食 不 思 議 - 山形県衛生研究所

食 の 不 思 議
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食べ物の機能性 ◆◆◆
高齢社会を迎えるとともに、健康志向が高まり、日常の食生活を見直す予防医学的な考え方が浸透し
てきました。この背景には生活習慣病の増加、新しい病気の出現、食生活の合理化による弊害など多く
の要因が考えられます。
食については様々な研究が行われており、大きく2つに分けることができます。1つは食べる側の人
に関するもの、もう1つは食べられる食材の研究です。後者では食材の機能について詳しく研究され、
分かりやすくするために、①栄養、②おいしさ、③生体調節の3つの機能性が提案されています。つま
り、食べ物には栄養だけでなく一定の健康を保つ機能のあることが研究により明らかになってきたので
す。しかし、薬の効能効果とは区別して考える必要があります。
本県には豊かな自然や、豊富な農林資源があります。これらを対象に古い文献を調べたり、最新の科
学的研究結果と照らし合わせながら、身体に良い食材を提案することは、健康保持・増進に貢献するも
のであり、地産地消を実行するための産地としての役割でもあると考えます。また、食に対する言い伝
えの正当性や是正しなければならない点も科学的に説明されるようになってきました。巷には玉石混淆
の食に対する多くの情報が流れています。これらをうまく区別しながら、しっかりと食材を吟味して、
より身体にいいものを選ぶことが大切です。種々の取り組みの結果、食材にはまだ良く知られていない
不思議な力の存在が示唆されています。今後の研究に期待しましょう。
掲 載
言い伝え、食の3つの機能、特定保健用食品、食べ物の量と質
食材の現在知られている機能:
キャベツ、ゴマ、シイタケ、シソ、ショウガ、ソバ、タマネギ、ダイズ、トウガラシ、トマト、
ニンニク、ブロッコリー
紅花について、食用菊について
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言い伝え
地域に根ざした食体系は各地域の自然環境に応じた食生活に左右されると考えられます。しかし、交
通網やマスメディアの発達により日本の食生活は一般化され、山間の小さな町にもコンビニエンススト
アが整備されるようになってきました。したがって現代には地域に根ざした悪しき食習慣が大きな健康
被害の原因になることは少ないと考えられます。現在残っている伝承や民間療法、古い食習慣は健康を
阻害しない限り伝えるべきことなのかもしれません。
注意しなければならない事項を考えてみましょう。
キノコについて間違った記述
①キノコの毒はナスと一緒に煮れば消える。②キノコは塩漬けすれば食べられる。③鮮やかなキノコ
は毒。④虫が食べたキノコは食べられる。⑤柄が縦にさけるキノコは食べられる。などです。
知っておくべきこと
①ワラビやフキノトウなどの山菜の多くは古くから行われている調理法(あく抜き)をしっかり守ら
ないと健康に良くない。②オトギリソウは薬草であるが傷薬として外用するものであり、内服は避ける
べきである。③アロエ、ドクダミなどは緩下作用があるので多く服用すると下痢をする。④野菜は生で
食べることが経験的に確立されているもの(大根、生姜、キャベツ、山の芋など)以外はなるべく火を
通すようにする。⑤焼き魚など焦げがあるものはレモンの輪切りや大根おろし等を添えるようにする。
食の3つの機能
食品(食材)は生命を維持する栄養素の供給源であり、健康に役立つ機能性成分の供給源でもありま
す。これらのことについて科学的な研究が進み、食品には3つの機能性があることが提唱されています。
1次機能としては栄養が挙げられ、身体に足りないもの(例:ビタミン類など)を補い健康を保ちます。
2次機能はおいしさ(嗜好)です。人はエネルギーの豊富な脂質や糖質を好むようにできています。氷
河期を生き延びた人類の祖先の名残と考えられています。ただし、おいしいからと言って食べ過ぎると
