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全文情報 - 労働委員会関係 命令・裁判例データベース

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埼玉、平8不 2 、平10.7.9
命
令
申立人
全労協全国一 般東京労 働組合
申立人
全労協全国一 般東京労 働組合アトム 分会
被申立人
アトムメディ カル株式 会社
主
1
書
文
被申立人 は、申立 人に対し、下 記文書を 本命令書受領 の日から 5日以内 に
交付しなけれ ばならな い (下記文書 の中の年 月日は、交付 する日を 記入 する
こと。)。
記
平成
年
月
日
全労協全国一 般東京労 働組合
執行委員長
X1
様
全労協全国一 般東京労 働組合アトム 分会
分会長
X2
様
アトムメディ カル株式 会社
代表取締役社 長
Y1
⑴平成8年6 月3日の 朝礼において 、当社の 代表取締役社 長が、同 年5月
27日及び同月30日に全 労協全国一般 東京労働 組合アトム分 会が 実施 した時限
ストライキに 関して発 言した一部に 、 正当な 組合活動を 抑 制するも のがあっ
たこと、⑵当 社が、平 成8年6月5 日、前記 アト ム分会と の団体 交 渉 に全労
協全国一般東 京労働組 合の役員が出 席するこ とを拒否した り、翌6 日、同組
合の役員が当 社の施設 内に立ち入る ことを禁 止したことは 、労働組 合法第7
条第3号に該 当する不 当労働 行為で あると埼 玉県地方労働 委員会か ら認定さ
れました。
よって、今後 は、この ような不当労 働行為を 繰り返さない よう誓約 いたし
ます。
2
申立人の その余の 申立ては、こ れを棄却 する。
理
第1
由
事件の 概要
本件は、 ①会社が 、昭和 49年に締結され た「従業員の 解雇、配 置転換、昇
給、昇格を 行う場合 は 、事前に組 合と協議 し 、組合の同 意を得た の ちに行う 。」
とする労働協 約を平成 7年6月 21日をもって 解約したこと 、 ②社長 が、平成
8年6月3日 の朝礼に おいて、その 数日前に 組合が行った ストライ キに関連
して、組合の 活動に対 し批判的な発 言を行っ たこと、 ③会 社が、平 成8 年6
- 1 -
月5日、組合 の上部団 体役員が団体 交渉に出 席することを 拒否した こと、④
会社が、平成 8 年6月 6日、組合の 上部団体 役員が会社施 設内へ立 ち入るこ
とを拒否した ことが、 労働組合法第 7条第3 号に該当する 不当労働 行為か否
かが争われた 事件であ る。
第2
認定し た事実
1
当事者
⑴
申立人全 労協全国 一般東京労働 組合(以 下「東京労組 」という 。)は 、
個 人 加 盟 の 地 域 合 同 労 働 組 合 で あ り 、 本 件 申 立 時 の 組 合 員 数 は 約 2,500
人であった。 その前身 は総評全国一 般東京地 方本部北部地 域支部( 以下
「総評支部 」とい う。)で、平成 元年 11月25日に開催された 大会にお いて 、
現在の名称に 変更され たものであり 、その際 、総評支部が 有してい た労
働協約等の法 的地位を 継承している 。
⑵
申立人全 労協全国 一般東京労働 組合アト ム分会(以 下「分 会」と いう。)
は、アトムメ ディカル 株式会社に雇 用されて いる従業員を もって 組 織さ
れ、東京労組 を上部団 体とする労働 組合であ る 。その前身 は総評 全 国一
般東京地方本 部北部地 域支部アトム 分会(以 下「総評分会 」という 。)で
あり、平成2 年1月9 日に現在の名 称に変更 されたもので ある。
なお、本 件第1 回 審問時点での 組合員数 は約 120人であっ た。
⑶
被申立人 アトムメ デ ィカル株式 会社(以 下「会社」とい う。)は、肩 書
地に本社を置 き、保育 器・ 分娩台等 の医療器 機の製造販売 を業とす る 株
式会社である 。 会社は 、昭和 45年にアトム医 理科器機株式 会社から ア ト
ム株式会社と 社名を変 更し、さらに 平成8 年 に現在の社名 に変更し た。
埼玉県浦和市 及び春日 部市に工場を 有し、札 幌市、仙台市 、浦和 市 、東
京都文京区、 名古屋市 、京都市、東 大阪市、 神戸市、 福岡 市等に 営 業所
を 有 し て い る 。 本 件 申 立 時 の 従 業 員 数 は 、 パ ー ト 社 員 を 含 め る と 約 380
人であった。
2
本件申立 てまでの 労使関係
⑴
昭和49年3月 25日、会社の従業 員は、総 評支部に加入 するとと もに、
総評分会を結 成した。
⑵
昭和49年3月 25日、総評支部及 び総評分 会と会社は、 次のとお りの内
容の協定書( 以下「昭 和 49年協定書 」という 。)を締 結した。
「一
会社は 組合活動 の自由を認め る。よっ て、次の各号 の便宜供 与を
組合に対して 行う。
⑴
会社は分 会及び上 部団体を中傷 ・誹謗し ない。
⑵
会社は組 合に対し て、電話、郵 便物等の 受け継ぎを行 う。
⑶
会社は、 組合の勤 務時間内にお ける上部 団体等との面 会、面接
を保障し、こ れを認め る。
⑷
会社は組 合の集会 等のために、 社内の設 備の利用 を認 める。
⑸
会社は組 合の掲示 板として、本 社にはタ イム・レコー ダーのそ
ば、工場には 厚生室内 に設置する。
- 2 -
⑹
会社は組 合に組合 事務所として 、本社社 屋内の一室を 供与する
(具体的部屋 について は、次回の団 体交渉に おいて定める 。)。
二
会社は従 業員の解 雇、配置転換 、昇給、 昇格を行う場 合は、事 前
に組合と協議 し、組合 の同意を得た のちに行 う 。
三
会社は一 時金の天 引き社内預金 を中止す る。
四
会社はチ ャリティ ーを中止する 。」
(以下、上記 項目二を 「人事協定条 項」とい う。)
⑶
昭和55年4月 27日、総評分会と 会社は、 組 合員の範囲 とともに 、人事
異動に関して 次の事項 を含む協定書 を締結し た。
「・
会社は 、昇格 人 事発令にあた り組合運 営に支障をき たさぬよ う留
意する。
・
組合役員 (分会長 ・副分会長・ 書記長及 び書記次長を いう)の 昇
格人事に関し て会社は 事前に組合と 協議する 。」
⑷
平成元年 4月 14日、総評分会と 会社は、 別会社である アトムメ ディカ
ルインターナ ショナル 株式会社に移 籍する組 合員が総評分 会の組合 員の
ままでいられ るかどう か等を議題と する団体 交渉を行い、 この団体 交渉
には上部団体 である総 評支部の役員 も出席し た。
⑸
平成6年10月 31日、分会と会社 は、冬季 一時金を議題 とする団 体交渉
の日程調整を 行ったが 、その際、会 社の Y2 総務部次長( 以下「 Y 2次
長 」 と い う 。) は X 2 分 会 長 ( 以 下 「 X 2 分 会 長 」 と い う 。) に 対 し て 、
「会社から労 働協約の 一部解約の申 入れの団 体交渉を申し 入れる 。」と述
べた。
⑹
平成6年11月1日 、会社は昭和 49年協定 書の中の人事 協定条項 の解約
について、団 体 交渉を 行いたい旨の 団体交渉 申入書を X2 分会長に 提出
した。
⑺
平成6年11月2日 、会社は冬季 一時金に 関する団体 交 渉を行っ た後、
人事協定条項 の解約に ついて文書で 申し入れ 、次の とおり 趣旨説明 を行
った。
「現協約 は、労働 組合結成当時 の昭和 49年に締結した もので、 その後
20年もの時間 が経過し 、この間、政 治、経済 、社会は大き く変貌を 遂 げ
てきています 。 このよ うな中で、企 業経営も ますます弾力 的で迅速 な運
営をしていか ねばなり ません。会社 が長期に わたって存続 、発展 を 期し
ていくために は、常に これまでの制 度や慣習 を見直し、時 代にマッ チし
たものに変え ていかな ければなりま せん。
このよう な観点で 現協約を見る と、会社 の行う人事が 、その都 度分会
の同意を得な ければ発 令できないと いうのは 、分会が人事 の 許諾権 を握
っているかの ごとくで あり、現在の 経営の在 り方からすれ ば見直す べき
ものであると 思われま す。
人事権は 会社の経 営権の一部で もありま す。 これまで 会社は公 正な 人
事を行ってき ており、 今後ともその つもりで あります。 会 社は分会 に対
- 3 -
して不当な介 入、不利 益な扱いをす るつもり はありません 。 万一 、 公正
さを欠き不当 な状況が 発生したとし ても、分 会及び分会員 には法律 によ
り救済される 道が確保 されており、 現協約を 解約しても何 ら不利益 には
ならないはず です。
労使関係 は、分会 も会社も分を 心得てそ れぞれの立場 に立たな ければ
なりません。 現協約を 解約すること は、現下 の社会常識、 経営常識 に沿
ったものであ り、健全 な労使関係の ためには 必要なことで す。分会 には、
会社の立場、 経営権に ついて、きち んとした 理解と対応を してもら うこ
とが必要であ ります。 この件に関し ては、会 社と分会との 問題であ り、
外部に依存す ることな く、社内の当 事者の良 識ある話合い で解決で きる
ものと思って います。 労使関係のた めにとい う観点でとら えていた だき
たい。」
⑻
平成6年11月 11日、会社は分会 に対し、 団体交渉の席 上、人事 協定条
