第74回 日本呼吸器学会 日本結核病学会 九州支部 春季学術講演会 プログラム 講 演 抄 録 事務局:独立行政法人国立病院機構大牟田病院 〒837-0911 福岡県大牟田市橘1044-1 TEL:0944-58-1122 FAX:0944-58-6804 第 74 回日本呼吸器学会・日本結核病学会 九州支部春季学術講演会の開催にあたって 会長 川崎 雅之 国立病院機構大牟田病院副院長 この度、第74回日本呼吸器学会・日本結核病学会九州支部春季学術講演会を国立病院機構大 牟田病院呼吸器科でお世話させていただくことになり、大変光栄に存じております。大牟田病 院でこの学術講演会を開催するのは、篠田厚先生、石橋凡雄先生を初めてとし私で5人目とな ります。学会と大牟田病院の歴史をひしひしと感じ、過去の学会と同様に有意義な会にしよう と考えています。過去4回は大牟田市での開催でしたが、今回は福岡市で開催させていただくこ とといたしました。また、今回の春季学術講演会より開催時期が例年より早まり2015年3月7日 (土)となりました。今年度3回目の地方会であり、また総会の直前となり、皆様にはご負担を おかけいたしますが、充実した講演会になりますようにご協力をお願い申し上げます。会員の 皆さまには93題もの一般演題のご応募をいただき、誠にありがとうございました。 プログラムは若手医師にも興味を持って参加いただくように思いながら組みました。特別講 演として地域医療機能推進機構東京山手メディカルセンター呼吸器内科部長徳田均先生(生物 学的製剤と呼吸器疾患・診療の手引き作成委員会委員長)をお迎えし“関節リウマチの肺病変 −生物学的製剤の時代に入って見えてきたもの”のタイトルでお話いただきます。シンポジウ ムは、“非結核性抗酸菌症の最前線”と銘打って菌側因子、患者側因子、診断、治療の方面か ら最先端のお話をしていただきます。リウマチの肺病変、非結核性抗酸菌症は皆さん臨床で迷 われる場面も多いかと思います。日々の診療に役立つことを期待しています。教育講演は九州 大学胸部疾患研究施設の高山浩一先生に肺癌の薬物療法に関してお願いしています。午後には 若手医師のためのセミナーと題してブログや数々の著書で有名な国立病院機構近畿中央胸部疾 患センター呼吸器内科医師倉原優先生にお話しいただきます。また、禁煙推進のセッション、 男女共同参画セッションも組み込んでいます。喫煙の問題、女性医師の問題は、皆さん興味が あるものと思いますので、是非ご参加ください。 学会は、2015年3月7日(土)に福岡市博多区吉塚にある福岡県中小企業振興センターで開催 いたします。会場はJR博多駅から電車で約3分のJR吉塚駅に隣接しており、交通の便の良いとこ ろです。学会参加の後には、初春の博多を充分お楽しみください。多数のご参加を心よりお待 ちしております。 平成27年3月 −3− ご案内 参加者へのご案内 1.参加受付 【受付場所】福岡県中小企業振興センター 2F ロビー 【受付時間】3月7日(土)8:20∼16:30 2.学会参加費:3,000円 ・ネームカード(参加証兼領収書)を受け取り、所属、氏名を各自ご記入の上、会場内では常時 ご着用ください。 ・学部学生(大学院生を除く)と初期研修医は無料です(証明書をご持参ください)。 3.抄録集販売 ・会員の方へは事前に抄録集を送付いたしております。 ・学術講演会当日は、福岡県中小企業振興センター 2F ロビーにて1冊2,000円で販売いた します。数に限りがありますので、予めご了承ください。 4.共催セミナー ランチョンセミナー1 3月7日(土)12:10∼13:10 A会場 ランチョンセミナー2 3月7日(土)12:10∼13:10 B会場 ランチョンセミナー3 3月7日(土)12:10∼13:10 C会場 アフタヌーンセミナー 3月7日(土)15:10∼16:10 A会場 5.各種サービス ・クロークは福岡県中小企業振興センター 2F ロビーにてご用意しております。 6.注意事項 ・昼食はランチョンセミナーをご利用になることをお勧めいたします。 ・会場内の呼び出しは行いません。 ・会場内では携帯電話の電源を切るかマナーモードに切り替え、講演中または発表中の会場内で の使用はご遠慮ください。 ・会場内は禁煙とさせていただきます。 ・会場内での発言は、すべて座長の指示に従い、必ず所定の場所でマイクを用いて所属・氏名を 述べてから簡潔に発言してください。 ・掲示・展示・印刷物の配布・ビデオ撮影などは会長の許可がない場合はご遠慮ください。 一般口演者の方へ 1.発表時間 ・講演時間は7分(発表5分、討論2分)です。 ・座長の指示のもとに口演時間を厳守してください。 ・口演終了1分前に黄ランプ、終了は赤ランプでお知らせします。 2.発表形式 ・発表はPCプレゼンテーションに限定します(スライド不可)。 ・各会場にご用意するPCのOSはWindows7となります。 ※Macintoshの場合はPC本体の持ち込みとさせていただきます。 ・発表データは以下の点をご確認のうえ、ご準備ください。 3.発表データ ・発表データはUSBフラッシュメモリーまたはCD-Rにてご用意ください。 ・対応可能なアプリケーションソフトはPowerPoint2003・2007・2010・2013となり ます。 −5− ・動画・音声はご遠慮ください。 ・ファイル名は、「演題番号・演者名. ppt(pptx)」としてください。 例)74 呼吸太郎. ppt ・発表データ作成の際はWindows標準フォント〔MS明朝、MSP明朝、MSゴシック、MSPゴ シック等〕をご使用ください。それ以外のフォントをご使用されますと、画面に表示されな かったり文字位置がずれるなど正常に表示されないことがこざいますのでご注意ください。 ・メディアを介したウイルス感染の事例がありますので、あらかじめ最新のウイルス駆除ソフト でチェックしてください。 ・発表データ作成後、他のパソコンで正常に動作するかチェックしてください。 ・受付時にコピーした発表データは、講演会終了後に事務局が削除いたします。 4.PCデータ受付 【PCデータ受付場所】福岡県中小企業振興センター 2F ロビー 【PCデータ受付時間】3月7日(土) 8:20∼16:30 ※午前は混雑が予想されます。午後の部の一般演題PCデータ受付は、なるべく11時以降にお願 いいたします。 5.注意事項 ・発表予定時刻の30分前までに各会場前のPCデータ受付にて動作の確認を行ってください。 ・発表の際は、演者ご本人によりPCの操作をお願いいたします。 ・次演者の方は、前演者が登壇されたら、必ず「次演者席」にご着席ください。 ・口演発表者は卒後臨床研修医を除いて本学会会員に限られます。未入会者は入会手続きをお取 りください。 ・不測の事態に備えて、USBフラッシュメモリーまたはCD-Rにてバックアップデータをご持参 されることをお勧めいたします。 一般口演座長へのお願い 1.座長は担当セッション開始予定時間15分前までに「次座長席」に必ずご着席ください。 特に受付はございません。 2.各セッションの進行は座長に一任しますが、終了時間を遵守してください。 その他 1.日本結核病学会会員で結核関連の発表をする場合、PCデータ受付の際に、学会誌掲載用の抄録を CD-Rでご提出ください。内容は演者名、共同演者名、所属、タイトル、抄録(200字)としてく ださい。なお、ご提示いただいたCD-Rは返却できかねますのでご了承ください。 2.合同運営委員会・合同評議員会 合同運営委員会:3月6日(金)16:00∼17:00 ホテル日航福岡 新館B1F ポワール 合同評議員会 :3月6日(金)17:10∼18:10 ホテル日航福岡 新館2F ラ・メール −6− 九州支部次期および次々期学術講演会のお知らせ ○第75回日本呼吸器学会・日本結核病学会 日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会 九州支部 秋季学術講演会 会 長:林 真一郎(元佐賀大学呼吸器内科) 会 期:2015年10月2日(金)∼3日(土) 会 場:ホテルグランデはがくれ ○第76回日本呼吸器学会・日本結核病学会 九州支部 春季学術講演会 会 長:川畑 政治(国立病院機構南九州病院) 会 期:2016年3月19日(土) 会 場:かごしま県民交流センター なお本学会では、都合により会場での垂れ幕による掲示をいたしませんのでご了承ください。 −7− 学会日程表(3 月 7 日(土)) A 会場 2F 大ホール 324席 B 会場 2F 202会議室 90席 C 会場 3F 301会議室 120席 肺腫瘍1 8:50∼9:18 感染症1 8:50∼9:18 肺腫瘍2 9:18∼9:46 感染症2 9:18∼9:46 間質性肺炎 9:46∼10:21 COPD 9:46∼10:14 8:00 開会式 8:45∼8:50 8:30 9:00 9:30 10:00 10:30 シンポジウム 「非結核性抗酸菌症の最前線」 座長:永田 忍彦 藤田 次郎 演者:中川 拓 若松謙太郎 仲本 敦 藤田 昌樹 11:00 11:30 教育講演 座長:原 信之 演者:高山 浩一 サルコイドーシス 10:21∼10:56 血管炎 10:56∼11:24 薬剤 11:24∼11:59 気管支喘息 10:14∼10:49 症例1 10:49∼11:17 症例2 11:17∼11:52 12:00 12:30 13:00 ランチョンセミナー1 座長:福田 実 演者:石本 裕士 共催:中外製薬株式会社 ランチョンセミナー2 座長:岩永 知秋 演者:藤井 一彦 共催:帝人在宅医療株式会社 ランチョンセミナー3 座長:古藤 洋 演者:保澤総一郎 共催:アストラゼネカ株式会社 13:30 14:00 14:30 15:00 15:30 16:00 16:30 17:00 特別講演 座長:川崎 雅之 演者:徳田 均 会員みんなで考える禁煙推進活動 男女共同参画セッション 座長:吉永 健 講演:吉井 千春 アフタヌーンセミナー 座長:千場 博 演者:瀬戸 貴司 共催:小野薬品工業株式会社 若手医師のための教育セミナー 座長:中西 洋一 演者:倉原 優 座長:興侶 博次 演者:渡辺憲太朗 津田 徹 肺腫瘍3 14:25∼15:00 肺腫瘍4 15:00∼15:35 肺腫瘍5 15:35∼16:10 肺腫瘍6 16:10∼16:38 17:30 閉会式 17:10∼17:15 18:00 18:30 −8− 抗酸菌症1 14:25∼14:53 抗酸菌症2 14:53∼15:28 感染症3 15:28∼15:56 感染症4 15:56∼16:24 検査 16:24∼16:52 座長一覧 セッション名 座長 演題番号 時間 会場 3月7日(土) シンポジウム 永 田 忍 彦 8:50∼10:50 A シンポジウム 藤 田 次 郎 8:50∼10:50 A 教育講演 原 信 之 11:00∼12:00 A ランチョンセミナー1 福 田 実 12:10∼13:10 A 特別講演 川 崎 雅 之 13:20∼14:20 A 呼吸器学会会員による禁煙推進のお願い 興 侶 博 次 14:25∼14:35 A 男女共同参画セッション 吉 永 健 14:35∼15:05 A アフタヌーンセミナー 千 場 博 15:10∼16:10 A 若手医師のための教育セミナー 中 西 洋 一 16:10∼17:10 A 肺腫瘍1 福 田 正 明 1∼4 8:50∼9:18 B 肺腫瘍2 一 木 昌 郎 5∼8 9:18∼9:46 B 間質性肺炎 一 門 和 哉 9∼13 9:46∼10:21 B サルコイドーシス 濱 田 直 樹 14∼18 10:21∼10:56 B 血管炎 矢 寺 和 博 19∼22 10:56∼11:24 B 薬剤 北 里 裕 彦 23∼27 11:24∼11:59 B ランチョンセミナー2 岩 永 知 秋 12:10∼13:10 B 肺腫瘍3 海 老 規 之 28∼32 14:25∼15:00 B 肺腫瘍4 森 永 亮太郎 33∼37 15:00∼15:35 B 肺腫瘍5 東 公 一 38∼42 15:35∼16:10 B 肺腫瘍6 内 野 順 治 43∼46 16:10∼16:38 B 感染症1 阿 部 航 47∼50 8:50∼9:18 C 感染症2 力 丸 徹 51∼54 9:18∼9:46 C COPD 川 山 智 隆 55∼58 9:46∼10:14 C 気管支喘息 東 元 一 晃 59∼63 10:14∼10:49 C 症例1 柏 原 光 介 64∼67 10:49∼11:17 C 症例2 高 田 昇 平 68∼72 11:17∼11:52 C ランチョンセミナー3 古 藤 洋 12:10∼13:10 C 抗酸菌症1 大 湾 勤 子 73∼76 14:25∼14:53 C 抗酸菌症2 是 枝 快 房 77∼81 14:53∼15:28 C 感染症3 原 永 修 作 82∼85 15:28∼15:56 C 感染症4 青 木 洋 介 86∼89 15:56∼16:24 C 検査 吉 田 誠 90∼93 16:24∼16:52 C −9− 会場へのアクセス 九大医学部 馬出九大病院前駅 福岡県庁 パピヨンプラザ 至博多 馬出小 吉塚駅前 東公園 妙見交差点 JR鹿児島本線 地下鉄 福岡県警本部 市民病院 JR吉塚駅 JR山陽新幹線 至小倉 東出口 歩行者専用道路 福岡銀行 吉塚駅東口 吉塚2丁目 福岡県中小企業振興センタービル 吉塚駅 東口交差点 地下鉄13分 馬出九大病院前 地下鉄5分 (中洲川端のりかえ貝塚方面) (3番出口) 博 多 駅 JR3分 吉塚駅 (東口) 至空港 徒歩10分 徒歩0分 (小倉門司港方面) 地下鉄6分 (福岡空港方面) 天 神 地下鉄6分 馬出九大病院前 (貝塚方面) (3番出口) 徒歩10分 ※駐車場(有料)はありますが、台数に限りがございます。満車の場合はJR吉塚駅前の駐車場をご利用ください。 −10− 福岡県中小企業振興センター 福岡空港 新二又瀬 交差点 会場案内図 「福岡県中小企業振興センター」 (A ∼ C 会場) 3F EV EV EV 2F ホワイエ 吹き抜け エレ ベーターホール 搬入EV EV −11− EV EV プログラム 主要プログラム 3月7日(土) 8:45∼8:50 A会場 開会式 会 長 川崎 雅之 8:50∼10:50 A会場 シンポジウム“非結核性抗菌症の最前線” 座 長 永田 忍彦(福岡大学筑紫病院呼吸器内科) 藤田 次郎(琉球大学大学院医学研究科感染症・呼吸器・消化器内科学講座) 1 「非結核性抗酸菌症の菌側因子の解析」 (国立病院機構東名古屋病院臨床研究部・呼吸器内科 中川 拓) 2 「非結核性抗酸菌症と栄養」 (国立病院機構大牟田病院呼吸器内科 若松 謙太郎) 3 「非結核性抗酸菌症の診断」 (国立病院機構沖縄病院呼吸器内科 仲本 敦) 4 「肺非結核性抗酸菌症の治療 −最近の進歩−」 (福岡大学病院呼吸器内科 藤田 昌樹) 11:00∼12:00 A会場 教育講演 座 長 原 信之(公益社団法人すこやか健康事業団) 演 題 「進行期肺がんの薬物療法」 高山 浩一(九州大学大学院医学研究院附属胸部疾患研究施設) 12:10∼13:10 A会場 ランチョンセミナー1 座 長 福田 実(長崎大学病院がん診療センター) 演 題 「薬剤性間質性肺炎の診断と治療」 石本 裕士(産業医科大学医学部呼吸器内科学) 12:10∼13:10 B会場 ランチョンセミナー2 座 長 岩永 知秋(国立病院機構福岡病院) 演 題 「慢性II型呼吸不全に対するNPPV療法の新機軸 “iVAPS mode” ;期待と問題点」 藤井 一彦(熊本大学大学院生命科学研究部) −15− 主要プログラム 3月7日(土) 12:10∼13:10 C会場 ランチョンセミナー3 座 長 古藤 洋(九州中央病院呼吸器内科) 演 題 「喘息実地臨床におけるSMART療法とアンメットニーズ」 保澤 総一郎(広島アレルギー呼吸器クリニック) 13:20∼14:20 A会場 特別講演 座 長 川崎 雅之(国立病院機構大牟田病院) 演 題 「関節リウマチの肺病変−生物学的製剤の時代に入って見えてきたもの」 徳田 均(地域医療機能推進機構東京山手メディカルセンター呼吸器内科) 14:25∼14:35 A会場 会員みんなで考える禁煙推進活動 座 長 興侶 博次(日本呼吸器学会禁煙推進委員会委員長) 演 題 1「福岡大学が取り組んでいる医学部学生の喫煙禁止規則」 渡辺憲太朗(福岡大学医学部呼吸器内科) 2「呼吸器学会 みんなで禁煙を拡げましょう!」 