映像化社会

2012/11/19
2012 経験社会学I 第6回 (第7章)
1.映像と 日常世界
• 映画:日常の視覚的経験世界に対する異質性
第6回 【第7章】
映像化社会
――映像と「現実」――
2012/11/19
担当教員: 吉田 純
映像の日常化
• 映像の物語的構成+観客の想像的参加
– ハリウッド映画 (1930~40年代)
• 「風と共に去りぬ」「駅馬車」「市民ケーン」…
– 異質性の減少
• 「めまいの遊び」から「模擬の遊び」へ
• 異質性回復の試み
– ヌーヴェル・バーグ (1950年代~)
• 監督の「作品」としての映画: 即興演出・同時録音…
• トリュフォー「大人は判ってくれない」
• ゴダール「勝手にしやがれ」: ジャンプカットの導入
2. 「遊び」の社会学的意味
• 『ホモ・ルーデンス』 (J.ホイジンガ 1938)
• 人類の新たな定義
– ホモ・サピエンス 「知能をもつヒト」
– ホモ・ファーベル
ホモ ファ ベル 「ものを作るヒト」
– ホモ・ルーデンス 「遊戯するヒト」
• 「遊び」=人間文化の本質
– 文化は遊びとして成立・発展
– 祝祭・芸術・哲学などの起源=「競技」
リアルタイムコメント http://p.tl/QD30- →(6)
―「列車の到着」(リュミエール兄弟 1895)
―「戦艦ポチョムキン」 (エイゼンシュテイン 1925)
• モンタージュによる異化効果
• W.ベンヤミン:「複製芸術」論
– メディア技術⇒日常世界のリアリティの変容
映画は、周囲の世界にあるいろいろなものをクローズアップし、
……レンズの独創的な使用によって卑近な生活環境を徹底的
に調査し、そうすることで……広大な規模の、これまで予想も
しなかった自由な活動の空間を、私たちに約束してくれること
になる。 (「複製技術時代の芸術作品」)
映像化社会:日常の映像化
• 生活環境の映像化
– TV/ビデオ/DVD/TVゲーム/動画サイト…
• 都市空間の映像化
– ディズニーランド
デ ズ
ランド
• 映画的=非日常的世界への参加
– 都市空間の「ディズニーランド化」
• 映像の日常化/日常の映像化
– 日常世界と映像との距離=異質性の消失
– 映像と「遊ぶ」ことの困難
『遊びと人間』 (R.カイヨワ 1958)
• ホイジンガを批判的に継承
– 遊びの多様性をより包括的に把握
• 「遊び」の4類型
– 「競争」「偶然」「模擬」「めまい」
• 「遊び」の定義
– 強制されない「自由」な活動
– あらかじめ結果が決められない「不確定の」活動
– 財貨や富をつくりださない「非生産的な」活動
– 日常生活とは時間的・空間的に「分離した」活動
– 現実生活と対立する「虚構的」活動
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2012/11/19
2012 経験社会学I 第6回 (第7章)
「聖/俗/遊」の3項図式(カイヨワ)
• 「聖/俗」二元論 (E.デュルケーム)
– 「聖」=超越的存在 畏怖・帰依の対象
• 道徳的連帯・社会秩序の源泉
– 「俗」=日常的・功利的世界 (労働・生産の世界)
• 儀礼・祝祭⇒「聖」との接触・交流
– 聖なるものによる俗なる世界の再秩序化
• 「遊」
– 俗なるもの(現実生活)への配慮からも
聖なるものの義務や拘束からも自由な領域
– 日常世界の価値観を相対化し、現実社会を批判
2つの非日常性
• 「2001年宇宙の旅」 (S.キューブリック 1968)
2段階の非日常性の表現
– 科学技術のもたらす美しい近未来世界
– 人間の認識の及ばない根本的に異質な世界
• 「惑星ソラリス」(A.タルコフスキー 1972)
精神・倫理にとっての異質性
– 人間の深層意識(罪責感)を具現化する
知的生命体「ソラリスの海」
• 「無視することが科学者の正しい態度」?
– 人間のアイデンティティへの根源的問い
リアルタイムコメント http://p.tl/QD30- →(6)
3. 映像の非日常性の回復
――2つのSF映画を素材に
• SF (Science Fiction) の二面性
– 非日常性 “Sense of Wonder” (不思議さの感覚)
– 科学的リアリティ (現実性)
• 近代の科学的世界観の二律背反
– 人間の世界認識の進歩
• 「宇宙の秘密が『感覚的知覚の確実さをもって』人間に
認識される」 (H.アレント『人間の条件』 1958)
– 世界からの人間の疎外
• 「人間の感覚、すなわち、リアリティを受けとめる人間の
器官そのものが人間を裏切るのではないか」(同)
映画と「現実」
• タルコフスキーの「2001年」批判
– 「科学技術の成果それ自体が、芸術家の関心の
中心になっているような作品にだれが興味を持つ
のでしょうか?芸術は人間の外部に、その道徳的
問題の外部には存在できないのです 」
問題の外部には存在できないのです。」
• タルコフスキーの映画観
– 「映画の主要な課題は…物語の無条件の現実性
を手にすることにある」
– 「映画の流れ、その織物は、現実それ自体にでき
るかぎり近くなければならない」
– 映像の流れによるまったく新しい「現実」の創造
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