項の解約の申 入れに対 する分会の考 えについ て質問した 。 これに対 し分
会は、平 成6 年 11月15日、団体 交渉の席 上、
「簡単に イエス 、ノー の回 答
は出せず、人 事協定条 項の解約の申 入れにつ いては、重要 な事項で ある
ので、十分話 し合う時 間が必要であ る。」と 答えた。
⑼
さらに平 成6年 12月7日、団 体 交渉の 席 で、分会は 会社に対 し 、
「人事
協定条項の解 約の申入 れには応じら れない 。」として、申入れ の撤 回 を要
求したところ 、会社は 「撤回要求に は応じら れない。」と答え た。
⑽
平成6年12月 15日、東京労組と 分会は連 名で、東京都 地方労働 委員会
(以下「都労 委」とい う。)に 対して、人 事 協定条 項解約 通告の撤 回のた
めの団体交渉 促進を申 請事項とする あっせん を申請し、平 成7年1 月 19
日、東京都庁 で、都労 委の公労使3 人の委員 をあっせん員 とする第 1 回
あっせんが行われた。この席で、あっせん員から、労使双方に対して、
「会社の解約申 入れ、分会からの申入れの撤 回要求ともに一時 凍結 とし、
全文削除ではなく文 書 を変更する趣旨で、労 使でよく話 し合 ってほしい。
平成7年3月28日の次 回あっせんで その話合 いの結果を教 えてもら いた
い。」と の要望が あっ た。
⑾
平成7年 1月 25日、会社の本社 で、分会 と会社は、今 後の進め 方につ
いて意見交換 を行い 、分会は会社に 対して 、昭和 49年協定書につい ては、
東京労組の前 身である 総評支部が署 名捺印し ていることも あって、 人事
協定条項の改 定を議題 とした団体 交 渉につい ては、東京労 組の役員 の同
席を了解する よう求め た。しかし 、会社 は分 会に対して 、
「 社内の 問題だ
から社員同士 でやろう 。」と言っ て、団体 交渉 に東京労組の 役員 が同 席す
ることに反対 した。
⑿
平成7年 2月8日 、東京労組の X1執行 委員長(以下 「 X1委 員 長」
という。)外1 名及び X2分会長が 会社を訪 問し、今後 、会社 と分 会とで
事務折衝を行 う際には 、東京労組の 役員の 参 加を要望する との申入 書を
提出した。
- 4 -
⒀
平成7年 3月9日 、会社と分会 は人事協 定条項の解約 を議題と する労
使協議を行っ た。 この 労使協議には 東京労組 の X3書記長 (以下 「 X3
書記長」とい う。)も 出席した。
この席で、会社の Y3取締役総 務部長( 以下「 Y3部長」と い う。)は、
解約の申入れ の理由に ついて、「改めて お話 しする。」として 、平 成6年
11月2日に会 社が行っ た、人事協定 条項の解 約申入れの趣 旨説明と ほぼ
同じ内容の説 明を行っ た。
このY3 部長の説 明に対し 、X2分 会長 が「社会 環境変化 に対 応して、
とはどういう 意味 か 。」と質問し たところ 、Y3部長は「協約を 締 結した
20年前は、労 使関係が 激しい時代で あり、組 合つぶしのた めの人事 異動
を行う会社も あったと 聞く。その後 、会社の 考え方、組合 の考え方 が変
わり、労使関 係も変わ った。今や、 それぞれ の立場に立っ た上で、 労使
協調していこ うという 時代に入って いる。そ ういう変化を 考えて昭 和 49
年協約を見て みると、 20年前の古い 価値観に 基づいた内容 が 残って いる
と評価せざる を得ない 。」と答 えた。
また、X 2分会長 が「手続に時 間がかか るといっても 、長くて も2週
間もかかって いない 。」と言った のに 対し 、Y3部長は「待てる 場 合と待
てない場合が ある。基 本的には人事 権の問題 である。」と答える 等 のやり
とりがあり、 最終的に Y3部長から 人事協定 条項の代案と して、次 の提
案がなされた 。
「1
2
会社は 分会員の 人事異動を行 うに当た っては、公正 に行う。
会社は分 会員の人 事異動を行っ たときは 、その旨を分 会に通知 す
る。」
この提案に対 して、 X 2分会長は「 分会の執 行委員会に諮 ってから 回
答する。」と述べ た。その後、平 成7年3 月 17日、分会 は、会社 の 提案 は
受け入れられ ない旨回 答した。
⒁
平成7年 3月 28日、都労委で第 2回あっ せんがあり、 あっせん 員から
東京労組及び 分会に対 して、
「現 協約では、人 事に関するこ とがすべ て 分
会の同意を必要としているので、会社としてもきつい面もあるであろう。
金属関係の組 合では同 意、協議、通 知と分け ているところ もある。 解雇
や昇給につい ては同意 事項とし、配 置転換に ついては協議 事項とし 、平
社員から主任 係長への 昇進について は連絡事 項にする、と いった 具 合に
分けることは できない か、分会の方 で検討し てもらいたい 。」と の 提案が
あり、東京労 組及び分 会は「次回の あっせん 時までに、こ れに 対す る対
応を決めてお きたい 。」 と述べた。
⒂
平成7年 4月 18日、都労委で第 3回あっ せんがあり、 分会はあ っせん
員に対し 、「現協 約を 同意、協議、 通知など に分けること は可能で ある。
分会の組合員 には、解 雇や配置転換 に不安が あること、個 人対会社 で決
まったことよ りも、分 会が承認した ことで安 心が持てると いう考え があ
る。」と 述べた。
- 5 -
あっせん 員は 、解 決案のたたき 台として 、次の案 を労使双 方に 提示 し、
これを受け入 れること ができるか、 また受け 入れるにして も修正す べき
点は何かにつ いて、次 回のあっせん の際に述 べるよう求め た。
「昭和49年3月 25日締結の協定書 のう ち第 2項を削除し 、下記の 内容
の文書を第2 項として 新たに締結す る。
二⑴
会社は 、組合員 の配置転換及 び組合員 が非組合員と なる昇格 に
ついては、事 前に組合 に通知し、協 議する。
⑵
会社は、組合員の解雇については、事前に組合と協議のうえ、
同意を得るも のとする 。 従業員の解 雇につい ては、事前に 組合に
通知するもの とする。
⑶
⒃
労働条件 の変更は 、事前に 組合と協 議し、同意のうえ実 施する 。」
平成7年 5月 15日、都労委で第 4回あっ せんがあった 。前回、 あっせ
ん員から示さ れた案に ついて、分 会は「 大筋 として受け入 れられる 。」と
回答した。他 方、会社 は「協議」及 び「同意 」という言葉 を「通知 」 と
いう言葉に置き換える方向での修正案を使用 者側あっせん員に回答 した。
その結果、あ っせん員 は、会社の考 えと分会 の考えとでは 隔たりが 大き
いと判断し、 あっせん は打ち切られ た。
⒄
平成7年 5月 22日、会社は分会 に対して 、人事協定条 項の解約 につい
て話合いを申 し入れ、 5月 31日、会社の本社 ビル6階会議 室で、会 社と
分会は話合い を行った 。
そして、 この席上 、 Y3部長は 、平成 7 年6月21日をもって人 事協定
条項解約の効 力発生と して取り扱う 旨の次の 通知書を分会 に交 付し た。
「会社は 、貴組合 に対し、平成 6 年11月2日付ア労発 第 469号により、
『協定書の一 部解約の 申し入れ』を行 いまし た。以来、数度の 団体 交 渉・
話合いを経て 、都労働 委員会のあっ せんを受 け、交渉を継 続して 来 まし
たが、5月15日あっせ ん打切りとな りました 。
よって、 平成7 年 6月21日をもって協定 書一部解約の 効力発生 として
取り扱うこと といたし ますので通知 します。
なお、会 社として は新たな協定 書作りの ための話合い を今後労 使で自
主的に行う用 意があり ます。」
その際、Y3部長は、解約申入れの理由を改めて説明するとともに、
「平成7年 6月 21日で効力を発生 させるという計算方法 は?」というX2
分会長からの 質問に答 えて、
「 平 成6年 11月2 日に解約を申 し入れま した
が、1月19日より都労 委のあっせん が開始さ れ、5月 15日にあっせ ん打
切りというこ とがあっ たので、その 期間は計 算から除いて ある。1 月19
日までの経過 日数に、 効力発生に必 要な 90日間の不足日数 を5月 15日に
加えると5月28日に自 然に効力は発 生する。 しかし、会社 は正々 堂 々と
効力を発生さ せたいの で、期間は既 に満たし ているのであ るが、 ま ず本
日説明の場を 設け通知 し、か つ、あ えて発生 日を延長し、 区切りの 良い
6月21日付けで、効力 発生としたも のです 。」と述べた。
- 6 -
⒅
平成7年 6月5日 、分会と東京 労組は連 名で、会社に 対して団 体交渉
申入書を提出 したが、 この申入書の 中で、団 体交渉 には東 京労組の 役員
の出席を予定 している 旨記載した。
⒆
平成7年 6月9日 、分会と東京 労組は連 名で、会社に 対して以 下の内
容の申入書を 提出し、 前記 ⒅の団体 交渉申入 書は取り下げ た。
「昨年11月2日に 会社より交付 された『 人事約款の協 定の解約 の申し
入れ』に関し て、組合 は東京都労働 委員会に あっせんを申 請しまし た 。
さる5月15日に労働委 員会として『 従前の労 使協定を変更 するにあ たり
ましては、両 当事者は 、いたずらに 労使の対 立を拡大する ことが無 きよ
う、慎重に対 応され合 意に達するま で、十分 交渉を尽くさ れること を要
望いたします 。』 とい う言葉であっ せんの打 切りが申し渡 されまし た。