津田 徹(日本呼吸器学会禁煙推進委員) 14:35∼15:05 A会場 男女共同参画セッション 座 長 吉永 健(熊本中央病院呼吸器内科) 演 題 「九州支部女性呼吸器内科医に対するアンケート調査結果」 吉井 千春(産業医科大学若松病院呼吸器内科) 15:10∼16:10 A会場 アフタヌーンセミナー 座 長 千場 博(熊本市医師会熊本地域医療センター呼吸器内科) 演 題 「肺癌学会肺癌診療ガイドラインの改定ポイント」 瀬戸 貴司(国立病院機構九州がんセンター呼吸器腫瘍科) 16:10∼17:10 A会場 若手医師のための教育セミナー 座 長 中西 洋一(九州大学大学院医学研究院附属胸部疾患研究施設) 演 題 「若手医師のための呼吸器内科との向き合い方」 倉原 優(国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科) −16− B会場 3月7日(土) 肺腫瘍 1 8:50 ∼ 9:18 座 長 福田 正明(日本赤十字社長崎原爆病院呼吸器内科) 1 ALK陽性肺癌に対してクリゾチニブによる中毒疹のためアレクチニブに変更して有効性が認められた一例 熊本大学医学部附属病院呼吸器内科 山口 絵美 2 当院における1次治療Erlotinib投与症例の検討 国立病院機構九州医療センター呼吸器科 佐々木 潤 3 クリゾチニブ治療経過中に好中球減少を認めた1例 大分県立病院呼吸器内科 松本 紘幸 4 エルロチニブが奏功したEGFR遺伝子変異陰性肺腺癌の1例 国立病院機構大牟田病院呼吸器科 伊勢 信治 肺腫瘍 2 9:18 ∼ 9:46 座 長 一木 昌郎(国立病院機構九州医療センター呼吸器科) 5 ゲフィチニブでCRとなり長期生存しているIV期肺大細胞がんの1例 久留米大学内科学講座呼吸器・神経・膠原病内科 平岡 裕樹 6 当科における非小細胞肺癌に対するcrizotinibの使用経験 大分赤十字病院呼吸器内科 後藤 昭彦 7 腎障害合併非小細胞肺がん患者に対するALK阻害剤の使用経験 日本赤十字社長崎原爆病院呼吸器内科 三溝 和貴 8 クリゾチニブによる薬剤性肺障害をきたし,後にアレクチニブを問題なく投与できたALK陽性非小細胞癌の一例 九州大学大学院医学研究院附属胸部疾患研究施設 古賀祐一郎 −17− 間質性肺炎 9:46 ∼ 10:21 座 長 一門 和哉(済生会熊本病院呼吸器科) 9 間質性肺疾患による急性呼吸窮迫症候群に対してrespiratory ECMO使用にて救命できた一例 九州大学大学院医学研究院付属胸部疾患研究施設 片平 雄之 10 間質性肺炎における胸腔鏡下肺生検症例の検討 国立病院機構福岡東医療センター 濱田 利徳 11 当院におけるピルフェニドンの使用症例の臨床的検討 九州大学大学院医学研究院附属胸部疾患研究施設 坪内 和哉 12 肺病変の増悪・軽快の自然経過を追跡できたIgG4関連肺疾患の1例 国立病院機構福岡東医療センター呼吸器科 古鉄 泰彬 13 両肺に多発性結節陰影を呈したIgG4関連疾患の一例 佐賀大学医学部内科学講座血液・呼吸器・腫瘍内科 貞松 宏典 サルコイドーシス 10:21 ∼ 10:56 座 長 濱田 直樹(九州大学大学院医学研究院附属胸部疾患研究施設) 14 膿疱性乾癬に対するインフリキシマブ治療中止後にサルコイドーシスを発症した一例 長崎大学病院第二内科 吉岡佐千佳 15 高熱を主訴に発症したサルコイドーシスの1例 福岡大学筑紫病院呼吸器内科 牛島真一郎 16 多彩な症状と多発肺結節を伴った大腸クローン病の一例 飯塚病院呼吸器病センター呼吸器内科 飛野 和則 17 全身の疼痛や脱力を契機に発見されたサルコイドーシスの1例 九州大学大学院医学研究院付属胸部疾患研究施設 榎津 愛実 18 サルコイドーシスの肺病変として経過中にろ胞性リンパ腫を発症した一例 製鉄記念八幡病院 林 康之 −18− 血管炎 10:56 ∼ 11:24 座 長 矢寺 和博(産業医科大学医学部呼吸器内科学) 19 嚢胞状気管支拡張症の長期管理中にMPO-ANCA関連血管炎を合併した1例 久留米大学内科学講座呼吸器・神経・膠原病内科部門 古賀 琢眞 20 潰瘍性大腸炎に合併した多発血管炎性肉芽腫症(GPA)の一例 九州大学病院臨床教育センター 古川 里恵 21 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)経過中に細気管支炎を呈した一例 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科呼吸器内科学 安田 俊介 22 治療経過中に声門下気管狭窄を呈したWegener 肉芽腫症(GPA)の一例 熊本中央病院呼吸器科 丸山 功祐 薬剤 11:24 ∼ 11:59 座 長 北里 裕彦(地域医療機能推進機構久留米総合病院呼吸器内科) 23 薬剤の関与が疑われた、Acute fibrinous and organizing pneumoniaの一例 北九州総合病院内科 川口健太郎 24 N-アセチルシステイン吸入療法により薬剤性肺障害が生じた特発性肺線維症の1例 産業医科大学医学部呼吸器内科学 福田 洋子 25 外科的肺生検を行ったメシル酸イマチニブによる薬剤性肺障害が考えられた1例 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科呼吸器内科学 松山 緑 26 高流量式鼻カニュラが診断に有用であった、薬剤性肺胞出血と考えられた1例 北九州総合病院内科 中村 祥一 27 KL-6/SLX(K/S)比を用いた、間質性肺炎合併肺癌患者における薬剤性肺障害発症の予測 熊本市医師会熊本地域医療センター呼吸器内科 柏原 光介 −19− 肺腫瘍 3 14:25 ∼ 15:00 座 長 海老 規之(飯塚病院呼吸器腫瘍内科) 28 神経調節性失神を発症した非小細胞肺癌の1例 国立病院機構南九州病院呼吸器内科 是枝 快泉 29 術後6年目で縦隔リンパ節に再発し緩徐に増大した肺腺癌の1例 琉球大学医学部附属病院医師キャリア支援センター(初期研修部門) 池宮城七重 30 直腸転移を来した肺腺癌の一例 那覇市立病院内科 久田 友哉 31 Trousseau症候群を合併した肺腺癌の1例 福岡大学病院呼吸器内科 中尾 明 32 放射線治療によって全身状態の著明な改善を認めたG-CSF産生肺腺癌の一例 九州大学大学院医学研究院附属胸部疾患研究施設 森崎 隆史 肺腫瘍 4 15:00 ∼ 15:35 座 長 森永 亮太郎(大分県立病院呼吸器腫瘍内科) 33 スワンガンツカテーテルによる吸引細胞診でPTTMを診断しえた一例 長崎大学病院第二内科 平田 亮介 34 異所性ACTH症候群(EAS)を併発した小細胞肺癌の1例 福岡大学病院呼吸器内科 平野 涼介 35 半膜様筋転移を来した肺腺癌の一例 久留米大学医学部内科学講座呼吸器・神経・膠原病内科部門 小田 華子 36 Cushing症候群と肺ノカルジア症を合併したACTH産生肺小細胞癌の一例 宮崎大学医学部内科学講座神経呼吸内分泌代謝学分野 土田 真平 37 肺癌放射線化学療法後に緑膿菌性肺膿瘍を合併した1例 大分県厚生連鶴見病院 岸 建志 −20− 肺腫瘍 5 15:35 ∼ 16:10 座 長 東 公一(久留米大学医学部内科学講座呼吸器・神経・膠原病内科部門) 38 PTHrP産生肺多形癌が疑われた症例 大分大学医学部呼吸器・感染症内科学講座 牛嶋 量一 39 間質性肺炎の経過中に発見され急激に進行した肉腫型悪性胸膜中皮腫の剖検例 福岡大学呼吸器内科 佐々木朝矢 40 原発不明リンパ上皮腫様癌の1例 飯塚病院呼吸器病センター呼吸器内科 安田裕一郎 41 超音波気管支鏡ガイド下リンパ節生検で診断に至った原発不明悪性黒色腫の1例 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科呼吸器内科学 大脇 一人 42 慢性膿胸の既往なく胸壁から発生した悪性リンパ腫の一例 済生会熊本病院呼吸器センター 神宮 直樹 肺腫瘍 6 16:10 ∼ 16:38 座 長 内野 順治(福岡大学病院呼吸器内科) 43 肺部分切除術後瘢痕部に発生した肺原発MALTリンパ腫の1例 筑後市立病院呼吸器内科 内藤 佳子 44 CTガイド下針生検後に自然退縮を認めた肺MALTリンパ腫の1例 熊本大学医学部呼吸器内科 福嶋 一晃 45 関節リウマチ治療中にMTX関連リンパ増殖性肺疾患を発症した一例 社会保険大牟田天領病院呼吸器科 小佐井幸代 46 呼吸不全を伴ったメソトレキセート関連リンパ増殖性疾患の一例 飯塚病院呼吸器内科 山路 義和 −21− C会場 感染症1 8:50 ∼ 9:18 座 長 阿部 航(大分大学医学部付属地域医療学センター) 47 2週間のプレドニゾロン投与にて発症したニューモシスチス肺炎の1例 琉球大学医学部附属病院医師キャリア支援センター(初期研修部門) 宮城 文音 48 急性期の血清HMGB-1動態を調べた重症レジオネラ肺炎の一例 琉球大学医学部附属病院医師キャリア支援センター(初期研修部門) 國場 司 49 喀痰培養からBordetella bronchisepticaが検出された慢性気管支炎の一例 済生会飯塚嘉穂病院呼吸器科 猪島 尚子 50 非定型抗酸菌症の治療中に接合菌症を合併した一例 製鉄記念八幡病院呼吸器内科 緒方 大聡 感染症 2 9:18 ∼ 9:46 座 長 力丸 徹(福岡山王病院呼吸器内科) 51 びまん性汎細気管支炎様の陰影を呈したNocardia beijingensis による肺ノカルジア症の一例 国立病院機構長崎医療センター呼吸器内科 平野 仁士 52 肺癌との鑑別が困難であった肺放線菌症の一例 唐津赤十字病院呼吸器内科 小楠 真典 53 肺アスペルギローマにアレルギー性気管支肺アスペルギルス症を合併した1例 長崎みなとメディカルセンター市民病院呼吸器内科 森 美香 54 リポソームアムホテリシンBとボリコナゾールの併用が有用であった侵襲性肺アスペルギローシスの1例 済生会飯塚嘉穂病院呼吸器科 伊地知佳世 −22− COPD 9:46 ∼ 10:14 座 長 川山 智隆(久留米大学医学部内科学講座呼吸器・神経・膠原病内科部門) 55 ICS/LABAからLABAへの切り替えにより肺炎の頻度が減少したCOPDの2症例 国立病院機構熊本再春荘病院呼吸器内科 中村 和芳 56 COPD患者の副鼻腔病変の検討 福岡山王病院呼吸器内科 力丸 徹 57 COPD患者の呼吸音についての検討 国立病院機構福岡病院呼吸器内科 石松 明子 58 CAMは副鼻腔炎例の肺機能を改善する 福岡山王病院呼吸器内科 力丸 徹 気管支喘息 10:14 ∼ 10:49 座 長 東元 一晃(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科呼吸器内科学) 59 咳失神を契機に発見された気管支喘息の一例 福岡青洲会病院 小山倫太郎 60 Aspergillus niger 気道内定着・気管支炎によりステロイド抵抗性喘鳴・難治性喘鳴を来たした1例 沖縄県立南部医療センター・こども医療センター呼吸器内科 比嘉真理子 61 新生児慢性肺疾患を呈した児で、学童期および青年期における呼吸機能評価が行えた1例 産業医科大学医学部呼吸器内科学 宇山 和宏 62 気管支喘息を合併した慢性好酸球性肺炎における呼気NO濃度の変化に対する検討 国立病院機構沖縄病院呼吸器内科 知花 賢治 63 喘息患者におけるPM2.5の短期的影響に関する観察研究 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科呼吸器内科学 尾長谷 靖 −23− 症例 1 10:49 ∼ 11:17 座 長 柏原 光介(熊本市医師会熊本地域医療センター呼吸器内科) 64 全身麻酔下片肺洗浄によって対側肺の改善も得られた自己免疫性肺胞蛋白症の1例 産業医科大学呼吸器内科学 丈達 陽順 65 8年以上経過を追跡し,増悪と改善を認めた特発性肺胞蛋白症の1例 産業医科大学若松病院呼吸器内科学 島袋 活子 66 肺移植後に肺胞蛋白症を再発し約5年の経過で死亡した遺伝性肺胞蛋白症の一例 長崎大学病院感染症内科(熱研内科) 高木 理博 67 一側性延髄梗塞による呼吸不全に対して人工呼吸管理を行いウィーニングに成功した一例 社会医療法人雪の聖母会聖マリア病院 高田 綾子 症例 2 11:17 ∼ 11:52 座 長 髙田 昇平(国立病院機構福岡東医療センター呼吸器内科) 68 Primary Ciliary Dyskinesia(PCD)の一例 大分大学医学部呼吸器感染症内科学講座 向井 豊 69 濃緑色を来した膵性胸水の2例 国立病院機構九州医療センター呼吸器内科 田口 和仁 70 全身性エリテマトーデス(SLE)に硬化性縦隔炎を合併した一例 熊本中央病院呼吸器内科 那須 信吾 71 肺癌との鑑別に苦慮した肺静脈奇形の一例 国立病院機構長崎医療センター 山手 亮祐 72 粘液栓様の陰影を呈した肺葉内肺分画症の1例 国立病院機構福岡病院内科 横山 哲也 −24− 抗酸菌症 1 14:25 ∼ 14:53 座 長 大湾 勤子(国立病院機構沖縄病院呼吸器内科) 73 一般病棟で肺結核治療中に喀痰の抗酸菌塗抹検査が陽性に転じて接触者検診を行った1事例 北九州市立門司病院呼吸器内科 野田 直孝 74 人工呼吸管理を要した粟粒結核の一例 国立病院機構宮崎東病院呼吸器内科 佐野ありさ 75 Severe ARDS、多臓器不全を合併するも救命しえた粟粒結核の1例 済生会熊本病院呼吸器センター呼吸器内科 辛島 聡志 76 当初Meigs症候群が疑われた結核性胸膜炎の一例 国家公務員共済組合連合会浜の町病院初期臨床研修センター 石田 浩一 抗酸菌症 2 14:53 ∼ 15:28 座 長 是枝 快房(国立病院機構南九州病院呼吸器科) 77 気管支鏡にて隆起性病変を認めた肺門縦隔リンパ節結核の一例 公立学校共済組合九州中央病院呼吸器科 中島 信隆 78 結核病棟死亡退院例の検討 国立病院機構沖縄病院呼吸器内科 藤田 香織 79 当院における外国人結核患者の動向 国立病院機構福岡東医療センター呼吸器内科 大塚 淳司 80 CAMに短期間AMK,IPM/csを併用し軽快した肺M.abscessus感染症の一例 済生会飯塚嘉穂病院呼吸器科 橋口 波子 81 器質化肺炎を併発した非結核性抗酸菌症の1例 大分大学医学部呼吸器・感染症内科学講座 橋本 武博 −25− 感染症 3 15:28 ∼ 15:56 座 長 原永 修作(琉球大学大学院医学研究科感染症・呼吸器・消化器内科学講座) 82 器質化肺炎の経過中に肺クリプトコッカス症を発症した1例 福岡大学筑紫病院 青山 崇 83 器質化肺炎との鑑別を要した播種性クリプトコッカス症の一例 鹿児島市立病院内科 内門 義博 84 器質化肺炎の病理所見を呈した肺クリプトコックス症の1例 国立病院機構長崎医療センター呼吸器内科 中武 美香 85 上気道炎よりレミエール症候群を呈した若年健常者の一例 福岡山王病院呼吸器内科 永渕 雅子 感染症 4 15:56 ∼ 16:24 座 長 青木 洋介(佐賀大学医学部付属病院内科) 86 ブタ回虫幼虫移行症による好酸球性肺炎の1例 福岡山王病院呼吸器内科 松永 和子 87 当科における肺炎球菌肺炎症例の検討 熊本中央病院呼吸器内科 稲葉 恵 88 摂食嚥下障害アセスメントMASA∼機器を使用しない臨床評価∼ 戸畑共立病院リハビリテーション科 大森 政美 89 当院における医療・介護関連肺炎患者の摂食嚥下機能の検討 戸畑共立病院呼吸器内科 長神 康雄 −26− 検査 16:24 ∼ 16:52 座 長 吉田 誠(国立病院機構福岡病院呼吸器科) 90 成人のFDEIA症例における負荷検査の有用性 国立病院機構福岡病院臨床研究部 岸川 禮子 91 環境調査が有効であった夏型過敏性肺臓炎の3例 済生会飯塚嘉穂病院 伊地知佳世 92 禁煙が呼吸機能に及ぼす短期的効果についての検討 医療法人清和会長田病院呼吸器内科 外山 貴之 93 呼吸器疾患患者に対する運動機能評価としての6分間ペグボード・リング試験の有用性 医療法人明石会曽根病院リハビリテーション部 桑原 章徳 −27− 特 別 講 演 A 会場 3 月 7 日(土) 13:20 ∼ 14:20 特別講演 座長 川崎 雅之(国立病院機構大牟田病院) 関節リウマチの肺病変−生物学的製剤の時代に入って見えてきたもの 地域医療機能推進機構東京山手メディカルセンター呼吸器内科 徳田 均 関節リウマチ(RA)はその患者数全国で 70 万人と言われる一大疾病である。進行する関節病変、 運動機能障害によるQOLの低下もさることながら、種々の臓器に起こる重篤な障害(関節外病変と呼 ばれる)のためにその生命予後は不良で、健常人に比し約 10 年短命であると言われて来た。しかしこ れまでその診療はリウマチ専門医の世界で完結しており、呼吸器科領域ではその実態はあまり知られて いなかった。わずかに間質性肺炎について呼吸器科医に相談のあった一部の症例について、解析が行わ れてきたが、予後の改善につながる成果は得られていない。 10 年来の生物学的製剤の導入はこの事情を一変させた。不治の病であったRAの疾患活動性は多く の例で制御可能となり、一部の症例では治癒をすら望むことが出来る情勢となった。そのような中で、 これら薬剤について行われた市販後全例調査が、この疾患の様々な関節外合併症の様相を初めて明るみ に出した。特に呼吸器病変については、それが生物学的製剤の有害事象なのか、あるいはRAに固有の ものなのかすら必ずしも分明ではないが、最も多発する合併症であり、かつ死亡率も高く、この克服が 急務となった。しかし結核症、非結核性抗酸菌症、ニューモシスチス肺炎などの呼吸器合併症はリウマ チ医の手に余る事態で、呼吸器科医に相談が寄せられる例が激増している。 