体重超過で種々の生活習慣病が待っています。3次機能としては生体調節機能ですが、これは、病気の
予防、治療の補助、老化防止など一定の健康を保つ機能のことです。この3次機能は薬草の作用に近い
役目を持っています。食の3次機能を知ることは自らの健康保持増進には重要なことです。
特定保健用食品
食の機能のうち健康維持増進に役立つ3次機能が科学的に証明され、この作用を具体的に食品に表示
できるようにしたものがあります。これが、厚生労働省で許可した特定保健用食品と言われるものです。
略して“トクホ”と呼ばれることもあります。食生活において、健康維持増進や特定の保健に役立てる
ことを目的としています。具体的には、①お腹の調子を整える。②コレステロールの高めの方に適する。
③血圧の高めの方に適する。④血糖値が気になる方に適する。⑤中性脂肪が気になる方に適する。⑥ミ
ネラルの吸収を助ける。⑦虫歯の原因になりにくい。⑧歯を丈夫にする。⑨骨の健康が気になる方に適
するなど種々の用途があります。さらに、企画基準型の栄養機能食品があり、栄養素の補給、補完を目
的としており、現在までにビタミン12種類、ミネラル5種類が定められています。
病気の治療には薬を使いますが、予防には基本的に薬は使えません。運動、休養、バランスのとれた
食生活に機能性の高い食べものを含めて予防しましょう。
−2−
食べ物の量と質
私たちは食べ物(機能性食品や健康食品など)と薬を混同しがちです。知識人と言われる人たちも間
違えて捉えていることが多く、これがなおさら混乱を招く原因になっています。
1つの例として漢方薬を考えてみましょう。一時期、漢方薬は効かないと言った高学歴者がたくさん
いました。しかし、使い方次第で西洋薬では網羅できなかった病気の範囲にも効くことが証明さるよう
になりました。西洋薬とは別の視点からアプローチしなければいけなかったのです。これは機能性食品
にも当てはまります。
分かりやすくするために薬を例に
取ってみましょう。薬は基本的に医師・
毒
無効量
中毒量
致死量
薬剤師が用法用量を管理します。薬を
使用する人は指示どおり服用すればい
薬
無効量
常用量
中毒量
致死量
いのです。医師・薬剤師は薬の効き始
める量(これ以下は無効量という)と
副作用(毒性とも言う)の現れる量を
知っていて個々の患者さんにあった量
の範囲(常用量)で薬を使用します。
これを守らないと、効かなかったり、
漢方薬
薬草等
無効量
食 品
健康食品
常用量
無効量
常用量
少
副作用が現れたり、時には死に至るこ
中毒量 致死量
中毒量
大
量
と(致死量)もあります(図1)
。しか
図1
し、皆様が薬に対してあまり不安を感
じないのは医療従事者がしっかり管理しているからです。これを食品に当てはめてみましょう。図1か
ら分かるように、薬も食品も考え方は同じですが、量と質が異なります。食べ物に薬と同じ効果を期待
するには食べきれないほどの量が必要です。ですから、一般に食品では毒性は出ません。その代わり効
き目もほとんどありません。このことから薬は治療、予防は食品という使用法になるのです。これはほ
とんどの食品に適用できます。
しかし、前述の3次機能の多い食品では薬に近くなることもあります。薬のように直ちに命に関わる
ような作用はありませんが、気をつけることが必要です。たとえば、アロエやドクダミ茶などを通常以
上に利用すると、下痢を起こします。これは、アロエやドクダミはもともと弱い下剤だからです。
以上のことから、食品が効くと言うことは薬が効くというレベルと異なることを念頭に置いてくださ
い。食品が動物実験で効いたというのは科学的に正しいことですが、人に対しては量と質を考慮しなけ
ればなりません。効くという言葉には段階があり種々の条件によって「効くといえること」を忘れない
ようにしてください。食に関しては効く量まで食べなくても、予防するという観点(3次機能)
、おい
しさという観点(2次機能)から楽しみながら摂りたいものです。