しかしな がら会社 は5 月31日に『6月21日をもって協 定破棄は 有 効』
との一方的な 通知をし てきました。 人事の同 意約款につい て、会 社 の認
識と組合員の 認識に食 い違いがある ように思 われます。 会 社は『協 定締
結時の組合つ ぶしを防 ぐためのもの 』 としか 見ていないよ うですが 、現
在の組合員 の認識としては、対 象者は自 分自 身のこととして見ています。
ですから、会 社からの 協定破棄の通 告につい ては不安 や戸 惑いを感 じて
おります。今 後の会社 の発展のため には、不 安や戸 惑いを 無くす必 要が
あります。我 々として は、現人事同 意約款を 高く 評価して おります 。 そ
して、それを 履行して きた会社も評 価してい ます。組合と しては、 現協
約になんら支 障があり ません。我々 としては 、会社からの 一方的な 破棄
通告に対して 、会社よ り現人事同意 約款 に代 わるものの提 示をお願 いし
たいと思いま す。」
⒇
平成7年 6月 14日、Y3部長と X2分会 長は電話で話 をしたが 、その
際に、Y3部 長はおお むね次のこと を述べた 。
「・
会社が 具体的な 提案をする以 前に、ど う進めるかと いう話合 いの
テーブルにつ くべきで ある。
・
平成7年 6月 21日以降であって も、いつ でも会社は分 会と話合 い
をする用意は ある。
・
人事に関 する新協 定の締結は、 会社と分 会との間で行 いたい。 上
部団体が入っ ていなく ても法的効力 は何ら変 わりない 。」
これに対 して、 X 2分会長は「 検討しま す。」と 答えた。
(21)
平成7年6 月 19日、夏季一時 金に関す る 団体交渉の後 、分会 と 東京労
組 は 連 名 で 、「 人 事 約 款 に 対 す る 提 案 」 と し て 、 次 の 内 容 の 書 面 を 会 社
に提出した。
「1.現在の 人事協定 は解約する。
2.新規に次 の人事協 定を締結する 。
⑴
組合員の 解雇は、 組合の同意を 得た後に 行う。
⑵
組合員の 配置転換 については、 他事業所 への場合のみ 組合の同
意とし、同一 事業所内 については組 合の意見 を尊重する 。
- 7 -
⑶
組合員が 非組合員 (課長補佐以 上)とな る昇進につい ては事前
に協議する 。 それ以外 の昇進につい ては事前 に組合に通知 するこ
ととする 。」
(22)
平成7年7 月 20日、会社と分会 との間で 話合いが行わ れ、冒頭 、分会
がスト権を確 立したこ とを会社に伝 えたとこ ろ、会社 は「分 会が会 社を
信用できないという基 本的立場 に立 って分会 の組合員 に話 をしている状
況を改めない 限り、実 りのある話合 いにはな らない。」 と述べ た。
(23)
平 成 7年 7 月 28日、 分 会と 東 京労 組 は 連名 で 、会 社 に対 し て 、「早期
解 決 に 対 す る 会 社 の 意 思 を 明 確 に す る よ う 申 し 入 れ る 。」 旨 の 申 入 書 を
提出した。
提出に際 して、東 京労組の X4 副執行委 員長(以下「 X4副委 員長」
という。)とX3 書記 長が同席し、両名は「 会社が、新協 約作りに ついて
どう考えてい るのか、 よく分からな い。組合 としては早期 に作るべ きも
のと考えてい る。3月 以降、会社と 分会だけ で話合いを進 め、東 京 労組
は後ろに引き 下がって いた。 しかし 、7月 20日の話合いは 全く進 展 がな
かった。次回 8月7日 の話合いに注 目してい る。会社が一 歩踏み 込 んだ
案を提示し 、新協約 作 りに対し姿勢 を示して ほしい。」と述 べた。これに
対し、会社は 「ここ1 か月で解決せ ねばなら ないとは考え ていない 。十
分、時間を かけてと 思 っている。申入書は 一 応受け取って おく 。」と答え
た。
(24)
平成7年8月7日 、会社と分 会との間で 話合いが行われ、この 席で Y3
部 長 は 「 分 会 の 平 成 7 年 6 月 19日 付 け の 提 案 を 受 け 入 れ ら れ な い 。」 と
述べるととも に、会社 の案として次 のように 提案した。
「1.会社は 、組合員 の人事異動を 行うに当 たっては公正 に行う。
2.会社は、組合 員の 配置転換、解雇、組合 員が非組合員 とな る 昇 進 ・
昇格を行った ときは、 その旨を組合 に通知す る。」
しかし、 分会がこ の会社案を受 け入れな かったため、 話合いは 進展し
なかった。
(25)
平成7年8 月 10日、分会は 、争議 行為及 びその一環と して8月 11日か
ら組合旗の掲 揚を行う 旨の通告を会 社に行っ た。そして、分 会が、8月
11日に本社 で、8月 28日には浦和工場 で、組 合旗の掲揚 を行 ったところ、
会社は「施設 管理権に 基づき、会社 の許可を 要するもので あり、会 社は
許可しない 。」と して 、組合旗を撤 去した。
(26)
平成7年9月こ ろから、分会は 、早期 に円満な解決 を望む旨 の嘆願書
の署名を集め 始めた。
(27)
平成7年10月、会社は「第 49期経営 方 針」の中で 、労働 組合 について
触れ、次のよ うに記述 した。
「14.労使関 係
・
労働組合 には、時 代にマッチし た労働組 合であること を期待す る
とともに、企 業内労働 組合の方向を 期待する 。
- 8 -
・
健全で前 向きなも のについて は 労使協調 で臨むが、労 使対立を 前
提としたもの について は毅然と対処 する。
・
経営権に 属する諸 決定に関して は、当然 に労働組合の 関与する と
ころではない 。」
(28)
平 成 7年 11月1 日、 冬 季一 時 金の 団 体 交渉 後 、分 会 は会 社 に 対し て、
人事協定条項 に関する 見解を改めて 質問した ところ、会 社は「 以前 に提
示した内容で なら、新 規に協定を結 ぶ考えが ある。 会社と しては、この
問題は議論を 尽くした と思っている 。」 と回 答した。
(29)
平成8年2 月 28日、分会は、平 成8年春 闘の要求事項 の一つに 、新た
な人事協定の 締結をあ げ、会社に対 して、要 求書を提出し 、3月 13日ま
でに回答する ことを求 めた。提案の内 容は、前記 (21)の提案と 同一で あっ
た。
(30)
平成8年3 月6日 、団体 交渉の 席上、分 会は、前年か ら署名を 行って
きた人事協定 に関する 嘆願書を会社 に提出し た 。Y3部 長は「 団体 交渉
は話合いの場 であるか ら受け取れな い。」 と 言って受取を 拒否した 。
(31)
平成8年4 月3日 、団体交渉の席 上、会 社は、前記 (29)の人事協 定締結
の要求に対し 、平成7 年8月7日の 会社提案 と同じ内容を 回答した 。
(32)
平成8年4 月 10日、分会と会社 は、賃金 改定の団体 交 渉後、人 事協定
について交渉 を行った が、話合いは 不調に終 わった。
(33)
平成8年4 月 17日、分会と 会社は賃 金改 定と人事協定 に関する 団体 交
渉を行ったが 不調に終 わり、分会 は「賃 金改 定と人事協定 について の会
社 の 回 答 は 受 け 入 れ ら れ な い の で 、 争 議 行 為 に 入 る こ と を 決 定 し た 。」
と述べた。
(34)
平 成 8 年 4 月 18日 、 分 会 は 会 社 に 対 し て 、「 賃 金 改 定 の 交 渉 で 4 月 10
日 に 100円 の 上 積 み 回 答 が あ っ た こ と に つ い て は 評 価 で き ま す が 、 賃 金
改定と人事協 定の項目 に関しては、会 社回答 に組合として は満足の でき
るものではあ りません 。」とし て 、「4 月 22日から時間外労 働拒否・休日
出勤拒否の争 議行為に 入る 。」 ことを文 書で 通告した 。
(35)
平成8年5月 15日、分会 は闘争委 員会 名で次のようなビラを配布した。
「平成8 年5月7 日、 Y3総務 部長名で 『管理職、非 組合員各 位』に
あてた『人事 協定解約 の趣旨と経緯 の説明に ついて』なる 文書が出 さ
れました。こ の中では 、5項目にわ たって『 解約の理由』 があげら れ
ており、人事 協定が『 旧態依然』で あり 、『 当社の健全な 発展の妨 げ』
と述べていま す。 さら に会社の行う 人事は『 妥当、公正』 に行われ て
おり、人 事協定の手続 には手間と時間がかかることから問題が生 じる、
したがって、 解約に踏 み切った旨が 書かれて います。
Y3部長 の出した 文書は実に不 思議なこ とが書かれて います。 人事
協定が『旧態 依然』で 『発展の妨げ 』ならば 、この協定を 20年以上 も
実行してきた 会社はな ぜ現在も存続 し、医療 業界での確固 たる地位 を
築 き 従 業 員 約 370名 の 会 社 に 発 展 し て き た の で し ょ う か ? む し ろ 、 そ
- 9 -
の逆に労使が 話合いの 機会を多く持 つことに よってお互 い の意志疎 通
がなされ、労 使関係の 成熟度が増し 、安定し た企業運営に 寄与した こ
とは誰もが認 めるとこ ろと考えます 。会社の 人事 が本当に 『妥当で 公
正』なも のだとい うな ら、正々 堂々と組 合と 協議すればい いでしょ う 。
今まで静かだ った水面 に風を送り、 石を投げ 込み波紋を起 こさせて い
るのは、Y3 部長の方 ではないでし ょうか?
