板ガラスの破壊と設計強度 2-1-3

より高い強度が必要な場合には、引張り応力の
一部を打ち消す圧縮応力を、物理的または化学
的にガラス表面に導入して、より強いガラスとす
表1
厚さ(mm)
ることも可能です。強化ガラスや倍強度ガラス
などは、この原理を応用しています。
建築用板ガラスの一般的な話
2-1
強度の荷重速度の効果
(引用文献:L.V.Black:Bull.Am.Ceram.Soc.,15,1936)
荷重速度(N/s) 破壊応力(N/mm2)
2.97
15.7
74.0
2.92
5.2
62.3
2.97
1.8
53.0
2.97
0.6
48.1
2.97
0.21
47.1
2.90
0.07
44.6
表2
強度の荷重時間の効果
(引用文献:R.E.Mould and R.D.Southwick:Am.Ceram.Soc.,42,1959)
A
破壊応力
(N/mm2)
B
C
0.0025
66.7
−
56.9
0.012
63.3
96.1
53.4
0.05
58.3
89.7
47.1
0.226
53.0
81.9
42.7
0.82
49.5
80.4
36.3
4.0
46.1
66.7
32.4
15
41.2
58.8
30.4
60
37.3
51.0
26.0
600
32.9
42.7
22.1
荷重時間(s)
●板ガラスの破壊と設計強度
式に代入して許容荷重を算定する新しい方法が
ガラスは傷の状態で強度が変るために、ある特
開発され、平成12年建設省告示第1458号では
定の板ガラスの強度を正確に予測することはと
この技術から得られた結果が反映されています。
ても難しいことです。強度を推定する方法の1つ
板ガラスの強度は、荷重が作用する形態、継続
として、実大の試験体に荷重をかけて何枚も破
時間、支持される方法等によっても変ってきま
壊試験を行い、その結果を統計処理することが
す。特に、支持条件によってはガラスエッジに大
挙げられます。これにより実用上ほとんど破壊
きな応力が発生する場合がありますので、エッ
しない荷重(または応力)
を得ることができます。
ジ強度についても荷重の負荷時間や強度のバラ
しかし何十枚の破壊試験を行っても、100%破
ツキを考慮して許容応力を定めています。
壊しないという荷重をその結果から得ることは
特殊な場合のガラスの強度設計では、許容応力
できません。あくまでも、破壊の発生する確率
(または許容荷重)と、材料力学の計算または
がより小さい荷重(または応力)が示されるだけ
数値シミュレーションによる解析から得られる
です。
発生応力
(または発生荷重)
から決められていま
一般的に、建築用板ガラスでは、その強度の設
す。
計値(許容値)には、約1/1000の破壊確率とな
る荷重または応力を採用しています。これは、設
計値とした荷重の負荷のもとで1000枚のなか
の1枚が破壊する可能性があるということです。
ガラスの技術資料等に示される破壊荷重や許
荷重リング
容荷重のデータは、窓ガラスとして実際に使用
される取扱い状況や大きさ等を考慮した試験体
を用い、実際の風荷重の継続時間を考慮した破
壊試験を数多く実施して得られた結果を基本に
しています。近年では、数多くの同心円曲げ試験
( 図 8 参照)によりガラスの各品種の強度係数
支持リング
を求め、数値シミュレーションからガラスの応力
分布を解析し、強度係数と応力分布を破壊確率
2-1-3
図8
同心円曲げ試験