道路標識等における冠雪対策 佐藤 克己 、田島 功章

道路標識等における冠雪対策
佐藤
克己*1、田島
1.はじめに
功章*2
模型概略図を図2に、標識模型設置状況を写真3に示す。
北陸地方整備局管内
観測は、同一形状の一連模型に各工法を施工し、屋根
では、道路標識等の冠
の前・背面をビデオカメラによる連続観測と目視観測で
雪対策として、標識屋
実施した。なお、
根や雪割りを設置して
冠雪率は、屋根
いる。しかしながら、
面積に対する冠
対策を実施した標識に
雪面積を百分率
おいても、落雪の危険
防止のため人力による
で表したもの
写真1
人力処理状況
で、冠雪高さは
処理を余儀なくされる
屋根面に対し垂
場合がある(写真1)。
直に冠雪厚さを
また、落雪により通行
計測したもので
車輌に損害を与える事
ある。
故も発生している(写
図2 観測箇所
表1 比較工法一覧
平成14年度
平成13年度
真2)。
本稿は、冬期の安全
津川 ST
番号
写真2
車輌損害状況
かつ円滑な道路交通の確保と効率的な維持管理の基礎資
工法
性質
① アクリル樹脂塗料
フッ素樹脂系(酸化チタ
②
ン配合)標準型
③ シリコン系A
撥水性
撥水性
撥水・親水性
番号
平成15年度
工法
性質
① アクリル樹脂塗料
フッ素樹脂系(酸化チタ
②
ン配合)標準型
③ シリコン系A
撥水性
撥水性
撥水・親水性
番号
工法
性質
① アクリル樹脂塗料
フッ素樹脂系(酸化チタ
②
ン配合)標準型
③ フッ素樹脂系
撥水性
撥水性
撥水性
④ シリコン系B
撥水性
④ シリコン系B
撥水性
④ シリコン系B
撥水性
⑤ ウレタン系塗装
親水性
⑤ ウレタン系塗装
親水性
⑤ シリコン樹脂+アクリル樹脂
親水性
料を得るため、標識模型を用いて落雪性能を比較観測す
⑥ フッ素系樹脂フィルム
撥水性
⑥ フッ素系樹脂フィルム
撥水性
⑥ フッ素系樹脂フィルム
撥水性
⑦ ポリエステル長繊維シート
撥水性
⑦ ポリエステル長繊維シート
撥水性
⑦ 電熱ヒータ
融雪系
るとともに、管内で試験導入されている冠雪対策標識を
⑧ モーター振動式シート
撥水性
⑧ モーター振動式シート
撥水性
⑧ 導電性塗料
融雪系
比較観測した結果を踏まえ、道路標識等における冠雪対
策について取りまとめた結果を報告するものである。
2.調査経緯
本調査は、平成13年度か
ら平成17年度まで、一般国
道49号津川除雪基地(新潟
県東蒲原郡阿賀町、以下津川
ST)及び一般国道17号湯
沢維持出張所(新潟県南魚沼
郡湯沢町、以下湯沢維持)で
模型標識を用いた比較観測を、
現道調査として塗装系や構造
の違う既設標識での比較観測
を実施した。各年度の調査項
平 成 13年 度
・津 川 S T模 型 比 較 観 測 (8 工 法 )
平 成 14年 度
・津 川 S T模 型 比 較 観 測 (1 1 工 法 )
平 成 15年 度
・津 川 S T模 型 比 較 観 測 (1 1 工 法 )
・湯 沢 維 持 模 型 比 較 観 測 (4 工 法 )
・現 道 標 識 比 較 観 測 (3 構 造 )
⑨ 電磁石振動装置
親水性
⑨ 電磁石振動装置
親水性
⑩ 光触媒酸化チタン
親水性
⑩ 光触媒酸化チタン
親水性
⑪ ウレタン系フィルム
親水性
⑪ ウレタン系フィルム
親水性
平成17年度
平成16年度
番号
工法
性質
① アクリル樹脂塗料
フッ素樹脂系(酸化チタ
②
ン配合)標準型
③ フッ素樹脂系
撥水性
番号
性質
撥水性
① アクリル樹脂塗料
フッ素樹脂系(酸化チタ
②
ン配合)標準型
③ フッ素樹脂系
撥水性
④ シリコン系B
撥水性
④ シリコン系B
撥水性