次にいくつかの食品について生体調節機能の可能性のあることを解説します。主に科学的知見からの
類推や動物実験のデータです。一部きちんと証明されているものもありますが、薬とは異なり、治療の
ために用いるのではありません。健康増進の目安です。これからは自らの健康は自ら守る健康自己管理
(セルフメディケーション)が必要になってきます。
−3−
●食材の現在知られている機能
キャベツ (アブラナ科)
期待される効果など
・胃腸障害予防、整腸作用(成分:メチルメチオ
ニンスルフォニウム、これはビタミンUともい
われる。熱に弱い。)。
・善玉コレステロールを上げる。
・ビタミンCが多い。
ゴ マ (ゴマ科)
期待される効果など ・抗酸化作用、老化防止など(成分:ビタミンE、
セサミン、セサモリン、セサミノール)。
・コレステロール低下作用(成分:リノール酸など)。
・二日酔い予防(成分:セサミン、肝臓でアルコー
ル分解促進)。
・ミネラル(カルシウム、リン、鉄、ナトリウムなど)。
・必須アミノ酸が豊富。
・1日、30gが目安(食べる前に炒って擂る)
。
シイタケ (ヒラタケ科)
期待される効果など
・コレステロール低下作用(成分:エリタデニン)。
・免疫増強作用(成分:レンチナン、β−D−グ
ルカン)。
・抗血栓作用(成分:レンチナシン)。
・旨み成分、風味向上(成分:グアニル酸、レン
チオニン)。
・骨を強くするビタミンDを多く含む。
シ ソ (シソ科)
期待される効果など
・抗酸化作用、老化防止など(成分:アントシア
ニン(シソニン)、ルテオリンなど)。
・アレルギー予防(成分:α−リノレン酸)。
・防腐作用(成分:ペリルアルデヒド)。
※薬ではないので治療のために用いるのではありません。健康増進の目安です。
−4−
ショウガ (ショウガ科)
期待される効果など
・芳香性健胃作用(成分:ジンゲロール、ショウ
ガオール)。
・その他、新陳代謝促進、抗凝血作用、鎮痛作用、
鎮吐作用、身体を温める、リュウマチにも良い
と言われている。
ソ バ (タデ科)
期待される効果など
・血管補強作用(成分:ルチン)。
・血圧下降作用(成分:ソバのタンパク質)。
・その他、必須アミノ酸がバランスよく含まれる。
・身体を冷やす作用があると言われている。
タマネギ (ユリ科)
期待される効果など
・血糖を下げる(成分:アリルプロピルジサルファ
イド、熱に強い。インスリン分泌促進。薬のよ
うには効かない。)。
・活性酸素消去作用、老化防止(成分:ケルセチン)。
・血栓予防作用(成分:ケルセチン、アリルプロ
ピオン)。
・その他、コレステロール低下作用。
・一日、中くらいのタマネギ半分(50∼60g)が
目安。
ダイズ (マメ科)
期待される効果など
・コレステロール低下作用
(成分:ダイズタンパク質、
グロブリン)
、
コレステロール吸収抑性、
排泄促進。
・血圧上昇抑性(成分:セリルトリプトファン)
。
・整腸作用(成分:ダイズオリゴ糖(スタキオー
ス、ラフィノース)
)
。
・更年期障害緩和、骨粗鬆症予防、抗酸化作用(成
分:イソフラボン)
。
・抗腫瘍作用(成分:フィチン酸)
。
・必須アミノ酸がバランスよく含まれる。
・1日、豆腐半丁、納豆なら1パックが目安。
※薬ではないので治療のために用いるのではありません。健康増進の目安です。
−5−
トウガラシ (ナス科)
期待される効果など
・血管拡張作用、脂肪分解促進、殺菌作用(成分:
カプサイシン)。
・抗酸化作用(成分:カロテン、ビタミンA)。
・トウガラシチンキは医薬品として神経痛、リュ
ウマチに応用。
トマト (ナス科)
期待される効果など
・抗酸化作用、発癌予防作用(成分:リコピン、
β−カロテンなど)。
・クエン酸、ビタミンA、B、Cが多い。
ニンニク (ユリ科)
期待される効果など
・疲労回復(成分:アリシン、ビタミンB1と結合
してアリチアミン)
。
・コレステロール低下作用。
・殺菌作用。
・毛細血管拡張作用(成分:スコルジニン)
。
・抗血栓作用(成分:アリシン、アホエン、ジメ
チルスルフィド)
