先端スクリューを持つ原位置貫入試験の特性に関する研究

104
第40回地盤工学研究発表会
(函 館) 2 0 0 5 年 7 月
C - 03
先端スクリューを持つ原位置貫入試験の特性に関する研究
SWS スクリューポイント 形状
兼 松 日 産 農 林
正会員 ○増田 貴之
日 本 工 業 大 学 国際会員
桑原 文夫
日 本 大 学 生 産 工 学 部 国際会員
川村 政史
兼 松 日 産 農 林
水谷 羊介
1. はじめに
正会員
北
No.1
戸建住宅など小規模構造物の支持力特性を把握する地盤調査方法としてスウェーデ
ン式サウンディング試験(以後 SWS と呼ぶ)がある。SWS は荷重による貫入と回転貫入
No.1
250
特に、費用、貫入能力が優れているなどの利点を有しているため、戸建住宅などの一般
的な試験法として広く普及している。
りにくく、地盤条件によっては、調査結果のバラツキが大きく出る場合がある。そこで、
本研究では通常のスクリューポイントのかわりに螺旋状の羽根を取り付けた羽根付ス
No.2
250
0KN
0.5KN
1.0KN
No.7
No.10
No.8
250
250
C
No.10
No.10
250
No.10
250
250
250
2500
2回目
と回転数を測定し、螺旋羽根を用いたときの回転貫入機構と試験結果の解釈を明確にす
No.8
No.8
No.6
250
250
No.7
No.10
No.9
No.4
1回目
No.8
No.8
No.6
No.2
250
クリューを作成し、同一地盤において通常の SWS と同じ調査法を用い試験を行いトルク
No.3
No.2
250
No.7
No.9
No.9
No.4
No.2
250
No.8
No.7
No.6
No.3
No.6
No.9
No.9
No.4
No.2
No.6
No.5
B
No.4
No.3
No.9
No.7
No.5
No.4
250
No.6
No.5
No.3
No.2
250
250
しかし、
現在 SWS 試験で使われているスクリューポイントでは軟弱地盤の違いが分か
No.1
No.5
No.4
250
No.7
No.5
No.3
No.1
250
2500
No.1
No.5
250
を判定するとともに、土層構成を把握することを目的としている。この試験方法は、装
置およびその操作が容易で迅速に測定ができ、また簡易なサウンディング試験のなかで
A
No.1
250
を併用する原位置試験であり、土の静的貫入抵抗を測定し、その硬軟または締まり具合
No.3
単位:㎝
0KN
0.5KN
1.0KN
スクリューポイント
(JIS規格)
ることが目的である。
標準貫入試験
尺度 深度
柱状図
土質区分
(m)
N値
Wsw
Nsw
5N
10N 1 1.25
(m) (m)
0 10 20 30
2.実験概要
1
0.75
1.2
埋土
シルト質粘土
0N
0.25
2
実験は、日本工業大学構内のクラブ棟東側で行い、図-1 に各スクリューポイント(羽
0
0.50
腐植土
3
根付、JIS 規格)の配置図を示す。縦 2.5m、横 2.5mの範囲に、縦 25 ㎝、横 25 ㎝ご
4
5
とにポイントを設置し、標準貫入試験と SWS 試験を行い図-2 に試験結果を示した。SWS
4.8
5.50
6
7
試験結果から 3 箇所とも同様な傾向を示し軟弱地盤であることがわかった。特に、1.75m
8
9
∼2.00mにおいて0.5kN自沈と同一結果となったので解析範囲は1.75m∼2.00mとした。
0.75
3.6
6.7
7.2
7.8
8.45
9.6
粘土質シルト
1.00
粘土
1.25
シルト質粘土
1.50
砂混じり粘土
粘土質細砂
細砂
1.75
シルト質細砂
2.00
2.25
図-2 地盤調査データ(標準貫入試験、SWS)