⑤ シリコン樹脂+アクリル樹脂
親水性
⑤ シリコン樹脂+アクリル樹脂
親水性
⑥ フッ素系樹脂フィルム
撥水性
⑥ フッ素系樹脂フィルム
撥水性
⑦ 電熱ヒータ
融雪系
融雪系
撥水性
撥水性
撥水性
⑧ 導電性塗料
融雪系
⑨ 電磁石振動装置
親水性
⑦ 電熱ヒータ
フッ素樹脂系(酸化チタ
⑧
ン配合)高耐久型
⑨ 電磁石振動装置
⑩ 光触媒酸化チタン
親水性
⑩ 光触媒酸化チタン
親水性
⑪ ウレタン系フィルム
親水性
⑪ ウレタン系フィルム
親水性
撥水性
親水性
⑪
①
平 成 16年 度
・津 川 S T模 型 比 較 観 測 (9 工 法 )
・現 道 標 識 比 較 観 測 (2 工 法 )
45°
平 成 17年 度
・津 川 S T模 型 比 較 観 測 (1 0 工 法 )
・現 道 標 識 比 較 観 測 (3 構 造 )
・現 道 標 識 比 較 観 測 (2 工 法 )
図1
工法
60°
年度別調査項目
目を図1に示す。
図3 模型概略図
写真3 標識模型設置状況
3.津川ST比較観測
3.1 調査内容
3.2 観測結果
津川ST(図2)では、標識屋根の模型を製作・設置
ビデオカメラによる連続観測及び目視観測による性能
し、各工法別角度別の冠雪率、冠雪高さ、落雪回数等に
調査結果では、フッ素樹脂系(酸化チタン配合)塗装・
より性能を比較観測した。各年度での比較工法を表1に、
屋根角度60度が最も良好であった。これは、全観測年
*1国土交通省北陸地方整備局北陸技術事務所(前)建設専門官
*2同所技術課専門調査員
度を通して同様な傾向であった。平成16年度の屋根角
年度の平均値と、資料より収集した施工性とライフサイ
度60度の比較観測結果を図3、4、5に示す(比較工
クルコストを評価項目とし、これらの項目に重み付けし
法は表1を参照)。
て評価した。
100%
冠雪率の
表 2 工 法 別 評 価 概 要 一 覧
90%
時間占有率
さの時間占
有率では、
~90%
80%
冠雪率時間占有率 (%)
及び冠雪高
②のフッ素
~80%
70%
~70%
60%
~60%
50%
~50%
~40%
40%
~30%
30%
20%
H14落雪性能
H15落雪性能
H16落雪性能
H17落雪性能
①
化チタン配
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
落雪性能平均値
総合評価
⑪
冠雪高さ時間占有率 (%)
時間帯が多
1.0
1.0
4.0
3.5
3.0
2.0
3.0
3.1
5.1
0.5
2.0
3.0
2.5
-
-
-
2.8
5.3
1.0
3.0
3.0
2.5
2.5
3.0
3.0
2.8
6.8
0.5
2.0
4.0
2.0
-
-
-
2.0
4.5
0.5
2.0
4.0
2.0
-
-
-
3.0
5.5
1.0
3.0
-
2.0
1.0
2.0
2.0
1.8
5.8
1.0
1.0
-
1.5
1.5
2.5
2.5
2.0
4.0
0.5
1.0
-
-
2.0
2.0
3.0
2.3
3.8
0.5
3.0
-
-
2.0
2.0
3.0
2.3
5.8
0.5
1.0
-
-
6.0
-
-
6.0
7.5
0.5
0.5
-
-
6.0
-
-
6.0
7.0
0.5
1.0
-
-
-
-
6.0
6.0
7.5
標準型、⑯フッ素樹脂系(酸化チタン配合)高耐久型、
30cm~
70%
~30cm
60%
~20cm
50%
~10cm
~5cm
40%
0~2cm
30%
⑭電熱ヒータ、⑮導電性塗料が高い評価となった。しか
し、これらの工法はライフサイクルコストが比較的高い。
