4.人為的ストレスに対する産卵鶏の反応 ○ 出 雲 章 久 ・ 安 松 谷 恵 子 ・ 高 見 怜 子 *・ 深 江 真 理 *( *近 畿 大 学 ) 1.目 的 ストレスに対する産卵鶏の反応は、ヒトと同様、ホルモン分泌、体内過酸化物量および 免疫応答などに現れるが、ストレスの増加により反応が増強すると、鶏卵の生産性や卵質 および鶏の健康状態の低下を招く。ストレスへの反応を緩和して健康状態の低下を防止で きれば、ストレスの種類に関係なく、その悪影響を防止でき、消費者ニーズにマッチする 鶏卵の生産が可能となる。しかし、産卵鶏に加えられたストレスとこれへの反応を評価す る方法は確立されておらず、ストレスを緩和する技術の評価方法も統一されていない。こ のため、複数の人為的ストレスを産卵鶏に与え、生産性や生理的な反応を検討した。 2.方 法 供 試 鶏 と し て 24cm幅 の 単 飼 ケ ー ジ で 飼 育 す る 82週 齢 の ボ リ ス ブ ラ ウ ン を 用 い 、 産 卵 率 が 等 し い 12羽 4区 を 設 定 し た 。対 照 区 に 対 し 、飢 餓 区 は 飼 料 の 給 与 量 を 半 分 に し た 。密 度 区 は 1ケ ー ジ に 2羽 を 収 容 し 、拘 束 区 は 午 後 に 4時 間 足 を く く る 拘 束 ス ト レ ス を 負 荷 し て 、11月 に 4週 間 飼 育 し た 。飲 水 は 自 由 摂 取 と し た 。測 定 項 目 は 、飼 料 消 費 量 、産 卵 率 、卵 重 、卵 質 (ハ ウ ユ ニ ッ ト ・卵 黄 係 数 ・卵 黄 色 ・卵 殻 色 ・卵 殻 強 度 な ど )、血 液 の ヘ マ ト ク リ ッ ト 値 、血 液 塗 沫 標 本 の H/L比 、血 漿 の 生 化 学 分 析( 総 蛋 白 質 、尿 酸 、グ ル コ ー ス 、ア ル カ リ フ ォ ス フ ァ タ ー ゼ:ALP:フ ジ ド ラ イ ケ ム 3500Vを 使 用 )、お よ び α 1酸 性 糖 タ ン パ ク 質( α 1AG:メ タ ボ リ ッ ク エ コ シ ス テ ム 研 究 所 の 測 定 キ ッ ト を 使 用 )と し た 。 3.結果および考察 拘 束 区 の 産 卵 率 と 飼 料 消 費 量 は 1週 目 か ら 低 下 し 、 2週 目 以 降 有 意 差 が 見 ら れ 、 3か ら 4週 目 に 回 復 傾 向 が 見 ら れ た 。密 度 区 と 飢 餓 区 で は 、養 鶏 農 家 の 夏 季 と 同 様 な 7∼ 13% の 、有 意 ではない産卵率の低下が見られた。卵重はほとんど差が見られなかった。 卵質は飢餓区で卵黄色が有意に低く、拘束区で卵殻厚が有意に厚くなったほか、拘束区 の 2週 で 卵 殻 色 の L*値 の 上 昇 と a*値 の 低 下 が 見 ら れ た 。 そ の 他 の 卵 質 に 差 は な か っ た 。 血液の結果では、拘束区のヘマトクリット値が有意に高く脱水が疑われた。また、拘束 区 の リ ン パ 球 数 が 有 意 に 低 下 し H/L比 は 上 昇 し た 。血 漿 の 生 化 学 分 析 で は 、飢 餓 区 と 拘 束 区 で 総 蛋 白 質 と グ ル コ ー ス が 有 意 に 低 下 し 、 拘 束 区 で ALPが 有 意 に 上 昇 し た 。 α 1AGは ス ト レ ス負荷で増加し、拘束区では有意で、産卵率と対照的な推移を示した。 以上の結果から、本研究で用いた人為的ストレスは、その強弱を含めて実験的な利用が 可 能 で あ る こ と 、 お よ び 、 産 卵 鶏 の 反 応 と し て は 、 産 卵 率 や 飼 料 消 費 量 、 卵 殻 色 、 α 1AG、 H/L比 、 ALP等 を 測 定 す る こ と が 妥 当 で あ る こ と が 示 さ れ た 。 今 後 は 本 成 果 を ス ト レ ス 緩 和 飼養管理技術の評価方法として活用し、消費者ニーズに合致した鶏卵生産技術としたい。 第1表 ストレス負荷が鶏卵の生産性に及ぼす影響 対照区 密度区 拘束区 飢餓区 産 卵 率 (%) 84.62 79.32 36.21 75.69 平 均 卵 重 (g) 66.81 66.05 65.53 64.69 産 卵 日 量 (g/羽 /日 ) 56.54 52.39 23.73 48.97 飼 料 消 費 (g /羽 /日 ) 110.00 96.79 60.24 55.12 1.95 1.85 2.54 1.13 要求率
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