Vol.30, No.1(平成 21 年 1 月号) 白 金 耳 ごあんない ・ 今月の定期講習会 ・ 来月の定期講習会 ・ はじめての塗抹検査 基礎講習会報告 ・ 『手術部位感染の対策』 赤木 征宏 伏脇 猛司 ばくとおやじの知識箱 ・ 黒色真菌感染症 / Dermatiaceous fungal infection(前編) 佐子 菌賀新年 ~世話人からの年賀状~ バイキン Quiz 肇 世話人一同 赤木 征宏 (敬称は略させていただきました) 今月の定期講習会は 1月27日(火) 大阪医療技術学園専門学校で開催いたします。 1 ん 講習会 な い あ テーマ : 『感染性胃腸炎の院内感染対策(仮)』 講 師 : 大阪警察病院感染管理センター 副センター長・ICN 寺地 つね子 先生 日時 : 平成21年1月27日(火) 18:30∼20:00 場所 : 大阪医療技術学園専門学校 (〒530-0044 大阪市北区東天満 2-1-30) 評価点:専門−20点(会員証をお持ちください) 参加費:会員500円、非会員3000円 連絡先:(財)大阪府警察協会大阪警察病院 赤木 征宏 e-mail:[email protected] 忘年会、新年会と我々医療従事者も、皆で集まって 同じものを摂食する機会が多い冬ですが、皆さんの施 設ではどの様に注意喚起し、対策を整えていますでし ょうか?ノロウイルスのアウトブレイクは、ここ数年 新聞を賑わしていますが、未だ保険適応外で、アウト ブレイクを抑え込むのと同時に、それに掛かる費用も 抑え込む必要があり、そして我々はそれに頭を抱え込 む・・・。 今回は大阪警察病院感染管理センターの寺地先生 に、感染性胃腸炎の院内感染対策を中心にご講演を頂 く予定です。皆様奮ってご参加ください。 2 ん 講習会 な い あ テーマ : 『感染症検査の更なる迅速化 ∼外来診療に貢献できる報告をめざして∼』 講 師 : 天理よろづ相談所病院臨床病理部 感染症検査・一般検査 中村 彰宏 先生 日時:平成21年2月24日(火) 18:30∼20:00 場所:大阪医療技術学園専門学校 (〒530-0044 大阪市北区東天満 2-1-30) 評価点:専門−20点(会員証をお持ちください) 参加費:会員500円、非会員3000円 連絡先:(財)大阪府警察協会大阪警察病院 赤木 征宏 e-mail:[email protected] 昨年、第 21 回臨床微生物迅速診断研究会総会において “Turnaround time に挑む”と題したシンポジウムが開催され ました。Turnaround time とは IT 用語で「システムに処理要 求を指示してから結果出力までに要する時間」のことを言いま すが、これに挑むということは微生物検査の命題でもある迅速 化であり、最も臨床のニーズが高いものであると考えられま す。では、実際に臨床のニーズに答え貢献できている検査室は、 どのような方法で迅速かつ正確な情報を臨床に報告している のでしょうか? 今回は天理よろづ相談所病院の中村先生に、先生の御施設で 実施されている様々な迅速化、効率化のノウハウをご教授頂く 予定です。皆様奮ってご参加ください。 3 ~基礎技術講座のご案内~ 昨年 4 月より,検体検査管理加算を算定するための要件として「排泄物、滲出液又 は分泌物の細菌顕微鏡検査 (その他のものに限る。)」と記載されました。その他とは 蛍光顕微鏡,位相差顕微鏡,暗視野装置等,保温装置使用のアメーバ検査を除外した ものとなり,通常の光学顕微鏡での検査が該当します。 微生物検査室で実施される光学顕微鏡での検査はチール・ネールゼン染色とグラム 染色が一般的に行われ,どちらを選択しても算定することは可能と考えられますが, 臨床的な必要性からすればどちらも実施すべきです。 微生物検査室の有無にかかわらず全ての施設でこの要件が加わったため,新たに塗 抹検査を実施した施設も多いかと思われますが,塗抹検査は顕微鏡と染色液さえあれ ば出来るという検査ではありません。 