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ユートピアとは全ての人に自由なお金 / マイケル・ホフマン
Utopia means free money for everyone / MICHAEL HOFFMAN
http://search.japantimes.co.jp/cgi-bin/fd20101017bj.html
wtr000 2010-10-21 11:44:21
ユートピアとは全ての人への自由なお金
2010年10月17日(日)ジャパン・タイムズ マイケル・ホフマン
科学的にも技術的にも、世界は絶え間なくカオスに接している。毎日あらたな何かが齎される。
新しい発見、新しい装置、新しい技術、新しい救済。 変化の速度は目眩をおこさせ、私たちは辛
うじて、自分たちがどこに居るかを知る。昨日の新案は、今日の標準、そして明日の時代遅れだ
。
その他の領域に於ける、人類の試みの知的麻痺は目立って対象を為している。19世紀の資本主
義は私たちの経済を支配し、19世紀の民主主義は私たちの政治を管理する。私たちのほとんど
にとっての精神的な滋養物は、幾世代もの昔の宗教に頼っている。修正は加えられてきたものの
、激変ではなかった。驚くべき新たな政治、経済、宗教、もしくは哲学の概念について、最後に
あなたが聞いたのはいつのことだろう?
私たちがここで考慮する理念は、衝撃的なものだが、実はそれほど新たなものではない。ただそ
の社会的地位が、ゆっくりと育ってきたというだけである。変わり者や予言者は数世紀に渡って
それを扱ってきた。最近知られるようになったその名称は、あなたの注意を引くつけるために名
付けられたものではなく、むしろほとんどそうならないようにされてきたように見える。“ベー
シックインカム”:誰がここに潜在的な革命を見るのだろう?
それでも、それは表面ぎりぎりのところにある。「このトピックに関する、世界中の幅広い情報
に基づくディスカッションを育む」ために1986年に設立されたベーシックインカム・アース
・ネットワークが、そのウェブサイトで唱える、ベーシックインカムの定義とは、「すべての個
々人に、就労や資力調査をすることなく、無条件に支給される」というものである。
このシンプルな短い一文は、聖書にある「お前は顔に汗してパンを得る」から、厳然たる20世
紀の怠け者に対する警告、「ただより高いものはない」に至る、私たちが社会通念としての千年
王国として知り、考えてきたすべてに対して無邪気に反抗する。
その社会通念は間違いであったのだろうか?
ベーシックインカムは空想的に聞こえる。確かに。トマス・モアは1516年の『ユートピア』
にそれを予示している。 彼の想像上の理想的な島への虚構の航海は、窃盗犯の絞首刑という英国
の習慣に対する痛烈な批判であり、そのなかで「すべての人々に何らかの生存の手段を与えるこ
とは、遥かに要領を得たものであるでしょう」と言う。400年後、イギリスの哲学者、バート
ランド・ラッセルは(1918年の著書『自由への道:社会主義、アナキズム、サンディカリス
ム』のなかで)“普遍的な最低限所得保障”を要求しており、それによって「一定の少ない所得
、十分な生活必需品は働いていようがいまいが、全ての人に保障されるべきである」としている
。
フランスの経済学者で哲学者のアンドレ・ゴルツ氏は(1989年の著書『経済的理由の批判』
のなかで)、私たち自身の時代の観点から状況を説明する。「“より以上”と“より優れた”と
の間の関係は断たれている」と彼は主張する。「多くの生産物とサービスに対するわれわれの必
要性はすでに十分に満たされており、そして多くの未だわれわれが不満とする要求は、より多く
生産することでは満たされないが、異なる生産、あるいは安定した生産に抑えることで満たされ
るかも知れない。これはわれわれの空気、水、空間、静寂、美、時間と人との接触の必要性に関
してはとりわけ真実である。」
彼が描き出す結論とは、「このような状況において労働倫理は発展の可能性を止め、労働ベース
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の社会は危機に投げ込まれる」。
モラルとしての労働の概念は、社会の実質的な支柱であることに加え、私たちのほとんどに深く
根ざしており、疑問に感じること自体が困難であるように思える。革命と革命的なアフォリズム
の父であるカール・マルクスでさえ、「必要に応じて受け取る」前に「能力に応じて働く」こと
を要求する。
しかし、新たな時代は古い確信を侵食する。空想的な左翼の住処ではない「週間エコノミスト」
は9月21日発行のなかで、ベーシックインカムに9ページを捧げ、共感を寄せた取り扱いをし
ている。重要なポイントは、ワーキングプアーの衝撃的な急増である。40年前、貧しい暮らし
をしていた7歳の日本の子供は、ハイテクの予言者としてではなく、無知蒙昧な過去を思い起こ
させる人々に、そしてその人々がグローバル化した未来にショックを受けるであろうと話す。こ
れは実際に私たちの現在である。再治療をするどころが、貧困は広がり、病的で供給過剰経済の
もとでの仕事は、安定した雇用と生活賃金を保障せず、この問題の解決とはならない。
仮にすべてを認めても、仮に私たちが、矛盾する前提を引き受けて学ぶことができ、生きていく
ことの全くの真実が、私たちすべてに、生命を維持するために必要な最小限の物資に対する権利
を与えるとはいえ、そのお金はどこから来るのか?もしも経済がワーキングプアーを支えられな
ければ、非雇用の、更には仕事を探して得ようとしない、怠惰すぎるものを支えることはできる
のか?富裕層や超富裕層はいうまでもなく、完全なる普遍性というベーシックインカムの重要な
信条のために。
それは可能だと経済学者・原田泰は「週間エコノミスト」のなかで主張する。彼はこのように算
定した。「子どもたちと高齢者はすでに手当を受け取っているので、私たちは人口の16歳から
64歳の部分(おおよそ8100万人)についてお話しします。ひと月7万円をベーシックイン
カムの金額として、1年の総コストは、8100万人×70000円×12ヶ月=68兆円とな
ります。政府がその計画のもとで支払うのを止めると思われる、様々な控除や公共事業、中小企
業、農家などへの補助金をそこから差し引きます。例えば、労働者の被扶養家族、配偶者に対し
て現在用いられている税額控除という要素も同様に。最終的には、ベーシックインカムにかかる
コストはほとんどないといえるでしょう」と原田は主張する。
私たちは21世紀最初の、技術とは無関係な革命のふちにいるのだろうか?
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