想定外の事態を考えた被災者支援の取り組みについて一般質問いたし

想定外の事態を考えた被災者支援の取り組みについて一般質問いたします。どうか誠意あ
る答弁をよろしくお願いいたします。
政府の中央防災会議が昨年の 12 月 19 日、
首都直下地震の被害想定を公表いたしました。
その中で、東京 23 区南部を震源とした都心南部直下地震では、最悪のケースで埼玉県、千
葉県、東京都、神奈川県の1都3県で2万 3,000 人が死亡すると試算をしています。こうし
た切迫する大地震の発生に対して、区民の防災・減災への関心が高まっています。そこで、
被災者支援について3点質問します。
1点目は、想定外の事態を見込んだ避難所運営についてです。
新宿区の地域防災計画は、東京都防災会議で決定された区内震度6の揺れを指標として策
定されています。しかし、この被害想定は仮定に基づいたものであり、どのような条件下で
発生するかわかりません。
新宿区の避難所の運営では、避難所へ避難する人を4万 9,923 人とし、1小学校当たり約
1,600 人程度の収容人数を想定しています。しかし、一斉帰宅抑制を周知されていても、帰
宅困難者が行き場をなくして避難所に多数来る場合もあります。また、いざ大災害が発生し
たら公共施設や学校に避難すればよいと勘違いをしておられる方も多くいますし、ビルの高
層階に住む高齢者などが余震に恐れおののいて避難してくる場合もあり得ます。こうした想
定していない避難者で避難所があふれ返る様子が想像できます。区は、想定外の事態への対
策についてどのような検討をされているのか、お伺いいたします。
2点目は、避難所のトイレ対策についてです。
避難所で一番の心配の一つはトイレの問題です。阪神・淡路大震災で被災された方からお
話を伺うと、「初日で仮設トイレも学校のトイレもいっぱいになり、使用できなくなってし
まいました。それで、仕方なく道路の側溝等を利用する人もいました」と体験を語られ、ト
イレは特に対策を講じてほしいと、そういった要望をいただきました。
発災後、職員がすぐに避難所に駆けつけられることはできません。また、し尿収集車が平
常時のように道路を走行して来ることができるとも限りません。やはり数日間は地域住民の
手でトイレの対応をしなくてはなりません。被災者の中には、マンションの配管が壊れてト
イレが使えなくなり避難所に来る人もいます。また、その逆に、避難した人たちが戸山ハイ
ツ内のトイレを借りようと殺到することも考えられます。居住者の中には、そうした事態を
心配する人もいます。また、介添えが必要な高齢者、障害者、幼児が利用できるトイレをど
うするか、いっぱいになったし尿を一時的にどこに置くのか、こうした災害時のトイレ問題
一つとってもさまざまな対応が求められます。したがって、災害時のトイレ問題について具
体的な対応を検討しておくべきと考えます。御所見を伺います。
3点目は、被害想定の犠牲者を出さない取り組みについてです。
私は、新宿区の災害時に犠牲者を出さないための対策として、建物の耐震化や家具類の転
倒防止対策を積極的に推進されていることを高く評価しています。その中で、災害時要援護
者は発災時には容易に避難することができません。しかも、災害時要援護者名簿に登録され
ても共助の力で救助するのが基本となりますが、建物の倒壊などの危険が迫っている場合は
消防などの防災機関の到着を待つことになります。そのため、しばらくの間建物の中に待機
しなくてはなりません。こうしたことから考えて、建物の耐震化とともに家具類の転倒防止
器具の設置がとても重要になります。
そこで、避難が困難な要援護者に対して重点的に家具類の転倒防止器具の必要性を説明し、
設置ができるような力添えをしていくことが必要と考えます。区のお考えを伺います。
◎区長室長(橋口敏男) 中村議員の御質問にお答えします。
想定外の事態を考えた被災者支援の取り組みについてのお尋ねです。
最初に、想定外の事態を見込んだ避難所運営についてです。
区では、災害に強い、逃げないですむ安全なまちづくりを推進しています。しかしながら、
災害により自宅での生活ができなくなった方が一時的に避難生活をする場所として、最大で
約5万人の方を避難所で受け入れることを想定しています。避難所の想定人員を超える方が
避難してきた場合、まずは避難所の教室や廊下等を開放してでも避難者を受け入れます。こ
うした状況下では、各地域本部や災害対策本部が避難所ごとの受け入れ調整を行います。な
お、帰宅困難者については区有施設等の帰宅困難者一時滞在施設を案内することとしていま
す。
また、日ごろからの対策として、町会、自治会等で構成される自主防災組織と防災に関す
る情報を共有するため、特別出張所ごとに年2回、地域防災協議会を開催しています。さら
に、実践的な訓練を通じて災害のイメージを持ち、いざというときに対応できるよう、地域
住民主体による避難所運営管理訓練等を実施しています。
災害に強い、逃げないですむ安全なまちづくりを推進することが、想定外の災害が起きて
も被害の発生を減らすことにつながると考えていますので、引き続き減災に向けた取り組み
を進めてまいります。
次に、避難所のトイレ対策についてのお尋ねです。
御指摘のとおり、災害時のトイレについては、過去の震災からさまざまな課題が提起され
ています。阪神・淡路大震災や東日本大震災を見ても、発災の直後からトイレの問題は発生
しており、大変重要な課題だと認識しております。そこで、区では避難所となる小・中学校
はもちろん、区立公園等にも災害時でも使用できるトイレを多数整備しています。避難所の
災害用トイレを災害時に実際に使用できるようにするため、避難所運営管理訓練では仮設ト
イレやマンホールトイレ等の設置訓練を行っています。また、マンションの配管が壊れてト
イレが使えなくなった方が避難所に行かなくても済むために、家庭における日ごろの備えと
して簡易トイレを防災用品のあっせん品目に加えて周知しています。
避難所における介添えが必要な高齢者や障害者、幼児のトイレについては、ボランティア
などの共助による助け合いのほか、各避難所には成人用おむつや子ども用おむつを備蓄して
います。
また、し尿の処理については、東京都下水道局との災害時における下水道施設へのし尿搬
入及び受け入れに関する覚書を締結し、定期的に訓練を実施しています。
このようにさまざまな取り組みを進めるとともに、区は、昨年 11 月に日本トイレ協会等
と共催で第 29 回全国トイレシンポジウムを開催するなど、災害時のトイレ問題の解決に向
け、さらに研究を重ねています。今後も、いざというときに備え、災害時におけるトイレの
問題についてあらゆる視点から対策を深めていきます。
次に、被害想定の犠牲者を出さない取り組みについてのお尋ねです。
区では、平成 19 年度から災害時要援護者名簿登録者を対象に、家具転倒防止器具の無料
配付、無料取り付けを実施しており、現在の設置率は約 60%となっています。災害時要援
護者の方は発災時に自力での避難が困難なことから、家具転倒防止器具の無料配付、無料取
り付け事業は大変重要な施策と考えています。これまでも災害時要援護者名簿に登録された
方には個別に郵送で設置を勧奨してきましたが、今後は高齢者総合相談センターや障害者団
体連絡協議会等とも連携して個別勧奨するなど、家具転倒防止対策の一層の促進に努めてま
いります。
以上で答弁を終わります。
◆1番(中村しんいち) 丁寧な御答弁ありがとうございました。
これで私の一般質問を終わらせていただきます。御清聴まことにありがとうございました。