元来が全身性の免疫異常疾患であり、そこに免疫をピンポイントで修飾する薬剤が投与されるという 複雑な事態の中で、そこで発生する呼吸器病変をどう考えれば良いのか、どう対処すべきなのか、確立 した学説はなく、手探りに近い努力が行われているのが現状であるが、日本呼吸器学会を中心に4学会 が合同で作成した「生物学的製剤と呼吸器疾患 ・ 診療の手引き」の作成作業の中心にあった者として、 新たに見えてきたRA肺病変の様相を、呼吸器科診療に携わっている先生方にお伝えし、先生方が相談 を受ける、あるいは直接診療するRA患者さんの肺病変診療の参考になり、ひいては患者さんの予後改 善の一助となる事を希望している。 −31− 教 育 講 演 A 会場 3 月 7 日(土) 11:00 ∼ 12:00 教育講演 座長 原 信之(公益社団法人すこやか健康事業団) 進行期肺がんの薬物療法 九州大学大学院医学研究院附属胸部疾患研究施設 高山 浩一 外科切除や根治的放射線治療の適応とならない進行期肺がんにおいては全身薬物療法が QOL を改善 し生存期間を延長する第一選択の治療法である。プラチナ製剤を用いた化学療法の有用性がしめされて 以来 20 年以上が経過し、さまざまな薬剤の開発とともに生存期間は延長し続けている。1990 年代には タキサン系薬剤を始めとする第 3 世代抗がん剤と呼ばれる新規抗がん剤が次々に開発され、特にプラチ ナ製剤との併用による有用性が示された。海外では ECOG1594 試験、本邦でも FACS 試験といった大 規模試験が実施され、プラチナダブレット間の比較に関する臨床試験が盛んに行われてきた。その後 も Pemetrexed、S-1、nab-Paclitaxel といった新規薬剤が登場し、細胞障害性抗がん剤は現在も肺がん 治療において重要な役割を果たしている。一方、2000 年代に入って間もなく Gefitinib が世界で初めて 本邦で承認され分子標的薬の時代の幕開けとなった。また、EGFR 遺伝子変異の有無が EGFR チロシ ンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)の薬効に大きく影響することが明らかとなり、以後 biomarker-based medicine の流れにつながっている。本邦では WJTOG3405 試験や NEJ002 試験といった大規模比較試 験を通して、EGFR-TKI の臨床的な意義を明らかにしてきた。2007 年には新たな Driver oncogene と して ALK 融合遺伝子が間野先生らによって発見され、特に肺腺がんの発がんおよび増殖に重要である ことが明らかとなった。驚くべきことに 2010 年には ALK 阻害剤を用いた臨床試験が実施され、現在 では既に 2 つの ALK 阻害剤が保険承認されている。新規分子標的薬の開発スピードが上がるのは予後 不良の進行期肺がんの患者にとって大きな恩恵である。現在ではこられの分子標的薬に対するがん細胞 の耐性機序も明らかになってきており、研究で得られた知見を基に耐性克服のための薬剤開発や治療戦 略の確立につながっている。本講演では Key trial の結果を参照しながらこれまでの薬物療法の歴史を 振り返り、合わせて今後の肺がん診療について展望する。 −35− 男女共同参画セッション A 会場 3 月 7 日(土) 14:35 ∼ 15:05 男女共同参画セッション 座長 吉永 健(熊本中央病院呼吸器内科) 九州支部女性呼吸器内科医に対するアンケート調査結果 産業医科大学若松病院呼吸器内科 吉井 千春 日本呼吸器学会将来計画委員会では、呼吸器内科医師を増やす活動の一環として女性医師のセミリタ イア防止にも取り組んでいる。今回九州支部女性会員が抱える問題を抽出するために、2014 年 12 月に アンケート調査を実施した。 九州支部女性会員 366 名に対し 121 名から回答を得た(回収率 33.1%)。回答者は 30 代が 45.5%、40 代が 33.9%、50 代が 11.6%、20 代が 5.7%であった。家庭環境は独身が 32.2%、既婚が 65.3%で子供は 2 名が最も多かった。呼吸器専門医は 43.8%、指導医は 5%で、51.2%が専門医を取得していなかった。勤 務形態は約 8 割が勤務医であり、開業医は 7.4%、休職中は 6.6%であった。仕事を続ける上で改善して 欲しい制度は、短時間勤務、当直免除、産休育休制度が上位を占め、自由意見を合わせると、保育施設 などハード面の充実に加えて、多様な働き方を受け入れる社会制度を望んでいた。またハラスメントは 約 3 割の回答者が経験していたが、妊娠や育児に関連した内容が目立った。 今回のアンケート結果を踏まえ、女性呼吸器内科医が能力を発揮して働ける環境整備や専門医取得の 方策などを総合的に提言したい。 −39− シンポジウム 非結核性抗酸菌症の最前線 座長 永田 忍彦、藤田 次郎 1.非結核性抗酸菌症の菌側因子の解析 中川 拓 2.非結核性抗酸菌症(NTM)と栄養 若松謙太郎 3.非結核性抗酸菌症の診断 仲本 敦 4.肺非結核性抗酸菌症の治療 −最近の進歩− 藤田 昌樹 A 会場 3 月 7 日(土) 8:50 ∼ 10:50 シンポジウム 座 長 永田 忍彦(福岡大学筑紫病院呼吸器内科) 藤田 次郎(琉球大学大学院医学研究科感染症・呼吸器・消化器内科学講座) 1 非結核性抗酸菌症の菌側因子の解析 2 非結核性抗酸菌症と栄養 国立病院機構東名古屋病院臨床研究部・呼吸器内 国立病院機構大牟田病院呼吸器内科 科微生物免疫研究室長 若松 謙太郎 中川 拓 非結核性抗酸菌症(NTM)が中高年の痩せた 肺非結核性抗酸菌 (NTM) 症は近年急速に日本 患者に多く見られることから、NTM と栄養の間 で増加してきているが、NTM の感染・発病・重 に何らかの関係がある可能性が考えられる。 痩 症化のメカニズムには不明な点が多く、宿主側や せた状態では脂肪細胞量が減少し、アディポカ 環境側因子とともに菌側因子の研究を並行してす インの増減により免疫担当細胞の機能低下が生 すめていく必要がある。 じ、易感染状態となるという仮説が提唱されてい われわれは主に臨床検体から分離された菌の遺 るが、詳細は不明である。 そのため我々は NTM 伝子解析を行っている。VNTR 型別解析法に代 と栄養状態、栄養摂取量との関係について検討を 表される分子疫学解析により、感染源の解析のみ ならず、ポリクローナル感染の解析、外来性再感 染と内因性再燃の鑑別、病勢予測などの応用が試 みられている。またわれわれが発見した新規挿入 配列 ISMav6 が菌の cfp29 遺伝子の SD 領域に挿 入されている肺 M. avium 症例は悪化しやすいと いう知見が得られた。 HIV 陽 性 播 種 性 MAC 症 患 者 由 来 の 基 準 株 M. avium104 は全ゲノム配列が公開されている。 わ れ わ れ は HIV 陰 性 肺 M. avium 症 由 来 菌 株 行った。 2010 年 5 月以降に NHO 大牟田病院に通院あ るいは入院した NTM 患者を前向きに登録し、同 意の得られた症例について、身長、体重、血液検 査(白血球数、リンパ球数、アルブミン、コリン エステラーゼ、総コレステロール、トランスフェ リン、プレアルブミン)、胸腹部 CT、栄養士によ る食事内容に関する聞き取り調査を行った。 同 様の調査を登録 1 年後、 2 年後、3 年後に施行した。 登録時の BMI、腹囲、内臓脂肪面積は一般健常 成人と比較し、男女とも有意に低値を示したが、 TH135 の全ゲノム解析を行い、基準株 104 と比 特に内臓脂肪面積が一般健常成人より著明に低値 較を行った。同じ亜種でありながらゲノム配列が であった。 エネルギー、たんぱく質、脂肪、炭 かなり異なっていた。さらに TH135 は新規プラ 水化物摂取量がいずれも少ないことが明らかに スミドを保有していることが明らかになった。 なったが、内臓脂肪面積と各栄養摂取量との間に まだまだ途上であるが、更なる研究をすすめ、 は有意な相関は認めなかった。 新たな検査法や治療法の開発につながるブレイク 登録 3 年時のデータはシンポジウム時に発表予 スルーにつなげたいと考えている。 定である。 −43− A 会場 3 月 7 日(土) 8:50 ∼ 10:50 シンポジウム 座 長 永田 忍彦(福岡大学筑紫病院呼吸器内科) 藤田 次郎(琉球大学大学院医学研究科感染症・呼吸器・消化器内科学講座) 3 非結核性抗酸菌症の診断 4 肺非結核性抗酸菌症の治療 −最近の進歩− 国立病院機構沖縄病院呼吸器内科 福岡大学病院呼吸器内科 仲本 敦 藤田 昌樹 非結核性抗酸菌症(以下、NTM 症)の罹患率は、 肺非結核性抗酸菌症はかなりの割合で治療に対し わが国でも欧米からの報告でも年々増加傾向にあ て抵抗性を示す。治療の進歩が求められる呼吸器 る。 感染症の一つであることには異論がないだろう。 NTM 症の診断は、各菌種毎の臨床像の特徴が次 しかしながら治療に関しては、クラリスロマイ 第に明らかとなり、さらに HRCT など画像診断 シン(CAM)導入以降は明確な進歩が得られて の進歩、細菌学的診断法の進歩が加わって、比 いないのが現状である。どのような症例に対して 較的容易になってきている。また、これらの進歩 いつ治療を開始するのが良いのか、現在使用され を取り入れた診断基準として、2007 年の ATS/ ている標準レジメであるリファンピシン + エサ IDSA の診断基準、2008 年の日本結核病学会・日 ンブトール +CAM ±ストレプトマイシン以外の 本呼吸器学会の診断基準が発表されている。 治療はあるのか、治療期間および終了時期はどう NTM の原因菌種は、日本国内でもまた世界的に するのかなど解決できていない問題が山積みであ 見ても、地域により若干異なる。日本国内では、 る。また、再発症例や CAM 耐性症例に対しては、 M.avium complex ( 以 下、MAC) が NTM 症 の ニューキノロン系抗菌薬を使用することも多い 約 7 割、M.kansasii が約 2 割、残り 1 割を様々な が、エビデンスは少ない。我々は肺非結核性抗酸 希少菌種が占める。MAC に関しては従来、東日 菌症に対して、ニューキノロン系抗菌薬であるガ 本で M.avium 、西日本では M.intracellulare が優 チフロキサシンやシタフロキサシンを用いた治療 位とされてきたが、近年、日本全体で M.avium を行い、良好な結果を得たことを報告し、治療の が増加傾向にあるとされる。 進歩に寄与しようと努力を続けている。本シンポ 今回の、発表では NTM 症の診断に関する一般的 ジウムでは内外の報告および自験例を交えて、期 な事項に加え、当院における NTM 症の原因菌種 待される新薬も含め、最近の治療の進歩について の特性や経年的変化に関しても併せて検討し報告 お話したい。 する予定である。 −44− ランチョンセミナー A 会場 3 月 7 日(土) 12:10 ∼ 13:10 ランチョンセミナー 1 座長 福田 実(長崎大学病院がん診療センター) 薬剤性間質性肺炎の診断と治療 産業医科大学呼吸器内科学 石本 裕士 薬剤性間質性肺炎は、呼吸器診療における鑑別疾患として常に忘れてはならない病態である。原因と なる薬剤は多岐にわたり、今後も新規薬剤が臨床応用される度に、頻度に差こそあれ新たな薬剤性間質 性肺炎の発生が予想される。一方、処方箋薬のみならず、市販薬・健康補助食品・サプリメントにより 薬剤性間質性肺炎が生じることもあり、頻度は高くないにしても、薬剤性間質性肺炎に対する意識は重 要である。しかし、実際には薬剤性間質性肺炎の診断は容易ではない。特徴的な臨床徴候や、客観的で 特異的な検査所見はなく、臨床経過や除外診断が診断の中心である。被疑薬に対するチャレンジテスト は最も信頼のおける検査であるが、日常臨床で実施している施設は限定的である。また、本邦で汎用さ れている薬剤リンパ球刺激試験(DLST)も多くの課題が知られている。薬剤性間質性肺炎の治療は、 被疑薬の中止が基本であるが、速やかな改善が得られない場合や呼吸不全が強い場合などには、ステロ イドの全身投与が試みられる。ステロイドの投与量は、呼吸不全の程度や、陰影のパターン、とくに高 分解能 CT(HRCT)による陰影のパターンを参考に決定していくことが多い。とりわけ重症化しうる 病態であるびまん性肺胞傷害(DAD)パターンを認知することは重要であるが、標準的な治療方法は 確立されておらず、症例ごとに経験的治療が行われているのが現状である。日本呼吸器学会から「薬剤 性肺障害の診断・治療の手引き」が出版されているが、エビデンスが創出されにくい本疾患においてガ イドラインの作成は期待しにくい。今回の発表では、自験例を交えて薬剤性間質性肺炎の診断と治療に おける課題を検討し、会場の先生がたと討議ができればと考えている。 −47− B 会場 3 月 7 日(土) 12:10 ∼ 13:10 ランチョンセミナー 2 座長 岩永 知秋(国立病院機構福岡病院) 慢性 II 型呼吸不全に対する NPPV 療法の新機軸“iVAPS mode”;期待と問題点 熊本大学大学院生命科学研究部呼吸器内科学 藤井 一彦 慢性 II 型呼吸不全に対する呼吸補助には睡眠中を中心とした長期 NPPV 療法が行われている。従来、 IPAP, EPAP を固定した S/T モードが主として使用されてきたが、REM 睡眠期などに呼吸努力が低下 すると一定のサポート圧や呼吸回数では低換気が補正できず、低酸素血症や高二酸化炭素血症の増悪を きたすことをしばしば経験する。固定圧の換気補助の問題点は換気量が保証されないことであり、これ に対処すべくサポート圧を自動的に調節し換気量を保つ新しい換気モードが VAPS(volume-assured pressure support)モードである。 2012 年に登場した iVAPS(intelligent VAPS)モードは VAPS モー ドの一つで、目標とする換気量として“一回換気量”ではなくガス交換に直接かかわる“肺胞換気量” を用い、また、新規のバックアップ呼吸回数システム iBR(intelligent backup rate)を用いており、他 の VAPS モードとも異なる二つの大きな特徴を持つ。iVAPS モードは患者の呼吸状態の変化に応じ たスムースなサポート圧の調節やバックアップ呼吸回数の変動により“肺胞換気量”を維持する。拘 束性胸郭疾患や神経筋疾患、高二酸化炭素血症を伴う安定期 COPD といった慢性呼吸不全、二酸化炭 素貯留を伴う急性呼吸不全に対する S/T モードとの小規模比較試験があり、未だ報告は少ないものの iVAPS は概して S/T モードと治療効果は同等であり、快適性、同調性には優れると考えられる。当科 での経験では S/T モードでコントロール不良であった症例や耐用できなかった症例においても iVAPS モードで良好な治療効果が得られており、より多くの慢性 II 型呼吸不全症例に適用可能な換気モード と考えられる。iVAPS モードの有用性は肺胞換気量の設定次第であるが、効果的な設定プロトコール は未確立であり、また、 「マスクリーク時のサポート圧低下による低換気」といった問題点も報告され ている。他の VAPS モードとの比較や長期予後に対する評価も今後の検討課題である。本講演では当 科での iVAPS モード導入症例を提示しつつ、iVAPS モードの現在のエビデンスと問題点、今後への期 待について述べたい。 −48− C 会場 3 月 7 日(土) 12:10 ∼ 13:10 ランチョンセミナー 3 座長 古藤 洋(九州中央病院呼吸器内科) 喘息実地臨床における SMART 療法とアンメットニーズ 広島アレルギー呼吸器クリニック 保澤 総一郎 気管支喘息(以下、喘息)は、アレルギー性気道炎症をベースとする慢性疾患であり、同時に、主 として気道炎症の増悪から惹起される気道狭窄による症状および呼吸機能の変動を特徴とする変動性 疾患でもある。この喘息病態に対して、ICS/LABA 配合剤が長期管理のベースとなり、我が国におけ る喘息コントロールは飛躍的に改善した。現在、我が国では、4 剤の ICS/LABA 配合剤が臨床使用さ れている。なかでも、BUD/FM は、定期吸入に加えて必要時追加吸入する治療法、すなわち、BUD/ FM(Symbicort or Single-inhaler maintenance and reliever therapy(SMART))が可能であり、新 たな喘息長期管理の選択肢として注目されている。これは、BUD の ICS としての速効性をもった抗炎 症作用と、FM の LABA であるが SABA に勝るとも劣らない用量依存性のある強力かつ速効性をもっ た気管支拡張作用という、両薬剤の薬理特性がそろって可能となる治療コンセプトである。また、喘息 末梢気道病変が近年注目されており、末梢気道の炎症が気道過敏性や増悪といった観点から喘息治療の ターゲットとして重要視されている。すなわち、喘息増悪は末梢気道の炎症の増悪から始まり、その 制御が喘息増悪を防ぐ意味でポイントとされている。