働く側に とって最 も重要な労働 条件の一 つである、解 雇や配転 とい
う問題を『通 知する』 だけで、健全 な労使関 係が成り立つ と『本気 』
で考えている のでしょ うか? 『労使 協調』の 時代だと言い つつも逆 の
方向を向いて いるのは どちらでしょ うか? す でに組合は人 事協定案 と
して3項目の 逆提案を 昨年会社に提 出しまし た。組合は会 社のキチ ン
とした理解と 対 応を求 めます。」
(36)
平成8年5月 15日、東京労組の X 1委 員長、X3書記長 外2 名と X2
分会長が会社 を訪 問し 、Y3部長 に対し「人 事協定早期解 決に向け て前
向きに判断す るよう申 し入れる 。」 旨の 申入 書を提出した 。
(37)
平成8年5 月 20日、分会は会社に 対して 文書で争議行 為の通告 を行っ
た。X2分 会長は 、ス トライキを回 避するた めの団体交渉 の開催を 会社
に打診したが 、 会社と の調整は不調 に終わっ た。
(38)
分会は、平成8年 5月 27日に1時間の時 限ストライキ 、同月 30日に半
日のストライ キを実施 した。なお、分 会が ス トライキを行 ったのは 、十
数年ぶりであ った。
(39)
平成8年6月3 日午前9時か ら本社内 で定例の朝礼 が行われ 、本社に
勤務するほぼ 全社員約 50人が参加し た。
朝礼は、 Y4 総務 課長の司会で 始まり、 社員が会社の 経営理念 と社訓
の唱和を行っ た後、 Y 4総務課長が 連絡事項 の通知等を行 った。次 いで
Y2次長が「 ルー ル」 を題材とした スピーチ を行った。こ のスピー チの
中で、Y2 次長は「個 人名を出すの はルール 違反である 。」という 内容の
ことを述べた 。
Y2次長 の話の後 、Y1代表取 締役社長(以下「社長」という 。)が発
言し、売上目標 に売上 実績が達して いないこ とを指摘した 上で 、
「 社員全
員が、共通目 標に向か って一丸とな らなけれ ばならない。 会社は常 にお
客様や近隣の人たちから注目されていることを考えておかねばならない。
マイカンパニ ーからア ワカンパニー に変わら なければなら ない 。」と いう
内容の話をし た後、分 会がストライ キをした ことについて 、 おおむ ね次
のような発言 を行った 。
「医療器 機業界の 中で労働組合 があるの は4 社しかな い。労働 組合が
ストライキを する時代 ではない。 そ のような ことは過去の 遺物であ る。
いつまでも昔 のやり方 を続けていて はいけな い。そのよう な考え方 は捨
て去らねばな らない。 先ごろ、組合 によりス トライキが行 われたが 、会
社としては痛 くもかゆ くもない。 や りたけれ ば、いくらで もやれ。 しか
- 10 -
し、ジーと見 る者は見 ているぞ。組 合の保護 のもとで、安 穏として いる
者が40人ほどいる 。」
なお、こ の朝礼に は、分会の組 合員も約 20人出席して いたが、 X2分
会長は浦和工 場勤務で あるため、ま た X5副 分会長 (以下 「 X5 副 分会
長」という 。)は 有給 休暇をとって いたため 出席していな かった。
(40)
平成8年6月3 日午後4時 30分ころ 、X2分会長は Y2次長 に電話を
し て 、「 6 月 5 日 に 賃 金 改 定 と 人 事 協 定 に 関 す る こ と を 議 題 と す る 団 体
交渉を行って もらいた い。」と申し入 れると ともに、「人事 協定に 関する
団体交渉に際しては上部団体である東京労組の者の参加の上で行いた
い 。」 と 述 べ た 。 Y 2 次 長 は 、 こ の X 2 分 会 長 の 申 出 を 会 社 内 で 協 議 し
た 後 、 X 2 分 会 長 に 対 し て 電 話 を し 、「 今 急 い で い る の は 、 賃 金 改 定 で
あるのだから 、賃金改 定だけを議題 としては どうか。」と述べ た。
(41)
平成8年6月4 日の朝、本 社で Y4 総 務課長は X5 副分会長 に会った
際に、「 きのうは 残念 だったなあ。 社長の発 言、聞かせた かった な あ。」
と言った。
(42)
11平成8年6月 5日、分会は、春闘 が 解決しないと 分会の組 合員には
夏季一時金が 支払われ ないというう わさが流 れ、分会 の内部で 混乱 が生
じそうであっ たため、 争議行為を中 止した。
(43)
平成8年 6月 5日午前9時 20分ころ、本社3階 で、X5副 分 会長がY2
次長に対し 、「 本日の 団体 交渉には 上部団体 から1 名が参 加します 。」と
伝 え た と こ ろ 、 Y 2 次 長 は 「 そ れ は で き な い 。」 と 答 え た 。 X 5 副 分 会
長 は Y 2 次 長 に 対 し て 、「 受 け 入 れ ら れ な い と い う の な ら ば 、 そ の 旨 文
書 に し て く だ さ い 。」 と 申 し 入 れ た と こ ろ 、 Y 2 次 長 は 「 そ の よ う な こ
と は し た こ と が な い 。」 と し て 、 文 書 に よ る 回 答 を 断 っ た 。 ま た 、 X 5
副 分 会 長 が 「 法 律 に 違 反 し ま す 。」 と 述 べ た と こ ろ 、 Y 2 次 長 は 「 法 的
にはどうであ っても 、団体 交渉への 出席メン バーについて は、労 使 で前
もって決めて あること だから、事前の合 意が ないこのよう な話は受 け入
れられない 。」と 述べ た。
(44)
平成8年6月 5日朝のY2次長とX5副分会長とのやりとりを受けて、
そ の 日 の 午 前 中 に Y 3 部 長 は X 2 分 会 長 に 電 話 を し 、「 今 日 の 団 体 交 渉
に 上 部 団 体 の 人 が 参 加 す る の か 。」 と 尋 ね た 。 X 2 分 会 長 が 「 出 席 を 予
定 し て い る 。」 と 答 え た と こ ろ 、 Y 3 部 長 は 「 上 部 団 体 の 人 が 出 席 す る
のであれば団 体 交渉は 中止しよう 。分会 の方 で、上部 団体の団 体 交 渉へ
の 出 席 に つ い て 考 え 直 し て も ら え な い か 。」 と 述 べ た 。 そ こ で 、 X 2 分
会長は東京労 組の X4 副委員長に、Y 3部長 から話があっ たことに つい
て連絡をとろ うとした が、連絡がと れなかっ た。
午後、Y 3部長と X2分会長は 電話で話 をした。 X2 分会長は 「上部
団体と連絡が とれない ので、予定ど おり上部 団体の者も団 体交渉に 参加
する。」と述べ たとこ ろ、Y3部 長は「 上部 団体の者が参 加するの であれ
ば、本日の団 体 交渉は 中止にしよう 。」 と述 べた。
- 11 -
結局、午 後3 時す ぎに、この日 の団体 交 渉は中止とさ れた 。
(45)
平 成 8 年 6 月 5 日 、 分 会 は 会 社 に 「 午 後 7 時 か ら 午 後 10時 に か け て 、
闘 争 委 員 会 を 行 い た い 。」 と 申 し 入 れ 、 会 社 の 本 社 ビ ル 7 階 の ラ ウ ン ジ
の使用許可を とった 。この闘争委員 会は 、午 後7時 30分ころから午 後9
時ころまで行 われ、東 京労組の X4 副委員長 も参加した。
(46)
平成8年6 月6日 午前9時 30分ころ 、Y 3部長はX5 副分会長 を本社
3 階 の 総 務 部 に 呼 び 出 し 、 同 人 に 対 し て 、「 上 部 団 体 が 介 入 し て き た 場
合には、決して問題の解決にならないばかりか、かえって溝が深まる。
夫婦げんかに 例えれば 、他人が 口出しす るよ うなもので 、会社 も組 合も
お互いに不幸 になる 。こんなことで 、組 合の 歴史に名前を 残しても いい
のか。」 などと述 べた 。
また、前 日 に 東京 労組の X4副 委員長が 、会社構内で の分会の 闘争委
員会に参加し たことに 触れ、
「 会 社の施設 内に 会社の外部の 者が立ち 入る
場合は、事前 に必ず許 可願を出して もらい、 会社が許可し た者に限 り、
立ち入ること を許可し ている。 アト ム分会の 組合活動とし て会社の 施設
利用を許可し たのであ って、会社の 外部の者 が参加するよ うな会 合 であ
れば、社外 の別のと こ ろで行っても らいたい 。」など と述べた 。こ の発言
は、
「東京 労組の役 員 が参加する分 会の集会 のために、会社 は施 設 を提供
しない、使用 許可申請 があっても、 許可しな い。」と いう意味 であ った。
(47)
平成8年6月6 日、分会は 賃金改定 に ついて、会 社からの 回 答額 8,200
円で妥協する こととし て、受諾書を 会社に提 出し、翌7日、会社と 分会
とは、夏季一 時金等を 議題とした団 体交渉を 開催した。こ の際、Y 3部
長 は X 2 分 会 長 に 対 し て 、「 一 連 の 争 議 行 為 に つ い て 、 分 会 か ら 会 社 に
