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売買規約:
注文書、インボイスの裏面に書かれた小さな文字の売買規約に要注意
通常の商売上の売買が繰り返されている中で、多くの場合、大きな違反が生じることは少ない。そのた
め、どちらの当事者も、注文書や請求書の裏面に小さな文字で書かれている売買規約に注意を払わない
のが通常であろう。稀に異例な事態が発生した際、当事者は初めて規約の内容に目を通すことになる。
ここでいずれかの当事者は、損害を被った当事者が契約上保護されないという点に初めて気付き、驚ろ
く。売買規約は、発生し得るありとあらゆる問題の可能性を考えて、弁護士が作成しているものである。
電話で口頭の受注を取った場合は、注文の製品発送と共に請求書を発行し、その裏面等に売買規約が印
刷されていることが多い。この場合、注文は口頭なので、購入についての規約は存在しない。また、イ
ンターネットによる売買にも書面の売買規約が存在しない場合が多い。ネットで売買を行うウェブサイ
トでは、規約に承諾して初めて購入出来るものもあるが、クリックするのみで、規約が読まれない事実
は同じである。いずれにしても、問題が起きない限り、売買規約に目を通すことは少ない。そのため、
問題が起きた時点で、「書式合戦」という古典的な紛争が繰り広げられることになり、訴訟に発展する
ことも少なくない。この紛争に巻き込まれた2社を例に、小さな文字で印刷された売買規約について紹介
したい。
Challenge Machinery Company(“チャレンジ社”)対Mattison Machine Works(“マティソン社”)事件
パーツメーカーであるチャレンジ社が、工作機械メーカーのマティソン社に平面研削盤の購入を打診し
たところ、マティソン社から以下の文章の入った価格見積りを送ってきた。
お問い合わせの品、以下の価格にて、また、裏面の売買規約を本売買の条件として、お見積り致
しました。本規約以外にはいかなる売買契約も存在せず、当事者を拘束しません。
見積書の裏面に記載されたマティソン社の基本的な売買規約には、「販売は本規約を条件としてのみ実
施され、マティソン社のオフィサーが書面で受諾しない限り、注文書がその他の追加条件、矛盾する条
件などを含んでいたとしても、マティソン社はこれに拘束されない」と書かれている。
数日後、チャレンジ社は以下の文言を含む注文書をもって、同機械をマティソン社に発注した。
重要:本購入オファーは本注文書表裏面にある規約に従い、買手の承認はこの規約に明示的に制
限され、本規約以外には、売手からのいかなる追加、修正条件も本契約の一部としないものとす
る。
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チャレンジ社の注文書の2ページ目にはワランティー条項があり、「売手は、注文した機械に不良がなく、
品質良好で、全てのスペックに適合している旨を保証する」としている。また、免責条項は、「売手は、
研削機に関して発生する人身的、金銭的な損害から、チャレンジ社を免責する」としている。マティソ
ン社の営業マネージャーはこの注文書にサインし、コピーをチャレンジ社に返送した。
この注文によって、機械はチャレンジ社に搬入されたが、納品後の9ヶ月間中、この機械は6ヶ月も故障
で作業が不可能となり、故障中の期間、マティソン社社員が何度か研削機の検査、調整、修繕を行った。
この故障について両当事者は、同機械 の性能が予想に反して不満足なものであることについては合意し
た。チャレンジ社は同機械の性能を大変不服とし、生産性低下による損害、他の機械に対する負担、同
機械の関わるその他の契約による損害等の賠償を求めて訴訟を提起した。双方の出した書式の内容に大
きな矛盾がある場合、「書式合戦」と呼ばれる争議となることが多いが、ミシガン州裁判所は、典型的
な書式合戦の問題を検討するにあたり 、契約は存在するのか、当事者間の契約内容はいかなるものか、
という判断を強いられることになった。
契約は存在するのか?