。
(カルシウム、
リン、
鉄、
ナトリウムなど)
。
・ミネラル
・必須アミノ酸が豊富。
・1日、5gが目安(空腹時に多量に食べると胃を痛める)。
ブロッコリー (アブラナ科)
期待される効果など
・抗酸化作用、発ガン予防作用(成分:スルフォ
ラファン)。
・抗菌作用(成分:イソチオシアネート)。
※薬ではないので治療のために用いるのではありません。健康増進の目安です。
−6−
衛生研究所では県の特産品である紅花と食用菊(モッテノホカ)及びキノコのブナハリタケ、山菜に
ついて機能性食品としての研究を行っています。これについて歴史的なものを含めてご紹介します。ほ
とんどが動物実験のデータですが人に対する作用は研究が進むにつれて徐々に明らかになってくるで
しょう。これらをもとに健康保持増進のための参考にしてください。食事とは楽しくおいしく、会話の
ある団らんが必要です。身も心も健康になれるよう地元の食材を大いに利用して、地産地消を振興しつ
つ自分の健康は自分で守るよう自己管理を行いましょう。
紅花について
紅花は、エジプトあるいはナイル川流域からシルクロードを通っ
て種々の文化と共に日本に伝来しました。古くから上流貴族の間で
染料や化粧料として使用され、『万葉集』、『古今和歌集』などには、
多くの歌人たちが紅染めの美しさを詠んでいます。江戸時代後期に
なると、紅花の使用は庶民の間にも広がってきます。その頃から紅
花の生産は拡大し、出羽国が全国生産の半分以上を占め、貴重な換
金作物とされていました。山形の歴史や文化を語るには紅花(最上
く
れ
な
い
すえつむはな
こう らん か
紅花)を抜きにすることはできません。
昔、紅花は別名、久礼奈為、呉藍、末摘花、紅藍花と呼ばれ
ていました。その名のごとく、紅花には紅色、つまり“くれない”の色素が含まれています。これは、
呉(当時の中国)から伝えられた染料で、それ以前に存在していた染料の藍と区別するために呉藍(く
れのあい)と呼び、これが詰まって“くれない”になったと言われています。しかし、紅花には赤い色
素だけではなく黄色の色素も含まれています。黄色の色素はサフロールイエローといわれ水に溶けやす
く、赤い色素はカーサミンといいアルカリ性にしないと抽出されません。この色素は現在食品添加物と
して食品の色づけに利用されています。
すえつむはな
末摘花という別名は、紅花の花の咲き方が上から外側下方(末)と咲いていき、摘むときにはそれに
従って末へ末へと摘んでいくのでそう言われるのだそうです。
こうらん か
もうひとつの別名の紅藍花は、中国の医学書の古典である『開宝本草』
(973年)に薬として出てきま
り
じ ちん
す。また、李時珍が著した中国の薬物書『本草綱目』
(1590年)に紅藍花という名で紅花の薬効がまと
められています。これによると、紅花は婦人病薬として主に血行障害の治療に用いられ、冷え性、更年
期障害に応用されていました。現在も民間薬として、また、漢方薬として紅花散、活血通経湯、治頭瘡
一方、補陽還五湯などの方剤に配合されています。
そこで、いくつかの実験をしてみました。マウス(ハツカネズミ)に人工的に炎症を惹起させ、その
炎症に対して紅花エキスがどのような効果を示すかと言うものです。結果は、数種類の異なる炎症実験
モデルに対して、その炎症を鎮める効果をもたらしました。人が紅花の紅を口紅として用い、それが自
然に体内に摂取されたとすれば、抗炎症作用が期待されるでしょう。
さらに、興味のある実験を紹介します。現在、癌という病気は、治すことが難しく、厄介なものとさ
れています。その発癌のメカニズムのひとつとしてBerenblumは1942年に2段階発癌説を提唱しまし
た。癌化の過程が質的に異なる2つの過程から成り立つと言う説です。
実験はマウスの皮膚にイニシエー
ター(DMBA)を塗り、次に、プロモーター(TPA)を長期的に塗布します。投与開始から6週間する
と腫瘍が発生してきますが、紅花エキスを与えたマウスの、腫瘍を78%抑制するという結果が得られま