演者らは、BUD/FM-TH が、喘息末梢気道病変 のコントロールにより有効であり(Pulm Pharmacol Ther 2011;24:571)、加えて、BUD/FM-TH によ る SMART 療法では、末梢気道に発生した増悪の芽をより早期にタイミングよく摘み取ることが可能 となり、Current control の達成と Future risk の抑制をさらに達成しうることを報告している(Pulm Pharmacol Ther 2014;27:190) 。一方、JGL によるコントロール良好の達成はなお不十分であることも報 告されている。2014 年 5 月に、日本人喘息患者の実態調査として The ACQUIRE study が実施された。 その第一報(アレルギー・免疫 2014;21:1950)によると、ICS・ICS/LABA 配合剤をベースとした長期 管理が実施されアドヒアランスが良好であるにも関わらず、90%以上の患者がコントロール不十分であ り、喘息症状に対して自身で対処したいと感じていることが浮き彫りになった。さらに、喘息症状悪化 前に 90%以上の患者が何らかの予兆や前兆を感じていることも明らかとなった。この臨床的アンメッ トニーズを考える時、どのような治療コンセプトが求められるであろうか。現時点で、その一つとして、 SMART 療法があげられる。本セミナーでは、実地臨床の立場から、SMART 療法について考えてみたい。 −49− アフタヌーンセミナー A 会場 3 月 7 日(土) 15:10 ∼ 16:10 アフタヌーンセミナー 座長 千場 博(熊本市医師会熊本地域医療センター呼吸器科) 肺癌学会肺癌診療ガイドラインの改定ポイント 国立病院機構九州がんセンター呼吸器腫瘍科 瀬戸 貴司 肺癌診療ガイドラインの改定ポイントについて概説する。 −53− 若手医師のための教育セミナー A 会場 3 月 7 日(土) 16:10 ∼ 17:10 若手医師のための教育セミナー 座長 中西 洋一(九州大学大学院医学研究院附属胸部疾患研究施設) 若手医師のための呼吸器内科との向き合い方 国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科 倉原 優 呼吸器内科を志す若手医師は、日常臨床の中で多くの壁を経験する。医学的な講演が多い中でこのよ うな講演は極めて異質かもしれないが、呼吸器内科とどう向き合うのかという斬新な切り口でお話しさ せていただきたいと思う。 呼吸器内科を志した当初、私は医学論文を読むのが大嫌いだった。英語で書かれた何ページにもわた る論文を見るだけで、意気消沈したものだ。それでも、読まなければ現在の呼吸器内科のトレンドを知 ることができないし、自分だけ置いてけぼりになってしまうのではないかと危惧し、毎日のように医学 論文と接してきた。今でも若手医師にとってもっともハードルが高いのは医学論文との接し方であろう。 医学論文とどう向き合えばよいのか、個人的なスタンスをご紹介できればと思っている。 また、若手医師が勉強会や抄読会を立ち上げても長続きしないという経験もした。分厚い英語の教科 書を輪読したり、抄読会を立ち上げて医学論文を読み合ったりしたが、決して心から楽しんで参加でき るものではなかった。惰性化と義務化によって、多くの“会”が消滅していった。勉強会や抄読会をど のように開催すると長続きするのか、色々な観点からご紹介したいと思う。 −57− 一 般 演 題 B会場 8:50∼9:18 肺腫瘍 1 座長 福田 正明(日本赤十字社長崎原爆病院呼吸器内科) 1 ALK 陽性肺癌に対してクリゾチニブによ る中毒疹のためアレクチニブに変更して有効 性が認められた一例 2 当院における1次治療 Erlotinib 投与症例 の検討 国立病院機構九州医療センター呼吸器科 熊本大学医学部附属病院呼吸器内科 ○佐々木 潤、岡山 雄亮、竹中 慎一、 ○山口 絵美、坂田 晋也、佐伯 祥、 熊野 友美、武岡 宏明、田口 和仁、 廣佐古 進、一安 秀範、藤井 一彦、 一木 昌郎 興梠 博次朗 EGFR遺伝子変異陽性の進行期非小細胞肺癌に対 症例は63才女性、 喫煙歴はない。20XX年12月に して、Erlotinibが2013年6月より1次治療で投与可 右上葉肺癌に対して右上葉切除術を施行し、 能となった。 今回、 我々は、 当院で1次治療とし NSCLC( adeno)pT1aN0M0 stage 1Aの診断と てErlotinibを投与した12症例の治療成績を報告す なった。術後5年後に、胸部CT検査にて多発肺内 る。患者背景は、男性5例、女性7例、年齢中央値 結節、縦隔リンパ節腫脹を認めて術後再発と診断 は65.1歳、病期はIIIB期が1例、IV期が11例、組織 した。 手術検体組織にて、ALK融合遺伝子陽性 型は全例が腺癌で、EGFR変異はexon19欠失/ (iAEP法免疫染色陽性 FISH法陽性)が確認され L858R/L861Qがそれぞれ2/8/2例であった。 治療 たため、1次療法としてALK阻害薬であるクリゾ 効果はPR/SD/PDがそれぞれ7/4/1例で、 奏効率 チニブを投与した。良好な腫瘍縮小効果が得られ は58.3%、 病勢コントロール率は91.7%であった。 たが、血中好酸球数上昇を伴う多形紅斑型中毒疹 有害事象については、Grade3の皮膚障害( 33%)、 が出現したため、11日間の投与にてクリゾチニブ 食欲低下( 8%)、Grade2の皮膚障害( 42%)、 下 を中止した。4ヶ月後に腫瘍の再増大を認めたた 痢(17%)、肝障害(8%)、角膜炎(8%)を認めた。 め、2次療法として新規ALK阻害薬であるアレク これらの副作用により、Erlotinibの減量が必要で チニブを投与した。 投与1ヶ月後の治療効果は良 あったのは4例( 33%) で、 そのうち2例( 17%) 好であり、 副作用はGrade 1の味覚障害と便秘を で中止となった。現時点で、12例中5例はErlotinib 認めるのみで薬疹も出現していない。ALK阻害薬 継続中であり、開始からの無増悪生存期間中央値 にて多形紅斑型中毒疹を発症し、治療継続困難と は397日であった。 学術講演会では、 最新の情報 なったものの、新規ALK阻害薬に切り替えた事に を加えて報告する。 よって、Grade1以上の副作用も出現することなく、 治療効果を得られている一例を経験したため報告 する。 −61− B会場 8:50∼9:18 座長 福田 正明 日本赤十字社長崎原爆病院呼吸器内科 肺腫瘍 1 3 クリゾチニブ治療経過中に好中球減少を 認めた 1 例 4 エルロチニブが奏功した EGFR 遺伝子変 異陰性肺腺癌の 1 例 大分県立病院呼吸器内科1 大分県立病院呼吸器腫瘍内科2 大分大学 医学部 呼吸器・感染症内科学講座3 国立病院機構大牟田病院呼吸器科1 国立病院機構大牟田病院内科2 福岡大学筑紫病院呼吸器科3 ○松本 紘幸1、森永 亮太郎2、増田 大輝1、 ○伊勢 信治1、坂本 陽平1、高倉 孝二1、 1 3 原 真紀子1、出水 みいる1、赤崎 卓2、 大谷 哲史 、門田 淳一 槙 早苗2、若松 謙太郎1、永田 忍彦3、 川崎 雅之1 症例は74歳の女性。Stage IIIAの原発性肺腺癌に 対する化学放射線療法施行後の経過観察中に頚部 リンパ節腫大で再発を来した。EML4-ALK遺伝子 症例は72歳、女性。2000年に右下葉肺癌に対して 転座が陽性であったため、201X年1月から2nd line 右下葉切除術後、 再発は見られていなかったが、 としてクリゾチニブ500 mg/日による治療を開始 2013年2月に咳嗽を主訴に前医を受診した。 右上葉 し、頚部リンパ節の縮小を認めたため同治療を継 に腫瘤を認め、多発肺転移、仙骨転移も認めた。気 続していた。201X年6月頃から徐々に好中球数が 管支鏡検査で肺腺癌の診断となり、治療目的に同年 減少傾向となり、8月にはgrade 3の好中球減少に 4月当院へ紹介となった。前医でのepidermal growth 至った。 その後38℃台の発熱が出現し、8月28日 factor receptor(EGFR)遺伝子変異検査は陰性であっ に外来を受診した際の血液検査ではCRP 15.9 mg/ たため、一次治療としてカルボプラチン+ペメトレ dLと上昇を認めた。好中球数は3,740 /μLと上昇 キセド、二次治療としてドセタキセル投与を行った していたため、抗菌薬投与とクリゾチニブ休薬で が、多発肺転移の再増大、脳転移の出現認めたため、 経過を観察したが、炎症の鎮静化とともに再び好 三次治療目的に2014年9月入院となった。 入院後、 中球数は860 /μLと低下した。その後、クリゾチ EGFR遺伝子変異、echinoderm microtubule- ニブ休薬のみで好中球数は回復傾向を示したた associated protein-like 4( EML4)-anaplastic め、クリゾチニブを400 mg/日へ減量して再開し、 lymphoma kinase( ALK)の検査のために胸腔穿 現在も治療を継続中である。今回、クリゾチニブ 刺を行ったが、いずれの検査結果も陰性であった。 によると考えられる好中球減少によって発熱性好 肺癌診療ガイドラインに従い、エルロチニブ投与 中球減少症様の病態を呈した1例を経験した。従 を行ったところ、 腫瘍は著明に縮小した。EGFR 来から広く用いられているEGFR阻害剤と比較し wild typeでのエルロチニブ奏功例は比較的稀であ て、ALK阻害剤では好中球減少の頻度は高いとさ るため、若干の文献的考察を加えて報告する。 れているものの発熱性好中球減少症まで至ること は稀とされる。考察を加えて報告する。 −62− B会場 9:18∼9:46 肺腫瘍 2 座長 一木 昌郎(国立病院機構九州医療センター呼吸器科) 5 ゲフィチニブで CR となり長期生存してい る IV 期肺大細胞がんの 1 例 6 当科における非小細胞肺癌に対する crizotinib の使用経験 久留米大学内科学講座呼吸器・神経・膠原病内 科 大分赤十字病院呼吸器内科 ○後藤 昭彦、増野 智章、板井 真梨子、 畑 正広、重永 武彦 ○平岡 裕樹、時任 高章、東 公一、 石井 秀宜、山田 一彦、星野 友昭 近年、ALK融合遺伝子陽性肺癌に対するcrizotinb 症例は51歳女性。2003年7月に頸部リンパ節生検 の有効性は数多く報告されている。肺癌診療ガイ にて大細胞がんと診断し、臨床病期はcT3N2M1b ドラインにおいて、crizotinbの1次治療使用の推 stageIVであった。治療前のCTにおいて肺野陰影 奨グレードは「 C1」から「 A」に変更された。当 の急激な増悪とともに低酸素血症を認めた。 科では2011年6月∼2014年7月の約3年間で非小細 Carboplatin + Paclitaxel + Gefitinibを開始しCR 胞肺癌97症例にALK検査を施行し、IHC陽性かつ となった。Carboplatin + Paclitaxelは3コースで FISH陽性は8症例( 8.2%) であった。 そのうち4 終了し、 以後Gefitinibのみ継続した。 その後も再 症例にcrizotinbを使用した。4症例とも治療効果 発を認めず2012年1月よりGefitinibは中止し、再発 はPRであり、 良好な腫瘍縮小を得ることができ なく経過している。2014年6月に右上葉に結節が た。有害事象としてはGrade4の肝機能障害を筆頭 出現し手術を施行した。 腺がんの診断で、EGFR に多種認められ十分注意が必要であったが、 遺伝子変異は野生型であった。稀少な症例と考え crizotinibを休薬/減量することで継続使用可能な られ、文献的考察を加えて報告する。 場合が多かった。治療効果と有害事象を総合的に 勘案すると、ALK融合遺伝子陽性肺癌であれば1 次治療も含め、crizotinibの積極的使用を検討して よいと考えられた。 −63− B会場 9:18∼9:46 座長 一木 昌郎 国立病院機構九州医療センター呼吸器科 肺腫瘍 2 7 腎障害合併非小細胞肺がん患者に対する ALK 阻害剤の使用経験 日本赤十字社長崎原爆病院呼吸器内科1 長崎大学病院第2内科2 8 クリゾチニブによる薬剤性肺障害をきた し,後にアレクチニブを問題なく投与できた ALK 陽性非小細胞癌の一例 九州大学大学院医学研究院附属胸部疾患研究 施設 ○三溝 和貴1、嶋田 緑1、北崎 健1、 橋口 浩二1、福田 正明1、中村 洋一2 ○古賀 祐一郎、米嶋 康臣、濱田 直樹、 緒方 彩子、岩間 映二、原田 大志、 抗悪性腫瘍剤の臨床試験は臓器機能が正常な患者 榎津 愛実、山本 悠造、木村 信一、 さんを対象に行われる。しかし、実臨床において 片平 雄之、大坪 孝平、岡本 勇、 は適格基準を少し逸脱した患者さんに薬剤を投与 高山 浩一、中西 洋一 することもある。腎機能障害患者にALK阻害剤を 投与する機会を得た。 症例は62歳女性。2011年7 症例は40歳、男性。右肺下葉原発の腺癌に対して 月に健診胸部異常影で発見された。幼児期に慢性 一次治療としてCBDCA+PEM+BEV、 二次治療 糸球体腎炎の既往がある。2011年9月20日左上葉 としてS-1+BEVを施行したが、癌性リンパ管症の 切除が行われ、adenocarcinoma、pT2aN1M0、 増悪を認めた。ALK融合遺伝子免疫組織化学検査 stage IIAであった。2013年3月7日肺転移再発を認 が陽性であったため、三次治療としてクリゾチニ めた。CBDCA+PEMを投与されたが無効であっ ブの投与を開始した。しかし16日後より呼吸状態 た。ALK融合遺伝子陽性が確認され、2014年5月 の増悪、両肺に多発するスリガラス陰影の出現を 28日からcrizotinib 500mg/日を開始した。治療前 認め、末梢血中の好酸球増多を認めた。従来から のCrは2.96であった。6日目のCr 4.1、AST 103、 ある癌性リンパ管症の増悪との鑑別が困難であ ALT 80と肝腎機能障害出現したため、crizotinib り、 気管支鏡検査を行ったところ、BALFでの好 の投与を中止した。幸い、肝腎機能は比較的短い 酸球増多を認め、KL-6、SP-D/Aの上昇等とあわ 期間で前値に回復した。9月19日からalectinibの投 せてクリゾチニブによる薬剤性肺障害と診断し 与を開始した。標準投与量の約50% doseで治療を た。クリゾチニブを中止しステロイドパルス療法 開始した。Cr値は2週間の投与で前値から約1.2上 を施行したところ、速やかに呼吸状態と肺野陰影 昇し、2週間の休薬でほぼ前値に回復した。PRの の改善を認めた。なお、原発巣と癌性リンパ管症 効果が得られ、現在も治療継続中である。ALK阻 は改善を認めており、クリゾチニブの効果と考え 害剤は減量、スケジュールの変更で腎機能障害を られた。 以後、 ステロイドは1.0mg/kg/dayより 合併する非小細胞肺がん患者にも安全で効果的に 開始し慎重に漸減しながら、クリゾチニブ中止よ 投与できるかもしれない。 り54日後にアレクチニブの投与を開始したが、薬 剤性肺障害を認めず抗腫瘍効果も得られている。 クリゾチニブによる薬剤性肺障害と癌性リンパ管 症が混在し、治療方針に苦慮した一例であったた め報告する。 −64− B会場 9:46∼10:21 間質性肺炎 座長 一門 和哉(済生会熊本病院呼吸器科) 9 間質性肺疾患による急性呼吸窮迫症候群 に対して respiratory ECMO 使用にて救命で きた一例 10 間質性肺炎における胸腔鏡下肺生検症例 の検討 国立病院機構福岡東医療センター 九州大学大学院医学研究院付属胸部疾患研究施 設 ○濱田 利徳、山本 玲央那、山本 耕三、 徳石 恵太、岡林 寛 ○片平 雄之、濱田 直樹、緒方 彩子、 山本 悠造、榎津 愛実、古賀 祐一郎、 対象・結果)2008/4月∼2014/6月、当科での間質 木村 信一、米嶋 康臣、岩間 映二、 性肺炎に対する肺生検21症例を検討した。男性15 原田 大志、高山 浩一、中西 洋一 例、女性6例、平均年齢6.56±5.5(54∼78)歳。肺 機能検査では拘束性障害4名、閉塞性障害6名、混 症例は46歳男性。X年8月中旬に発熱、咳嗽を認め、 合性障害3名であり、3名は酸素投与中( O2:1L/ 近医でLVFXを処方された。 症状改善なく両肺散 分投与)であった。術前KL-6は17例で基準値以上 在性に浸潤影を認め、 肺炎の診断で8月26日に前 であった。 全例胸腔鏡下肺生検を施行し、1例自 医入院となった。 入院後抗生剤としてCTRX、 動縫合器による肺損傷のためミニ開胸併用を必要 AZM、TAZ/PIPC、VCM、CLDMを投与される とした。 生検数は2.1±0.4( 1∼3) 個、 手術時間 も呼吸状態は徐々に悪化し、9月9日に人工呼吸管 64.5±30.0分、術後胸腔ドレーン留置期間は2.1±1.8 理となり、10日に当院へ転院となった。 第1病日 日で遷延性肺瘻症例は1例( 10日)のみであった。 にP/F ratio 60未満となり、respiratory ECMOを 術後合併症を3例(腎機能悪化、 虚血性腸炎、 皮 導入した。間質性肺疾患としてステロイドパルス 下血腫)に認めたが、手術による間質性肺炎の急 を開始するも呼吸状態の改善乏しく、炎症反応悪 性増悪や死亡例は認めていない。病理診断は17例 化を認めたため、 第6病日にエンドキサンパルス ( 81.0.%) で確定診断を得ており、CT診断と一致 を施行した。 