グラム染色を中心として,検体の取り扱い・標本作製・染色・顕微鏡観察・抗酸菌 や真菌や稀な感染症の供覧などを,実技と講義とディスカッションを織り交ぜた塗抹 検査の基礎技術講座を実施します。 これから塗抹検査を始めようという方々は,特に奮ってご参加下さい。 日時 : 平成21年3月21日(土) PM 2:00 ∼ 7:00(終了予定) 場所 : 大阪市立大学医学部基礎学舎 (最寄り駅:各線天王寺駅) 受講料: 会員 2000 円 定員 : 先着 30 名 / 非会員 5F微生物実習室 10000 円 申込み方法:①氏名 ②施設名 ③部署 ④連絡先 ⑤細菌検査の経験(有無/年数)を記載のうえ、 下記メールアドレスまでお申し込みください(携帯からは不可)。 ※ 1 週間以内に参加登録可否のメールを返信いたします。 返信がなければ、電話で確認をして下さい。 申し込み先:(財)結核予防会大阪病院 伏脇 猛司(ふしわき [email protected] 電話 072(821) 4781 (内線 321) 4 たけし) 10月定期講習会報告 『手術部位感染の対策』 (財)結核予防会大阪府支部 大阪病院 伏脇 猛司 去る 10 月 28 日,外科領域における感染症と SSI(surgical site infection)、その対策 について、基礎的な内容から先生の御研究データなどを講演頂きました。以下に当日の内 容を記します。 [SSI は] 院内感染原因の第 2 位入院患者の 14∼16%で見られる手術患者の院内感染(医療関連感染) の 38%を占める在院日数の延長,入院コストの増加,患者満足度の低下に繋がる病院評価 機構の評価項目 DPC 導入により病院経営に影響 術後感染症 肺炎 術野感染=SSI 尿路感染 腹腔内膿瘍 創感染 カテーテル感染 縫合不全 [SSI の種類] ・表層切開創感染感染が 30 日以内に起こる。 さらに,感染が皮膚と皮下組織のみである。 さらに,以下の少なくとも 1 つにあてはまる。 a. 表層切開創から膿性排液がある。 b. 表層切開創から無菌的に採取した液体または組織から病原体が分離される。 c. 以下の感染を示す徴候や症状が少なくとも1つある:疼痛、圧痛、限局性腫脹、 発赤、熱感、さらに表層切開創が手術医によって意図的に開放され、培養陽性あ るいは培養されなかった場合、培養陰性の場合はこの基準を満たさない。 5 d. 手術医または主治医による表層切開部創 SSI の診断。 ・深部切開創感染埋入物を置いていない場合は術後 30 日以内に、埋入物を置いた場合は術 後 1 年以内に感染が発生し、感染が手術手技に関連していると思われる。さらに 感染が 深部の軟部組織(筋膜と筋層)に及んでいる。さらに 以下の少なくとも 1 つにあてはま る。 a. 手術部位の臓器/体腔部位からではなく深部切開創から排膿がある。 b. 深部切開創が自然に「哆開」あるいは手術医によって意図的に開放された場合で、 かつ、切開創の培養が陽性あるいは培養されておらず、以下の感染の徴候や症状 が少なくとも一つある: 発熱(>38℃) 、限局した疼痛、限局した圧痛。培養 陰性のときはこの基準を満たさない c. 深部切開創に及ぶ膿瘍または他の感染の証拠が、直接的検索、再手術中、組織病 理学的、放射線学的検査によって発見される d. 手術医または主治医による深部切開部創 SSI の診断 ・臓器体腔感染埋入物を置いていない場合は術後 30 日以内に、埋入物を置いた場合は術後 1 年以内に感染が発生し、感染が手術手技に関連していると思われる。さらに 感染は、手 術手技中に開放されあるいは操作された身体のいずれかの部位におよぶ。皮膚切開創、筋 膜、筋層を除く。さらに 以下の少なくとも 1 つにあてはまる。 a. 刺創を通じて臓器/体腔に留置されているドレーンから膿性排液がある。 b. 臓器/体腔から無菌的に採取した液体または組織から病原体が分離される。 c. 臓器/体腔に及ぶ膿瘍または他の感染の証拠が、直接的検索、再手術中、組織病理 学的、放射線学的検査によって発見される。 d. 