また、⑥フッ素系フィルムも総合では高評価であるが、
落雪性能が従来塗装と同程度であり性能評価が低い。性
20%
く確認さ
0.5
2.0
-
1.0
1.0
1.5
1.5
1.3
3.8
総合評価の結果、②フッ素樹脂系(酸化チタン配合)
90%
80%
高さの低い
0.5
1.0
3.0
4.0
-
-
-
3.5
5.0
光触 ウレタ フッ素 シリコ 電熱 導電 フッ素
媒酸 ン系 樹脂 ン樹 ヒータ 性塗 樹脂
化チタ フィル 系
脂+ア
料
系(酸
ン
ム
クリル
化チタ
樹脂
ン配
合)高
耐久
型
※アクリル樹脂塗料(従来塗装)を基準として評価
100%
が、他の工
雪率や冠雪
3.0
3.0
3.0
3.0
3.0
3.0
5.5
0.5
1.0
6.0
6.0
6.0
6.0
6.0
6.0
7.5
モー 電磁
ター振 石振
動式 動装
シート 置
図 4 冠雪率の時間占有率
合)標準型
法に比べ冠
H13落雪性能
0~10%
0%
フッ素 シリコ シリコ ウレタ フッ素 ポリエス
樹脂 ン系A ン系B ン系 系樹 テル長
系(酸
塗装 脂フィ 繊維
化チタ
ルム シート
ン配
合)標
準型
施工性
0.5
ライフサイクルコスト 2.0
~20%
10%
樹脂系(酸
アクリ
ル樹
脂塗
料(従
来塗
装)
~100%
能評価により同時に確認している耐久性では、工法毎に
10%
0%
れ、冠雪し
①
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪
図 5 冠雪高さの時間占有率
にくいと判
900
3年となっているが5年を経過しても性能は高評価であ
859
800
落雪回数で
った。
700
は、②のフ
587
回数
600
518
500
462
438
400
(酸化チタ
300
ン配合)標
100
補償期間が3年~15年とバラツキがあるものの観測で
は経年変化は認められなかった。②については耐久年数
1000
断される。
ッ素樹脂系
②
553
541
4.湯沢維持比較観測
470
335
4.1 調査内容
326
277
湯沢維持(図
200
湯沢維持出張所
7)では、標識
0
準型が他の
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪
図 6 落雪回数
工法に比べ
上部の模型を製
作・設置し、各
て落雪回数が多く確認され、冠雪率及び冠雪高さの結果
構造別の着雪率、
を併せ良好に落雪していたと判断される。また、最大冠
冠雪率、冠雪高
雪高さでは、②のフッ素樹脂系(酸化チタン配合)標準
さ、落雪回数等
型が他の工法に比べて比較的低いことが確認された。
により性能を比
図7
現地での目視観測により落雪状況を観測した結果で
較観測した。比較工法と標
も、屋根角度60度において②のフッ素樹脂系(酸化チ
識模型の概要を表3に、標
タン配合)標準型は良好に落雪し、冠雪しても他の工法
識模型設置状況を写真5に
と比べて早く落雪が始まり、落雪性能に優れていると判
示す。
断される。しか
観測は、構造や標識板の
し、屋根角度4
傾きを変化させた模型を設
5度においては
60度のような
①
②
屋根角度 60 度
②
①
観測箇所
屋根なし型
⇔
コラム型
写 真5 標識 模型設 置状況
表3 比較工法(標識模型概要)一覧
屋根角度 45 度
コラム型
従来型
片屋根型
屋根無し型
15
60
75
15
60
-
3
60
-
3
-
-
落雪性能は確認
されなかった(写
真4)。
模型構造図
写真4
冠雪状況
3.3 比較検討・評価
観測結果を踏まえ、工法別に比較検討を行った。評価