対 し て 、 一 言 説 明 が あ っ て し か る べ き で あ る 。『 ス ト を し ま す 』 と 言 っ
て ス ト を や り 、 た だ 文 書 で 『 ス ト を や め ま す 』 で は 納 得 が い か な い 。」
と述べた。こ れに対し て、X2分会 長は「次 回までに分会 の方でま とめ
て、お話でき るように します。」と答え た。
(48)
平成8年6月 13日付けで 、分会の 組合 員 X6から 、分会 に対 して 脱退
届が提出され た。同人 の脱退の理由 は「経営 者側に押し切 られ、会 社側
の要求どおり 人事協定 が破棄された 状況にお いて、分会に加 入して いる
価値がなくな ったこと 」というもの であった 。
(49)
平成8年6月 18日、東京労 組と分 会は 連名で会社に 対し、次 のような
内容の「抗 議並びに 団 体 交渉開催申 入書」及 び「抗議申 入書」 を提 出し
た。
(抗議並びに 団体交渉 開催申入書)
「会社は去る 6 月5日 午後6時 30分から本社 会議室で予定 されてい た
団体交渉につ いて上部 団体の役員が 出席する のであれば団 体交渉は 開
催できないと して、予 定されていた 6月5日 の団体 交渉を 拒否する 態
度で中止して きました 。組合は会社 のこの行 為に対して強 く抗議す る
と同時に、下 記のよう に改めて団体 交渉の開 催を申し入れ ます。
- 12 -
記
1
団交事項
・人事協 定につい て
2
団交メン バー
・代表取 締役、総 務部長及び関 係部課長
・全労協 全国一般 東京労働組合 役員、ア トム分会役員
3
団交日時
・労使双 方で合意 できる日時で 2時間程 度
4
団交場所
・アトム 本社会議 室
なお、団体 交 渉に応じ るか否かにつ いては6 月21日までに 文書で回
答願います 。」
(抗議申入書 )
「去る6月6日午前 9時 20分頃 、会社 のY3総務部長 とY2次長 はX5
副 分 会 長 を 総 務 の 部 屋 へ 呼 び 、『 外 部 の 者 を 社 内 に 入 れ る 時 に は 会 社
の許可を取っ てもらっ ている。 上部 団体の人 が許可願いを 出しても 許
可しないから 、許 可願 いを持ってこ なく ても よい。』と述べ 、ま た『上
部 団 体 の 人 が く る 団 交 は 今 後 と も 一 切 や ら な い か ら 。』 と 付 け 加 え 述
べられました 。 会社管 理職のこの発 言は組合 活動に対する 不当な 扱 い
であり妨害行 為であり ます。 組合は ここに会 社のこの不当 な発言 に 対
して強く抗議 します。
以上、申し 入れます 。」
3
本件申立 て後の労 使関係
⑴
平成8年 6月 21日、会社は分会 に対し、 同月 18日付け「抗議並 びに団
体交渉開催申 入書」に ついて、次の とおり文 書で回答した 。
「1
これま でもアト ム労使で話合 いをして きているとい う従前の 経緯
もあり、上部団体が交渉当事者として同席することはなじまない。
2
今回テー マとなっ ている人事協 定は、ア トムの従業員 の人事に 関
してのことで あり、ア トム労使のみ を当事者 として話し合 うべきと
考えている。
3
この人事 協定の件 は、会社とし ても対案 を示し、十分 に協議を し
尽くしたと考 えている 。 しかし、組 合が更な る 交渉をと言 うことで
あれば、これ を拒否す るものではな いが、上 記の理由によ りアトム
分会の出席で 足りると 理解している 。 上部団 体が出席する というこ
とであれば、 団交及び 話合いは受け られない 。また、アト ム労使の
団交であって も、会社 側出席メンバ ーはこれ まで のとおり で支障は
ないので代表 取締役は 出席しない。
4
⑵
以上の前 提で団体 交渉を開催することについてはやぶさかでない。」
平成8年 7月5日 付けで、分会 の組合員 である X7、 X8及び X9か
ら、分会 に脱退願 が提 出されたが 、3人 とも 、
「総 務課の 仕 事上 、電話接
- 13 -
客応対、給与 、原価等 の極秘的な仕 事につい ている」こと を脱退の 理由
としており、 極秘の「 秘」を「否」 と書き間 違っていた。 なお、タ イプ
打ち、様式な どはまっ たく同一であ った。
⑶
平成6年11月から 平成9年1月 20日まで の間に、分会 から組合 員 53人
が脱退した。 それらの 脱 退届に記載 された脱 退の理由は、 次のとお りで
あった。
第3
・分会に加入 している ことにメリッ トがない とするもの
3通
・秘密事項を 扱う、総 務部・総務課 配属を理 由とするもの
4通
・一身上の都 合・私事 都合を理由と するもの
19通
・分会の方針 や活動を 疑問とするも の
15通
・営業担当で あること を理由とする もの
6通
・組合費を理 由とする もの
2通
・管理職とな ることを 理由とするも の
1通
・理由の記載 がないも の
2通
・その他
1通
判断
1
人事協定 条項の解 約について
⑴
当事者の 主張
ア
申立人の 主張
(ア) 人事協定 条項は、 締結後解約申 入れまで の間、その運 用をめぐ る
労使間のトラ ブルもな く推移してお り、会社 の解約申入れ は突然の
ものであった 。
(イ) 会社の主 張する人 事協定条項解 約の理由 は、いずれも 一般的、 抽
象的であって 、解約の 必要性、合理 性がない 。
(ウ) 会社は、 人事協定 条項の解約申 入れ後 の 交渉、あっせ んの経過 に
おいて、解約 に固執し ており、会社 の解約の 意図は、当該 条項に示
されている分会 との従 前の労使関係 を改編しようとしたものである。
(エ) 本件人事 協定条項 解約は、分会 の団結に 影響を与え、 分会弱体 化
に つ な が っ て お り 、 労 働 組 合 法 ( 以 下 「 労 組 法 」 と い う 。) 第 7 条
第3号の支配 介入に該 当することは 明らかで ある。
イ
被申立人 の主張
(ア) 本件人事 協定条項 は、締結当時 の世間の 労使関係状況 を反映し て
いるものであ って、現 在の状況にマ ッチする ものに変えな ければな
らないと会社 は認識し ている。経営 に主体性 と弾 力性を要 求される
時代に手間と 時間がか かる規制を改 善しなけ れば企業間競 争に後れ
を取る。会社 の有する 経営権の中枢 をなす人 事権に対し本 件人事協
定条項がある というこ とは、社員の 異動に関 して組合が同 意するか
しないかの許 諾権を握 っているのと 同じこと であり是正さ れなけれ
ばならない。
会社は人 事異動を 提案するに当 たって問 題が存在する ことを感 じ
- 14 -
ながらも我慢 してきた というのが実 情である 。
(イ) 会社は平 成7年6 月 21日の解約 効力発生 後も団体 交渉 ないし話 合
いを行ってお り、対案 も提示してい る。 また 、都労委での あっせん
の間、解約の 効力を一 時凍結した。
このよう に解約に 当たっては、 会社は法 定の手続きを すべて順 守
しており、誠 実な協議 を経た上での 解約であ る。
(ウ) 本件解約 は、申立 人の団結弱体 化を意図 した支配介入 に当たる と
する申立人の 主張には 、理由がない 。
⑵
当委員会 の判断
ア
期間の定 めのない 労働協約は、 解約しよ うとする日の 90日前ま でに
署名又は記名 押印した 書面を相手方 に交付し て予告すれば 解約でき る
ものであるが 、本 件に おいて、会社が分 会の 正当な組合活 動を阻害 し、
分会の消滅をもくろんで解約を行ったものであると判断できる場 合 は、
不当労働行為 が成立 す る。
イ
ところで 、今回の 人事協定条項 の解約手 続については 、認定し た事
実2の⑹から ⑾まで、 ⒀から⒄まで 、 ⒆及び (21)によると、
会社は、
・
昭和49年協定書の 他の条項まで 解約して いないこと、
・
都労委で のあっせ んに応じてい ること、
・
あっせん の期間中 、解約の手続 をいった ん凍結してい ること、
・
解約申入 れから解 約に至るまで の間、団 体 交渉を拒否 していな い
こと、
・
分会に対 して解約 理由の説明を 何回も行 っていること 、
等の経緯があ り、これ らの事実から 、 会社が 分会の正当な 組合活動 を
阻害して、その消滅を企図していたという明確な心証は得られない。
つまり 、本件人 事協 定条項解約申 入れ当時 、労使関 係は平穏 であ り、
会社が分会の 組合活動 を嫌悪して、 分会を消 滅させようと いう考 え を
持っていたこ とを示す 事実は見当ら ず、解約 の手続を行っ た平成6 年
11月2日から 平成7年 6月 21日までの間にお いて、会社に 分会を 弱 体
化させようと いう企図 があったとい う疎明も ない
ウ
また、東 京労組及 び分会は、こ の 人事協 定条項解約の 申入れ以 降、
組合員が分会 を脱退し たと主張する が、 それ らの者が脱退 したのは 会
