防災教育を重視した地震学習

防災教育を重視した地震学習
池田
□
幸夫(広島修道大学人文学部)
対象学年
中学校理科2分野(1年生)
□ 課題の設定理由
平成 23 年3月 11 日に発生した東日本太平洋沖地震は,死者行方不明者数が約2万人とい
う未曾有の大災害となった。死者行方不明者のほとんどは,地震の後に襲ってきた津波による
犠牲者である。
突発的に襲ってくる地震と違って,津波は必ず大きな地震の後に起こる自然現象である。
逃げようと思えば逃げる時間はあったはずなのに,なぜこれほど多くの犠牲者が出てしまった
のか?
マスコミ報道などによると,その原因の一つとして,地震や津波に対する科学的な知
識や認識が十分ではなかった可能性がある。「これまで何回か津波警報が出されたが,大きな
津波は起こらなかったから,今回も大丈夫だ」とか,一度は避難した人の中には「30 分過ぎ
ても何も起こらないから,もう大丈夫だ」と判断して自宅に帰って被害に遭ったという事例が
あったからである。もし地震や津波を科学的に正しく理解していたならば,これほど多くの犠
牲者が出ることはなかったかもしれないのだ。
地震や津波は理科で学習する内容である。しかし,学習指導要領1)による扱い方は,「自
然事象に興味・関心をもち,実験や観察を通して科学的な見方・考え方を育成する」という理
科の目標があるために,「命を守る」という実用的な防災教育の視点は必ずしも十分とは言え
ないのではないだろうか。
大震災によって自然災害に対する興味・関心が高まっている今こそ,防災教育の視点を理
科教育に積極的に取り入れることは早急の課題である。しかし,今年は新教育課程がスタート
したばかりで,教育内容を大きく変更することはできないであろう。したがって,新学習指導
要領の枠を外れることなく,地震や津波に対する防災教育の視点を積極的に取り入れた授業計
画や授業を工夫しなければならない。そこで本稿では,中学校理科2分野の「大地の成り立ち
と変化」における第2単元「地震の伝わり方と地球内部の働き」の学習内容を大きく変えるこ
となく,防災意識の向上をめざした授業を提案する。提案する授業は,「緊急地震速報」と
「ビルの揺れ方」の2つである。
□
重視する学習活動
地震現象は空間的広がりがきわめて大きく,かつ複雑である。そのため,化学や物理のよ
うに理科室で定量的な実験を行うことは難しい。地学分野では,自然現象を単純なモデルに置
き換えたモデル実験がよく行われているが,それはあくまでモデルであって,自然現象そのも
のではないという限界がある。そこで本稿で紹介する授業は,モデル実験と実際の自然現象と
をつなぐ思考実験的な授業である。思考実験は,自分がもっている知識に基づいて思考を展開
し,現象の本質を理解するための思考方法である。思考実験という言葉のイメージから「科学
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者が行う難しい方法」というイメージがあるかもしれないが,実験やワークシートなどを工夫
することにより,中学校の生徒でも十分に活用できる方法である。
□
時間数
単元全体は9~10 時間,提案した授業はそれぞれ1時間
□
学習活動のステップ
学習指導要領中学校理科に規定されている「大地の成り立ちと変化」を大単元,その中に
含まれている「火山活動」「地震活動」「地球の歴史」を一つの単元として,次のような授業
計画を立てた。太字で示されている授業が防災教育を特に重視した授業であるが,本稿ではそ
の中の「緊急地震速報」と「ビルの揺れ方」の授業について報告する。
表1
時
1
「地震の伝わり方と地球内部の働き」の単元計画
小単元名
学習内容
地震の揺れ方と地震波の種類 1.地面の揺れ方
2.P波とS波の伝わり方
3.緊急地震速報の仕組み
2
地震災害と防災
1.震度
2.マグニチュード
3.ビルの揺れ方
4.地震と津波の関係
3
地震発生の仕組み
1.地震はどこで起こるか
2.日本付近の地震の起こり方
