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きもの
初
等
教
育
――きものを着てみよう――
ノブコ・ウィークス
きものがいかに日本人の心と深く結びついているかということに強い関
心をもっている。きものから季節感や簡素なことを尊ぶ気持ち、公の場
と私的な場の区別、そして伝統的な儀式などがみてとれる。きものを着
るときに使う「着る」ことを表すことばにも興味がある。英語では「着
る」の意味をもつ単語は一つだが、日本語ではいろいろな表現がある。
Nobuko Weeks
ホンガンジ・ミッション
小学校
(米国、ハワイ州)
中
等
教
育
初
級
目的
中
級
言語面の目的
● きものに関する語彙を理解できるようになる。
●「着物」という漢字を覚え、きものに関連するひらがなで書かれた語句を読み、書けるようになる。
● 衣類を身につけるときのいろいろな日本語の表現を理解できるようになる。
学習する機能
学習する文型
学習する語彙
✥ 着る、はくなどの語句を正し
✥ きものをきます、きましょう、
✥ きもの、えり、そで、すそ、
く使う
✥ 指示に従う
✥ 返事をし、動詞を繰り返す
きました、ぬぎます、たたみ
ます
✥ おびをしめます、しめましょ
う、しめました、ときます
✥ ひもをむすびます、むすびま
しょう、むすびました、ほど
きます
おび、じゅばん、ひも、たび、
ぞうり、げた、まえ、うしろ
(みごろ)、みぎ、ひだり、さ
き、あと、きます、はきます、
しめます、むすびます、ぬぎ
ます、ときます、たたみます
✥ たび/ぞうり/げたをはきま
す、はきましょう、はきまし
た、ぬぎます
文化面の目的
● きものの各部の名称が言えるようになる。
● きものを着たり、脱いだり、たたんだりできるようになる。
● きもののデザインの季節感、浴衣との違い、お正月に着る晴着について理解する。
© 1999 THE JAPAN FORUM
1
授業アイデアコンテスト作品集
レッスンプラン
用意するもの
レッスン 1
浴衣ときものとその付属品
帯
だて締め
ぞうり/げた
レッスン 2
資料 1*
資料 2*
レッスン 3
浴衣
だて締め
ひも(7 年生と 8 年生には帯)
資料 2
授業の進め方
レッスン 1
レッスン 2
1.七五三などで着るきもののじゅばん、たび、ぞう
りを説明する(3分)
2.きものの歌を歌う(10 分)
七五三のきものを着るモデルを 1 人決める。教師は
きものの歌(アメリカの童謡「 This is the way we
wash the clothes」の替え歌)を歌い、児童に教師の
後について歌わせる。
きものの歌
たび を はきましょう、たび を はきましょう
たび を はきましょう、たび を はきましょう
たび を はいたら、じゅばん を きましょう
じゅばん を きましょう、じゅばん を きましょう
じゅばん を きたら、ひも で むすびましょう
ひも で むすびましょう、ひも で むすびましょう
きもの を きましょう、きもの を きましょう
みぎ えり さき に、ひだり えり は あと
1.きものについて説明する(30分)
1.きものの各部の名称を教える(10分)
浴衣と七五三などで着るきものとの違いを説明
し、それぞれを児童に見せる。きものの各部の名
称を教える。
2.新しい単語と文章を教える(10分)
児童を 1 人モデルに選び、浴衣を着せる。新しい
単語と簡単な文章を繰り返し言う。
きものをきます
みぎをさきに
ひだりをあとに
おびをしめます
げたをはきます
3.新しい単語と文章を繰り返し言う(10分)
覚えた表現を繰り返しながら、教師の動きに従っ
て児童にきものを着るまねをさせる。
2.ひらがなを学ぶ(7分)
黒板にひらがなとローマ字で単語を書く。児童にひ
らがなかローマ字で写させる。
3.文章を完成させる(3分)
教師が文章の始め、例えば、「きものを」と言って、
児童にその続き、「きます」を言わせる。
教師:げたを
児童:はきます
教師:おびを
児童:しめます
2
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きもの を きたら、ひも で むすびましょう
ひも で むすびましょう、ひも で むすびましょう
ひも で むすんだら、おび を しめましょう
おび を しめましょう、おび を しめましょう
おび を しめたら、ぞうり を はきましょう
ぞうり を はきましょう、ぞうり を はきましょう
(七五三には)
ぞうり を はいたら、ぞうり を はいたら、
ハンドバッグ もって、おまいり に いきましょう
3.資料 1(15分)
いちまつ、せいがいは、はなびし、ひし、しっぽう
などのきもののシンプルな模様について簡単に説明
する。黒板にいくつか描く。児童は模様を一つ選び、
資料 1 にその模様を描く。きものの各部の正しい名
称も書き込む。
4.着るまねをしながらきものの歌を歌う(7分)
5.資料 2(5分)
時間内に終わらないときは、宿題として次の授業ま
でにやってくるように指示する。
きもの
レッスン 3
のを脱ぎます」と言いながら、どうやって脱いで、
たたむかを実際にやってみせる。続いて児童にも、
浴衣をたたませる。
1.前回の授業の復習(5分)
児童を 1 人選び浴衣を着せながら、きものの着方を
