当院の透析液清浄化法について (熱水クエン酸消毒と薬液消毒の併用) 大田姫野クリニック 福村 宏,川北 潔,角 昌晃,滋野和志 姫野安敏 はじめに 近年透析液の清浄化は透析治療において様々な 合併症の予防,オンラインHDFの施行に必須な条 件となっている.そういった中で各施設は透析装置, 方法,薬液の各方面で様々な工夫を行っている. 消毒方法 • 薬液消毒 塩素系 • 酸性電解水 熱水消毒 熱水クエン酸消毒 過酢酸系 熱水クエン酸消毒 欧州では個人用透析装置による熱水クエン酸 消毒が多数の施設で行われその効果は良好とさ れている.近年,本邦でも熱水クエン酸消毒が個 人用透析装置のみならずセントラル方式にも導 入され始めた. 熱水クエン酸消毒は,熱エネルギーが伝熱作 用により薬液消毒の薬剤では十分到達できない 部分の消毒効果に加え残留塩素の心配がなくタ ンパク除去,炭酸塩除去ができる消毒方法として 注目されている. 当院のフローシート 透析液供給装置 B粉末溶解装置 A粉末溶解装置 微粒子フィルタ 循環加温装置 末端透析装置 水処理装置 消毒方法 期間 次亜塩素酸ナトリウム消毒 2007年 4月~6月 透析終了後 ROタンク,RO水ループ 透析液供給装置を60分 2007年 配管を30PPMの次亜 洗浄モードで透析液配 7月~12月 塩素酸ナトリウムで15分 管に流す 間循環 2008年 1月~4月 熱水クエン酸消毒 ROタンク,RO水ループ 配管を30PPMの次亜塩 素酸ナトリウムで15分間 循環 透析液供給装置を30 分洗浄モードで透析 液配管に流し低濃度 の次亜塩素酸ナトリ ウムを滞留する 透析終了後 透析開始前 検査項目 項目 エンドトキシン 細菌(RO水・透析液) 細菌拭き取り(カプラ) 方法 エンドスペーシー法 EGリーダSV-12 R2A 50ml メンブレンフィルタ法 R2A 平板塗抹法 採取場所 • • • • • • • • RO水(RO膜出口) RO水ループ配管 透析液供給装置 透析液ループ配管出口 透析液ループ配管戻口 末端透析液 末端透析装置入り口 カプラ 採取場所と方法(1) RO水(RO膜出口) RO膜出口からROタンク入り口にある バイパスラインのワンタッチコネクター を取り外し採取 RO水ループ配管 ROタンクから粉末溶解装置・透析液 供給装置・個人用透析装置にRO水を 供給し帰ってくるループ配管にバイパ スラインを設けそのワンタッチコネク ターを取り外し採取 採取場所と方法(2) 透析液供給装置 循環する透析液ラインにクリーンポートを 取り付け注射器にて採取 透析液ループ配管戻り口 透析液ループ配管出口と戻り口 バルブを開閉しシリコンホースより採取 透析液ループ配管出口 採取場所と方法(3) 末端透析液 オンラインHDF補液ラインを利用 しガスパージモードで補液ポンプ を回し採取 末端透析装置入り口 透析装置背部の減圧弁上流より採取 採取場所と方法(4) カプラ ダイアライザの容器にカプラを取り付 け透析液が出口より流れ出した直後 に採取 カプラ拭き取り カプラ内のOリングを取り出しその周囲 を拭き取る 2007~2008 エンドトキシン濃度 単位(EU/L) 4 月 5 月 7 月 RO膜出口 7.3 2.4 1> RO水ループ配管 9 2 透析液供給装置 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1.2 1> 1> 1> 1> 透析液ループ出口 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 透析液ループ戻口 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 末端透析液(N=55) 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 1> 末端機入り口・カプラのエンドトキシン値・細菌数 ET(EU/L) 細菌数 (CFU/ml) 測定数 末端機入り口 1 未満 0 8 カプラ 1 未満 0 14 0 10 カプラ内Oリング 拭き取り 細菌数 2007~2008 単位(CFU/ml) 4 月 RO膜出口 RO水ループ配管 5 月 0.08 0.02 6 0.04 透析液供給装置 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 0 0.02 0 0 0 0.02 0 0 0 0 6 0 0.14 0.14 0 0 0 0 0.12 0.16 0.02 0.24 0.22 0.02 0.04 0.06 0 透析液ループ出口 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 透析液ループ戻口 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 末端透析液(N=55) 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 問題点 RO水配管は,30PPM次亜塩素酸ナトリウムで毎 透析後消毒を試みた結果 ET 濃度は1 EU/L未満 であったが,細菌はわずかではあるが認めている. 解決法 • RO水配管の消毒においては次亜塩素酸ナトリウ ムの量と使用方法,また他の薬液への切り換え も考えなければならない. • 透析液ループ配管と末端透析装置の結果から熱 湯消毒も選択枝の一つではないかと思われる. • セントラルラインとRO水ラインの自動洗浄化 今後への期待 1.RO水配管も透析液ライン(ダイアライザー流 入)の清浄化と同等なシステム作り. 2.薬液消毒は残留濃度と一剤化にするのが困難 また配管全体にいきわたらないことから,RO配 管から末端透析装置までの微粒子除去フィルタ の設置と熱湯消毒のシステムの確立. 微粒子フィルタ 次亜塩素酸ナトリウム + 酢酸 熱水クエン酸 透析液供給装置 コスト計算の条件 電気代(施設全体) 使用電力量から算出(検針値) 熱水クエン酸消毒 100分 洗浄 30分 4回検針 4回検針 水道代(RO回収率は含まず) 熱水クエン酸消毒 100分 116L使用 洗浄 30分 450L使用 薬液代 8,500円/18Lの50%クエン酸を25倍希釈で使用 20,000円/18Lの薬液を200倍希釈で使用 コストの比較(1週間) 電気代 消毒液 水道代 合計 熱水クエン酸 4,140 10,398 240 14,778 薬液 774 17,328 936 19,038 単位(円)
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