エンジンの動力を吸収します

II- 6
II- 7
大気汚染防止・水質汚濁防止等への取り組み
JALグループの事業と大気汚染との関わり
低排出物航空機エンジンの導入
航空機用防除氷液散布
オゾン層保護への取り組み
JALグループが使用しているオゾン層破壊物質
JALグループの事業が大気に与える負荷としては、以下のものが
従来の排出ガス低減技術は、燃焼室の高温・高圧化により燃料効
冬期に航空機の機体への着氷・積雪を防止するために使用する防
地上10∼50km上空の成層圏に存在するオゾン層は、太陽光に
挙げられます。
率を追求したためHCおよびCOの大幅な削減を可能にしました。
除氷液(主成分:プロピレングリコール)の使用量は、降雪量、
含まれる有害な紫外線の大部分を吸収し、地球上の生物を守って
最近では燃焼室のデザインや種々の燃焼方式について研究され、
雪質、除霜回数等により変動します。
います。近年、CFC・HCFC・ハロンなどの人工の化学物質が
・航空機の運航において化石燃料を燃焼する際に、CO(一酸化炭
これまで成果の上がりにくかったNOxの低減においても一部実
プロピレングリコールは増粘剤等の食品添加物にも使われている
オゾン層を破壊していることが明らかになっています。
素)
・SOx(硫黄酸化物)
・HC(炭化水素)
・NOx(窒素酸化物)等
用化が進んでいます。JALグループでは新型航空機導入にあたっ
化学物質ですが、河川等の公共水域に流れると富栄養化が進むた
JALグループではCFC・HCFC等のいわゆるフロン類を、カー
の大気汚染物質を排出しています。
ては、低排出物航空機用エンジンの採用を推進しています。
めに配慮が必要となっています。防除氷液は2002年度に国土交
エアコンを除き下表のとおり使用しています。使用済みのCFC・
また、地上における航空機の電力、空調等のエネルギー源として、
通省の主催する「デアイシング問題検討会」でその適正使用につ
HCFC・ハロンはすべて回収し、適正に保管または破壊処理を
航空機装備のAPU
(補助動力装置)
に替えて、GPU
(地上動力装置)
いて検討されており、日本航空インターナショナルと日本航空
行っています。
を極力使用しています。
(GPUについては、P17をご参照下さい)
ジャパンもこれに参加しています。
JALグル ープにおけるオゾン層破壊物質 の 使用・代替状況
・地上では航空機エンジン試運転、航空機装備のAPU(補助動力
装置)運転、整備・運航支援等のための車両の走行等により、
上記と同様の化石燃料燃焼排出物を発生させます。
II
環
境
保
全
活
動
単位:キロリットル
6
・旅客の急病、機材故障等で緊急着陸が必要となった場合、着陸
大
気
汚
染
防
止
・
水
質
汚
濁
防
止
等
へ
の
取
り
組
み
整備部門における静電塗装の導入
2001年度
2002年度
2003年度
成田空港
20
135
63
3
69
78
時の安全確保のため、搭載燃料を空中で投棄することがありま
整備部門では、塗装方法や品質管理の改善による塗料使用量の削
羽田空港
す。その場合は管制により指定された投棄場所および高度に従
減、揮発性溶剤の少ない塗料の採用、シール剤等整備補助材料の
他国内空港
1,177
1,427
2,044
計
1,200
1,631
2,185
い、市街地を避けて実施します。空中で投棄した燃料は霧散す
使用抑制、塗装剥離作業の機械方式の採用、塗装剥離剤の変更等
るため、大気および海洋汚染の実害は報告されておりません。
により大気への環境負荷低減を図っています。
2003年度は16件発生し、約64万ポンド(約360キロリッ
航空機吹き付け塗装作業については、有機溶剤の大気への拡散の
トル)の燃料を投棄しました。
改善を目指し、静電塗装を1999年より検討してきました。試験
の結果、塗料の付着率の向上により有機溶剤使用量を削減でき、
・航空機整備作業等で用いる塗料や溶剤等から、有機成分が大気
中に排出されています。
排水処理
作業場床面の養生の範囲が狭くて済むことから養生資材の廃棄
各整備工場から発生する排水については、6か所の排水処理施設
量を削減できることが確認できました。また、品質・生産面でも
により、法に基づく適正な水質管理を実施し、下水道に排水して