手術医または主治医による深部切開部創 SSI の診断 [術前の SSI 対策]禁煙 喫煙によりコラーゲン産生低下→創の一時治癒遅延 免疫能低下 血管収縮→組織への酸素供給低下 術前 4 週間禁煙することに よって,非喫煙者と同等の SSI 発生率まで低下する 禁煙+節煙 対象 心血管系 0% 10% 創感染 5% 31% 再手術 4% 15% 合併症すべて 6 18% 52% 股・膝関節置換術 Moller AM, et al : Lancet [胆嚢摘出術におけるアウトブレイクの経験] SSI 起炎菌(第6期) 症例1 Staphylococcus epidermidis,Acinetobacter baumanii 症例2 検査未施行 症例3 Staphylococcus epidermidis 症例4 菌検出されず 症例5 Aeromonas hydrophila,Staphylococcus aureus 症例6 菌検出されず 症例7 検査未施行 症例8 検査未施行 症例9 Staphylococcus epidermidis ・ SSI の問題点 15 2003 年 4 月より急性胆嚢炎を 腹腔鏡下胆嚢摘出術の適応とした 10 改善策 SSI 腹腔鏡下胆嚢摘出術では 全例臍部の創に感染が 5 0 起こっていた。 5期 6期 2/75 9/63 7期 0/89 SSI は開腹手術であっても退院後に発生している。 (クリニカルパスではラパ胆 3 日開腹 5 日で退院) ・ 改善策 手術前日入浴時に臍周囲をヒビスクラブで洗浄し、看護師が確認する。 手術時皮膚消毒のポピドンヨードが十分乾燥してから執刀を開始する。 腹腔鏡下胆嚢摘出術では臓器摘出前に腹腔内洗浄を行なう。 感染を疑った際には必ず検体を採取する。 SSI サーベイランスに外来看護師も参加する。 [その他術前の SSI 対策] 活動性感染症のコントロール(手術部位以外の)糖尿病のコントロール栄養改善できるだ け除毛しない消毒薬を用いたシャワー浴 synbiotics(乳酸菌製剤や善玉菌増殖促進物質の前投与) [術中の SSI 対策] 7 手術時手洗い:ポピドンヨード(2 分以上)による水道水での手洗い (近年では滅菌水での手洗いは不要) 手術部皮膚の準備 予防的抗生剤投与 滅菌手袋 覆布 手術手技縫合材料 手術器機 手術時間 術中体温管理:1 時間で深部体温は 1∼1.5℃低下 術中低体温が起きると・・・深部体温が 1.5 度下がると致死的な心合併症のリス クが 3 倍になる凝固能異常薬物代謝異常創感染→低体温に起因する血管収縮によ る(Sessler 手術室の環境: DI, et al. Clin Infect Dis 2002; 35: 1397-1404) 環境中には極めて多種多様な細菌が存在しているが、床や壁などに付着 している細菌と医療関連感染(SSI)とは関連性は認められない→一足制の導入→ コスト削減に成功したが,まだまだ不安に感じる部門がある 酸素負荷による SSI 防止効果 好中球は酸素化により細菌を殺菌する(oxydative killing)。 酸素分子から superoxide radicals を産生することにより oxydative killing が おこる。 この反応の速度は NADPH-linked oxygenase を介して起こり、組織の酸素分圧に依 存すると言われている。Greif R et al, NEJM, 326,161-7, 2000 対象は予定の結腸手術 FiO2 80% vs 30% SSI 5.2% vs 11.2% Pryor KO et al, JAMA, 291, 79-87, 2004 対象は予定の開腹手術(ラパロを含む)FiO2 80% vs 30% SSI 25.0% vs 11.3% Belda FJ et al, JAMA,294,2035-42,2005 対象は予定の結腸手術 FiO2 80% vs 30% SSI 14.9% vs 24.4%酸素負荷による SSI 防止効果についての結論はまだまだデー 8 タ不足なため,本邦でも追試が必要[手術部位や術式による