高温形状記憶合金

TX テクノロジー・ショーケース
イン・ツクバ 2008
物質・材料
P-2
高温形状記憶合金
■ 研究の特徴と独創性
Ti-Ni 合金に Pd, Au, Pt などの貴金属や Zr, Hf を
添加すると変態温度が上昇することが知られてい
た。特に Zr, Hf はコスト面から実用化に適した材料
である。しかし、Ti-Ni 合金にこれらの元素を添加
すると加工性が著しく悪化する問題があり実用化
されていなかった。そこで、本研究ではこの Ti-Ni(Zr, Hf)合金の加工性を改善させることで実用可能
な高温形状記憶合金の開発を試みた。その方法は、
Nb を添加し、軟らかい Nb 基の β 相を分散析出さ
せることで加工性の改善を図ることであった。
■ 研究成果
Ti-49.5Ni-15Zr に Nb を添加した合金の冷間加工
性と形状回復温度を評価した結果を図 1 に示す。
10at.% 以上の Nb 添加材においては 80% の加工を
行っても破断することなく、良好な冷間加工性を
代表発表者
金 熙榮(きむ へよん)
所 属
筑波大学数理物質科学研究科
問合せ先
〒 305-8573 茨城県つくば市天王台 1-1-1
TEL: 029-853-6942, FAX: 029-853-5283
heeykim@ ims.tsukuba.ac.jp
示すことが可能となった。一方、Nb 添加により変
態温度が低下するが、Nb 添加量が 10~25at.% の範
囲の組成で、形状回復温度が 100℃以上を示すと共
に 80% 以上の冷間加工性を示しており、加工可能
で 100℃以上の温度で使用できる実用高温形状記憶
合金を見出することが出来た。
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図 1.Ti-Ni-Zr-Nb 合金における加工性と形状回復温度の Nb
濃度依存性
■ 波及効果
形状記憶合金の本格的な実用化が 1980 年代に始
まって以来、80℃以上の温度域での利用は断念され
てきたが、開発された Ti-Ni-(Zr, Hf)-Nb の高温
形状記憶合金を投入すると、これまで手付かずの応
用分野が出現することになる。例えば、宇宙航空分
野、自動車エンジン、発電所、原子炉等での使用や
多くの家電製品が考えられる。開発された高温形状
記憶合金は、200℃まで作動可能で、この温度域に
は多くの未開拓の家電製品が含まれ、新たな応用開
発が期待できる。
■キーワード: (1)高温形状記憶合金
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■ 研究目的・意義
数 % の歪みの範囲内では、どのように変形して
も加熱により元の形に戻る特異な機能を持つ形状
記憶合金は、工業分野だけではなく生活・家電製品、
医療用品まで幅広く利用されている。応用例として
は、コーヒーメーカー、炊飯器、内視鏡、新幹線
車両、自動車、エアコン、カメラ、湯温調節器等で
アクチュエーターとして用いられている。しかし、
唯一の実用形状記憶合金である Ti-Ni 合金は形状回
復温度が 100℃程度までに制限されている。自動車、
家電製品、発電関連や航空・宇宙分野では、100℃
以上で作動する形状記憶合金が要求されているが、
現在 100℃以上で作動する実用高温形状記憶合金は
無い。本研究では、Ti-Ni-Zr 合金の加工性を改善し、
実用可能な高温形状記憶合金を開発することを目
的とした。
(2)アクチュエーター
(3)加工性