□
指導案1:緊急地震速報の仕組み
大きな地震が発生すると,揺れが来る前に地震の襲来を伝えるテロップがテレビ画面に表
示されるようになっている。無料のエリアメールを設定しておけば,携帯電話でもこの情報を
受けることができる。さらに,日本の鉄道各社は早期地震警報システムを取り入れて,大きな
揺れが来る前に走行中の電車を止めたり減速したりして,被害を最小限に食い止めるようにな
っている。2011 年3月の東日本太平洋沖地震では,JR東日本の早期地震警報システムがう
まく作動して,東北地方と関東地方を走行していたすべての新幹線電車を減速または停止させ,
大きな事故を未然に防ぐことに成功している2)。大きな揺れが来る前に秒単位で警報を発信
するこのシステムは,世界に誇ることのできる日本の防災技術の一つである。
気象庁の緊急地震速報とJR各社のシステムにはいくつかの違いがあるが,最初にやって
来るP波の揺れを検知すると瞬時に分析して,主要動が来る前に警報を発信する原理は同じで
ある。このシステムの原理そのものは比較的単純であり,中学校理科の学習内容として取り入
れることは十分可能である。本稿では,ワークシートを使って緊急地震速報の仕組みを理解さ
せる授業を紹介する。具体的なワークシートを末尾に添付しておく。
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表2
「緊急地震速報の仕組み」の学習指導案
展開
導入
(10 分)
学習内容・活動
学習方法・教材など
教師の支援・留意点
・東日本太平洋沖地震の揺れ
DVD,「報道の日 2011」 テレビ番組の DVD から,
を DVD で視聴して,震度6
(2011 年 12 月 25 日, 仙台や東京の揺れの部分
の揺れをイメージさせる。
TBS)
を取り出して視聴する。
≪問題提起≫
主要動の到着時刻を事前に
予測できれば,被害を少な
くできるのでは?
展開
(30 分)
①地震計記録から初期微動と
主要動を区別
プリント:地震計の記
録
プリント:過去の南海
理科年表から南海地震を
地震を年表にプロットす
地震
選び,発生年とマグニチ
る。
資料
②西日本を襲った過去の南海
1498 M8.2~8.4
ュードのデータを作る。
1605 M7.9
1707 M8.4
1854 M8.4
1946 M8.0
③ワークシートによる作業:
P波の速さVp=8㎞/秒, 班別の話し合いをしなが
室戸岬でP波をキャッチし
S波の速さVs=4㎞/秒
ら,協力して計算を進め
た瞬間に,室戸,松山,宇
と仮定して,ワークシ
るように支援する。
部にS波が到着する時刻を
ートの表を完成する。
予測する。
④緊急地震速報の仕組み
完成した表を使って,
仕組みについて詳しく
説明する。
まとめ
・緊急地震速報の利用
(10 分)
・テレビ・ラジオ放送
エリアメールの設定
や携帯電話のエリア
メール
□
指導案2:ビルの揺れ方
地震が発生すると,「高いビルほどよく揺れて危険だ」と思っている人は多いであろう。
ところが,実際には超高層ビルが主要動のS波によって大きく揺れることはない。長周期地震
動によって揺れることはあるが,この揺れはS波のような激しい揺れではなく,ゆっくりと大
きく揺れることが特徴である。
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表3
「ビルの揺れ方」の学習指導案
展開
導入
学習内容・活動
≪導入問題≫
(15 分) 地震の時に最もよく揺れるビ
ルはどれか?
学習方法・教材など
教師の支援・留意点
プリントの問題を教材
矛盾を自覚による興味付
提示装置で投影し,一
け
つを選ばせる。
・生徒の思いと違って高
①A:5階建てビル
いビルは揺れにくいこ
②B:10 階建てビル
とを,阪神淡路大震災
③C:30 階建てビル
の資料によって示す。
≪問題提起≫
阪神淡路大震災では,30 階以
上の超高層ビルは1棟も倒壊
していない。なぜ?