製品売買に関して契約の有無が争点となる場合、裁判所は統一商事法典 (the Uniform Commercial Code、
“UCC”)に従って判断を下す。UCCは、以下のように述べている。
明示的に異なる条件、追加条件に合意した上で製品を受け取っていない限り、合理的な期間内に
行われた明確でタイムリーな受け取り、又は書面による受領書送付は、追加条件、又は異なる条
件を表示していても、受諾されたものとみなす。
裁判所は、両当事者の行動と、両者間 を往復した書類によって、契約の存在の有無に判断を下す。従っ
て、買手が売手に電話で「3ダースばかりXXを下さい」と口頭で伝え、売手がXXを配送しただけでも、
裁判所はここにオファー(売手からの 電話)と受諾(パーツ)があったとして、契約が存在したとみな
す。同様に、買手が注文書を送り(オファー)、売手が受注通知を出せば(受諾)、裁判所はここに売
買契約の存在を認める。また、売手によるパーツの製造条件を記載した入札もオファーとみなされ、こ
れを購入することは受諾とみなされる 。裁判所はまた、両者の行動が契約を認識していたか、否かを全
体的な状況から判断する。例えば、買手がペンキを購入し、売手がこれを請求書と共に送付すると、殆
どの裁判所は、買手が書面で注文していなくとも、ここに契約の存在を認める。チャレンジ社とマティ
ソン社のケースで、裁判所は、売手からのプロポーザルをオファーとみなし、プロポーザルはチャレン
ジ社が注文書を発行した数日後に受諾されたものとみなした。マティソン社とチャレンジ社はお互いの
条件が合致していないが、UCCでは、「相手側が合意して条件を追加、修正したのでない限り、受諾し
たことで契約が存在する」とみなす。本事件では、マティソン社のオファーは、チャレンジ社の合意を
取ることが条件と明記している。チャレンジ社の注文書は、買手の合意を条件にしていないが、注文書
の条件が契約の条件であると述べている。当事者は、マティソン社が研削機を製造し、チャレンジ社が
これを受諾して、そこに契約が存在したかのように行動しているため、裁判所は本件について、契約が
存在したという判断を下した。
契約の内容は?
UCCでは、以下の場合を除き、諸条件を追加することは新条件のプロポーザルとみなす。これは、(i) オ
ファーの際に、受諾条件はオファー側の条件に限ると明言している場合、(ii) 実質的にオファーを変更す
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る条件がある場合、(iii) 合理的期間中に条件拒否の通知をしている場合である。マティソン社とチャレ
ンジ社は、それぞれの規約でどちらも自らの規約が唯一の条件としており、条件の追加、修正を否定し
ている。売手のマティソン社はそのワランティー責任を制限することと、損害はパーツ交換と修繕のみ
に制限することを明言しており、それ以上の賠償義務を負わないとしている。買手のチャレンジ社は、
不良がなく、品質良好で全てのスペックに厳しく適合していることを受諾条件としている。
ミシガン州の裁判所では、矛盾する条項がある場合は、双方の条項とも存在しないものとして考え、当
事者が相手側の矛盾する条項を却下したとみなして判断を下す。従って、当事者には、せっかく互いの
文書での規定があるにもかかわらず、それらの規定は無効となり、UCCによって判断されることになる。
UCCの諸条件
UCC上のワランティーに関する条項は、買手を保護する内容となっている。チャレンジ社は、マティソ
ン社に対し、同社の研削機が特定の使途に相応しいものある旨の保証を義務付けていない。一方、マテ
ィソン社は、その責任を不具合の修繕のみに限定しており、外注生産等によって生じる間接的な損害か
らの免責を目論んでいる。マティソン社は、チャレンジ社のワランティー条件に対する異議が認められ
ない場合、望ましくないUCCのワランティー条件に従わなければならないことになる。
また、ワランティー条項ではなく、解約、或いはその他の条項が、片方の当事者に有利で、もう片方に
は不公平と映るものになっている場合も考えられる。両方の当事者が、自社には有利だが、お互いには
矛盾する条件を持っている場合、自動的にUCCという法律の取り決めに従わなければならず、どちらも
望んだ保護を得られない結果を招くという可能性を認識しておくべきである。
チャレンジ社とマティソン社はどうすべきだったか?
後の祭りではあるが、マティソン社とチャレンジ社は、紋切り型に見えてしまいがちな売買規約の意味
を良く理解していれば、こうした事態を避けられただろう。マティソン社側の望んだものは、賠償責任
を研磨機の修繕のみに限ることであり 、チャレンジ社側の望んだものは、問題なく、修繕等によって生
産が止まることなく研磨機が作動することであったため、取引開始時に双方が正しく交渉しておけば、
今回の問題は避けることが出来たであろう。例えば、チャレンジ社が研磨機のワランティー条件は受け
入れないとマティソン社に伝えていれば、或いは、マティソン社がワランティー条件は拡大しないとチ
ャレンジ社に伝えていれば、当事者は両者にとって公平に意味のある契約を結び、本件を容易に解決す
ることが出来たはずである。ところが、この細かい文字の売買規約を読まなかったために、両当事者は
「契約自体が存在するのか」という根本的問題を争議するような訴訟に何年もの時間を費やし、多くの
費用を負う事態に陥ってしまったのである。両当事者が、ワランティー、その他の矛盾する条件に合意
していないことを認識していれば、例えば、チャレンジ社は同様の機械を他社から購入することもでき
たのである。つい、うっかりと読まずにいる小さな文字の売買規約だが、その内容を充分に確認してお
くことは、後々の紛争や、それにかかる多大な出費を防ぐことになるため、必ず確認しておくこと重要
である。
本ニュースレターは、法律の最新情報、動向を御案内するもので、いかなる 場合も法務サービス、法務アドバイスの意味を持ちません 。
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当 Newsletter に関するご 質問は、山本真理(312.214.8335、[email protected])、又は Deborah Thorne(312.214.8307、
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