した。さらに、この効果を引き起こす物質を紅花エキスの中から取り出すことに成功しました。ひとつ
はステロールと言われている物質群で、もうひとつはアルカンジオールと呼ばれる新規化合物でした。
−7−
さらに、他の実験を行って、鎮静作用、鎮痛作用、中枢抑制様作用などのあることを明らかにしました。
紅花の薬効については、さらに調べなければならないことがあり、興味は尽きません。
食用菊について
昔、中国の河南省には、興味深い伝説がありました。山中に咲いてい
る菊の露が白河の支流に流れ、この河の水を飲んだものは長寿を得ると
いう“菊水”の言い伝えです。また、この菊水で造った酒を菊酒と呼び、
きびごめ
飲めば不老長寿になると言うことです。我が国では、菊の花を黍米に混
ぜて菊酒にしていましたが、後には酒に花びらを浮かべるだけになりま
した。さらに菊に関しておもしろい話があります。平安時代の宮中や貴
族の家では、菊の花に綿をかぶせて菊花の露や香りを移し、翌朝、その湿った綿で肌を拭い、老いを去
ると言う風習です。これを“きせ綿”と言います。菊水、菊酒、きせ綿は不老長寿に通ずる考えからき
ています。古くから、菊には様々な効用や不老延年にまつわる言い伝えがたくさんあります。
山形では、菊の花を食べます。
「もってのほか」が特に有名です。菊を口に含んだときの芳香と甘味
が何とも言えず新鮮で、「もってのほか」のように袋菊と言われる種類はさらに歯触りも良く、今後、
嗜好品として需要が増える食材と思われます。
中国の薬草の古典『神農本草経』には上品として収載されており、
「諸風の頭眩、腫痛、目が脱ける
ように覚えて涙の出るもの、皮膚の死肌、悪風、湿痺、久しく服すれば、血気を利し、身体を軽くし、
老衰に耐え、天年を延べる」と薬効が述べてあります。つまり、長い間菊花を服用していると、病気に
なりにくく、いつまでも若々しく保てると言う内容です。漢方では主に、解熱、鎮痛、消炎薬として風
邪、発熱、頭痛、めまいに用います。
実際の研究を紹介します。ウサギに菊花のエキスを投与すると体温や血圧が下がります。また、大腸
菌やチフス菌、緑膿菌などの成長抑制作用があり、真菌についても抵抗性があります。中国では、心臓
疾患の治療に用いており、狭心症では有効率が得られているそうです。また、我々は、
「もってのほか」
を用いて老化防止と関係の深い活性酸素消去作用や癌の一次予防と考えられる発癌プロモーター抑制作
用を動物実験で明らかにしました。発癌予防作用では紅花と同様に研究を行ったところ、活性物質とし
てヘリアントリオールCとファラジオールを分離することができました。さらに、1日100gの食用菊を
2週間食べてもらいコレステロールをはかったところ総コレステロールが下がることが分かりました。
これにはさらに詳しい実験が必要ですが参考にはなると思います。その他、抗炎症作用、抗菌作用など
を明らかにし健康に良い作用が考えられました。
菊花は古くから薬として用いられてきました。また服食法として薬の古典に出てきます。前述のよう
に、効能はいくつかありますが、まとめると、顔色が良くなり、髪が黒くなり、若々しく保てると言う
ところです。さらに、菊花酒があり、これも同様の効があると言われています。春は桜、秋は菊と両者
とも日本を代表する花です。どちらも花は食用になります。山形では、多くの人が菊を食用にしていま
す。菊をよく食べる人と、ほとんど食べない人を疫学調査で調べてみて、効果のほどを確かめてみたい
ものです。しかし、効果が確認されたとしても、現代の薬のように、服用すれば、たちどころに効くと
言うわけにはいかないと思います。知らず知らずのうちに効果が現れて元気になり、菊を食用にしてい
るためだとは自覚できないのではないでしょうか。そう考えると、菊を不老長寿の薬とした昔の人々は
素晴らしい洞察力があったことになります。現代に生きる我々はこのような予防について研究し、実証
していかなければならないと思います。
−8−
編集発行:山形県衛生研究所
問合せ先:023-627-1110