第8病日にECMOのoff testを施行し は2例( 9.5%) のみであった。 考察) 当院では生 たがP/F ratio 61であり、 離脱は見送り第10病日 検部位は術前に呼吸器内科とのカンファレンスで に膜交換を施行した。第8病日より2回目のステロ 決定している。低肺機能や酸素投与患者では術後 イドパルスを施行し、その後呼吸状態は改善を認 合併症発生率が高くなるとの報告があるが、当科 めた。第13病日にECMOを離脱、第15病日に人工 症例では酸素投与患者においても重篤な合併症は 呼吸器を離脱し、PSL 40mg/日にて第51病日にリ 認めておらず、確定診断のため胸腔鏡下肺生検は ハビリ目的で転院となった。 成人ARDSにおける 有用な方法と考えられた。 ECMOの有用性は2009年に発表されたCESAR研 究で初めて証明されたが、適応は可逆的と考えら れる重症呼吸不全であり、診断が確定していない 間質性肺疾患は適応判断が困難である。ECMO導 入により救命できた間質性肺疾患の症例を経験し たため報告する。 −65− B会場 9:46∼10:21 座長 一門 和哉 済生会熊本病院呼吸器科 間質性肺炎 11 当院におけるピルフェニドンの使用症例 の臨床的検討 12 肺病変の増悪・軽快の自然経過を追跡で きた IgG4 関連肺疾患の 1 例 九州大学大学院医学研究院附属胸部疾患研究施 設 国立病院機構福岡東医療センター呼吸器科1 国立病院機構福岡東医療センター呼吸器外科2 国立病院機構福岡東医療センター臨床検査科3 ○坪内 和哉、濱田 直樹、山本 悠造、 ○古鉄 泰彬1、池亀 聡1、中垣 憲明1、 高野 智嗣、有村 雅子、緒方 彩子、 中野 貴子1、大塚 淳司1、吉見 通洋1、 高山 浩一、中西 洋一 田尾 義昭1、岡林 寛2、古賀 孝臣3、 高田 昇平1 【目的】 当院におけるピルフェニドン使用症例の 患者背景、治療効果、有害事象について検討した。 【対象と方法】2009年2月から2014年9月までにピ 症例は70歳男性。反復する肺炎のため当院に紹介 ルフェニドンを開始した34例を対象として後ろ向 受診となる。初診時、右中葉全体の浸潤影と軽度 きに研究した。 の縦隔リンパ節腫大を認め、経口抗菌薬内服中に 【結果】患者背景は平均年齢69.1歳、男性29例、女 浸潤影は緩徐に軽快した。4か月後の胸部CTで縦 性5例。 臨床診断は特発性肺線維症が29例、 隔リンパ節の増大が確認され、FDG-PET陽性、 PPFE3例、 その他2例であった。 投与開始時に重 可溶性IL2受容体が1862 U/mlと上昇しており、悪 症度が3度以上の症例は22例( 64.7%) であった。 性リンパ腫が疑われた。 初診から7か月後に胸腔 ピルフェニドンの平均投与期間は402.7日で、3ヶ 鏡下リンパ節生検術が施行されたが、手術直前に 月以上投与可能であった23例で投与前後の肺機能 両肺にスリガラス主体の斑状影が出現し、右肺生 検査、血清マーカーの解析を行った。FVCの平均 検も同時に行われた。 病理学的検索では肺病変、 低下量は−81.4 ml/6ヶ月であった。23例のうち重 リンパ節病変ともIgG4陽性形質細胞の多数の浸潤 症度3度以上の15例ではFVCの平均変化量は− を認め、 血清IgG4が273mg/dlと上昇しているこ 114.6 ml/6ヶ月であった。KL-6、SP-Dは6ヶ月間 とからIgG4関連肺疾患と診断した。術後に肺病変 で有意な変化は見られなかった。有害事象は17例 は増悪し初診時と同様の右中葉浸潤影となり、自 ( 50%) で認められ、17例のうち10例は減量もし 然軽快したIgG4関連肺疾患の再燃と考えられた。 くは併用薬投与で治療を継続することができた。 プレドニゾロン25mg/日の内服を開始され、病変 【考察】 当院症例でもこれまでの報告と同様に重 は速やかに軽快した。胸部病変のみのIgG4疾患は 症例での治療効果減弱の可能性が示唆された。し 未だ報告例が少なく、増悪、軽快の自然経過を追 かし、重症例であっても安全に長期間内服が可能 跡できたという点、肺病変、リンパ節病変ともに であり、さらなる症例の蓄積による治療効果の検 IgG4陽性形質細胞の浸潤を病理学的に確認できた 討が必要と考えられた。 点においても貴重な症例と考え、本症例を報告す る。 −66− B会場 9:46∼10:21 座長 一門 和哉 済生会熊本病院呼吸器科 間質性肺炎 13 両肺に多発性結節陰影を呈した IgG4 関 連疾患の一例 佐賀大学医学部内科学講座血液・呼吸器・腫瘍 内科 ○貞松 宏典、高橋 浩一郎、中島 千穂、 田代 宏樹、小林 直美、小宮 一利、 中村 朝美、木村 晋也、荒金 尚子 症例は72歳男性。 早期大腸癌の内視鏡的粘膜切除 術を施行された際に右肺結節陰影を指摘された。 2ヶ月の経過で陰影が増大したため当科を受診し た。胸部CTで右肺上葉の結節陰影は増大し、周囲 に粒状陰影を伴っていた。 両肺に多発性結節陰影 が出現し縦隔肺門リンパ節腫大も認めた。PET-CT で肺結節と縦隔肺門リンパ節の他に、 下大静脈リ ンパ節、 大動脈分岐部周囲、 前立腺にFDG高集積 を認めた。 血清IgG4 790 mg/dlと高値であり、 IgG4関連疾患に伴う肺病変を疑ったが、 感染症や 肺癌の可能性が否定できなかった。 気管支鏡で確 定診断に至らず、 外科的肺生検組織で多数のリン パ球・ 形質細胞の浸潤とIgG4陽性形質細胞浸潤の 所見を認め、IgG4関連肺疾患と診断した。 多臓器 にわたる病変があり、 肺病変の活動性も高いと判 断し、 ステロイド投与をprednisolone( PSL) 40mg/日より治療開始した。 肺病変および縦隔肺 門リンパ節は縮小し血清IgG4値は低下したため、 ステロイドは漸減しPSL 5mg/日で維持療法中であ る。IgG4関連肺疾患の画像所見は、 結節性病変、 気管支血管周囲束の肥厚、 浸潤影、 間質性肺炎な ど多彩である。IgG4関連肺疾患の画像的な特徴に 関して文献考察を加え報告する。 −67− B会場 10:21∼10:56 サルコイドーシス 座長 濱田 直樹(九州大学大学院医学研究院附属胸部疾患研究施設) 14 膿疱性乾癬に対するインフリキシマブ治 療中止後にサルコイドーシスを発症した一例 15 高熱を主訴に発症したサルコイドーシス の1例 長崎大学病院第二内科 福岡大学筑紫病院呼吸器内科 ○吉岡 佐千佳、梅山 泰裕、千住 博明、 ○牛島 真一郎、青山 崇、児玉 多、 由良 博一、朝長 正臣、原田 達彦、 赤木 隆紀、宮崎 浩行、原田 泰志、 中島 章太、原 敦子、原 信太郎、 永田 忍彦 角川 智之、坂本 憲穂、石松 祐二、 尾長谷 靖、河野 茂 症例は32歳女性。4週間前より37℃台の発熱出現 し、近医受診し咽頭炎と診断され抗菌薬( CDTR- 症例は58歳男性、難治性の膿疱性乾癬に対し2年前 PI)を処方された。しかし発熱は持続し改善なく よりインフリキシマブの投与が開始された。 その 同院を再診し、別の抗菌薬(LVFX)を処方された。 後病状は安定していたが、開始2年が経過したころ その後、咳嗽、咽頭痛は消失するも38℃台の発熱 両肺にすりガラス陰影が出現し、KL-6の上昇傾向 が続き、同院で胸部Xp施行され左上肺野に浸潤影 を認めた。 インフリキシマブによる薬剤性肺障害 を認め、 精査加療目的に当科紹介となる。 胸部 が疑われたため中止したところすりガラス陰影の CT施行し縦隔リンパ節の腫大、 両肺野に浸潤陰 改善とKL-6低下を認めたが、 中止後1ヶ月で右眼 影の散在を認めた。呼吸器症状なく、血液検査で 霧視が出現した。 眼科精査でぶどう膜炎と診断さ 炎症反応上昇もみられず、 連日のように夜間に れ、 サルコイドーシス発症が疑われたため当科紹 38℃台の発熱を認め朝には解熱みられており、悪 介となった。 当科受診時の肺野病変は軽微でリン 性リンパ腫の可能性を疑い入院精査を行った。気 パ節腫大は認めなかったが、TBLBで非乾酪性類 管支鏡検査の結果、悪性所見は認めず肉芽腫病変 上皮細胞肉芽腫が確認され、 サルコイドーシスと を認め、 サルコイドーシスと診断するに至った。 診断した。インフリキシマブは抗ヒトTNFαモノ 入院経過中、発熱は徐々に治まり自然と消失みら クローナル抗体製剤で、 サルコイドーシスの治療 れ、 外来にて無治療で経過観察する方針とした。 薬としても用いられることがある一方で、 サルコ 本症例は高熱を主訴として発症したサルコイドー イドーシス発症に関連することも報告されている。 シスであり、サルコイドーシスとしては比較的稀 若干の文献的考察を加え、報告する。 なケースと思われ、若干の文献的考察を加え報告 する。 −68− B会場 10:21∼10:56 座長 濱田 直樹 九州大学大学院医学研究院附属胸部疾患研究施設 サルコイドーシス 16 多彩な症状と多発肺結節を伴った大腸ク ローン病の一例 17 全身の疼痛や脱力を契機に発見されたサ ルコイドーシスの 1 例 飯塚病院呼吸器病センター呼吸器内科 山路 義和、鶴野 広介、宮嶋 宏之、 九州大学大学院医学研究院付属胸部疾患研究施 設1 九州大学大学院医学研究院神経内科学2 九州大学大学院医学研究院形態機能病理学3 向笠 洋介、海老 規之 ○榎津 愛実1、濱田 直樹1、緒方 彩子1、 ○飛野 和則、吉峯 晃平、西澤 早織、 神 幸希、浅地 美奈、安田 裕一郎、 坪内 和哉1、有村 雅子1、山本 悠造1、 高山 浩一1、米川 智2、松瀬 大2、 【症例】特に既往のない30代女性。受診2年前より 右虹彩炎、 受診2ヶ月前の健康診断にて右肺多発 吉良 潤一2、山元 英崇3、小田 義直3、 結節影を指摘されていた。 受診3日前より歩行時 中西 洋一1 の両足趾付け根の疼痛と両下肢の皮疹が出現し、 受診2日前より両足背の腫脹が出現した。 これら 症例は40歳、 男性。20XX年Y月より頭痛、 腰痛、 を主訴に当院受診され、 診察上両足MP関節炎と 発熱、腹痛、下痢を認め、Y+2月より四肢の疼痛 結節性紅斑の合併と考えられた。また、胸部Xpと と脱力が出現し、食事摂取不能となった。近医入 CTにて右肺に多発結節を認めた。 皮疹は生検に 院となり、胸部CTで両側肺門縦隔リンパ節腫大、 て結節性紅斑、肺結節は経気管支鏡生検にて器質 肺野に多発性小結節影を認め、精査加療目的に当 化肺炎の診断を得た。一元的な原因による症状と 科紹介となった。入院時、頭痛、項部硬直、四肢 考え、様々な原因検索を行った結果、大腸内視鏡 脱力、 筋肉の自発痛・ 圧痛を認め、ACE正常、 検査にて縦走潰瘍の多発を認め、大腸クローン病 sIL-2R軽度上昇、FDG-PETでは肺門縦隔リンパ の診断に至った。【結語】 本症例は消化器症状が 節、肺野に集積を認めたが、その他の部位には集 乏しく、消化器外の多彩な症状を伴った比較的稀 積は認めなかった。 気管支鏡検査を施行し、 なケースと考えられる。若干の文献的考察を加え BALFでリンパ球増加、CD4/8比の増加を認め、 て報告する。 EBUS-TBNAで類上皮細胞肉芽腫を認めた。また、 眼にはぶどう膜炎を認め、サルコイドーシスと診 断した。髄液検査ではリンパ球増加を認め、神経 サルコイドーシスによる髄膜炎、筋サルコイドー シスと考えた。 入院中、 左眼瞼下垂、 口角下垂、 右上下肢の触覚低下が出現し、神経サルコイドー シスの増悪と考え、全身ステロイド療法を開始し、 改善傾向である。本症例は、著明な全身症状を契 機に発見されたが、画像・血液学的所見では目立っ た異常を認めず、 診断に難渋した1例である。 文 献的考察を加えて、報告する。 −69− B会場 10:21∼10:56 座長 濱田 直樹 九州大学大学院医学研究院附属胸部疾患研究施設 サルコイドーシス 18 サルコイドーシスの肺病変として経過中 にろ胞性リンパ腫を発症した一例 製鉄記念八幡病院 ○林 康之、田原 正浩、緒方 大聡、 森脇 篤史、塚本 修一、今永 知俊 【症例】47歳。男性。健康診断の胸部X線にて右上 肺野の結節影を認め近医受診、精査目的で2009年 7月に当科紹介となった。【経過】気管支鏡検査の 結果、BALにてリンパ球優位、CD4/CD8=6。2の 所見を認め経過観察となった。他臓器に明らかな 所見は認めなかったが、画像所見と合わせ臨床的 にサルコイドーシスの肺病変と考えた。2013年5 月、 肺野病変の改善にも関わらずCTにて多発リ ンパ節腫大を認めたため頸部リンパ節生検を施行 したところ、 サルコイドーシスの所見は認めず、 フローサイトメトリーの所見と合わせて血液内科 にてろ胞性リンパ腫の可能性を指摘された。2014 年8月、 リンパ節が更に腫大、 それまで併行して 推移していたACEとsIL2-Rが乖離し始めた。1年 後、血液内科にて鼠径リンパ節生検を施行したと ころ、ろ胞性リンパ腫の診断となった。サルコイ ドーシスにリンパ腫が合併することは、 Sarcoidosis-Lymphoma syndromeとされている が、報告はそれほど多くない。サルコイドーシス の確定診断は得られていないが興味深い症例と思 われた。 −70− B会場 10:56∼11:24 血管炎 座長 矢寺 和博(産業医科大学医学部呼吸器内科学) 19 嚢 胞 状 気 管 支 拡 張 症 の 長 期 管 理 中 に MPO-ANCA 関連血管炎を合併した1例 20 潰瘍性大腸炎に合併した多発血管炎性肉 芽腫症(GPA)の一例 久留米大学内科学講座呼吸器・神経・膠原病内 科部門 海江田 信二郎、岡元 昌樹、富永 正樹、 九州大学病院臨床教育センター1 九州大学呼吸器科2 九州大学病態機能内科学3 九州大学消化器・総合外科4 九州大学形態機能病理学5 星野 友昭 ○古川 里恵1、木村 信一2、米島 康臣2、 ○古賀 琢眞、中村 雅之、田中 緑、 南野 高志、吉田 直実、田尻 守拡、 森崎 隆史1、緒方 彩子2、濱田 直樹2、 症例は66歳女性。2005年より嚢胞状気管支拡張症 高山 浩一2、森山 智彦3、田川 哲三4、 と診断され、近医に通院していた。2011年、肺高 平橋 美奈子5、古賀 裕5、小田 義直5、 血圧症の合併と診断され、以降右心不全・肺高血 中西 洋一2 圧症の増悪・ 軽快を繰り返していた。2014年8月 頃より、 下肢の紫斑と貧血が出現。9月30日に、 症例は22歳の男性。X-4年に潰瘍性大腸炎と診断 発熱・意識障害( JCS2)を来たし前医へ入院。血 され、メサラジン(5-ASA)+プレドニゾロン(PSL) 液検査で、 炎症反応高値、NT-proBNP上昇、 高 による寛解導入療法を開始された。PSL漸減後、 CO2血症を認め、感染に伴う慢性心不全急性増悪 X-2年からアザチオプリンを追加された。 副作用 と診断。 利尿剤と抗生剤( SBT/ABPC 4.5g/日) のためX-1年からタクロリムス( TAC) に変更さ による治療を開始するも治療反応乏しく、抗生剤 れたが、コントロールは不良であった。X年4月に を変更( DRPM 1.5g/日) するも症状増悪傾向で 胸部X線およびCTにて両肺野の多発結節影を指摘 あり当科へ紹介となった。 抗生剤不応性であり、 されたため当科紹介となった。気管支鏡検査では 感染症以外の鑑別目的で血液検査を行った結果、 診断に至らなかったが、5-ASAおよびTACに対す MPO-ANCA陽性であった。MPO-ANCA関連血管 るリンパ球幼若化試験が陽性であったことから薬 炎(分類不能型)と診断し、ステロイド加療を開 剤性肺炎が疑われた。5月より被疑薬を中止した 始した。投薬開始後、速やかに発熱・炎症反応・ ところ、6月上旬のCTにて著明な陰影改善を認め MPO-ANCAは改善傾向となり、 全身状態は改善 た。しかし、6月中旬頃より鼻汁や咳嗽が出現し、 した。 気管支拡張症の長期管理中にMPO-ANCA 6月下旬のCTにて浸潤影や小結節影を認めた。 関連血管炎を合併した1例を経験したため、 若干 PR3-ANCA高値からANCA関連血管炎が疑われ、 の文献的考察を加えて報告する。 確定診断目的に8月にVATS下肺生検を施行した。 病理組織診にて類上皮細胞の集簇や巨細胞、血管 炎を認めため、GPAと診断した。10月よりPSL+ シクロホスファミド静注療法による寛解導入療法 を開始し、 症状および画像所見の改善を認めた。 潰瘍性大腸炎に合併した肺病変の報告は散見する が、GPAとの合併症例は非常に少なく、若干の文 献的考察を加えて報告する。 −71− B会場 10:56∼11:24 座長 矢寺 和博 産業医科大学医学部呼吸器内科学 血管炎 21 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA) 22 治療経過中に声門下気管狭窄を呈した 経過中に細気管支炎を呈した一例 Wegener 肉芽腫症(GPA)の一例 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科呼吸器内科 学 熊本中央病院呼吸器科 ○丸山 功祐、平田 奈穂美、貞松 智貴、 那須 信吾、濱田 昌平、稲葉 恵、 ○安田 俊介、眞田 宏樹、近藤 清貴、 牛島 淳、吉永 健 中塩屋 二郎、岩川 純、金澤 裕信、 井上 博雅 【症例】51歳、女性【主訴】喘鳴、呼吸困難 症例は22歳女性。