図-2、写真-1、表−1 には、使用した羽根付スクリューの形状を示す。スクリューは、
直径 50mm、75mm、100mm の 3 種類、ピッチは 25mm、50mm、75mm、100mm の内の 4 水準と
した。試験は JIS A 1221 に準じて行い、SWS 試験で使用したロッド先端に写真-1 に示
直径
した各羽根付スクリューを取り付け、一定荷重を加えた後回転貫入する。貫入は、ロッ
肉厚(螺旋の板厚)
ド上端に取り付けた回転ハンドル(トルク計)を、時計回りに断続回転させることによっ
ピッチ
図−2 代表的な使用した羽根付スクリュー
て回転貫入を行い、25cm ごとの半回転数(以後、Nscr)とトルク値を測定した。
3.試験結果
図-4、5 に、№1(φ100mm、ピッチ 100mm)
、№10(φ25mm、ピッチ 25mm)におけるトルク
と貫入深度の関係を、図-6 に№4-6(φ75mm、ピッチ 25mm∼75mm)における荷重別(0kN∼
0.5kN)の Nscr と貫入深さの関係を示す。
図-3 から荷重が段階的に上がってもトルクの値はほぼ一定であることがわかる。直
写真-1 各スクリュー一覧
径が№1∼№6(φ100mm、75mm)においても同様な試験結果が得られた。次に、図-4 から
0kN 時のトルクの値が大きいことがわかる。これは、スクリュー面積が小さいため、
荷重の影響が大きくなり抵抗値となった事が考えられ、回転数の面から見ても、図-5
から、全体的に 0kN 時の Nscr は多い事がわかる。これは他の調査位置にしても同じ傾
向であった。
本実験において、貫入荷重が 0kN の場合、差異はあるものの空回り現象を起こし
ている可能性がある。特に№10 においては、トルク値のバラツキも大きく試験結果
に大きな開きがあることがわかった。
表-1 各羽根付スクリューの詳細
№
1
2
3
4
5
6
7
8
直径
(mm)
100
100
100
75
75
75
25
25
ピッチ
(mm)
100
75
50
75
50
25
50
25
捻り回数
(回)
1
1
1
1
1
1
1
1
肉厚
(mm)
3
3
3
3
3
3
3
3
Research on characteristic of souding test with point screw
Kanematsu−NNK Takayuki Masuda ,
and Kanematsu−NNK Yousuke Mizutani,
Nihon Institute Of Technology Fumio Kuwabara
- 207 -
Nihon University Masashi Kawamura、
35
表-2 1.75mにおけるピッチと径とトルクの関係
30
No.1 荷重0KN
No.1 荷重0.5KN
No.1 荷重1.0KN
トルク(N・m)
25
20
15
10
5
0
1.25
1.5
1.75
2
2.25
貫入深さ(m)
図-4 №1(φ100mm、ピッチ 100mm)におけるトルクと貫入深度の関
35
30
トルク(N・m)
25
No.10 荷重0KN
No.10 荷重0.5KN
No.10 荷重1.0KN
20
15
10
トルク表 φ50mm 1.75m
(N・m)
ピッチ
(mm)
25
50
荷重
0kN
0.5kN
1kN
9
3
0
8
8
0
トルク表 φ75mm 1.75m
(N・m)
ピッチ
荷重
(mm)
0kN
0.5kN
1kN
25
7
3
0
50
10
9
7
75
10
5
5
トルク表 φ100mm 1.75m
(N・m)
ピッチ
荷重
(mm)
0kN
0.5kN
1kN
25
13
10
10
50
13
12
11
75
13
11
0
100
17
16
10
トルク表 ピッチ25mm 1.75m
(N・m)
荷重
径(mm)
0kN
0.5kN
1kN
50
9
4
0
75