SSI の深度 や頻度の違い] 術式 表層 深部 臓器/体腔 虫垂(1038) 68(60.2%) 10(8.8%) 35(31.0%) 肝胆膵(1318) 69(25.2%) 21(7.6%) 184(67.2%) 胆摘(1988) 31(60.8%) 3(5.9%) 17(33.3%) 結腸(2264) 212(59.9%) 50(13.7%) ★各種危険因子 下部消化管と縫合不全 ・ 男性 ・ 直腸(肛門から 12cm以内) ・ 開腹暦あり 肝切除術における胆汁婁 104(28.4%) ・ S4 切除 ・ 末梢型の肝内胆管癌 関西地区SSIサーベイランスより ・ Fiblin glue の不使用 ・ 胆道再検を伴う 胆道再建を伴わない肝切除 636 例 SSI を伴う肝切除 61 例 SSI 13.2%胆汁瘻 41.0%胆汁瘻 14.8%腹膜炎手術(創分 類Ⅳ)と SSI(関西地区の SSI サーベイランスより)直腸 75.0%結腸 垂 117 例 254 例 SSI SSI 59.8%胃 3.0%胆道再建 20 例 71 例 SSI SSI 35.2%虫 30.3% [術後の SSI 対策] ・ ドレーン ドレーンの逆行性感染: ドレーンに関連した感染(DEVICE RELATED INFECTION) 縫合不全、遺残膿瘍ではない感染 ドレーンを入れない、もしくは早期に抜くことで避けることが できる感染。皮膚刺入部: 内因:皮膚細菌叢 外因:接触感染 接続部、ドレーンバックの 排液口:外因:接触感染 ドレーンは開放式よりも閉鎖式が望ましく,出来るだけ早期抜去 9 ドレーン ドレーンの利点と欠点 利点 皮膚 筋肉 術後出血が早期に発見できる 腸 浸出液を排除できる 腹腔内 縫合不全の際に再手術を回避できる 欠点 逆行性感染が起こる 痛みがある 臓器を圧迫する 呼吸障害を起す 体液を喪失する ケアが増加する 入院日数が増加する コストがかかる ドレーン刺入部からの出血やヘルニアの危険性 市立豊中病院における手術創部管理マニュアルの導入(2005 年 1 月以降) CDC ガイドラインの導入・手術前の皮膚消毒時での予防的抗生剤の投与 ・術中3時間毎の抗生剤投与 ・術直後創部消毒の廃止 ・術後ガーゼ被覆の廃止とドレッシング材の導入 ・術後予防的抗生剤の投与中止 ・術後の創部消毒・抜糸後消毒の廃止 手術創部管理マニュアルの導入 20 15 10 SSI(%) 5 10 08 SSI(%) l- Ju Fe b- 08 07 7 p- Se r0 v- Ap 06 6 No n0 06 n- Ju 05 Ja g- Au ar M O ct -0 4 -0 5 0 直腸手術の対策[対象:予定手術の直腸手術(低位前方切除とマイルズ術)]手術前日に経 口非吸収性抗菌薬を内服* カナマイシン(KM)とフラジール(MNZ)を機械的腸準備のあと内 服 30 25 20 15 SSI(%) 10 5 0 05.4-06.3 06.4-07.7 経口非吸収性抗菌薬内服実施前後の SSI [さいごに] 術前・術中・術後それぞれの SSI 対策,抗菌薬の予防投与,そしてサーベイランス。 いずれが欠けても院内感染が増加することや,無駄なコストや労力を懸けてしまう原因と なることが改めて認識される御講演でした。 我々検査技師は手術室の中のことはあまり見えず,分らないことが多いですが,ICT の一 角を担うからには今後ますます清水先生に御教授願いたいと思います。 黒色真菌感染症 / Dermatiaceous fungal infection(前編) 大阪医療センタ− 佐子 肇 【はじめに】 黒色真菌はクロモミコ−シス、皮下膿瘍、足菌腫、黒癬などの原因菌で、脳をは じめ内臓にも病変を引き起こすことが知られている。近年、日和見感染症の原因菌 としても注目され、ヒトに病原性を示す菌種としては、Fonsecaea 属、Exophiala 属、 Cladosporium 属、及び Phialophora 属などがある。