幼少児より感冒時に持続する湿 【現病歴】2013年7月検診で肺浸潤影を指摘、 経 性咳嗽があり、 小児喘息とされていた。X-1年10 気管支生検、PR3-ANCA陽性にてGPAと診断した。 月に下肢筋力低下、足の痺れを自覚し、前医を受 エンドキサンとプレドニゾロンの投与にて一旦寛 診。好酸球増多(7628/μL) 、IgE上昇、神経伝導 解したが、病状再燃し薬剤を増量して治療を継続 速度検査で脱髄性多発単神経炎の所見を指摘さ 中であった。2014年7月から喘鳴、呼吸困難が出 れ、EGPAと診断された。 ステロイドパルス後、 現。フローボリュームカーブの形状から下気道中 プレドニゾロン( PSL) 内服による維持療法が行 枢の狭窄が疑われたため、気管部3D-CT、内視鏡 われ、下肢筋力は徐々に改善していた。X年3月よ 検査等施行したところ、声門下の気管に肉芽様変 り湿性咳嗽、 喘鳴の悪化があり、5月当科紹介。 化と気道狭窄がみられた。薬物治療では狭窄の改 胸部CTでは、 両肺野にびまん性に小葉中心性粒 善が得られず、熊本赤十字病院耳鼻咽喉科に依頼 状影を認めた。 し、気管切開下に肉芽除去手術を施行した。術中 気管支洗浄液細菌培養でH. Influenzaeが検出され、CTRX投与により、 自覚 に局所ステロイド注入も行い加療継続中である。 症状は改善した。7月、 湿性咳嗽が再燃し、 経気 【考察】GPAは上気道、 肺、 腎臓の肉芽腫ないし 管支擦過、洗浄液からアスペルギルス属が検出さ 血管炎を特徴とする疾患であり、 高い頻度で れた。経気管支肺生検ではアスペルギルスの浸潤 ANCAが陽性となる。声門下狭窄は活動性の肉芽 は認められず、沈降抗体は陰性、アレルギー性肺 もしくは瘢痕により出現し、 経過中に約16%の症 アスペルギルス( ABPA)の診断基準は満たさな 例で見られるが、初診時には稀とする報告がある。 かった。ITCZを併用し、 湿性咳嗽は改善したが 今回の症例でも治療中に初診時見られなかった気 粒状影は残存していた。11月、細気管支炎が再燃 道狭窄症状が出現し、診断には肺機能検査が有用 し、画像および臨床経過からびまん性汎細気管支 であった。GPA治療中には中枢気道狭窄の出現に 炎(DPB)の診断基準にも合致していた。EGPA、 注意することが必要と思われた。 DPBなどの診断基準を満たす病態を呈した症例を 経験したので文献的考察を加えて報告する。 −72− B会場 11:24∼11:59 薬剤 座長 北里 裕彦(地域医療機能推進機構久留米総合病院呼吸器内科) 23 薬剤の関与が疑われた、Acute fibrinous and organizing pneumonia の一例 24 N- アセチルシステイン吸入療法により 薬剤性肺障害が生じた特発性肺線維症の1例 北九州総合病院内科 産業医科大学医学部呼吸器内科学 ○川口 健太郎、友田 義崇 ○福田 洋子、石本 裕士、西田 千夏、 山崎 啓、渡橋 剛、川波 由紀子、 矢寺 和博、迎 寛 【症例】63歳、女性。【主訴】呼吸困難、発熱、乾 性咳嗽【現病歴】 入院1ヶ月前より乾性咳嗽、 発 熱を自覚したため近医を受診し胸部レントゲンで 症例は84歳の男性。3年前から特発性肺線維症 両肺に浸潤影を認めた。抗菌薬に反応不良であり、 ( IPF) として経過をみており、2ヶ月前からN-ア セチルシステイン(NAC)の吸入療法と在宅酸素 精査のため当科に入院した。 胸部CTでは上葉優 位に多発するconsolidation、reversed haloが混在 療法を開始した。しかし、徐々に労作時の呼吸困 した陰影を認めた。気管支肺胞洗浄では好中球の 難が増強し再入院となった。入院時には低酸素血 増多を認め、経気管支肺生検で肺胞腔内に器質化 症の進行がみられ、 血液検査では好酸球の増多 像を伴い、フィブリンと好酸球等からなる塊状の ( 8.8%: 実数960/μl)、KL-6の上昇( 1886U/ml) 滲出物を多量に認めAcute fibrinous and がみられた。胸部HRCTでは、既存の蜂巣肺に加 organizing pneumonia( AFOP)と診断した。入 えて新たな微細な粒状影からなるすりガラス状陰 院前内服していたビタミン剤に対するDLSTが陽 影がびまん性にみられた。また気管支肺胞洗浄で 性であり、薬剤性の可能性が示唆された。ステロ は好中球の増加( 35%) がみられた。IPFの急性 イド投与により症状、陰影ともに速やかに改善し 増悪と、 薬剤性肺障害が鑑別と考えられたが、 た。 【考察】AFOPは2002年に提唱された病態で NACの中止とステロイドパルスにより症状および あり、肺胞腔内のフィブリン形成が特徴の疾患で 画像所見が速やかに改善した。NACの再投与試験 ある。 自己免疫性疾患、 血管炎、 薬剤、 感染症、 は行わなかったが、薬剤性肺障害と考えるのが最 環境曝露との関連が示唆されており、臨床転帰が も妥当な臨床経過であった。なお薬剤によるリン diffuse alveolar damage( DAD)に近く、DADの パ球刺激試験はNACに対して陽性( SI=208%)で バリアントとして考えられている。本例ではステ あった。 NAC吸入療法は、IPFにおける肺機能の ロイド投与のみで軽快しており、薬剤性の関与が 低下抑制に期待が持たれている。安全性の高い治 疑われた。今後の症例蓄積が必要な病態であると 療としての認識が強いNAC吸入療法においても薬 考えられ報告する。 剤性肺障害への注意は怠るべきではないと考え考 察を加えて報告する。 −73− B会場 11:24∼11:59 座長 北里 裕彦 地域医療機能推進機構久留米総合病院呼吸器内科 薬剤 25 外科的肺生検を行ったメシル酸イマチニ ブによる薬剤性肺障害が考えられた 1 例 26 高流量式鼻カニュラが診断に有用であっ た、薬剤性肺胞出血と考えられた 1 例 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科呼吸器内科学 北九州総合病院内科 ○松山 緑、久保田 真吾、内田 章文、 ○中村 祥一、川口 健太郎、友田 義崇 松山 崇弘、岩川 純、金澤 裕信、 水野 圭子、寒川 卓哉、東元 一晃、 【症例】79歳、男性。 【主訴】発熱、全身倦怠感【現 井上 博雅 病歴】5日前より微熱、 全身倦怠感が出現、 近医 を受診したところSpO2 80%と低下していたため 症例は73歳女性。3年前にPET検診で小腸腫瘍が 当科に紹介入院した。【臨床経過】CT上著明な気 指摘され、小腸部分切除術施行、消化管間質腫瘍 腫性変化、両側上葉に軽度のすりガラス影を認め ( Gastrointestinal stromal tumor:GIST)と診断さ 肺炎と診断、抗菌薬投与を行ったが症状は改善せ れた。 経過観察していたが1年前に肝転移みられ ず低酸素血症も悪化した。診断目的に気管支鏡施 肝切除術施行。腹膜播種が認められ、メシル酸イ 行、呼吸不全を認めたため高流量式鼻カニュラ使 マチニブ内服開始となった。内服10ヶ月後に胸部 用下に行った。気道内には血液の付着を多数認め、 レントゲン、CTで両肺に多発する浸潤影、 すり 気管支肺胞洗浄では血性であり肺胞出血と診断し ガラス陰影がみられ、気管支鏡検査による生検で た。1年前から開始されていたシロスタゾールを 器質化像が認められた。経過などを含めメシル酸 中止、ステロイド投与を開始したところ呼吸不全 イマチニブによる薬剤性肺障害が疑われたため休 は改善した。肺胞出血の原因として、ANCAを含 薬となったが、労作時呼吸困難の出現と画像所見 む自己抗体は全て陰性であり、薬剤性が考えられ の増悪が認められたため、胸腔鏡下肺生検を行っ た。 【考察】近年導入された高流量式鼻カニュラは、 た。病理組織所見では肺胞腔内のポリープ状の線 高流量の酸素を投与できるだけでなく、解剖学的 維化が認められた。薬剤性肺障害による器質化肺 死腔の減少や呼吸仕事量の減少、PEEP様効果も 炎と診断し、ステロイド治療を行ったところ症状、 期待できることより臨床で広く用いられている 画像所見の速やかな改善がみられた。これまでの が、十分な検討はなされていない。本例では重度 報告ではメシル酸イマチニブによる肺障害の陰影 の呼吸不全を認めていたため、高流量式鼻カニュ は多彩であるが、内服中止後に改善傾向がみられ ラを用いることにより気管支鏡検査を行うことが る症例が多いとされている。本症例では休薬後も 可能となり、診断・治療に結び付いた。当科での 症状や画像所見の悪化がみられたため、外科的肺 使用経験もふまえ報告する。 生検で評価した。メシル酸イマチニブによる薬剤 性肺障害に対し、外科的肺生検を行った報告は少 なく、文献的考察を加えて報告する。 −74− B会場 11:24∼11:59 座長 北里 裕彦 地域医療機能推進機構久留米総合病院呼吸器内科 薬剤 27 KL-6/SLX(K/S)比を用いた、間質性 肺炎合併肺癌患者における薬剤性肺障害発症 の予測 熊本市医師会熊本地域医療センター呼吸器内科 ○柏原 光介、藤井 慎嗣、津村 真介、 青木 亮太、千場 博 【目的】シアル化糖鎖抗原KL-6は間質性肺炎( IP) の活動性マーカーとして、 シアリルSSEA-1抗原 SLXは腫瘍マーカーとして使用されるが、IPと肺 癌のいずれでも上昇する糖鎖抗原であり、この特 性の違いをIP合併肺癌における薬剤性肺障害 (D-ILD)の発症予測因子として利用できないかと 考えた。【方法】2009年4月∼2014年3月の5年間に 治療前KL-6とSLX値が測定された進行肺癌(胸部 放射線治療例を除く) および術後再発症例120例 においてD-ILD発症に関する後方視検討を行った。 【結果】KL-6とSLXの間にはIP合併患者( n=20、 R2 =0.554、P=0.001) とIP非合併患者( n=100、 R2=0.230、P<0.001) のそれぞれに正の相関性が 観察された。D-ILDを発症したIP合併患者は、 非 発症患者に比較して治療前のKL-6/SLX( K/S) 比が高値(30±14 vs. 18±16、P=0.011)であった。 K/S比>24.3の時、IP合併患者でのD-ILD発症頻度 の感度は63%、特異度83%、陽性予測値71%、陰 性予測値77%であった。Cox比例ハザードモデル にてK/S比はD-ILD発症のリスク因子であった (HR=1.040、95%CI=1.009-1.073、P=0.012)。 【結論】 IP合併肺癌患者で治療前K/S比が高値の場合には 抗がん剤によるD-ILD発症のリスクが高かった。 −75− B会場 14:25∼15:00 肺腫瘍 3 座長 海老 規之(飯塚病院呼吸器腫瘍内科) 28 神経調節性失神を発症した非小細胞肺癌 の1例 29 術後 6 年目で縦隔リンパ節に再発し緩徐 に増大した肺腺癌の 1 例 国立病院機構南九州病院呼吸器内科1 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科呼吸器内科 学2 琉球大学医学部附属病院医師キャリア支援セン 1 ター (初期研修部門) 琉球大学大学院感染症・呼吸器・消化器内科学 2 (第一内科) ○是枝 快泉1、大原 耕平1、濱田 美奈子1、 富山 由美子1、是枝 快房1、川畑 政治1、 ○池宮城 七重1、鍋屋 大二郎2、宮城 一也2、 井上 博雅2 橋岡 寛恵2、仲村 秀太2、玉寄 真紀2、 金城 武士2、原永 修作2、比嘉 太2、 健山 正男2、藤田 次郎2 神経調節性失神を合併した原発性肺癌は数例報告 され、全例、左縦隔に密接する腫瘤を有する小細 胞肺癌である。今回、我々は、神経調節性失神を 症例は70代女性。約10年前に左上葉の胸部異常陰 発症した非小細胞肺癌の1例を経験したので、 文 影を指摘、精査にて肺腺癌と診断され手術を施行 献的考察を加え報告する。 され最終的にpT2n0M0 stageΙBと診断された。 症例は、54歳男性で、1ヵ月前から咳嗽・ 左胸部 術後デガフールウラシルを内服したが薬剤性肝障 違和感が出現し、 X年1月に当科を受診した。 C 害にて2か月で服用中止となった。 その後定期的 Tで縦隔に密接する左上葉を占める巨大腫瘤を認 にフォローされ再発の兆候認めなかった。術後11 め、CTガイド下針肺生検で非小細胞肺癌(分類 年目に嗄声が出現、近医受診したところ左の声帯 不能癌)と診断された( cT4N3M0)。化学療法を 麻痺を認めたため当院へ紹介となった。 造影CT 行ったが、 左巨大腫瘤は緩徐に増大した。6月よ 検査にて左下部気管傍リンパ節( #4L) および大 り発汗を伴う立ちくらみが時々出現し、8月より 動脈下リンパ節( #5)の腫脹を認めPET-CTにて 起立後に発汗を伴う失神が頻発し、入院となった。 同部位にSUV Max18.92の著明な取り込みを認め 補液点滴で失神発作は軽減し、心エコー・ホルタ た。また左鎖骨下リンパ節にも取り込みを認めた。 ―心電図では異常なく、 抗Hu抗体・ 抗Yo抗体は 後方視的にこれまでのCTを確認したところ10mm 陰性であった。Tilt Table Testで、立位後14分で 程度であった#4Lが術後6年目ごろより緩徐に増 発汗を伴う血圧低下を認め、神経調節性(血管迷 大、4年かけて20mm程度となっていた。術後再発 走神経性)失神と診断した。補液中止後、起立後 が疑われたためEBUS-TBNAを施行したところ、 の失神が再出現し、 α1刺激薬ミドドリンの内服 細胞診及び組織診断にて肺腺癌と診断した。術後 で失神は改善した。 5年以上経過して再発する症例は3%程度と稀であ 本例は神経調節性失神を合併した非小細胞肺癌の り、治療に関しても明確な指針が存在しないため 初めての症例報告であり、左縦隔に密接する腫瘍 若干の文献的考察を加えて報告する。 を有する肺癌例では神経調節性失神を合併する可 能性があることを認識すべきである。 −76− B会場 14:25∼15:00 座長 海老 規之 飯塚病院呼吸器腫瘍内科 肺腫瘍 3 30 直腸転移を来した肺腺癌の一例 31 Trousseau 症候群を合併した肺腺癌の 1 例 那覇市立病院内科 福岡大学病院呼吸器内科 ○久田 友哉、佐渡山 伸子、松野 和彦、 ○中尾 明、井形 文保、廣田 貴子、 知花 なおみ、喜屋武 幸男 内野 順治、石井 寛、白石 素公、 藤田 昌樹、渡辺 憲太朗 症例は88歳男性。2013年7月に肺炎で入院加療を 受けた際に右上葉腫瘤影を認めた。当初経過観察 としていたが増大を認め、10月に気管支鏡で肺腺 症例は39歳、男性。再発を繰り返す多発性脳梗塞 癌と診断した。診断時病期はc-T3N1M0,3A期、高 の精査加療目的に、近医より当院神経内科へ紹介 齢でもあり対症療法主体の方針とした。2014年10 となった。各種精査の結果、脳梗塞の原因となる 月に右上葉無気肺・気道狭窄に対して姑息的放射 ような疾患は同定されなかった。 しかし、 胸部X 線照射、同年11・12月に多発脳転移に対してγナ 線写真と胸部単純CTで両肺にびまん性小粒状影 イフを施行。以後外来で経過観察を行っていたが、 を認め、喀痰細胞診ではadenocarcinomaの結果で 2014年11月4日に3週間程持続する下痢を主訴に受 あった。このため、原発臓器として肺が最も疑わ 診。 直腸診で腫瘤を蝕知し、CTでは直腸右側に れる腺癌に、Trousseau症候群を合併したものと 内部自壊を伴う腫瘤性病変が疑われた。下部内視 診断され、ヘパリンとワルファリンによる抗凝固 鏡検査では下部直腸にほぼ管腔を占拠し、頂部に 療法を施行された。当科へ転科後、気管支鏡検査 不整形の潰瘍・びらん形成を伴う粘膜下腫瘍を認 による組織診断で肺腺癌であることを確認し、1 めた。 びらん潰瘍部から生検を施行したところ、 次化学療法( CDDP+PEM療法) を計4コース施 一部肉腫様変化を伴う低分化腺癌の所見であっ 行し、現在PEM単剤維持療法中であるが、脳梗塞 た。鍍銀染色では上皮性構造を示し、TTF-1陽性 の再発は認めず経過している。Trousseau症候群 であることより肺腺癌直腸転移と診断。同部位に は傍腫瘍症候群の一つであり、悪性腫瘍に伴う血 対する姑息的放射線照射の方針とし、30Gy/10fr 液凝固能亢進により脳梗塞を引き起こす病態であ の照射を行い以後経過観察中である。肺癌直腸転 り、結果として生じる全身状態の悪化により予後 移の報告は稀であり、文献的考察を含めこれを報 は著明に増悪するとされる。肺癌における報告は 告する。 多くはなく、示唆に富む症例と考えられたため文 献的考察を加え報告する。 −77− B会場 14:25∼15:00 座長 海老 規之 飯塚病院呼吸器腫瘍内科 肺腫瘍 3 32 放射線治療によって全身状態の著明な改 善を認めた G-CSF 産生肺腺癌の一例 九州大学大学院医学研究院附属胸部疾患研究施 設1 九州大学病院臨床教育研修センター2 九州連携臨床腫瘍学講座3 九州大学ARO次世代医療センター4 ○森崎 隆史1、米嶋 康臣1、岩間 映二1,3、 原田 大志1、木村 信一1、古賀 佑一郎1、 岡本 勇1,4、高山 浩一1、中西 洋一1 症例は58歳男性。X年8月より突然の発熱、関節痛 および筋肉痛が出現し、症状が持続するため近医 を受診した。