展開
ビル模型を使った実験
①高さの異なる板を振
(25 分)
・演示実験
動させて,高いほど
30階
ゆっくり振動するこ
とを示す(固有周
ばね鋼の板
期)。
10階
5階
板
ばね鋼板のるビル模型
ばね鋼板のビル模型
②装置を机上に置いて
・班別実験と討論で,地
異なる振動数で左右
面の揺れの周期と揺れ
に振動させ,ビル模
やすいビルの高さとの
型の揺れ方を観察
関係を見つける。
し,決まりを見つけ
させる。
まとめ
ビルの高さと揺れやすい振動
(10 分) 周期
ビルの高さと揺れやす
・与える知識
い周期
①主要動の揺れの周期は
5階建て…約 0.3 秒
10 階建て…約 1 秒
30 階建て…約3秒以上
1秒以下
②長周期地震動の周期は
数秒
もし人々がビルの揺れ方を科学的に正しく理解しておれば,超高層ビル内で地震にあって
もパニックによる二次災害を避けることができるであろう。さらに長周期地震動に対する適切
な対応ができるようになれば,都市型地震災害の低減に寄与できるはずである。超高層ビルは
大都市に多いが,将来的には地方都市にも建設されていくはずである。生徒にビルの揺れ方の
仕組みを正しく理解させることは,「命を守る」教育として理科教育に課せられた重要な使命
の一つである。
ここに提案する授業は,表3の学習指導案に示されているような授業である。この授業は
NHKの番組「クローズアップ現代」3)を参考にして作ったものである。
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□
活用する教材・教具
「緊急地震速報」の授業は,ワークシートで与えられた課題を解きながら思考を進めて,
理解を深めていく授業である。導入で学習課題に対する意識を高めることと,効果的なワーク
シートの使い方がこの授業のポイントである。
ワークシートの課題1は,興味付けのための課題である。この課題では,四国沖の南海トラ
フを震源として繰り返し発生してきた巨大地震,いわゆる南海地震を年表にプロットする作業
を通して,巨大地震の周期性に気づかせ,次の南海地震の発生年を予測させることが目標であ
る。この作業を通して,生徒は2050年前後には次の南海地震が発生することを予想できるはず
である。2050年頃は,現在の中学生が50歳前後の成人として社会を支えている時代である。そ
の時に南海地震が起こる可能性が高いとなれば,生徒の興味を大いに高めることができるであ
ろう。
課題1で取り上げた南海地震を例として,課題2では緊急地震速報の仕組みを理解するこ
とになる。緊急地震速報は,P波とS波の速度の違いを利用して,S波の揺れ(主要動)の到
着時間を予測するシステムである。震源距離とP波とS波の速さが分かれば,この計算はそれ
ほど難しいことではない。詳しい方法については次章で説明する。
緊急地震速報は被害を軽減する有効な方法の一つであるが,発信したことによって新たな
混乱が起こる可能性が考えられている。ここまで授業を発展させる場合には,NHKのクロー
ズアップ現代「命を守る10秒間」4)を参考にするとよい。
「ビルの揺れ方」の授業では,導入でビルの揺れに対する生徒の素朴概念を意識させた後,
ビル模型を使った振動実験によって生徒の素朴概念をくつがえして,彼らの興味・関心を高め
ることができるであろう。この問題をさらに発展させて免震構造の仕組みを取り上げる場合に
は,NHKクローズアップ現代「震度5を捉えた」5)と「地震でも安心~揺れないビルをめ
ざせ~」6)のDVDを視聴することを勧めたい。かなり古い番組ではあるが,たいへん分か
りやすく現在でも十分使用できる優れた視聴覚教材である。
□
解説と指導上の留意点
(1)緊急地震速報
地震の揺れは,初めにガタガタという小刻みな揺れが来て,その後にグラグラと大きな揺
れがやって来る。この揺れを地震計で記録すると,図1のような波形になる。初めの小刻みな
揺れが「初期微動」で,P波という地震波の揺れである。大きな揺れは「主要動」と呼ばれる
S波の揺れである。震源地ではこれらの2つの地震波は同時に放出されるが,速度の速いP波
の方が先に到着し,S波が遅れて到着するために,「初期微動継続時間」と呼ばれる時間差が
生まれるのである。
建物などに被害をもたらすのは,震幅が大きく衝撃力の強いS波である。したがって,P
波をキャッチした瞬間にS波の到着時刻を予測することができれば,被害を最小限に食い止め
ることができるであろう。これが緊急地震速報や新幹線に採用されている早期地震警報システ
ムの基本的な考え方である。
緊急地震速報を理解するためには,P波やS波に関する基本的な知識が必要である。本論
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の説明に入る前に,必要な基礎的知識をまとめておこう。
