貧血でないが組織鉄の欠乏しているトレーニング経験のない女性では、持久 力に対する有酸素トレーニングの効果が障害されている T Brownlie et al. Am J Clin Nutr 2004;79:437-43. 【背景】著者らは先に、実験前の血清トランスフェリン受容体濃度が8.0mg/L以上の鉄欠 乏の境界領域のトレーニング経験のない女性において、鉄の投与が鉄栄養状態と最大運動 能力を有意に改善することを報告した。しかし、血清トランスフェリン受容体濃度(sTfR) が、これらの対象者の持久力に対する有酸素トレーニングの効果に及ぼす影響は明らかに なっていない。【目的】我々の目的は、実験前のsTfRの状態が持久運動能力に対するト レーニング効果に及ぼす影響を検討することであった。【方法】運動習慣がなく貧血でな い鉄欠乏状態の女性41人が、無作為に100mgの硫酸鉄カプセルあるいはプラセボカプセ ルを、二重盲検法により6週間投与される群に割り付けられた。すべての被験者は自転車 エルゴメーターでのトレーニングを、5日/週の頻度で実験期間の最後の4週間おこなっ た。持久運動能力を実験前と実験後に15-kmタイムトライアルで評価した。【結果】実験 前のsTfRが8.0mg/L以上の被験者で、15kmタイムトライアル、仕事率、最大酸素摂取量 に有意な投与もの効果が見られた。sTfR濃度が正常だった被験者では有意な投与効果は 認められなかった。【結論】今回の結果より、貧血でない鉄欠乏で組織鉄の欠乏が明らか な場合、トレーニング経験のない女性の持久力に対する有酸素トレーニングの効果を障害 することが示唆された。この障害は鉄を投与することで改善されうる。 2010年1月20日 大学院博士課程前期課程1年 浅井 烈 著者らは2000年に、貧血とは診断されないが血清フェリチン濃度が低い場合はトレーニ ング効果が低く、鉄を投与してフェリチン濃度が回復するとトレーニング効果が高まるこ とを報告している。今回の論文では血清トランスフェリン受容体濃度が組織鉄の状態の指 標となることを報告している(岡村浩嗣)。
© Copyright 2024 Paperzz