概要を表2に示す。評価は、工法別に落雪性能の全観測
標識板
屋根角度
傾斜角(°)
背面(°)
標識板裏面(°)
置し、前・背面をビデオカメラによる連続観測と目視観
冠雪高さでは、コラム型が他の3構造と比較し最も低く、
測で実施した。なお、着雪率は、標識板面積に対する着
落雪性能の優位性が伺える。
雪面積を百分率で表したものである。
現地での目視観測により落雪状況を観測した結果で
4.2 観測結果
も、コラム型は大量降雪時でも標識板表面に着雪しにく
100%
ビデオカメラに
よる連続観測及び
90%
目視観測による性
コラム型が最も良
85%
時間占有率(%)
能調査結果では、
~100
~90
~80
~70
~60
~50
~40
~30
~20
~10
0
95%
80%
75%
70%
65%
好であった。比較
60%
観測結果を図8、
50%
コラム型
従来型やコラム型
70%
60%
50%
40%
30%
は、傾斜の小さい
片屋根型や屋根な
0%
10%
し型と比較すると、
着雪しない時間帯
するような降雪時
間帯では片屋根型
70%
60%
40%
30%
コラム型
少ないものの顕著
25
高さ(㎝)
30
従来型
片屋根型
屋根無し型
6.0
6.0
3.0
3.0
②落雪性能
6.0
3.0
3.0
3.0
③イニシャルコスト
1.0
2.0
2.0
3.0
総合評価(①+②+③)
13.0
11.0
8.0
9.0
冠雪対策評価(②+③)
7.0
5.0
5.0
6.0
(構造)別に着雪対策性能と落雪性能、資料より収集し
たイニシャルコストを評価項目とし、これらの項目に重
み付けして評価した。
総合評価の結果、コラム型が最も高評価で、従来型は
標識面を傾けたことで着雪しにくくなっているが、冠雪
しやすく評価が下がった。片屋根は、表面着雪、冠雪状
34
と同様に、ビデオカメラによる連続観測と目視観測で実
施した。
たフッ素樹脂系(酸化チタン配合)塗装を対象として、
選定した。平成16年度は、屋根角度45度でフッ素樹
12.5
脂系(酸化チタン配合)高耐久型とアクリル樹脂塗料(従
来塗装)の比較観測を実施した。観測場所は、平野部(一
コラム型
従来型
片屋根
図11 最大冠雪高さ
コラム型
従来型
僅かで、20cm以上の冠雪
屋根なし
般国道18号妙高市乙吉地先)と山間部(同妙高市田口
地先)である。平成17年度は、屋根角度60度のフッ
素樹脂系(酸化チタン配合)高耐久型との屋根角度45
度のアクリル樹脂塗料(従来塗装)の比較観測を実施し
は見られなかった。また、
た。観測場所は平野部(一般国道7号胎内市船戸地先、
片屋根型
屋根無し型
が他の3構造より多く占め
同胎内市東本町地先)と山間部(同岩船郡山北町大沢地
先)である。
ており、コラム型の落雪性
能の優位性が伺える。最大
等により性能を比較観測した。観測は、模型の比較観測
識は、設置場所での影響も考慮し、平野部と山地部別に
0
冠雪高さの低い時間占有率
工法別・構造別の着雪率、冠雪率、冠雪高さ、落雪回数
25
5
12cm以上の時間占有率は
現道では、塗装系や構造の違う既設標識について、各
現道に試験的に設置された標識により実施した。観測標
29
10
構造とは異なり、
5.1 調査内容
けて、津川STにおける比較観測結果より高評価であっ
20
15
5.現道比較観測
塗装系の現道比較観測では、平成16~17年度にか
屋根なし型
35
時間占有率が若干
コラム型は他の3
片屋根型
40
100%における
の時間占有率では、
従来型
図10 冠雪高さの時間占有率
コラム型の冠雪率
かった。冠雪高さ
~30
~20
~15
~12