白血球とCRPの著明な上昇、右肺S2 に結節影、 右肺門∼縦隔リンパ節腫大を認めた。 抗菌薬投与後も症状や炎症反応の改善を認めず、 PS 4と全身状態の悪化を認めたため当院転院と なった。入院後に各種感染症検査を施行したが陰 性であった。 全身精査の結果、 原発性肺癌 ( cT1aN1M0, Stage3A)と診断した。PETでびま ん性に骨髄へのFDG集積を認めたため、骨髄生検 を施行したが異型細胞を認めなかった。G-CSF産 生腫瘍が疑われ、発熱、疼痛に対してプレドニゾ ロンの投与を行うも症状の改善は認められなかっ た。 腫瘍の局所制御によるG-CSF産生の抑制とそ れに伴う全身状態の改善を期待し、根治的放射線 治療( 60Gy/30Fr)を施行した。徐々に症状や全 身状態の改善( PS 4→2) を認め、 血清G-CSFは 著明に低下、PETでの骨髄へのFDG集積も消失を 認めた。放射線治療にて全身状態が劇的に改善し た稀な症例として若干の文献的考察を加えて報告 する。 −78− B会場 15:00∼15:35 肺腫瘍 4 座長 森永 亮太郎(大分県立病院呼吸器腫瘍内科) 33 スワンガンツカテーテルによる吸引細胞 診で PTTM を診断しえた一例 34 異所性 ACTH 症候群(EAS)を併発し た小細胞肺癌の 1 例 長崎大学病院第二内科 福岡大学病院呼吸器内科 ○平田 亮介、千住 博明、梅山 泰裕、行徳 宏、 ○平野 涼介、内野 順治、中尾 明、 小河原 大樹、竹本 真之輔、元島 幸平、 井形 文保、矢次 博、森重 真美、 溝口 孝輔、中富 克己、中村 洋一、 田中 誠、松本 武格、廣田 貴子、 福田 実、河野 茂 石井 寛、白石 素公、藤田 昌樹、 渡辺 憲太朗 症例は40歳男性。咳嗽、血痰を契機に受診、左下 葉に腫瘤性病変を指摘され、当科精査で非小細胞 65歳男性。2型糖尿病、 脂肪肝などに対して近医 肺癌c-stage3Aと診断した。2014年X月に開胸左下 で内服加療していた。 平成26年10月9日の定期腹 葉切除術施行、adenocarcinoma pT2aN2M0 部USで肝に腫瘤を認め、 胸腹部CTで肺癌が疑わ stage3Aの確定診断となり、 術後化学療法として れ、当科に精査・加療目的で同年10月27日に入院 CDDP /VNRを4コース投与した。術後4ヶ月頃よ となった。TBLBによる組織診は小細胞癌の結果 り軽度の労作時呼吸苦出現、 術後5ヶ月の胸部CT であり、PET-CTなどの各種検査より癌性胸膜炎、 で左肺動脈内血栓を疑われるも有意な所見なく経 脳ならびに肝に転移を認めていたため、小細胞肺 過観察とした。 術後8ヶ月経過後に労作時呼吸苦 癌 EDと診断した。11月6日よりCDDP+CPT11 増悪し、 呼吸不全が出現・ 進行した。 胸部CTで で治療開始となったが、 その頃より血清Kが 肺病変は著変なく、肺高血圧症が指摘された。肺 3.7mmol/Lから2.5mmol/Lと低下傾向を示した。 血流シンチや肺動脈造影の結果より肺動脈の末梢 下痢の出現はなかったが、その後も経静脈的にカ 塞栓が疑われたため、スワンガンツカテーテルで リウムを補充するにも関わらず、 左下葉肺動脈末梢より吸引細胞診を施行、ClassV 1.9mmol/Lとさらに低下を示した。 低K血症の原 adenocarcinomaの結果からpulmonary tumor 因精査を行い、ACTH:474pg/mL(基準値:7.2-63.3) 、 thrombotic microangiopathy( PTTM)による二 コルチゾール:36.4μg/dLとともに上昇していたた 次性肺高血圧症と診断した。PTTMの報告は散見 め異所性ACTH症候群( EAS)が疑われた。下垂 されるが剖検例での診断が多く、生前に診断し得 体MRIで下垂体腫瘍がないことを確認し、EASと た希少な症例であるため、若干の文献的考察を加 診断した。その後はメチラポン投与開始し、血清 え、報告する。 Kは3-4mmol/Lを推移するようになった。EASは 血清Kは 腫瘍随伴症候群であり、小細胞肺癌に合併するこ とは良く知られているが、実際に経験する事は稀 である。若干の考察を加えて報告する。 −79− B会場 15:00∼15:35 座長 森永 亮太郎 大分県立病院呼吸器腫瘍内科 肺腫瘍 4 35 半膜様筋転移を来した肺腺癌の一例 36 Cushing 症候群と肺ノカルジア症を合併 した ACTH 産生肺小細胞癌の一例 久留米大学医学部内科学講座呼吸器・神経・膠 原病内科部門 ○小田 華子、坂崎 優樹、田中 緑、 宮崎大学医学部内科学講座神経呼吸内分泌代謝 学分野 ○土田 真平、治田 倫孝、北村 瑛子、 徳永 佳尚、石井 秀宣、時任 高章、 松尾 彩子、坪内 拡伸、今津 善史、 木下 隆、東 公一、山田 一彦、星野 友昭 有村 保次、飯干 宏俊、松元 信弘、 中里 雅光 骨格筋は全体重の40%を占め、 血管床が豊富な組 織であるが、 悪性腫瘍の転移は非常に稀であり、 また予後不良とされている。今回、我々は腸腰筋、 症例は66歳、 男性。 入院2ヶ月前から運動した後 脊柱筋、半膜様筋に転移を来し、転移巣の制御が に顔面浮腫を自覚し、同時期より食欲の亢進と全 困難であった原発性肺癌の一例を経験したので報 身倦怠感を自覚した。3週間前に下腿浮腫も出現 告する。 症例は67歳男性、2014年7月より左大腿 し、近医で色素沈着、高血圧と胸部単純写真で肺 部痛を自覚していた。 同年9月、 胸部単純レント 門部腫瘤影を指摘された。ACTH、コルチゾール ゲン異常を指摘され近医呼吸器内科に紹介となっ 高値、 低K血症を認め、 当科で気管支鏡検査を施 た。CT上、右肺S6領域に40×27mm大の腫瘤影と 行した。肺門部腫瘤影から肺小細胞癌の診断を得、 左副腎腫大を認めた。また右脊柱筋、左腸腰筋に ACTH免疫染色に陽性であったことからACTH産 辺縁が造影される腫瘤影を認めた。左下腿のMRI 生肺小細胞癌と診断した。入院1週間前の胸部CT では半膜様筋に50mm大の腫瘤影を認め、PETで では肺門部の腫瘤影に加えて新たに右上葉の浸潤 も同部位に集積を認めた。経気管支肺生検にて腺 影と両側副腎の腫大を認めた。入院時にSpO低下、 癌が検出され、原発性肺癌cT3N0M1b stageIVの CRP高値を認め、CTで右上葉浸潤影の急速な増 診断となり当科紹介となった。 一次治療として 大と左舌区に空洞形成を伴う新たな浸潤影を認め CDDP+PEMによる全身化学療法を2コース施行 た。喀痰塗抹にてノカルジアを疑わせる菌体を認 し、肺内病変はやや縮小傾向であったが、右脊柱 め、培養でノカルジア菌を同定した。右上葉と左 筋内、左半膜様筋内の腫瘤の増大を認めた。肺病 舌区の浸潤影は肺ノカルジア症による肺炎像と考 変と筋肉病変の治療効果に解離があり、肉腫など えられた。副腎皮質ホルモン合成阻害療法、抗生 の鑑別のため、 左半膜様筋のエコー下針生検を 剤加療、 化学療法を開始した。Cushing症候群と 行ったところ、肺病変と同様に腺癌が検出された。 肺ノカルジア症を合併した異所性ACTH産生腫瘍 筋肉病変は制御不良であり、同部位への放射線療 について文献的考察を加え報告する。 法を行い、現在、二次治療を検討中である。 −80− B会場 15:00∼15:35 座長 森永 亮太郎 大分県立病院呼吸器腫瘍内科 肺腫瘍 4 37 肺癌放射線化学療法後に緑膿菌性肺膿瘍 を合併した1例 大分県厚生連鶴見病院1 大分大学医学部呼吸器・感染症内科学講座2 ○岸 建志1、藤田 直子1、宇佐川 佑子1、 田村 寛子1、岩田 敦子1、串間 尚子2、 鳥羽 聡史2、梅木 健二2、安東 優2、 平松 和史2、門田 淳一2 症例は59歳、 男性。20○○年1月に胸部異常陰影 で気管支鏡検査を施行した結果、扁平上皮癌と診 断され2月に当科紹介となった。 左肺門部に肺動 脈浸潤を伴う40mm大の腫瘤陰影をみとめ、 StageIIIAと診断し3月より化学放射線併用療法、 5月に地固め療法を施行した。しかし40℃の発熱 と倦怠感が4日間続き6月2日に当科受診、左上葉 に空洞を伴う浸潤影を認め、肺膿瘍として入院と なった。 入院日よりTAZ/PIPC、 第7病日より MEPMに変更したが、発熱・膿性痰が続いたため、 第12病日に気管支鏡を施行したところ、左上葉気 管支より遠位が壊死・空洞化し、内腔が白苔で覆 われていた。同部洗浄液よりβラクタム薬耐性緑 膿菌が分離されたことから抗菌薬多剤併用療法に 変更したが、症状・データとも改善なく、第20病 日には多剤耐性緑膿菌が検出された。手術困難で あったことから抗菌薬治療を継続していたが、膿 瘍は改善せず、第42病日突然の大量喀血にて窒息 死した。病理解剖の結果、膿瘍腔内に肺動脈の一 部が露出しており、 同部が出血点と考えられた。 病理学的には動脈平滑筋細胞が欠落した感染性動 脈炎の所見であり、肺癌病変はほぼ消失していた。 肺癌合併緑膿菌感染症について考察する。 −81− B会場 15:35∼16:10 肺腫瘍 5 座長 東 公一(久留米大学医学部内科学講座呼吸器・神経・膠原病内科部門) 38 PTHrP 産生肺多形癌が疑われた症例 39 間質性肺炎の経過中に発見され急激に進 行した肉腫型悪性胸膜中皮腫の剖検例 大分大学医学部呼吸器・感染症内科学講座 福岡大学病院呼吸器内科学教室 ○牛嶋 量一、山末 まり、串間 尚子、 ○佐々木 朝矢、廣田 貴子、松本 武格、 橋永 一彦、鳥羽 聡史、梅木 健二、 石井 寛、藤田 昌樹、渡辺 憲太朗 安東 優、平松 和史、門田 淳一 症例は64歳、女性。胸部違和感と徐々に増悪する (背景) 全身倦怠感、口渇感があり、近医を受診したとこ アスベスト暴露の明らかでない肉腫型悪性胸膜中 ろ胸部単純X線写真で右中肺野に巨大な腫瘤影を 皮腫と特発性間質性肺炎の合併 指摘され当科へ紹介された。 血清Ca値とPTHrP (症例) 値が上昇しており、超音波気管支鏡下リンパ節生 86歳男性、20××年発症の間質性肺炎のため当科 検の病理組織は多形癌を疑う所見であった。 でフォローされていた。20××+6年4月末に感冒 PTHrP免疫組織化学染色では一部の腫瘍細胞が弱 症状と背部痛を自覚し、労作時呼吸困難も出現し 陽性を示し、PTHrP産生肺多形癌と診断した。比 たため受診した。右胸水貯留と炎症反応上昇を認 較的まれな症例を経験したため報告する。 めた。間質性肺炎の急性増悪もしくは随伴性胸水 が疑われ入院となった。入院後の胸部CT検査で は右胸水貯留及び、3か月前に見られなかった右 胸膜肥厚を認めた。当初の抗菌薬が奏功せず、胸 腔ドレナーンを挿入し、間質性肺炎急性増悪も考 慮し、ステロイド療法を開始した、アスベスト小 体を確認することができず、アスベストとの関連 は明らかではなかった。 (結論) 特発性間質性肺炎の経過中に肉腫型悪性胸膜中皮 腫を併発した症例を経験した。職業的なアスベス ト暴露歴がないこと、胸水中に悪性細胞が検出さ れなかったため診断が遅れた。胸腔鏡下生検が最 も確実な診断方法と考えられたが同意が得られな かった。 −82− B会場 15:35∼16:10 座長 東 公一 久留米大学医学部内科学講座呼吸器・神経・膠原病内科部門 肺腫瘍 5 40 原発不明リンパ上皮腫様癌の 1 例 41 超音波気管支鏡ガイド下リンパ節生検で 診断に至った原発不明悪性黒色腫の 1 例 飯塚病院呼吸器病センター呼吸器内科 吉峯 晃平、神 幸希、浅地 美奈、 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科呼吸器内科 学 山路 義和、鶴野 広介、宮嶋 宏之、 ○大脇 一人、近藤 清貴、眞田 宏樹、 ○安田 裕一郎、飛野 和則、西澤 早織、 中塩屋 二郎、岩川 純、金澤 裕信、 向笠 洋介、海老 規之 水野 圭子、寒川 卓哉、東元 一晃、 井上 博雅 症例は80歳男性。X年3月中旬より嗄声を自覚し近 医を受診。左反回神経麻痺と縦隔リンパ節腫大を 指摘され3月28日に当院紹介受診され、 精査加療 症例は62歳女性。 咳嗽が持続したため近医受診。 目的に入院となった。 血液検査所見ではCRP 胸部レントゲンで左肺門部の腫瘤影、 胸部CTで 3.31mg/dlと軽度の炎症所見を認め、CEA6.4ng/ は左肺門と多発する縦隔リンパ節腫大がみられ ml、CYFRA5.3ng/ml、proGRP138pg/ml、IL2-R た。また全身精査では脳、肝臓に多発する腫瘤性 803U/mlと腫瘍マーカーの軽度上昇も認めた。 胸 病変が認められた。縦隔リンパ節に対し気管支鏡 腹部造影CTでは左鎖骨上窩リンパ節・ 左腋窩リ 検査を行ったが確定診断がつかなかったため、当 ンパ節・気管後リンパ節の腫大を認めた。診断目 科紹介となった。縦隔リンパ節に対し超音波気管 的に施行したEBUS-TBNA、EUS-FNAでは確定 支鏡ガイド下針生検( EBUS-TBNA)施行、病理 診断に至らず、慎重に経過観察の方針とした。経 組織学的診断で胞体内に茶色顆粒状色素がみられ 過中に左鎖骨上窩リンパ節が増大したため、全身 る腫瘍細胞が認められ、 免疫組織染色ではMelan 麻酔下に左鎖骨上窩リンパ節生検を施行した。病 A、S-100がびまん性に陽性を示していたことから 理検査の結果、リンパ上皮腫様癌の診断となった。 悪性黒色腫と診断した。全身検索したが原発巣は リンパ上皮腫様癌は稀な疾患であり、確立された 同定できなかったため、原発不明のものと診断し 治療方針はない。本症例の治療経過と若干の文献 た。悪性黒色腫は、皮膚、眼窩内組織、口腔粘膜 的考察を加え報告する。 上皮などに発生するメラノサイト由来の悪性腫瘍 であり、早期から遠隔転移をきたす悪性度の高い 予後不良な疾患である。また原発巣が自然消退す る頻度が高いため、入念な検索が必要である。本 症例では原発巣が明らかではなく、EBUS-TBNA によるリンパ節へのアプローチを行うが確定診断 に有用であった。若干の文献的考察を加えて報告 する。 −83− B会場 15:35∼16:10 座長 東 公一 久留米大学医学部内科学講座呼吸器・神経・膠原病内科部門 肺腫瘍 5 42 慢性膿胸の既往なく胸壁から発生した悪 性リンパ腫の一例 済生会熊本病院呼吸器センター ○神宮 直樹、仁田脇 辰哉、久永 純平、 阿南 圭祐、坂田 能彦、保田 祐子、 荒川 尚子、川村 宏大、岩谷 和法、 一門 和哉、吉岡 正一 症例は61歳、女性。小児期に眼結核の治療歴があ り脂質異常症で近医フォロー中であった。毎年健 診を受けていたが胸部レントゲンで初めて異常陰 影を指摘され9月に当科外来を受診。 胸部CTで左 胸腔内に腫瘍性病変を認めた他、 胸壁皮下にも2 個の結節を認めた。発熱、体重減少などの全身症 状なく、 血液検査で可溶性IL-2受容体含め各種腫 瘍マーカーの上昇も認めなかった。FDG-PETで は左胸壁腫瘍、皮下結節に加え縦隔リンパ節#3に も異常集積を認めた。確定診断のため左胸壁腫瘍 より胸腔鏡下生検を施行し悪性リンパ腫の診断と なり12月より放射線治療を開始した。慢性結核性 膿胸などの既往がない胸壁発生の悪性リンパ腫は 比較的まれであり、若干の文献敵考察を含め報告 する。 −84− B会場 16:10∼16:38 肺腫瘍 6 座長 内野 順治(福岡大学病院呼吸器内科) 43 肺部分切除術後瘢痕部に発生した肺原発 MALT リンパ腫の 1 例 44 CT ガイド下針生検後に自然退縮を認め た肺 MALT リンパ腫の 1 例 筑後市立病院呼吸器内科1 久留米大学医学部内科学呼吸器・神経・膠原病 内科部門2 熊本大学医学部呼吸器内科 1 1 ○福嶋 一晃、廣佐古 進、天神 佑紀、 佐伯 祥、小嶋 圭介、岡本 真一郎、 1 一安 秀範、藤井 一彦、興梠 博次 ○内藤 佳子 、末友 仁 、中尾 栄男 、 冨岡 竜介1、星野 友昭2 症例は72歳、女性。膀胱癌の術前評価のために撮 症例は77歳男性、アスベスト暴露歴あり。 影した胸部CTで右肺下葉にφ12mm大の孤立結節 2012年11月、右下葉に腫瘤影を指摘され、当院に を認め、前医で気管支鏡検査を行われたが診断に てTBLBを行うも確定診断に至らなかった。 診断 は至らず、 当院に紹介された。 自覚症状はなく、 目的で他院にて胸腔鏡下右肺部分切除術を施行し 身体診察で異常所見なく、LDH、 可溶性IL-2レセ たが、線維化を認めるのみであった。以後、他院 プターは基準値内で、 血液CEAとCYFRAが軽度 で定期的に経過観察を行われており、右下葉には 高値であった。 同病変に対するCTガイド下針生 術後の炎症性変化を疑う不整形陰影、胸水が残存 検の結果、肺MALTリンパ腫の診断となった。膀 していたが、陰影は縮小傾向にあった。 胱癌の手術を優先し胸部孤立結節のフォローを 2014年8月より血痰が出現。胸部CTにて術後より 行った。 生検から3ヶ月後にその孤立結節は若干 残存していた不整形陰影の増大を認めたため精査 増大したが、15ヶ月後のCTで消失した。その後、 加療目的で当院紹介となり、気管支鏡検査を施行 生検から28ヶ月後まで再発を認めていない。 肺 した。気管支内腔には活動性出血および出血源と MALTリンパ腫の自然退縮の報告例はごく少数で なるような病変は認めず、 右下葉の陰影に対し あり、貴重な症例と考えられたため報告する。 