よい結果を得たことから、2003年3月に正式に導入しています。
います。詳しくはP21をご参照下さい。
オゾン層
破壊物質
CFC
特定フロン
(通称)
HCFC
代替フロン
(通称)の
一種
これらの負荷を削減するために、JALグループでは以下の取り組
みを実施しています。
航空機エンジン排出物規制の強化
用 途
機体に塗料を塗らない無塗装機材を1992年より貨物専用機の
公害防止
一機に投入しています。これは一機分での塗布量が約150kgに
整備工場等の施設設備については、大気汚染防止法を含む公害6
ICAO
(国際民間航空機構)
では、排気物証明制度と燃料排出証明
もなる機体用塗料と、それを除去する塗装剥離剤の使用量を抑え
法(他に水質汚濁防止法、悪臭防止法、土壌汚染防止法、振動規制
制度により航空機エンジンから排出するHC、CO、NOx、および煤煙
るために始めたものですが、一方で腐食を防ぐためにアルミニウ
法、騒音規制法)等の各種環境関連法に基づき、適正な管理を
の規制
(ICAO付属書16 Part 2
「航空機エンジン排出物」
/1982年
ム表面を定期的に磨いて汚れを落とす必要があります。
行っています。過去5年間に公害6法に対する違反はありません
2月発効)
を行っています。
無塗装機は長期にわたる実機での運用においても特に問題は認
でした。
順次HCFCに交換、
またはHFC使用
機器に更新中。
空港内航空貨物用
冷凍冷蔵庫冷媒
順次HCFCに交換、
またはHFC使用
機器に更新中。
航空機構造部材
探傷検査用
エアゾール
使用を中止し、二酸化炭素等のいわ
ゆるフロン類以外のものに変更中。
フライトシミュレータ
機器等洗浄剤
使用中
建物施設空調
装置用冷媒
使用中
空港内航空貨物用
冷凍冷蔵庫冷媒
使用中
航空機搭載の
消火装置・消火器
現時点でハロンに替わるものなし。
定期法定検査の際に使用したハロン
は、ほぼ100 %回収・再生可能な装置
を導入し、備蓄および再生使用するこ
とで対応中。
建物施設の消火
消火装置・消火器の新設時または
更新時に、代替の二酸化炭素に変更中。
輸入農産物の
害虫駆除
使用中
この規制はその後改定され、2000年時点でNOx排出基準は
められず、また燃料の節約にもなるなど環境への負荷が小さいこ
1986年対比で20%強化されており、1996年1月以降に型式
とから、2004年度より旅客機に比べてアルミニウム表面を磨き
証明を取得するエンジン、および2000年1月以降に生産される
やすい貨物専用機に追加投入することにしました。2004年度は
全型式エンジンに適用されています。
2機の無塗装のB747-400F型貨物専用機を投入する予定です。
ハロン
臭化メチル
使用・代替状況
建物施設空調
装置用冷媒
無塗装機材の導入
7
オ
ゾ
ン
層
保
護
へ
の
取
り
組
み
ハロン回収装置の導入
1999年3月にICAOはNOx排出基準を従前より更に16%(エン
JALグループ航空機の消火装置に使われているハロンには、エ
ジン圧力比30の場合)強化する案を正式に採択しました。2004
ンジン、貨物室等用のハロン-1301と、客室用のハロン-1211
年1月以降に製造・出荷された新型式エンジンから適用となって
の2種類があります。ハロンは消火能力、汎用性、使用後の視認
います。
性等に優れていますが、オゾン層破壊物質であることから、消
また2004年2月、ICAOは1999年3月採択の新NOx排出基準
火装置の点検保守時には大気に放出させることなく回収し再使
を更に12%強化する基準案を採択しました。対象は新規型式
用または保管しています。
証明取得エンジンで、2008年に規制開始となります。HC、CO
以前、JALグループの所有するハロン回収装置はハロン-1301用
に関しては、現時点では排出基準の強化は検討されていません。
のみで、ハロン-1211については日本国内に回収装置がありません
日本でも、航空機の耐空証明取得に際し、航空法(1997年10月
でした。2002年度にJALエアテック社の協力により成田部品事業
改正)にて航空機エンジンの排出物の基準が設定されています。
部内に日本で初めてハロン-1211回収装置を導入し、航空機用の
無塗装機材
25
空 港
ハロンを自社内で回収再使用するシステムを確立しています。
26
II
環
境
保
全
活
動