~10
~7
~5
~4
~3
~2
~1
0
50%
時間占有率では、
コラム型
①着雪対策性能
た。
80%
あった。冠雪率の
え、工法別に比較
冠雪対策のみの評価でも、コラム型が最も高評価であっ
90%
以外ほぼ同程度で
な違いは見られな
片屋根型
100%
時間占有率(%)
板に全面的に着雪
従来型
図9 冠雪率の時間占有率
た。ただし、標識
表4 工法(構造)別評価概要一覧
観測結果を踏ま
況の双方で評価点が低く、最も評価が低い結果となった。
コラム型
が多い傾向を示し
4.3 比較検討・評価
す。評価は、工法
~100
~90
~80
~70
~60
~50
~40
~30
~20
0~10
80%
20%
6)。
価結果を表4に示
屋根なし型
90%
時間占有率(%)
は、傾斜が大きい
片屋根型
100%
標識板への着雪
率の時間占有率で
従来型
図8 着雪率の時間占有率
示す(比較工法は
表3を参照)。
4構造の中で最も良好な落雪性能と判断される(写真
検討を行った。評
55%
9、10、11に
く、屋根部の冠雪は少量で落雪していることが確認され、
構造別の比較観測では、平成15~17年度にかけて、
写真6
冠雪状況
湯沢維持における比較観測結果より高評価であったコラ
ム型を対象として、現道に試験的に設置された標識によ
型では冠雪高さが低く少量で落雪している状況が確認で
り実施した。平成15年度は、コラム型(支柱屈曲型)、
きた。最大冠雪高さについても屋根角度60度のフッ素
コラム型(偏心アーム型)、振動型の比較観測を実施し
樹脂系(酸化チタン配合)高耐久型が屋根角度45度の
た。観測場所は山間部(構造順に一般国道17号南魚沼
アクリル樹脂塗料(従来塗装)より低い結果となった。
市四十日地先、一般国道49号東蒲原郡阿賀町野村地先、
以上の冠雪状況、落雪状況は、平野部においても同様な
一般国道17号魚沼市井口新田地先)である。平成17
傾向を示した。
年度は、コラム型(支柱屈曲型)、コラム型(新構造)、
①
②
③
従来型の比較観測を実施した。観測場所は平野部(一般
国道18号上越市三田・富岡地先)である。
5.2 観測結果
塗装系での観測結果では、屋根角度45度でのフッ素
図15
樹脂系(酸化チタン配合)高耐久型とアクリル樹脂塗料
(従来塗装)の落雪性能に顕著な違いは見られなかった。
落雪状況 屋根角度60度
フッ素樹脂系(酸化チタン配合)高耐久型
現地での目視観測により落雪状況を観測した結果で
そこで、屋根角度60度のフッ素樹脂系(酸化チタン配
も、山間部、平野部共に屋根角度60度のフッ素樹脂系
合)高耐久型と屋根角度45度のアクリル樹脂塗料(従
(酸化チタン配合)高耐久型が屋根角度45度のアクリ
来塗装)を比較したところ、屋根角度60度のフッ素樹
ル樹脂塗料(従来塗装)より冠雪率及び冠雪高さが低い
脂系(酸化チタン配合)高耐久型の落雪性能が良好であ
傾向を示し、早い段階で落雪する状況が確認できた。
る結果が得られた。平成17年度の山間部における比較
柱屈曲型)、コラム型(偏心アーム型)、振動型、平成1
観測結果を図12、13に示す。
冠雪率の時間占
有率及び冠雪高さ
は、屋根角度60
度のフッ素樹脂系
90%
~100%
~90%
~80%
~70%
~60%
~50%
~40%
~30%
~20%
0~10%
80%
冠雪率時間占有率 (%)
の時間占有率で
70%
60%
50%
40%
30%
20%
(酸化チタン配合)
7年度のコラム型(支柱屈曲型)、コラム型(新構造)、
山間部(山北地先)
100%
構造別の観測結果では、平成15年度のコラム型(支