社の人事協定 条項解約 申入れが原因 であると いう相当因果 関係につ い
て、十分な疎 明がない 。
エ
したがっ て、以上 の事実を総合 して判断 すると、会社 が労組法 第7
条第3号に該当する不 当労働行為 を行ったと断定することはできない。
⑶
申立期間 について
本件救済 申立てに おいて、 東京 労組及び 分会は、人事 協定条項 の解約
について、平 成7 年6 月21日をもっ て解約の 効力が生じた ので、こ の日
に不当労働行 為が発生 したのであり 、この点 についての当 委員会へ の救
- 15 -
済申立期間は 平成8 年 6月21日(本件救 済申 立日)ま でである と主 張 し、
会社は特に反 論しなか った。
会社が分 会に対し て人事協定条 項の解約 を申し入れた のは、平 成6 年
11月2日であ るから、 当委員会への 救済申立 期間は平成7 年 11月2日ま
でであるとい う考え方 もあるだろ う が、当委 員会では、平 成6年 11月2
日の解約申入 れから平 成7 年6月21日の解約 の効力発生ま でを一連 の解
約手続である と考え、 一連の行為が 終了した 平成7年6月 21日の翌 日か
ら1年の応答 日の前日 である平成8 年6月 21日までが当委 員会への 救済
申立期間であ る と判断 する。
2
平成8年 6月3日 の朝礼での社 長の発言 について
⑴
当事者の 主張
ア
申立人の 主張
(ア) 社長は「 医療器械 の中で組合が あるのは 4社しかない 。組合の 存
在が時代遅れ だ。 過去 の遺物である 。」 とか、「ストライキ は時代 に
合わない。 ス トライキ がやりたけれ ばいくら でもやれ。し かし、 ジ
ーと見る者は 見ている ぞ。 組合の保 護のもと で安穏として いる者 が
40人ほどいる 。」 と発 言した。
(イ) 会 社 は 「 第 49期 経 営 方 針 」 に お い て 、「 労 働 組 合 に は 時 代 に マ ッ
チした労働組 合である ことを期待す るととも に、企業内労 働組合の
方 向 を 期 待 す る 。」 と 記 載 し て い た 。 し た が っ て 、 社 長 が 時 代 遅 れ
だ と 考 え て い た も の は 、「 労 働 組 合 が ス ト ラ イ キ を す る こ と 」 だ け
で は な く 、「 分 会 の 上 部 団 体 加 入 等 の 組 織 体 制 そ の も の 」 で あ っ た
ことは明らか である。
(ウ) 分会が実 施した平 成8年5月 27日及び同 月 30日の時限 ストライ キ
のわずか数日 後の社長 発言であるの で、社長 が「組合のスト ライキ 」
と言えば、申 立人分会 が実施したス トライキ を指すとしか 考えられ
な い 。 し か も 、 社 長 の 「( ス ト ラ イ キ を ) や り た け れ ば い く ら で も
やれ。」 という発 言は、「ストライキ には賛成 しない」とい う 意味だ
と 被 申 立 人 は 認 め て い る 。「 ジ ー と 見 る 者 」 と は 、 会 社 の 経 営 者 と
管理職である と考える のが自然であ る 。
(エ) 以上のよ うな社長 発言があれば 、組合員 は社長の意図 に反した 方
針をとった分 会のスト ライキに参加 したり、 分会に加入し 続けるこ
とで、社長や 管理職か らの評価が悪 くなるの だと思い、組 合活動を
自粛したり、 分会を脱 退したりする ことにつ ながる。
(オ) 以 上 の こ と か ら 、 前 記 (ア)の 社 長 発 言 は 、 労 組 法 第 7 条 第 3 号 の
組合運営への 支配介入 に該当する 。
イ
被申立人 の主張
(ア) 社長は「 労働組合 がストライキ をしたり する時代では ない。そ の
ようなことは 過去の遺 物である。い つまでも 昔のやり方を 続けてい
て は い け な い 。 そ の よ う な 考 え 方 は 捨 て 去 ら ね ば な ら な い 。」 と 言
- 16 -
ったのであっ て、これ はストライキ に関連し て一般的な社 会のすう
勢についての 認識を述 べたものであ る 。労働 組合の争議権 を否定 す
る趣旨ではな く、分会 に対するけん 制的意図 のもとになさ れたもの
でもない。
(イ) 社 長 は 「 シ ー と 見 る 者 は 見 て い る ぞ 。」 と 発 言 し た が 、 こ れ は 近
隣、同業の人 々からも 見られている ことを指 したものであ る。
(ウ) 社長発言 は、その 流れの中で検 討すれば 、いずれも会 社のすう 勢
について、経 営者とし ての一般論を 述べたも のであって、 分会の組
織、運営に対 する支配 介入には該当 しない。
⑵
当委員会 の判断
ア
使用者が 労働組合 に関して発言 をするこ とは、憲法第 21条「言 論の
自由」に基づ き許され ているが、し かし、発 言の内容が、 発言者や 聞
き手、発言当 時の労使 関係などから みて、労 働組合の組織 、運営に 影
響を与えるも のである 場合は、労組 法第7 条 第3号の支配 介入に該 当
すると判断さ れる。
イ
認定した 事実2 (39)によれば 、社長が 、平 成8年6月3 日の朝礼 にお
いて、当日、 休暇であ った者などを 除いた本 社に勤務する 全従業員 を
前 に し て 、「 医 療 機 器 業 界 の 中 で 労 働 組 合 が あ る の は 4 社 し か な い 。
労働組合がス トライキ をする 時代で はない。 そのようなこ とは過去 の
遺物である。 いつまで も昔のやり方 を続けて いてはいけな い。その よ
うな考え方は 捨て去ら ねばならない 。先ごろ 、組合によっ てストラ イ
キが行われた が、会社 としては痛く もかゆく もない。 やり たければ い
くらでもやれ 。 ジーと 見る者は見て いるぞ。 組合の保護の もとで安 穏
としている者 が 40人ほどいる。」と発言 した 。
ウ
この社長 の発言に ついて会社は 、ストラ イキに関連し て一般的 な社
会のすう勢に ついての 認識を述べた ものであ って労働組合 の争議権 を
否定する趣旨 ではなく 、分会に対す るけん制 的意図のもと にな され た
ものでもない と主張す る。
確かに、発言の前 半部分、
「 医療機器 業 界の中で労働 組合があ るのは
4社しかない 。労働組 合がストライ キをやる 時代ではない 。そのよ う
なことは過去 の遺物で ある。いつま でも昔の やり方を続け ていては い
け な い 。」 と の 点 に つ い て は 、 社 会 的 な す う 勢 と 言 え る か ど う か は と
もかくとして 、社長自 身の組合及び 組合活動 についての一 般的な認 識
を述べたもの ととらえ ることができ る。 また 、この発言は 、他社と の
比較をしなが ら暗に分 会の存在の是 非を述べ 、ストライキ という分 会
のとった行動 に対して 批判したもの ではある が 、この程度 の発言に と
どまる限りは 労働組合 の組織、運営 に影響を 及ぼす程のも のとは考 え
られず、不当 とまでは 言えないと思 われる。
エ
しかしな がら、そ の後に続く 、
「 先ごろ 、組合によ ってスト ラ イキ が
行われたが、 会社とし ては痛くもか ゆくもな い。 やりたけ ればいく ら
- 17 -
でもやれ。ジ ーと見る 者は見ている ぞ。組合 の保護のもと で安穏と し
て い る 者 が 40人 ほ ど い る 。」 と の 発 言 に つ い て は 、 社 長 の 組 合 活 動 に
対する一般的 認識の域 を超えたもの で、分会 の活動をけん 制し、組 合
員に対する威嚇的な意味を持つものであったと判断せざるを得ない。
オ
この発言 のうち 、「 ジーと見る 者は見て いるぞ。」の「見 る者 」につ
いて、会社は 、近隣、 同業の人々と いう意味 であったと主 張する。 し
かし、この 発言が 、
「 先ごろ、組 合によっ て ストライキが 行われた が、
会 社 と し て は 痛 く も か ゆ く も な い 。 や り た け れ ば い く ら で も や れ 。」
という会社の 認識を述 べた後の発言 であるこ とから、発言 の流れか ら
すれば、それ を聞く者 にとっては、 この「 ジ ーと見る者」 とは、会 社
の外部の者と いうより もむしろ、社 長本人な いしは会社幹 部と受け 取
れ る も の で あ っ た と 考 え ら れ る 。 ま た 、 こ の 発 言 に 続 い て 、「 組 合 の
保 護 の も と で 安 穏 と し て い る 者 が 40人 ほ ど い る 。」 と わ ざ わ ざ 人 数 に
まで言及して いること からすると、 外部の者 がそこまで見 ているの は
不 自 然 で あ り 、「 ジ ー と 見 る 者 」 と は や は り 社 長 本 人 な い し 会 社 幹 部
と考えるのが 相当であ る。
カ
そして、 この「 ジ ーと見る」対 象は、ス トライキ等の 分会の活 動で
