、日本から輸出する商品を購入し、これを現地で販売する再販売業者(販売代理店
等)はエージェントには該当せず、登録は不要である。
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本ニュースレターに関するお問い合わ
せは、下記までお願いいたします。
うことが必要である。この補償額の算定においては、エージェントが過去にも
たらした利益なども考慮に入れるとされているため、補償額が高額となる可能
性がある。
立石 竜資
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また、エージェントとの間で、エージェント契約の解除の効力が争われるなど
法的紛争となることも少なくない。しかしながら、新たにエージェントを登録
するには、(1)解任したエージェントの合意を得る、又は(2)裁判所の判決
を得ることが必要とされているという点が大きな問題となる。すなわち、一旦、
エージェントとの間で紛争が発生すると、話し合いによる解決が達成されない
限り、エジプトの裁判所による判決を得なければならなくなる。一般に裁判に
よる法的紛争の終結には数年を要するといわれるエジプトでは、多大なコスト
と時間を要するうえに、最終的に新しいエージェントの登録が裁判所から認め
られるかどうかも確かではない。
ベーカー&マッケンジー法律事務所
(外国法共同事業)
〒106-0032
東京都港区六本木 1-9-10
アークヒルズ仙石山森タワー28F
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Fax 03 5549 7720
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このような事態に至ると、新たなエージェントの登録が認められるまでの間、
新たな採用を行うことができなくなり、ビジネス上、大きな支障が生じる可能
性がある。例えば、先に述べたように、エジプトの公共事業の入札では、一般
的にエジプト人のエージェントを採用していることが応札要件の一つとされ
ているが、その資料として実務上エージェントの登録証明書(S 14 Form)の
提出を求められることが多い。したがって、紛争を解決し、新たなエージェン
トの登録ができるようになるまでは、公共入札案件への取り組みを断念せざる
を得なくなる可能性がある。
伊藤(荒井)三奈
オフ・カウンセル
Tel: 03 6271 9727
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まず、エージェントを選任する際には、審査に慎重を期すべきである。その審
査の中で、採用しようとしているエージェントが後に解任しなければならない
ような問題を起こす可能性がないか、これまでに契約している企業に対するパ
フォーマンスに問題はないかといった点を十分に吟味しておくことが必要と
なる。
また、当初よりエージェント契約を Non Exclusive(非独占)としておくこと
も検討すべきである2。早い段階から複数のエージェントと契約を締結し、予
め複数のエージェントを登録しておくことで、上記のようなエージェント不在
のためにビジネスチャンスを逃してしまう可能性を低くしておくのである。
中東諸国や新興国では、現地人のビジネスを保護する観点から、代理店、エー
ジェント等の現地業者を保護する法制がとられていることが多く3、エジプト
でも上記のとおりエージェントの保護が図られていることに注意し、問題が発
生する前の早い段階から対策を講じることを検討すべきである。
2
商事エージェント法上、エージェント契約は Exclusive(独占)であることは求めら
れていない。
3
トルコの代理店保護法制については過去のニュースレターを参照。
©2013 Baker & McKenzie. ベーカー&マッケンジー法律事務所(外国法共同事業)は、スイス法上の組織体であるベーカー&マッケンジー インターナショナルのメンバーファームです。専門的知識に基づくサー
ビスを提供する組織体において共通して使用されている用語例に従い、「パートナー」とは、法律事務所におけるパートナーである者またはこれと同等の者を指します。同じく、「オフィス」とは、かかるいずれ
かの法律事務所のオフィスを指します。
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中東アフリカ・ニュースレター vol. 9
エジプトのエージェント保護法制がもたらす問題│May 2013