8
7
0
トルク表 ピッチ50mm 1.75m
(N・m)
荷重
径(mm)
0kN
0.5kN
1kN
50
7
7
0
75
11
12
9
100
13
13
10
5
0
1.25
1.5
1.75
2
表-3 1.75mにおける仕事量の一覧
2.25
貫入深さ(m)
図-5 №10(φ250mm、ピッチ 25mm)におけるトルクと貫入深度の関
200
№4(0kN)
№5(0kN)
№6(0kN)
№4(0.5kN)
№5(0.5kN)
№6(0.5kN)
180
Nscr(半回転数/m)
160
140
120
100
80
60
40
杭№
直径
0kN
0.5kN
1.0kN
杭№
直径
0kN
0.5kN
1.0kN
№1
100(mm)
1935
1691
1638
№5
75(mm)
2161
1427
1436
№2
100(mm)
729
1163
1287
№6
75(mm)
2148
1389
1135
№3
100(mm)
1131
1654
1488
№7
50(mm)
1130
1388
1134
(N・m)
№4
75(mm)
1130
1076
1135
№8
50(mm)
2939
1011
1134
20
0
0.25
0.5
0.75
1
1.25
1.5
貫入深さ(m)
1.75
2
2.25
図-6 φ75mmにおける荷重別の Nscr と貫入深さの関係
表-2 は深度 1.75m における各径別、ピッチ別の荷重とトルクの関係を示す。ピッチ、径とも増加するにつれてトルクも同様に増加する
傾向にあるが、ピッチと径の増加量を比較した場合、径の増加によるトルクの増加が大きいことがわかる。つまり、測定地点ごとの地
盤強度と、羽根ピッチが同じならば径の大きなスクリューは摩擦抵抗が増えるためトルクが大きくなることが分かる。特に、φ25mm
からφ50mm の範囲が影響を与えやすいことがわかった。
以上の実験結果から、回転貫入させる際の軸力が大きいほど、ロッドが回転する際にスクリュー上部の土を押し上げる際の反力が
増すので貫入しやすいと考えられる。この効果と回転に要するトルクの大きさを考慮し、次式のような仕事量の式として解析を行う
事とした。外力仕事は、トルク仕事 Wtrq と軸力仕事 Waxi に大別でき、深度方向に1m貫入させるための仕事量がそれぞれ次式で現
すことができる。
Wtrq=Tr・2π・Nscr/2=Tr・Nscr・π(N・m)
Waxi=Wsw・1000・1=Wsw(N・m)
仕事量=Waxi+ Wtrq
今回の試算は、多くの仮定を含むため厳密なものではないが、表-3 からスクリューが同一であれば 0.5kN 時と 1kN 時の仕事量が
一定であることと、0kN 時の仕事量が大きく出る結果となった。これは、空転回数分の仕事量が換算されている為、地盤の評価以外
の仕事量が加算されて全体的に大きな仕事量になったと言える。逆に 1kN では、荷重の影響が大きすぎて無回転で貫入し、スクリュ
ーと地盤に対して荷重が過大であった為、評価としては過少な評価になる可能性が考えられる。
4.まとめ
今回の実験では羽根スクリューの形状の違いから、次のことが分かった。
1) 同じ螺旋羽根スクリューであれば、荷重が変化しても外力仕事はほぼ一定値を示す。
2) ピッチが大きいほどトルクの値が大きくなる。
3) トルクの値変化は、ピッチ間隔の変化より、羽根径の変化による影響が大きい。
今後は、0.5kN 時の径 50mm∼100mm 範囲で様々な地盤条件に照らし合わせ、詳細な地盤強度を測定できるか検討していきたい。
謝辞:本実験・概要作成にあたり、日本工業大学桑原研究室の菅野政宏君小口正徳君に感謝を述べます。
参考文献:増田貴之 田村昌仁 川村政史 水谷羊介 秦樹一郎 スウェーデン式サウンディングによる地盤評価技術に関する研究
2004 年 地盤工学会
- 208 -