わが国で最も高頻度に患者から 分離されるのは、F.pedrosoi であり、全起因菌の70%以上を占めている。ついで E.jeanselmei 、 P.verrcosa、C.carioni その他 Alternaria spp. などが分離さ れている。 11 『 1981 年 Ajello らは、黒色真菌症のなかの深在性真菌症を寄生形態よりクロモブラ ストミコ-シス chromoblastomycosis:CBM とフェオハイフォミコ-シス phaeohyphomycosis:PHM 及び 真 菌性菌腫とに分類し、chromomycosis:CM の病名は使用してはならないとした(表 1)。 わが国においても Ajello の分類を受け入れ、次第に CBM と PHMの2つに 分類されるようになっている。 』CBM と PHM の比率は5:1であるが、近年、PHM が増加傾向にある。CBM は皮膚、皮下組織内に肉芽腫性病巣を形成し、しばしば潰瘍 化する慢性型の感染である。PHM は糖尿病、白血病、及び造血器疾患などの基礎疾 患を有する易感染患者が多くを占めている。免疫不全患者では全身性に播種し、脳 などの主要臓器に病変を生じることがあり、内臓転移例では(ときに健常者でも) 予後不良である。PHM が増加傾向にあるのは、こうした易感染患者の増加と関係があ るものと考えられている。 表-1 感染部位 深部皮膚 今回、黒色真菌の培養同定鑑別法について解説する。 病原性黒色真菌に起因する疾患 病 型 CM→ CBM 病原菌種 Fonsecaea pedrosoi Phialophora verrucosa (皮膚、皮下組織、 Exophiala dermatitidis 深部臓器) Cladosporium carrionii PHM Exophiala jeanselmei Wangiella dermatitidis ( E.dermatitidid ) ( Alternaria spp.)* 表在性 菌腫 Exophiala jeanselmei 黒色癬 Hortaea werneckii (表皮、毛髪) 主な黒色真菌の分生子形成タイプ クラドスポリウム型 Fonsecaeea , Cladosporium シンポジオ型 Fonsecaeea フィアロ型 Phialophora アネロ型 Exophiala ポロ型 Alternaria , Ulocladium , Curvularia , Bipolaris 12 * :PHM は他にまれな原因菌として Alternaria spp. ,Bipolaris spp.,Curvularia spp., Phoma spp. などが知られている。この中で最も多く見られるのは Alternaria spp. であり、本菌に起因する場合には皮膚アルテルナリア症とも呼ばれる。わが国で分離 される原因菌種はほとんど A.alternata に限られ、顔面部発症例が大多数を占める。 【 Alternaria sp.の形態学的鑑別 】 Alternaria spp. 写真−A 写真−B Alternaria sp.は特徴的な大分生子形成像を示す。暗黒色の有隔菌糸から分岐したジグ ザク状の分生子を生じる。この大分生子は、大型で、褐色を帯び、縦、横に隔壁を持 ち、石垣状に見える。また分生子柄に近いほうの端が丸く、遠端部が細くなって、棍 棒状を呈することが特徴である(写真−A)。写真−B は PDA、27℃、7日間培養し た Alternaria sp.のジャイアント集落。 【 Phoma sp.の形態学的鑑別 】 Phoma sp. 写真−D 写真−C Phoma sp.の生育は中等度、扁平、羊毛状から綿毛状、初めは白色、やがて緑褐色、黒 13 褐色となり、黒色の細顆粒状が現れ、灰色がかったピンク色の粘液で湿性に見えるよ うになる(写真−E)。分生子殻は球形、亜球形、壁は膜様、暗褐色、黒色、1ないし 数個の(開口部)孔口 ostiole をもつ。分生子殻の壁の最内層細胞がフィアロ型分生子 phialoconidium を生じる。