あるが、分会 の活動を 社長なり会社 幹部が「 ジーと」見て いると言 わ
れれば、それ 自体で一 般の組合員に とっては 、今後の組合 活動を行 う
に 際 し て 心 理 的 に 圧 迫 と な っ た と 思 料 さ れ る 。 さ ら に 発 言 が 、「 組 合
の 保 護 の も と で 安 穏 と し て い る 者 が 40人 ほ ど い る 。」 と し て 、 人 数 を
指摘しての具 体的なも のであった こ とからす れば、心理的 な圧迫は 一
層強くなった ものと思 われ、本件社 長発言は 、 ストライキ に参加す る
など組合活動 を積極的 に行う組合員 に対する 威嚇的な意味 を有し、 分
会の活動を抑 制させる 点があったと 判断する のが相当であ る。
キ
なお、本 件発言が 行われた際の 労使関係 をみると、認 定した事 実2
(27)によれば、会 社は、 その前年の 10月に決定 した「第 49期経営方針 」
に お い て 、「 企 業 内 労 働 組 合 の 方 向 を 期 待 す る 。 労 使 対 立 を 前 提 と し
た も の に つ い て は 毅 然 と 対 処 す る 。」 な ど と 記 述 し て い た よ う に 、 分
会のあり方や 分会の活 動を強く 批判 し、分会 と対決する考 えをも示 し
ていた。
そして 、会社 がそ のような考え にある中 で、認定 した事実 2 (34)及び
(38)のとおり、分会は 、平成8年4月 からは残 業拒否の戦術 をとると と
もに、同年5 月 27日と同月30日には、十数年 ぶりでストラ イキを行 っ
ていた。本件 社長発言 は、このスト ライキの わずか数日後 に行われ た
ものであるこ とから、 社長は、改め て分会の 活動に ついて 強い嫌悪 感
を示すととも に、組合 活動を自粛さ せようと して本件発言 にでたも の
と推測される 。
ク
また、認 定した事 実3 ⑵によれ ば、本件 社長 発言のほ ぼ1か月 後の
平成8年7月 5日には 総務課勤務の 女子社員 3人から組合 脱退届が 提
- 18 -
出されたが、このことは本件社長発言と関係しないとは断言できず、
むしろ時期的な点や 、認定した事実2 (41)のとおり、その上司であ る Y4
総務課長がX 5 副分会 長に対し 、「社長 の発 言聞かせたか ったなあ 。」
などと話して いたこと などから、社 長発言が 組合員の脱退 にも 影響 し
たとも考えら れるとこ ろである。
ケ
したがっ て、以上 のことから本 件社長発 言は、その一 部に、組 合員
を威嚇し、組 合活動を 抑制しようと した点が あり、労組法 第7 条第 3
号に該当する 不 当労働 行為であると 判断する のが相当であ る 。
3
東京労組 の役員の 団体 交渉への 出席拒否 について
⑴
当事者の 主張
ア
申立人の 主張
(ア) 平成8年 6月5日 に開催するこ とで分会 と会社が合意 していた 団
体交渉につい て、当日 「本日の団交 には上部 団体から1名 が参加し
ま す 。」 と 分 会 か ら 会 社 に 通 告 し た と こ ろ 、 Y 2 次 長 は 「 上 部 団 体
が 出 席 す る の で あ れ ば 団 体 交 渉 は 中 止 し よ う 。」 と 言 っ て 、 団 体 交
渉の開催を拒 否した。 さらに同年6 月 21日、会社は書面で 「団体交
渉に上部団体 の役員が 出席するとい うことで あれば、団体 交渉 及び
話合いは受け ら れない 。」と明 言した。
(イ) 会社は、 分会が東 京労組に加盟 し、これ と協議、検討 を経て分 会
の活動方針を 決定して いることを十 分知り つ つ、東京労組 及び分会
の 方 針 を 嫌 悪 し 、「 時 代 に マ ッ チ し た 労 働 組 合 」、「 企 業 内 組 合 」 の
方向を期待す るとの経 営方針のもと 、 東京労 組役員の団体 交渉 出席
を拒絶した。 このよう な会社の対応 が労組法 第7条第3号 の組合 運
営に対する支 配介入に 該当すること は明らか である。
イ
被申立人 の主張
(ア) 平成8年 6月5日 の Y2次長の 発言は、 分会が事前の 合意もな し
に、突然一方 的に団体 交渉への出席 者を変更 する ことを通 告してき
たことに起因 する。
会社と分 会との間 では団体交渉 出席メン バーについて は事前に 確
認し、了解を 得た上で 進めてきた。 また、会 社と分会との 団体 交渉
に、上 部団体 の役員 が出席したことは昭和 49年3月以 降はなかった。
したがって、 分会が東 京労組役員の 団体 交渉 への出席を一 方的に通
告してきたこ とが原因 であって、支 配介入に は該当しない 。
(イ) 上部団体 が固有の 団体 交渉権を 有するた めには、当該 上部団体 が
労組法第2 条 の要件を 満たし、かつ 、加盟組 合に対する統 制力を有
するとともに 、上部団 体と加盟組合 との間で 交渉権限が統 一されて
いなければな らない。 しかし、本件 において は分会が団体 交渉 に東
京労組役員も 参加する ことを申し入 れるに当 たり、それら のことを
何ら説明して いない。 したがって、 会社は、 当該東京労組 が労組法
第2条の要件 を満たし 、かつ、分会 に対する 統制力を有し ているこ
- 19 -
とを判断する ことがで きなかったの であるか ら、会社が分 会の団体
交渉申入れを 拒否した ことは不当労 働行為に 当たらない。
(ウ) 一般論と して、分 会と会社との 間には企 業別 交渉の慣 行が確立 さ
れており、こ の慣行の 下では東京労 組が 交渉 当事者として 分会と会
社との団体 交 渉に同席 することはな じまない 。
(エ) また、分 会は独自 の綱領、規約 を持ち、 本件団体 交渉 の当事者 と
しての能力を 十分に有 しているのだ から、会 社が東京労組 役員の参
加する団体 交 渉申入れ を拒否したこ とには正 当な事情があ り、不当
労働行為には 当たらな い。
⑵
当委員会 の判断
ア
認定した 事実2 (40)によれば 、平成8 年6 月3日、X2分会 長は Y2
次長に6月5 日に賃金 改定と人事協 定を議題 として団体交 渉を行い た
いこと及び人 事協定に 関する団体交 渉は上部 団体の者が参 加した上 で
行いたいこと を申し入 れており、そ れに対し 、 Y2次長は 、賃金改 定
だけを議題に してはど うかと提案し ている 。また、認定 した事実 2 (43)
によれば、6 月5日朝 に、 X5副分 会長は Y 2次長に対し て、団体 交
渉に東京労組 の者が出 席することを 告げてい る。
これらの ことから 、事前の合意 もなしに 分会が東京労 組の者の 出席
を一方的に申 し入れて いたことが認 められる 。 しかし、事 前の合意 が
ないのに相手 方が一方 的に出席者を 追加して きたことが、 いかなる 場
合でも団体交 渉 拒否の 正当な理由に なるもの ではない。 団 体交渉 へ の
出席者は正当 な権限を 持った人物で あればよ いのであり、 相手方の 出
席者を誰でな ければな らな いと制限 すること はできないと 考えるべ き
である。
イ
本件の場 合、分会 は東京労組の X4副委 員長を団体 交 渉の出席 者と
して追加する と会社に 通告しただけ であり、 出席者が増え たことで 団
体交渉の場所 が手配で きなくなった などの特 段の事情があ ったとい う
疎明は会社か らはない 。 また、本件 では、分 会の他の出席 者が変更 に
なっていない 以上、通 告を受けた時 点又は団 体 交渉開始の 前に、 X 4
副委員長が本 件団体交 渉にどのよう な立場で 出席するのか 、また場 合
によっては正 当な権限 を持っている のか否か を確認すれば 事は済ん だ
はずである。 にもかか わらず、 X4 副委員長 が団体交渉の 出席者と し
て 追 加 さ れ た こ と を 知 る や 否 や 、「 上 部 団 体 の 者 が 参 加 す る の で あ れ
ば 、 本 日 の 団 交 は や め よ う 。」 と 会 社 は 主 張 し 、 そ の 結 果 そ の 日 の 団
体交渉は開催 されなか ったのである から、会 社は単に上部 団体であ る
東京労組の介 入を嫌っ て団体交渉開 催を拒否 したもので、 団体 交渉 拒
否をしたこと について 正当な理由が あったと は認められな い。
ウ
分会は、 団体 交渉 において新た な人事協 定条項締結を 模索する つも
りであった。 分会にと って、新たな 人事協定 条項を締結す ることは そ
の団結を維持 するため に重要な問題 であると 考え、 団体交 渉に上部 団
- 20 -
体役員の出席 を求め、 自らの交渉力 を高めよ うとしたこと は当然で あ
る。それを会 社は「上 部団体の者が 参加する のであれば、 本日の団 交
は や め よ う 。」 と し て 東 京 労 組 役 員 が 出 席 す る こ と を 嫌 悪 し 、 団 交 開