まず,初期微動の揺れを引き起こすP波は,物体の伸びや縮み(体積の変化)が振動とし
て伝わる波である。一方,S波は物体の曲げやねじれ(形の変化)が伝わる波である。地面が
上下に揺れる波をP波,水平方向に揺れる波をS波だと思っている生徒はかなり多いが,これ
は間違いである。この間違いは授業中に指摘しておくべきであろう。
初期微動
初期微 動
主要動
主要動
時間
時間
10秒
図1
図2
地震計の記録
つるまきばねを用いてP波とS波の伝わり方を示す演示実験
左図:P波の伝わり方
右図:S波の伝わり方
P波とS波の違いを理解させる有効な実験は,つるまきばねを用いた演示実験である(図
2)。まず,つるまきばねを引っ張って伸ばした後,手を前後に動かして縮んだ部分を作ると,
図2左図に示されているようにばねの伸縮が移動していく。これがP波である。空気中を伝わ
る音波はP波である。次に,手を上下に動かして曲げた部分を作ると,図2右図のように曲げ
がばねを伝わっていく(図2右)。これがS波である。注意すべきことは,揺れの向きが上下
でも左右でも関係がないということである。
前時の授業(P波とS波の伝わり方)で,生徒はP波の速さは秒速約8㎞,S波は約4㎞
であることを学習しているので,震源の位置が分かれば,P波やS波の所要時間を計算するこ
とができる。したがって,緊急地震速報で最も重要な問題は,検知したP波の波形から震源の
位置と深さ,さらにマグニチュードをいかに早く決定するかということである。震源の位置を
求める方法としてよく知られているのは,3地点の初期微動継続時間から作図によって求める
方法であるが,この方法は時間がかかりすぎて使うことができない。そこで,最も早く地震を
感知した地点のP波の波形を分析して,瞬時に震源の位置と深さ,さらにマグニチュードを推
定する新しい方法が開発された。緊急地震速報はこの方法を採用して,2~3秒以内に計算で
きるようになっている。この原理は中学生の理解を超えているのでここでの説明は省略するが,
関心のある方は気象庁のHP7)やフリー百科事典ウィキペディア8)を参照していただきたい。
この授業では,西日本に大きな被害をもたらすことが予想されている南海地震を例として,
緊急地震速報の仕組みを考えることにした。南海地震は歴史的に繰り返し発生して,西日本に
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大きな被害を出してきた巨大地震である。課題1では,理科年表の資料9)から過去の南海地
震を取り出してデータを作り,これを年表にプロットさせる作業を通して,南海地震の平均周
期と次の南海地震の発生年を予想させる課題である。予想する方法は生徒に任せればよい。
課題2では,南海地震の震源を室戸岬の南約 200 ㎞と仮定して,まず室戸,松山,宇部に
P波とS波が到着する時間を計算する。次に,最初にP波を観測した地点が室戸であると仮定
して各地点のS波の到着時間を計算する訳だが,注意すべきことは室戸でP波を観測した時刻
を原点,つまり0秒にするということである。もちろん,実際にはコンピューターの計算処理
時間や通信に時間がかかるため,テレビに情報が表示されるのはこれより少し遅れることにな
る。また,緊急地震速報は陸地からある程度離れた海底を震源とする地震には適用できるが,
震源が近い内陸の直下型地震の場合には,速報が間に合わないことがある。このことは緊急地
震速報の限界でもあり,誤解のないようにしっかり指摘しておくべきであろう。
(2)建物の揺れ方
多くの人は「地震の時,超高層ビルはよく揺れるだろう」と考えているが,これは誤りで
ある。ビルは地面の揺れをそのまま反映して揺れるのではなく,それぞれのビルがもっている
揺れやすい周期(固有周期)と地面の揺れの周期が一致した時に大きく揺れるのである。この
現象は物理学で「共振」と呼ばれている。
共振による建物の揺れ方は,簡単な実験によって理
30階
解させることができる。図4に示されているように,
小さな木製の台に弾力性のある細長い棒や板(ホーム
ばね鋼の板
センターなどで販売しているはね鋼板やアクリル棒な
10階
ど)を垂直に立てたビル模型を作り,これを机の上に
置いて手動で左右に振動させて,ビルに見立てた板の
揺れを観察させる実験である。ビル模型の台に加える
5階
振動周期を変えて実験を行えば,地面の揺れの周期と
板
揺れやすいビルの高さとの定性的な関係を容易に見つ
ばね鋼板のるビル模型
ばね鋼板のビル模型
けさせることが可能である。
この実験によって明らかになる地震とビルの揺れ方 図4
の関係は,次の2点にまとめることができる。
①地面が短い周期で速く揺れる場合には,低いビル
ばね鋼板を用いたビル模型
5階建て:15 ㎝,10 階建
て:20 ㎝,30 階建て:30 ㎝