分生子 conidium は1細胞性、球形、亜球形、短円筒形、 1∼2個の油滴をもつ。 (写真−D)は Alternaria の分生子と似た多細胞性の厚膜胞子 chlamydospore が鎖を なして形成される。 写真−E Phoma sp. PDA 培地、27℃、14日間培養 【 Curvularia sp の形態学的鑑別 】 Curvularia spp. 写真−F 写真−G PDA 培地のジャイアント集落 褐色の厚い壁を持ち『へ』の字に屈曲した細胞4∼6細胞性のポロ型分生子 poroconidium を形成する。分生子屈曲部の細胞が一番大きく、濃色である点が特徴で ある。褐色の分生子柄 conidiophore から分生子がシンポジアル sympodial に配列して 14 産生される(写真−F)。 集落は速やかに発育し、羊毛状、暗黄緑色∼黒色に変わり、裏面は暗色を呈する(写 真−G)。 【 Ulocladium 属の形態学的鑑別 】 Ulcladium sp. 写真−A 写真−B Ulcladium sp.の PDA 培地のジャイアント集落 写真−C Ulocladium 属は黒色真菌 dematiaceous fungus のポロ型分生子 poroconidium を形 成 す る 1 菌 種 で 、 Alternaria 属 に 近 縁 で あ る 。 分 生 子 柄 conidiophore は macronematous で、関節状に屈曲しながら伸びる。関節状突出部には楕円形、倒卵円 形、洋梨形、褐色、黒褐色、表面平滑また疣状、縦、横、斜めに隔壁 septum のある 大きな分生子 conidium を着生する。分生子が離れると分生子柄には小孔が残る。 15 ----- 2月号へ続く ----- 16 ∼世話人からの年賀状∼ 謹賀新年 皆様のご健康とご多幸をお祈りいたします 本年もどうぞよろしくお願い申し上げま す 平成21年 元旦 大阪市大病院 仁木 17 18 19 【問題】以下の表は「細菌性髄膜炎全国サーベ イランス研究班(1999∼2004 年)」によって、 全国275 医療施設から送付を受けた1,000 例を 超える菌株データを基に、年齢別にみた起炎菌 の分離頻度を示したものです。 a∼dに入る菌名を答えてください。 ※日本神経治療学会「細菌性髄膜炎の治療ガイドライン」より 出展 a b c d 20 大阪警察病院 赤木 征宏 答え: a.B群溶血連鎖球菌(S. agalactiae) b.大腸菌(E. coli) c.肺炎球菌(S. pneumoniae) d.インフルエンザ菌(H. influenzae) ・ 細菌性髄膜炎の初期症状は、風邪などの症状と区別がつきにくく、また、簡 単な検査では診断できないという問題があります。 ・ 細菌性髄膜炎は重症率も高く、症状が急激に悪化し死に至るケースも有り、 重い後遺症を残す事も少なくありません。 ・ 昨年、小児の細菌性髄膜炎の予防を主目的として、インフルエンザ菌b型に 対するワクチン(Hib ワクチン)が認可され、日本でも接種が可能となりま した(自費による任意接種)。 ・ 小児に対する肺炎球菌ワクチン(7価)についても「早ければ今年の年末頃 には認可されるのでは?」とのことです。 新年明けましておめでとうございます。本年も様々な勉強会、実技講習会を企画 して、皆様とともに勉強していきたく思いますので、よろしくお願い申し上げます。 赤木 征宏 2008.1.15 【白金耳】 Vol.30. No.1. 2009.(平成 21年 1 月号) 発行日:平成21年1月15日発行 発 行:大阪府臨床検査技師会 表 紙:井邊 学術部 微生物検査部門 幸子 発行者・編集:赤木 征宏(財団法人 大阪警察病院) 〒543-0035 大阪市天王寺区北山町 10-31 TEL: 06 - 6771 – 6051 e-mail: [email protected] 許可なく転載および複写はご遠慮下さい 21
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