1. 唐津市交通バリアフリー基本構想について 1.1. 基本構想策定の背景と目的 今日のわが国では他の先進国に例を見ないほどの急速な高齢化が進んでおり、2015 年に は国民の 4 人に 1 人が 65 歳以上の高齢者となる本格的な高齢社会を迎えることとなります。 また少子化も同時進行し、かつて経験したことのない少子高齢化を迎えています。 こうした社会では、高齢者が様々な生き方を主体的に選択できるよう、自立支援の施策を進 める必要があります。また、障害者が障害を持たない人と同じように、自分の意思で考え、決 定し、社会のあらゆる活動に参加できる共生社会の実現(ノーマライゼーション)も求められ ています。 さらに今日、わが国では、男性も女性も互いにその個性と能力を十分に発揮するための、男 女共同参画のための取組が推進されています。一方、国際化が進む中で、ビジネス・観光など、 様々な分野で外国人とわが国との関わりが深まっています。 このような社会的状況の変化を受けて、平成 17 年 7 月には、 「どこでも、だれでも、自由 に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方を踏まえた、バリアフリー施策の指針 となる「ユニバーサルデザイン大綱」がとりまとめられました。 平成 17 年 1 月 1 日に 1 市 6 町 1 村が合併し、さらに平成 18 年 1 月 1 日に七山村を編 入合併して新しく誕生した唐津市においても、その新たな一歩として、交通バリアフリー基本 構想を策定することとなりました。そして新たに策定した交通バリアフリー基本構想に基づき、 「快適居住空間形成と少子高齢社会に対応する優しさと温かさのある安全・安心のまちづく り」、 「だれもが自分の価値を認識し、生きがいを持って生活できる環境づくり」の実現を目指 していきます。 1.2. バリアフリー新法について (1) 新法策定の経緯 わが国におけるこれまでのバリアフリー化への取り組みは、主として「ハートビル法」 (建物のバリアフリー化)と「交通バリアフリー法」 (旅客施設周辺の歩行空間のバリアフ リー化)という 2 つの法律によって進められてきましたが、バリアフリー施策の指針とな る「ユニバーサルデザイン大綱」のとりまとめ過程において、 「『公平』であること」、 「『選 択可能性』があること」、「当事者の『参加』が図られること」といったユニバーサルデザ インの考え方からこれまでのバリアフリー化の取り組みを見たときに、必ずしも十分とは いえない点があることが明らかになってきました。 そこで、今後、バリアフリー化に関する法制度をどうすべきかについて検討を重ねた結 果、一体的・統合的なバリアフリー施策の推進のためには「ハートビル法」と「交通バリ アフリー法」の一体化に向けた法制度の構築が必要であると考えられるようになりました。 こうして、ユニバーサルデザイン政策の柱として、 「ハートビル法」と「交通バリアフリ ー法」を統合・拡張した法制度の検討が進められ、 「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の 促進に関する法律(バリアフリー新法)」が第 164 回通常国会において成立し、平成 18 年 6 月 21 日に公布、12 月 20 日から施行されました。 1 (2) 法律の趣旨 高齢者、障害者(身体障害者・知的障害者・精神障害者・発達障害者を含む全ての障害 者)、妊婦、けが人などの、移動や施設利用の利便性や安全性の向上を促進するために、公 共交通機関、建築物、公共施設のバリアフリー化を推進するとともに、駅を中心とした地 区や、高齢者、障害者などが利用する施設が集まった地区において、重点的かつ一体的な バリアフリー化を推進します。 また、バリアフリー化のためのソフト施策も充実します。 (3) 法律の主な内容 バリアフリー新法の主な内容は以下のとおりです。 ①基本方針の策定 主務大臣が、バリアフリー施策を推進するための「基本方針」を作成します。 ②バリアフリー化のために施設設置管理者等が講ずべき措置 公共交通機関(駅・バスターミナルなどの旅客施設、鉄道車両・バスなどの車両)、並びに特 定の建築物、道路、路外駐車場及び都市公園を新しく建設・導入する場合、それぞれの事業者・ 建築主などの施設設置管理者に対して、施設ごとに定めた「バリアフリー化基準(移動等円滑 化基準)」への適合を義務付けます。 また、既存のこれらの施設等について、基準適合するように努力義務が課されます。 ③重点整備地区におけるバリアフリー化に係る事業の重点的かつ一体的な実施 ●市町村による基本構想の作成 市町村は、国が定める基本方針に基づき、旅客施設を中心とした地区や、高齢者、障害者な どが利用する施設が集まった地区(重点整備地区)において、公共交通機関、建築物、道路、 路外駐車場、都市公園、信号機などのバリアフリー化を重点的かつ一体的に推進するため、当 該地区におけるバリアフリー化のための方針、事業等を内容とする「基本構想」を作成するこ とができます。 ●基本構想に基づく事業の実施 関係する事業者・建築主などの施設設置管理者及び都道府県公安委員会は、それぞれ具体的 な事業計画を作成し、事業を実施します。 ④住民などの計画段階からの参加の促進を図るための措置 基本構想を作成する際に、高齢者、障害者などの当事者参加を図るために、協議会制度を法 律に位置づけ、また、高齢者、障害者などから市町村に対して、基本構想の作成・見直しを提 2 案できる制度を創設しました。 ⑤「スパイラルアップ」と「心のバリアフリー」の促進 ●「スパイラルアップ」の導入 具体的なバリアフリー施策などの内容について、高齢者、障害者などの当事者の参加の下で 検証し、その結果に基づいて新たな施策や措置を講じることによって、段階的・継続的な発展 を図っていく「スパイラルアップ」を国(地方公共団体)の責務としました。 ●「心のバリアフリー」の促進 バリアフリー化の促進に関する国民の理解・協力を求める「心のバリアフリー」を国(地方 公共団体)や国民の責務としました。 ⑥その他(移動等円滑化経路協定) 基本構想で定められた重点整備地区内において、駅∼道路∼建築物などの連続的なバリアフ リー環境を安定的に維持するために、その土地所有者などが全員の合意により経路の整備や管 理に関する事項を移動等円滑化経路協定として締結することができるようになりました。なお、 協定は市町村長の認可を受けなければなりません。 これにより、継続的に協定内容が効力を発揮することができます。 ≪語句の説明≫ 【バリアフリー】 高齢者・障害者等が社会生活をしていく上で障害(バリア)となるものを除去(フリー)するこ と。物理的、社会的、制度的、心理的な障壁、情報面での障壁などすべての障壁を除去するとい う考え方。 【ユニバーサルデザイン】 あらかじめ、障害の有無や年齢、性別、人権等にかかわらず、多様な人々が利用しやすいよう都 市や生活環境をデザインする考え方。 【ノーマライゼーションの理念】 すべての人が共に生活し、互いに助け合う社会を実現するために、若者も高齢者も障害のある人 もない人も、ともに平等に社会の一員として生活し、活動する地域づくりを進める考え方。 3 ≪「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」の概要≫ 4 ≪「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」の基本的枠組み≫ 5 (4) 基本方針 基本方針は、バリアフリー化を総合的・計画的に推進するために、主務大臣(国家公安 委員会・総務大臣・国土交通大臣)が定めたものです。 ①バリアフリー化の目標 バリアフリー化の促進にあたり、2010 年(一部 2015 年)までに次の事項を達成すること を目標とします。 ≪バリアフリー化の目標≫ 資料:国土交通省HP(バリアフリー新法の解説) ②施設設置管理者が講ずべき措置 ●施設及び車両等の整備 ・施設において連続したバリアフリー化された経路を 1 以上確保すること。また、確保に当 たり高齢者、障害者等の移動上の利便性・安全性の確保に配慮すること。 ・特定建築物などバリアフリー化が義務付けられていない施設においても、積極的なバリア フリー化の取り組みが望ましい。 ●適切な情報の提供 ・視覚情報、聴覚情報により、緊急時を含め情報を分かりやすく適切に提供することが必要。 ●職員等関係者に対する適切な教育訓練 ・乗車、利用拒否の発生を防止し、円滑なコミュニケーションを確保するため、計画的な研 修、マニュアルの整備などによる職員教育をいっそう充実させるよう努めるべき。 6 1.3. 上位計画・関連計画の整理 基本構想を策定する上で上位計画や関連計画との整合を図るため、ここではこれら計画の理 念の中でバリアフリーがどのように位置づけられているかを整理します。 ユニバーサルデザイン政策大綱(H17.7) 唐津市総合計画(H18.3) ■基本理念 「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」と いうユニバーサルデザインの考え方を踏まえ、今 後、身体的状況、年齢、国籍などを問わず、可能 な限り全ての人が、人格と個性を尊重され、自由 に社会に参画し、いきいきと安全で豊かに暮らせ るよう、生活環境や連続した移動環境をハード・ ソフトの両面から継続して整備・改善していく。 ■考え方 ①利用者の目線に立った参加型社会の構築 ②バリアフリー施策の総合化 ③だれもが安全で円滑に利用できる公共交通 ④だれもが安全で暮らしやすいまちづくり ⑤技術や手法等を踏まえた多様な活動への対応 ■基本理念 「響創のまちづくり」元気がでる新唐津 ∼海・山・川の響きあいが新市の魅力を輝かせ、 新しい活力を創る∼ ■響創のまちづくりの 4 つの視点 佐賀ユニバーサルデザイン推進指針(H18.3) ■基本目標 「三世代 みんなが安心して暮らせるまち」 古い歴史と豊かな自然を大切にしながら、伝統に 付加価値を加え、県民協働により、三世代誰もが、 憩いとぬくもりを感じながら、明るく、楽しく、 安心して暮らしていける社会。 ■基本姿勢 ①UDを目指したバリアフリーの推進 ②過程の重視 ③理想の追求 ④自然なデザイン ⑤県民協働 佐賀県福祉のまちづくり条例(H10.3) ■基本理念 福祉のまちづくりは、すべての県民が個人として 尊重され、社会の一員として自立し、等しく社会 に参加できる機会を有し、世代等を超えて交流す る共生社会の構築に向けた取り組みであるとい う県民共通の認識の下、様々な制約を受ける人々 が自らの意思で自由に行動し、あらゆる分野の活 動に積極的に参加することを可能にする、障壁の ない地域社会の実現を目指す。 唐津市次世代育成支援行動計画(H8.2) ■基本理念 「子どもを生み育てやすいまちづくり」 ∼「新からつっ子」育成支援ネットワークづくり∼ ■施策の目標 ①すべての人が子育てしやすいまちづくり ②健やかな子どもを生み育てることができるま ちづくり ③子育てを地域で支えるまちづくり ④子どもの安全を守り、安心できるまちづくり ⑤仕事と家庭の両立ができるまちづくり 7 ①各地域が連携し、輝き、響き合うまちづくり ②環境と共生し、安全で安心な活力あるまちづくり ③地域資源を活かし、本物を目指したまちづくり ④住民サービスが地域の隅々まで行き届いたまち づくり ■まちづくり 7 つの基本 ①快適居住空間形成と少子高齢社会に対応する 優しさと温かさのある安全・安心のまちづく り ②人と自然が共生する環境調和型のまちづくり ③豊かな心と感性・想像力に満ちた人をはぐく むまちづくり ④全産業が調和して発展し、若者が住み、活き 活きと働けるまちづくり ⑤特色ある地域の宝(自然、歴史、文化、伝統、 産業)を活かす交通・情報ネットワークが創 る観光・交流・物流のまちづくり ⑥未来を志向し 21 世紀を切り拓く自主・自立 のまちづくり ⑦市民協働のまちづくり 唐津市障害者基本計画(H19.3) (からつ絆プラン) ■基本理念 「自立と思いやりのまち・からつ」 ∼障害者施策からの市民の新たな 絆(きずな) づくりをめざして∼ ■基本方針 ①ふれあいと交流を通じ、 「市民のきずな」を強 める(交流と啓発) ②住み慣れた地域での自立した生活を支える (保険・医療、生活支援) ③生きがいある充実した生き方を支援する(教 育・育成、雇用・就業) ④だれにもやさしい安全・安心の生活環境を共 に創る(生活環境) ⑤相談・情報提供体制と総合的支援の仕組みづ くり(相談・情報提供) 唐津市高齢者福祉計画・介護保険事業計画(H18.2) ■基本理念 「優しさと温かさのある安全・安心のまちづくり」 ①健康づくりの推進 ②生きがい対策の推進 ③在宅生活支援の推進 ④地域ケア体制の構築 1.4. 基本構想の位置づけ 本構想は、バリアフリー新法に基づいて策定するとともに、佐賀県福祉のまちづくり条例、 本市における将来のまちづくりの方向性を示す総合計画や、将来の福祉の方向性を示す唐津市 障害者基本計画、唐津市高齢者福祉計画等の上位・関連計画との整合を図りながら策定します。 国の法規 佐賀県の条例・指針 ○ユニバーサルデザイン政策大綱 ○佐賀県福祉のまちづくり条例 ○バリアフリー新法 ○佐賀ユニバーサルデザイン推進指針 唐津市の既存計画 ○唐津市総合計画「響創のまちづくり」 ○唐津市障害者基本計画 ○唐津市高齢者福祉計画・介護保護事 唐津市バリアフリー基本構想 業計画 ○唐津市次世代育成支援行動計画 【バリアフリー化に向けた取り組み】 ■特定事業 ○公共交通特定事業 ○道路特定事業 ○路外駐車場特定事業 ○都市公園特定事業 ○建築物特定事業 ○交通安全特定事業 ■ソフト施策 ○心のバリアフリー ○スパイラルアップ 8 住民参加 ○基本構想策定委員会 ○アンケート調査 ○タウンウォッチング
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