が共振を起こして激しく揺れ,高いビルはほとん
ど揺れない。
②地面が長い周期でゆっくり揺れる場合には,高いビルは共振を起こして大きく揺れるが,
低いビルはほとんど揺れない。
実際の地震の場合には,5階建てのビルは 0.3 秒程度,10~15 階建てのビルは1秒程度,
30 階建てのビルは3秒以上のゆっくりした揺れに共振すると考えられている
10)
。最も破壊力
のあるS波の揺れの周期は1秒程度かそれよりも短いと考えられているので,主要動の揺れに
共振して大きく揺れるビルは,高さが 10~15 階建ての中高層より低いビルであり,30 階以上
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の超高層ビルは主要動の揺れに対してはほとんど共振することはないのである。阪神淡路大震
災では神戸市内は震度6~7の激しい揺れに襲われたが,超高層ビルは1棟も倒壊しなかった
のはこのためだと考えられている。
ここで注意しなければならないことは,超高層ビルは主要動に共振しないから絶対に安全
だとは言えないことである。東日本太平洋沖地震のような大きな地震では,主要動の後に周期
の長い長周期地震動(表面波の揺れ)が発生することが知られている。超高層ビルはこの長周
期地震動に共振を起こすために,ゆっくりと大きく揺れるからである。2007 年の中越地震で
は,震源から遠く離れた東京六本木ヒルズのエレベーターが故障したが,その原因は長周期地
震動であったことが分かっている
11)
。また,2011 年3月の東日本太平洋沖地震でも,東京,
名古屋,大阪の超高層ビルが長時間にわたってゆっくりと大きく揺れたが,この揺れはテレビ
の映像にうまくとらえられている。長周期地震動による超高層ビルの揺れ方を授業に使いたい
方には,TBSのテレビ番組「3・11 映像の記録」12)をお勧めする。授業に余裕があれば,
DVDで視聴させると生徒の興味・関心はいっそう高まるであろう。
□
評価の観点
(1)緊急地震速報の仕組みを科学的に説明することができる。
(2)地震の揺れとビルの揺れ方との関係を科学的に説明することができる。
(3)地震に対する防災意識が高くなる。
□
参考・引用文献等
1)文部科学省,中学校学習指導要領理科,日本文教出版,2008.
2)SankeiBiz :http://www.sankeibiz.jp/business/news/
(2012 年1月現在).
3)NHK:クローズアップ現代「震度5を捉えた」,1988.
4)NHK:クローズアップ現代「命を守る 10 秒間」.
5)前掲3).
6)NHK:クローズアップ現代「地震でも安心~揺れないビルをめざせ~」,1988.
7)気象庁:http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/EEW/kaisetsu/eew_naiyou.html
(2012 年1月現在).
8)フリー百科事典ウィキペディア:http://ja.wikipedia.org/wiki/,
(2012 年1月現在).
9)国立天文台:理科年表 2011,丸善株式会社,2011.
10)前掲4).
11)NHK:サイエンスZERO「巨大構造物を襲う謎の長周期地震動」,2005.
12)TBS:3.11 映像の記録,2011.
(本稿の執筆後に放送されたものでは,NHK:NHKスペシャル「映像記録 3.11~あ
の日を忘れない~」,2012.がある)
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≪ ワークシート:緊急地震速報 ≫
課題1
次の表に,理科年表から引用した南海地震の発生年とマグニチュードが示されている。
1946 年の例にならってこれらの地震を下の年表中にプロットし,次に起こる南海地震の発
生年を予想せよ。
年
1498
1605
1707
1854
1946
マグニチュード
8.2 以上
7.9
8.4
8.4
8.0
現在
1500
1600
1700
1900
1800
2000
2100
南海地震
南海
次期南海地震の発生年
課題2
年ごろ
室戸岬の南東 200 ㎞の海底で南海
地震が発生した。P波の速さを8㎞/秒,
S波の速さを4㎞/秒であると仮定して,
下の表を完成せよ。ただし,室戸市でP
波をキャッチした瞬間を0秒として,室
戸市(震源距離 200 ㎞),松山市(360
宇部
松山
㎞),宇部市(504 ㎞)にS波が到着す
室戸
るそれぞれの時間(予想時間)を計算せ
震源
よ。
200㎞
360㎞
504㎞
地
点
距
離(㎞)
室
戸
200
松
山
360
宇
部
504
S 波 の
所要時間
P波
25(秒)
- 68 -
S波
50(秒)
予想時間
(秒)