催を拒んだの であるか ら、第一義的 には分会 に選択権があ るべき団 体
交渉出席者に ついて介 入した行為と 言わざる を得ず、労組 法第7 条 第
3号に該当す る不当労 働行為である と判断す る。
エ
なお、会 社は、上 部団体と加盟 組合との 間で交渉権限 の統一が なさ
れていること を分会が 会社にきちん と説明し なかった以上 、会社は 団
体交渉開催を 拒 否して も不当労働行 為ではな いと主張する 。しかし な
がら、交渉権 限の統一 というものは 上部団体 と加盟組合と の当事者 間
での問題であ って、要 は交渉時に権 限の統一 がなされてい ないため に
団体交渉が円 滑に運ば ないといった 事態が生 じた場合に限 って、使 用
者が団体交渉 を拒否す る正当な理由 となるに すぎないので ある 。
したがっ て、本件 のように交渉 権限がど のようになっ ているか を分
会に質問さえ しなかっ た会社が、こ のような 主張をするこ とは単な る
団体交渉拒否 の言い訳 であって、到 底採用で きるものでは ない。
オ
また、会 社は、東 京労組の者が 参加する 団体交渉につ いて、 ① 分会
と会社との間 には企業 別交渉の慣行 が確立さ れており、こ の慣行の 下
では東京労組 が 交渉当 事者として分 会と会社 との団体 交渉 に同席す る
ことはなじま ない、② 分会は独自の 綱領、規 約を持ち、本 件団体 交 渉
の当事者とし ての能力 を十分に有し ているの だから、会社 が上部団 体
の参加する団 体 交渉申 入れを拒否し たことに は正当な事情 があり、 不
当労働行為に は当たら ない、とも主 張する。
しかし、 ①につい ては、このよ うな主張 は、一度この ような慣 行が
できた労働組 合が新た に上部団体に 加盟した り、上部団体 を変更し た
りする自由を 否定しか ねない考えで あって、 到底採用でき ない。
また、② について も、労働組合 が団体交 渉への出席者 を自主的 に決
定する自由を否定しかねない考えであって、採用することはできない 。
4
東京労組 の役員の 会社内への立 入り拒否 について
⑴
当事者の 主張
ア
申立人の 主張
(ア) 東京労組 は、昭和 49年協定書項 目一 ⑷に 基づき、集会 等のため に
会社内の設備 利用権を 有しており、 役員が会 社施設を利用 すること
は事前の申込 み等の手 続要件を満た す場合に おいては当然 に認めら
れるべきであ る。東京 労組の社内施 設の利用 を一般的に 認 めないと
する会社の態 度は、こ の労使協定に 違反し上 部団体を嫌悪 、否認す
る行為である 。
(イ) 会社は、 分会が東 京労組に加盟 し、これ と協議、検討 を経て分 会
の活動方針を 決定して いることを十 分知り つ つ、東京労組 及び分会
の 方 針 を 嫌 悪 し 、「 時 代 に マ ッ チ し た 労 働 組 合 」、「 企 業 内 組 合 」 の
- 21 -
方向を期待す るとの経 営方針の下、 昭和 49年協定書の規定 に反して
東京労組役員 の会社施 設利用を否定 した。こ のような会社 の対応が
労組法第7条 第3号の 組合運営に対 する支配 介入に当たる ことは 明
らかである。
イ
被申立人 の主張
(ア) Y3部長 らの発 言 は、組合活動 のために 会社施設を使 用する場 合
の事前許可手 続の原則 に基づいて会 社の考え を述べ、その 手続を踏
んでいないこ とを注意 したものであ って、分 会の弱体化を 意図して
の発言ではな い。また 、会社外部の 者が参加 する会合など について
は、これまで 会社外の 施設で開催し てきたと 認識している ので、会
社としては、施設利用を許可するつもりはないと言ったのである。
(イ) 会社施設 の利用 については当然に会 社の管理権が及 ぶ範囲 であり、
業務上の理由 が最優先 されるべきで あるから 、労働組合を 含む 業務
以外の利用を会社の許可制にすることは合理的である。ましてや、
会社外部の者 の会社施 設の利用につ いては会 社として十分 な管 理を
しなければな らないこ と は当然であ る 。会社 は周産期関係 の医 療器
機を製造販売 するメー カーであって 、業務上 の機密保持の 面からも
会社外部の者 の会社施 設の利用につ いて、十 分な管理が必 要であっ
たのである。
⑵
当委員会 の判 断
ア
東京労組 及び分会 は、昭和 49年協定書で 、上部団体が 参加する 集会
を分会が開催 する場合 、会社は特に 事情がな ければ会社の 施設、設 備
の利用を許可しなければならない旨合意がなされていると主張する 。
し か し 、 認 定 し た 事 実 2 ⑵ の と お り 、 昭 和 49年 協 定 書 に は 、「 会 社 は
組 合 の 集 会 等 の た め に 、 社 内 の 設 備 の 利 用 を 認 め る 。」 と の 条 項 が あ
るものの、こ の条項を もって直ちに 東京労組 の役員が参加 する分会 の
集会等につい ても会社 は許可をしな ければな らないという 合意まで な
されていると 判断する ことはできな い。
イ
ところで 、認定 し た事実2 (46)のとおり、平成8年6月 6日に Y 3部
長 は X 5 副 分 会 長 を 呼 ん で 、「 上 部 団 体 が 介 入 し て き た 場 合 に は 、 決
し て 問 題 の 解 決 に な ら な い ば か り か 、 か え っ て 溝 が 深 ま る 。」 な ど と
述 べ た 後 に 、「 会 社 の 施 設 内 に 会 社 の 外 部 の 者 が 立 ち 入 る 場 合 は 、 事
前に必ず許可 願を出し てもらい、会 社が許可 した者に限り 、立ち入 る
ことを許可し ている。 アトム分会の 組合活動 として会社の 施設利用 を
許可したのであって、会社の外 部の者 が参加 するような会合 であれば、
社 外 の 別 の と こ ろ で 行 っ て も ら い た い 。」 な ど と 述 べ た 。 こ れ ら の 発
言を一連のも のとして とらえれば、 その趣旨 は単に手続が 整わない こ
とを注意して いること にとどまるも のでなく 、上部団体が 社内の 労 使
関係に関与す ることを 忌避している 姿勢を表 していると言 うべきで あ
る 。 ま た 、 認 定 し た 事 実 2(46)の と お り 、 会 社 も 「 東 京 労 組 の 役 員 が 参
- 22 -
加する分会の 集会のた めに、会社は 施設を提 供しない、使 用許可申 請
が あ っ て も 許 可 し な い 。」 と い う 意 味 で あ る こ と を 認 め て い る と こ ろ
である。
ウ
会社は、 会社外部 の者である上 部団体の 役員が参加す る分会の 集会
については、 業務上の 機密保持の面 から、施 設利用の許可 をするつ も
りはないと言 ったもの であると主張 する。 こ れは被申立人 会社のよ う
な製造・販売 業の会社 にとっては当 然のこと であって、一 応合理的 な
理由であると 言える。
しかしな がら、平 成8年6月当 時、認定 した事実2 (43)及び(44)のとお
り、会社は上部団体の役員が出席する団体交渉の開催を拒否したり、
また、認定し た事実2 (27)のとおり、第 49期経 営方針におい て「社内 組
合の方向を期 待する」 などの見解を 明らかに しており、上 部団体で あ
る東京労組が 会社内の 労使関係にか かわって くることを嫌 悪してい た
ことが認めら れる。
また、施 設利用を 許可するに当 たって、 分会に対して 業務上の 機密
保持のための 付帯条件 を示すなど、 誠意を持 って話し合お うとした 事
実関係も認め られない 。
したがっ て、会社 外部の者であ る東京労 組の役員が参 加する分 会の
集会について 、施設利 用を許可する つもりは ないと言った の は、業 務
上の機密保持 の面から であるという 、会社の 主張をそのま ま容認す る
ことはできず 、社員で はない東京労 組の役員 が会社内の労 使関係に 口
出しすること を嫌悪し た結果であっ たと判断 するのが相当 である 。
エ
以上のこ とから、 会社が、東京 労組役員 の参加する分 会の集会 につ
いて会社の施 設利用を 拒否する発言 をして、 東京労組役員 の会社内 立
入りを禁止し たことは 、労組法第7 条第3号 に該当する不 当労働行 為
と判断する。
5
救済法に ついて
申立人は 、陳謝文 の交付及び掲 示を求め ているが、本 件におい ては、主
文1の救済で 足りるも のと判断 する 。
第4
法律上 の根拠
よって、 当委員会 は、労組法第 27条及び 労働委員会規 則第 43条に基づき 、
主文のとおり 命令する 。
平成10年7月9日
埼玉県地方労 働委員会
会長
- 23 -
古西
信夫
㊞
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