従来型、いずれにおいても構造毎の顕著な冠雪状況の違
いは確認できなかった。
6.まとめと今後の課題
これまでの調査結果を基に、冠雪対策として評価が高
かったものを工法別に抽出・整理した。なお、標識屋根
10%
0%
高耐久型が屋根角
従来塗装(45度)
図12
度45度のアクリ
の角度は60度以上必要であり、標識板の角度は着雪防
フッ素樹脂系塗装(60度)
冠雪率の時間占有率
止のため15度必要と判断している。抽出結果を表5に
山間部(山北地先)
ル樹脂塗料(従来
示す。
100%
表5 冠雪対策工法別抽出一覧
塗装)より冠雪率
及び冠雪高さの低
い時間帯が多く確
認され、冠雪しに
くいと判断され
冠雪高さの時間占有率 (%)
90%
塗装系
80%
20cm~
70%
フッ素樹脂系(酸化チタン配合)
~20cm
60%
~15cm
施工性
50%
~10cm
40%
~5cm
30%
0~2cm
ライフサイクルコスト
イニシャルコスト
落雪性能
総合評価
20%
10%
0%
従来塗装(45度)
る。落雪状況では、
図13
フッ素樹脂系塗装(60度)
課題等
①
②
電熱ヒータ
導電性塗料
コラム型
従来型(参考)
0.5
1.0
-
6.0
7.5
0.5
0.5
-
6.0
7.0
-
-
1.0
6.0
7.0
-
-
2.0
3.0
5.0
・落雪性能は良好
である。
・イニシャルコスト
は安いが、支柱が
割高となり別途費
用が必要である。
・標識板傾斜角1
5度で着雪対策性
能が良好である。
(比較対象)
高耐久型
0.5
1.0
-
6.0
7.5
0.5
1.0
-
6.0
7.5
1.0
3.0
-
2.8
6.8
0.5
2.0
-
3.0
5.5
・屋根角度60度
での落雪性能が
良好である。
・現場塗装での性
能が保証されな
い。
・ライフサイクルコ
ストが高い。
・屋根角度60度
での落雪性能が
良好である。
・現場塗装での性
能が保証されな
い。
・ライフサイクルコ
ストが高い。
・落雪性能は従来
塗装と同程度で良
好でない。
・施工が容易で、
維持管理しやす
い。
・ライフサイクルコ
ストが安い。
(比較対象)
図14、15に示
したように、屋根
アクリル樹脂塗
料(従来塗装)
(参考)
標準型
冠雪高さの時間占有率
標識構造系
融雪系
フッ素系樹脂
フィルム
・落雪性能は良好 ・落雪性能は良好
だが、氷柱の発生 だが、氷柱の発生
と大量降雪時従来 が観測された。
塗装と同程度の冠 ・電気工事を伴
雪が観測された。 い、電源工事も必
要である。
・電気工事を伴
い、電源工事も必 ・ライフサイクルコ
ストが格段に高く、
要である。
・ライフサイクルコ 更に電源・氷柱対
ストが高く、更に電 策費用が必要で
源・氷柱対策費用 ある。
が必要である。
今回抽出した工法は、いずれにも一長一短あり、その
角度45度のアク
採用にあたっては個別の設置条件を整理の上、設置位置
リル樹脂塗料(従
・経済性・地域性等について具体的検討が必要である。
来塗装)では冠雪
7.おわりに
高さが高い状態で
まとまった塊が落
③
④
道路標識等の冠雪対策については、工法や構造を工夫
することによって、冬期道路の安全性の向上や維持管理
雪している状況が
の軽減が可能と考えられる。今回、既存の工法等につい
よく見られ、屋根
て比較評価を実施したが、近年の技術革新はめざましく
角度60度のフッ
比較工法以外の新技術も日々開発されており、それらを
素樹脂系(酸化チ
タン配合)高耐久
図14
落雪状況 屋根角度45度
含め今後も道路標識等の冠雪対策について更なる調査・
アクリル樹脂塗料(従来塗装)
検討を進めていかなければならないと考える。