復習する。そのとき児童にきものの歌を歌わせる。
4.復習(5分)
2.2人 1組になった児童に浴衣を渡す(10 分)
一方の児童が同じ組の相手にきものを着せる。教師
はきちんとできているかどうか見る。役割を交代し、
同じようにする。
この授業で初めて習った単語を復習させて、資料 2
をさせる。
5.評価方法
✥ きものに関する単語の理解度
✥ クイズ
3.浴衣を脱いでたたむ(10 分)
教師は「帯をときます」「ひもをほどきます」「きも
きものの模様例
いちまつ
せいがいは
はなびし
ひし
しっぽう
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3
授業アイデアコンテスト作品集
文化理解と外国語学習について
経験から学んだ私のFLES 教授法
私の母語は日本語だが、日本語を外国語として教えて
初めて、ことばと文化が深くつながっていることを強
く考えるようになった。
私のレッスンプランでは日本文化の紹介がもっとも重
要な位置を占めている。日本文化にはわらべ歌や伝承
遊びなど、いく年もの年月を経て伝えられてきた価値の
あるものが残されているが、それらをゲームとして授業
に組み入れると児童はそのユニークなおもしろさに異
文化であることを全く忘れて、ゲームに夢中になる。そ
して、ゲームを楽しみながら無意識に日本語を覚えてし
まう。子どもたちは耳で聞いたことばの発音をまねる
ことは大人より上手だが、聞いたことばの理解を深め
るためには、実際に目で見て、手で触って体験するこ
とが必要だ。また体を動かすことによってさらにその
理解が確実なものになる。またリズムをつけて、ラップ
ミュージックのように、区切りをつけて教えることも覚
えさせるには一つの方法であることを経験した。俳句
もそのリズミカルな表現で、五七五の区切りを手拍子を
つけて教えると、短期間で覚えられるということも分
かった。
ハワイの日系社会においては、両親は家庭で英語を
使っているので、児童は日本語を家で復習することは
できない。したがって親たちを授業に招き、文化を紹
介することで両親の日本語に対する興味を高める必要
がある。
日本文化は季節感を伴う。私の授業でも日本の四季
を取り入れ、自然に敏感な日本人の心を教える。歌など
も四季にそって教えるが、四季のないハワイの児童には、
ビデオやカレンダーの絵などを見せながら涼しさ、暑
さ、寒さ、木々の変化などを説明する。そして、季節
にあった適当な歌を選び動作をつけて歌の意味を理解
させる。児童が完璧な日本語を覚えることは期待でき
ないが、コミュニケーションができれば小さな間違いは
無視してもことばの成長に支障はないと思う。高校、
大学に入った時点で、その間違いは文法を習うことに
より自分で訂正できるからだ。
児童にもっとも興味ある題材をテーマに選ぶことで、
児童の反応が効果的に現れることも経験した。いろい
ろな色の世界、いつも身近にいる小さな動物、テレビ
やビデオで見るジャングルの大きな動物、食べ物、家族
などがもっとも効果的に教えられる題材だ。
児童に文法を理解させることはなかなかできないが、
児童は高校生や大学生より発音を上手にまねする。し
たがって、低学年からネイティブの発音に接することは
FLES(Foreign Language in Elementary School:小学
校における外国語)プログラムを受けられる児童にとっ
ては大きなメリットだと思う。
講 評
きものを着る様子を児童に見せるのは日本語の授業でよく行われているが、このレッスンプランは日本
の伝統文化に対する理解を深める上で大変優れたものである。ウィークス先生も述べているように、日
本語には「着る」ことを表すことばがたくさんある。そういうことばが多数あるということは、日本の
生活においてきものを取り巻く文化が重要であったということだ。
ただ、このレッスンプランでは古いステレオタイプの日本文化を強調しているため、現代日本の文化
を理解させるという観点が欠けている恐れがある。
4
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きもの ―― 資料 1
きものの模様をかこう
(
)
(
)
(
)
(
)
(
)
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5
きもの ―― 資料 2
QUIZ
Match the kimono words with their corresponding meanings.
6
❏ えり
(
)
a.
to wear
❏ そで
(
)
b.
tie
❏ たび
(
)
c.
socks for kimono
❏ ぞうり
(
)
d.
underwear
❏ じゅばん
(
)
e.
sleeves
❏ みぎ
(
)
f.
put on footwear
❏ ひだり
(
)
g.
take off
❏ きます
(
)
h.
right
❏ はきます
(
)
i.
left
❏ しめます
(
)
j.
footwear for kimono
❏ ぬぎます
(
)
k.
fold for putting away
❏ たたみます
(
)
l.
collar
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