南スーダンにおける国連平和維持活動(PKO)のために派遣する自衛隊部隊に駆けつけ 警護の新任務を付与した閣議決定に抗議し、安保法制の廃止を求める会長声明 2016年(平成28年)11月29日 第二東京弁護士会 会長 早稲田祐美子 16(声)第7号 政府は、本年11月15日、国際連合平和維持活動(PKO)として、国連南スーダン 派遣団(UNMISS)に派遣される自衛隊に対して、 「駆け付け警護」の任務を新たに付 与する閣議決定を行った。20日には、先発隊が南スーダンに向けて出発している。 「駆け付け警護」とは、昨年9月19日に強行採決された平和安全法制整備法及び国際 平和支援法(安保法制)のうち、 「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律」 (改 正PKO法)に基づくもので、離れた場所にいる平和維持活動に従事する者などに侵害・ 危害が生じた場合に、緊急の要請に応じて生命・身体を保護することを言い、これに伴い、 自己保存型(正当防衛・緊急避難)に限定された武器使用基準が緩和され、任務遂行のた めの武器使用権限が付与されたものである。 南スーダンでは、本年7月には首都ジュバで政府軍と反政府軍の大規模な戦闘が発生し、 市民数百人および中国軍のPKO隊員が死亡している。その後も暴力や武力衝突は続き、 10月にはジュバ近郊で民間人を乗せたトラックが襲撃され約40名が死傷するなどし、 同月12日には、UNMISSが、暴力や武力衝突の増加を懸念するとの声明を発してい る。さらに、20日には反政府勢力の指導者である元副大統領が、 「和平合意は崩壊してい る」との見解を示しており、そもそもPKO参加5原則の1つである「紛争当事者の停戦 合意の成立」が崩れているとの重大な懸念が生じる事態となっている。11月11日には、 国連事務総長特別顧問が記者会見で、民族対立によるジェノサイド(大虐殺)の兆候を警 告した。 このような現状の南スーダンに自衛隊を派遣し、 「駆け付け警護」の新任務を付与するこ とは、政府見解によってもPKO参加5原則に反し、憲法9条が禁止する武力行使へと発 展する可能性が極めて高いと言わざるを得ず、自衛隊員が外国で他国民を殺傷し、また殺 傷される事態が現実化しかねない。 当会では、安保法制は、海外での武力行使を禁じた憲法9条に反することを繰り返し指 摘し、その廃止を強く求めてきた。 よって当会は、政府に対し、 「駆け付け警護」の新任務を付与した閣議決定に抗議し、そ の撤回および自衛隊の即時撤退を求めると共に、改めて、安保法制の速やかな廃止を求め るものである。
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