TBLBを施行。TBLB組織よりMALTリンパ腫の 診断に至った。PET検査では気管分岐下リンパ節 に転移を認めたがその他の臓器には病変を認め ず、肺原発MALTリンパ腫の診断で血液内科に紹 介のうえ、化学療法(RCVP療法)を開始した。 本例は、稀な経過を辿りMALTリンパ腫の診断に 至った症例であり、若干の文献的考察を加えて報 告する。 −85− B会場 16:10∼16:38 座長 内野 順治 福岡大学病院呼吸器内科 肺腫瘍 6 45 関節リウマチ治療中に MTX 関連リンパ 増殖性肺疾患を発症した一例 46 呼吸不全を伴ったメソトレキセート関連 リンパ増殖性疾患の一例 社会保険大牟田天領病院呼吸器科 飯塚病院呼吸器内科1 飯塚病院呼吸器腫瘍内科2 ○小佐井 幸代、高橋 比呂志、岡林 比呂子、 ○山路 義和1、飛野 和則1、吉峯 晃平1、 丸山 理一郎、本田 泉、杉本 峯晴 西澤 早織1、神 幸希1、浅地 美奈1、 安田 裕一郎1、井手 ひろみ1、宮嶋 宏之1、 症例は63歳男性。10年前に近医で関節リウマチ 鶴野 広介1、向笠 洋介1、海老 規之2 ( RA) と診断され、 メトトレキサート( MTX) 10mg/日、 ブシラミン200mg/日、 プレドニゾ ロン10mg/日で治療していた。20XX年9月から 【症例】関節リウマチの既往がありメソトレキセー 咳が出現し、10月12日近医を受診した。同日から ト( MTX) 内服中のADL自立した73歳女性。 当 上記薬剤が中止となり、 胸部CTで右下葉に腫瘤 院受診4ヶ月前より全身倦怠感と発熱が出現し、 様の浸潤影を認め当院に紹介となった。肺癌を疑 増悪したため当院を受診。 受診時SpO2 86%(室 い気管支鏡検査( BF) を施行したが、 悪性所見 内気) と呼吸不全を認めた。 胸部XpおよびCTで を認めなかったため経過観察の方針となり、10月 両肺野に多発結節影とすりガラス状陰影を認め、 31日から上記薬剤を再開した。翌年1月の胸部CT 転移性肺腫瘍および癌性リンパ管症が疑われた。 では腫瘤影は縮小したが、7月の胸部CTでは増大 入院後急速に呼吸状態が悪化したため、家族と相 した。 そのため再度BFを施行したが確定診断で 談しBSCの方針となった。 緩和的にモルヒネ持続 きず、CTガイド下肺生検で線維性肉芽組織と診 投与とメチルプレドニゾロン点滴を開始したとこ 断された。肺癌であれば進行癌であったが、確定 ろ、 入院8日目には胸部Xp上のすりガラス状陰影 診断のために手術を希望され、胸腔鏡補助下右肺 および酸素化は著明に改善した。確定診断目的に 中下葉切除施行したところ、 病理組織でReed- 肺生検と左鼠径部の腫脹リンパ節の生検を行った Sternberg 細胞を認めホジキンリンパ腫と診断し ところ、 リンパ節生検にてDiffuse large B-cell た。MTX関連リンパ増殖性肺疾患はRA治療にお lymphoma( MTX-associated lymphoproliferative けるガイドラインではMTXの重篤な副作用の一 disorder: MTX-LPD)の診断に至った。 つとして挙げられている。RAに対してMTX使用 【結語】MTX使用中の関節リウマチ患者で発熱、 中に肺野に腫瘤影を認めた場合、本疾患の可能性 体重減少、リンパ節腫脹、炎症反応高値、LDH上 を考えた診断・治療方針が必要である。 昇、可溶性IL-2R高値を呈する場合は、MTX-LPD を念頭においた検索が必要である。 −86− C会場 8:50∼9:18 感染症1 座長 阿部 航(大分大学医学部付属地域医療学センター) 47 2 週間のプレドニゾロン投与にて発症し たニューモシスチス肺炎の 1 例 48 急性期の血清 HMGB-1 動態を調べた重 症レジオネラ肺炎の一例 琉球大学医学部附属病院医師キャリア支援セン 1 ター (初期研修部門) 琉球大学大学院感染症・呼吸器・消化器内科学 2 (第一内科) 琉球大学医学部附属病院医師キャリア支援セン ター初期研修部門1 琉球大学大学院医学研究科感染症・呼吸器・消 化器内科学2 ○宮城 文音1、宮城 一也2、上 若生2、 ○國場 司1、金城 武士2、鍋谷 大二郎2、 橋岡 寛恵2、仲村 秀太2、玉寄 真紀2、 2 2 仲村 秀太2、宮城 一也2、原永 修作2、 2 比嘉 太2、健山 正男2、藤田 次郎2 金城 武士 、原永 修作 、比嘉 太 、 健山 正男2、藤田 次郎2 症例は56歳、男性。来院3日前より湿性咳嗽、下痢、 症例は80代男性。 約1年前に気腫合併肺線維症お 食思不振があり、意識が朦朧としていたため家族 よび肺高血圧症の診断で在宅酸素療法が導入され が救急車を要請し当院受診となった。来院時身体 外来にてフォロー中であった。今回、他院受診中 所見はJCS I-1、血圧 109/76、脈拍 122/分、体 に突然の呼吸困難、SpO2低下認め入院となった。 温 38.0℃、呼吸数 24/分、SpO2 92%(経鼻酸素 COPD急性増悪が疑われプレドニゾロン( PSL ) 2L/分)。胸部CTでは右下葉にすりガラス状陰影 40mg/日および利尿剤が開始となったが低酸素血 を伴うconsolidationを認め、 尿中レジオネラ抗原 症が遷延するため当院転院となった。入院時、リ 検査が陽性でDICも併発していたため重症レジオ ザーバー付カニューレ2L/分下で酸素化保たれて ネラ肺炎と診断し、レボフロキサシンに加え、ト おり発熱は認めなかった。血液検査では炎症所見 ロンボモジュリン、免疫グロブリンの点滴静注も の上昇認めず画像所見でも感染や原疾患増悪の所 行った。治療開始後も徐々に呼吸状態は悪化し発 見は認めなかった。右心不全が原因と考え利尿剤 熱も持続していたため、第5病日からメロペネム、 は継続、PSLは2週間で漸減、中止とした。経過良 第10病日からはアジスロマイシンの投与、そして 好であったが病日13日目に炎症所見上昇を認め、 陽・陰圧体外式人工呼吸器( RTX)を開始した結 翌日より発熱が出現した。 胸部CTでは両側びま 果、解熱が得られ軽快退院することができた。急 ん性のスリガラス陰影増強を認めておりKL-6やβ 性期の血清中IL-6, TNF-alpha, HMGB-1( high -Dグルカンの上昇も認めた。PSLの使用は短期間 mobility group box-1) を測定したところ、 前二 であったが、ニューモシスチス肺炎( PCP)を疑 者は入院時をピークに経時的に減少していたが、 いST合剤を開始、PSLも併用とした。最終的に喀 HMGB-1は第5病日をピークに高値が持続してい 痰検査にてPneumocystis Jiroveci のPCRが陽性で た。HMGB-1高値は重症肺炎の予後不良因子であ ありPCPと診断した。2週間のステロイド使用に るという報告があり、HMGB-1の中和作用を有す てPCPを発症することは稀であり、 若干の文献的 るトロンボモジュリンがHMGB-1の過剰な上昇を 考察を加えて報告する。 抑制した可能性がある。 −87− C会場 8:50∼9:18 座長 阿部 航 大分大学医学部付属地域医療学センター 感染症1 49 喀痰培養から Bordetella bronchiseptica が検出された慢性気管支炎の一例 50 非定型抗酸菌症の治療中に接合菌症を合 併した一例 済生会飯塚嘉穂病院呼吸器科1 九州大学胸部疾患研究施設2 製鉄記念八幡病院呼吸器内科 ○緒方 大聡、田原 正浩、森脇 篤史、 ○猪島 尚子1、伊地知 佳世1、橋口 波子1、 2 今永 知俊 2 米嶋 康臣 、猪島 一朗 症例は83歳男性。 平成24年8月に一般細菌肺炎に 症例は53歳女性、 職業は犬と猫のブリーダー。6 罹患した際、 胸部CTで右肺上葉に空洞性病変を 年前の20XX年、 検診にて胸部レントゲン異常を 認め、喀痰培養でMycobacterium kansasii が同定 指摘され当院紹介受診。1年前から咳嗽を認め近 された。INH、RFP、EB併用療法を開始後、喀痰 医にて咳止めを内服中であった。胸部レントゲン 培養で抗酸菌が一度も検出されず、 平成26年3月 及び胸部CTにて右上葉S2、 左舌区に気管支拡張 で治療終了となった。自覚症状はなかったが、治 を伴う小葉中心性粒状影および結節影を認め、非 療終了時の胸部CTで病巣の改善が不良であった 定型抗酸菌症を疑われた。喀痰検査ではガフキー ため、アスペルギルス感染症の合併を考え、気管 0号とくに有意な起因菌も同定されず、 クラリス 支鏡検査を施行した。結果、気管支洗浄液および 内服、 対症療法にて経過観察されていた。6ヶ月 喀痰の培養で糸状菌を認め、 遺伝子解析により 後に胸部レントゲンおよびCTにて陰影増悪が認 Cunninghamella bertholletiae が同定された。肺空 められたため気管支鏡を施行するも、再び有意な 洞性病変を認め、アスペルギルス感染症を考えた 起因菌は得られなかった。その後も咳嗽の症状は 場合、治療方針が異なる接合菌症は重要な鑑別疾 持続していたが、対症療法のみで経過観察してい 患のひとつである。また、同疾患は診断が困難で た。 さらに5年後、 急性気管支炎を併発した際の あり、遺伝子解析を含む精査を積極的に施行すべ 喀痰検査にてBordetella bronchiseptica を検出し きである。 た。人では比較的稀な気管支炎の起因菌であるた め、若干の文献的考察を加えて報告する。 −88− C会場 9:18∼9:46 感染症 2 座長 力丸 徹(福岡山王病院呼吸器内科) 51 びまん性汎細気管支炎様の陰影を呈した Nocardia beijingensis による肺ノカルジア症 の一例 52 肺癌との鑑別が困難であった肺放線菌症 の一例 唐津赤十字病院呼吸器内科 1 国立病院機構長崎医療センター呼吸器内科 長崎大学病院検査部2 長崎大学3 ○小楠 真典、小宮 奈津子、井上 周、 ○平野 仁士1、山本 和子1、太田 賢治1、 症例は71歳 女性。既往に大動脈閉鎖不全症、僧帽 古垣 浩一、加藤 雅人 永吉 洋介1、久冨 恵子1、土井 誠志1、 弁狭窄症、心房細動、左心耳血栓、右腎梗塞あり。 長島 聖二1、柳原 克紀2、河野 茂3 平成25年8月ごろから喀血を認め、10月に近医よ り当院紹介。CTで右肺中葉に浸潤影を認め、 気 【症例】78歳 女性【主訴】発熱、咳嗽、喀痰 管支鏡で同部位を洗浄したが異型細胞や有意菌は 【現病歴】非喫煙者。4年前より近医にて慢性気管 検出せず。止血剤の内服で経過をみたが、その後 支炎と診断され、CAMを内服していた。1ヶ月前 も1ヶ月に1回程度の頻度で少量の喀血が続いた。 から発熱、咳嗽、喀痰が出現し、近医を受診。胸 平成26年5月末、買い物用ビニール袋 2/3ほどの大 部CTにて気管支拡張と両下葉を主体とするびま 量喀血があり、近医を受診し当院紹介入院となる。 ん性小葉中心性粒状影を指摘され、当科に紹介受 CTで右肺中葉の浸潤影はやや増大し、 内部に一 診。 精査・ 加療目的にて入院。【所見】 両下肺野 部低吸収域を認め、 肺癌の可能性も否定できず。 に吸気時の湿性ラ音を聴取し、閉塞性の呼吸機能 既往から抗凝固療法の中止も難しく、今後の大量 障害を認めた。びまん性汎細気管支炎を疑って気 喀血のリスクを考慮し、肺葉切除術の方針となっ 管支鏡検査を施行し、多量の緑色膿性痰と肺胞洗 た。 術後切除標本にて4cm程度の硬い腫瘤と内部 浄液中の好中球増加を認めた。気管内分泌物の塗 に空洞を有し、空洞内にPAS染色陽性の菌塊とグ 抹染色にて放線菌を認め、培養にて白色コロニー ロコット染色で放射状の菌糸を確認し、肺放線菌 を形成するノカルジア属菌を検出した。同菌株は 症の診断となった。今回我々は、肺癌との鑑別を 長崎大学にてPCRおよびダイレクトシーケンス法 要する肺放線菌症の比較的まれな症例を経験した を用いてNocardia beijingensis と同定された。 ため、若干の文献的考察を加えて報告する。 ABPC/SBT 1.5g×3/日の点滴治療を開始し、 速 やかに解熱と炎症反応の低下を得た。 退院後 ABPC/SBTの内服継続によって呼吸器症状は消 失し、 治療開始3ヶ月後の胸部CTでは両肺のびま ん性粒状陰影の著明な改善を認めた。【考察】N. beijingensis は近年分離された新しいノカルジアで あり、本菌によってびまん性小粒状陰影を呈する 症例は稀である。若干の文献的考察を加え報告す る。 −89− C会場 9:18∼9:46 座長 力丸 徹 福岡山王病院呼吸器内科 感染症 2 53 肺アスペルギローマにアレルギー性気管 支肺アスペルギルス症を合併した1例 長崎みなとメディカルセンター市民病院呼吸器 内科1 長崎大学病院第二内科2 ○森 美香1、澤井 豊光1、吉岡 寿麻子1、 54 リポソームアムホテリシン B とボリコナ ゾールの併用が有用であった侵襲性肺アスペ ルギローシスの 1 例 済生会飯塚嘉穂病院呼吸器科1 医療法人いこいの森2 九州大学病院胸部疾患研究施設3 ○伊地知 佳世1、橋口 波子1,2、猪島 一朗1,3、 松尾 信子1、須山 尚史1、河野 茂2 猪島 尚子1 症例は50歳の男性。201X年7月中旬頃からの咳嗽、 黄色痰、微熱および左上肺野空洞影の精査目的で 症例は65歳男性。 肺アスペルギルス症の診断で 当科外来を紹介受診となった。炎症反応の上昇に 2014年1月からITCZの投与を開始した。 しかし6 加え左肺尖部に不整な壁肥厚を伴う空洞影および 月から服薬を自己中断し、3ヶ月後全身倦怠感を その周囲のすりガラス状陰影が認められたため、 主訴に当院を受診。胸部レントゲンにて空洞陰影、 肺膿瘍あるいは肺アスペルギローマに合併した細 浸潤影が著明に増悪し侵襲性アスペルギルス症と 菌性肺炎を疑い、 当科入院の上、SBT/ABPC 診断した。 β-D-グルカン、 アスペルギルス抗原/ 12g/日を開始した。その後、徐々に炎症反応は低 抗体は陰性でムコール症も否定できなかったこと 下し空洞影も縮小したが、夜間に強い咳嗽が続き、 からL-AMB+MCFG併用による治療を開始した。 好酸球も徐々に上昇、3週後には両側中肺野に斑 しかし一時増悪したため気管支鏡検査を行ったと 状影が出現した。 血清IgEの上昇、 アスペルギル ころ、気管支壁全周性に多量の白苔の付着がみら ス抗原に対する即時型皮内反応陽性、アスペルギ れL-AMBを右上葉枝に直接散布した。 治療開始 ルス沈降抗体陽性も確認されたためアレルギー性 1ヶ月後には改善傾向にあり、気管支鏡検査でも 気管支肺アスペルギルス症(ABPA)と診断した。 白苔は消失していた。2ヶ月後胸部レントゲン及 また、気管支肺胞洗浄液よりA. fumigatus が分離 び自覚症状悪化。再度気管支鏡検査を行ったとこ されたため、空洞影は肺アスペルギローマと診断 ろ、多量の白色の粘液がみられアスペルギルス症 した。全身性ステロイドは肺アスペルギローマを の再増悪が認められた。そこでより強力な治療を 悪化する懸念があり、 吸入ステロイドと するために、MCFGをVRCZへ変更し、AMPH-B itraconazole内服による治療を開始し、 呼吸器症 の吸入も併用したところ空洞拡大はなく浸潤影も 状と胸部画像の改善が得られた。 肺アスペルギ 徐々に縮小していった。侵襲性肺アスペルギルス ローマにABPAを合併した症例は比較的稀であ 症ではVRCZ、L-AMBが第一選択薬とされている り、若干の文献的考察を加えて報告する。 が、第一選択薬単剤で効果が乏しい場合、多剤併 用することも考慮すべきと考える。 −90− C会場 9:46∼10:14 COPD 座長 川山 智隆(久留米大学医学部内科学講座呼吸器・神経・膠原病内科部門) 55 ICS/LABA から LABA への切り替えに より肺炎の頻度が減少した COPD の 2 症例 56 COPD 患者の副鼻腔病変の検討 福岡山王病院呼吸器内科 国立病院機構熊本再春荘病院呼吸器内科1 熊本大学医学部附属病院呼吸器内科2 ○力丸 徹、松永 和子、永渕 雅子 ○中村 和芳1、小松 太陽1、天神 佑紀1、 1 1 【目的】 慢性副鼻腔炎患者は閉塞性障害を来しや 1 浦本 秀志 、今村 文哉 、松本 充博 、 すい事を報告してきたがCOPD患者で副鼻腔炎が 興梠 博次2 関与しているか不明である。COPD患者の副鼻腔 病変の特徴を明らかにする。【対象】平成22年4月 【背景】COPD患者において、吸入ステロイド(ICS) -26年11月に当院で副鼻腔CTと肺機能検査を同時 投与により肺炎リスクが増加することが知られて 期に施行した505例の内、 明らかな胸写異常を除 いる。 今回、ICS/LABAからLABAへの切り替え き拡張薬吸入後のFEV1/FVCが70%未満の症例。 により肺炎の頻度が減少したCOPDの2症例を経 【方法】 副鼻腔病変をLund-MacKay systemで点 験したので報告する。【症例】 症例1は80歳男性(% 数化0-2点を正常( A群) 、3-6点を疑い( B群) 、7 FEV1.0 44.8%, ブリンクマン指数 900)緑膿菌 点以上を副鼻腔炎( C群) とし臨床像を明らかに 肺炎による頻回の入院が必要であったが、ICSを する。【結果】64例(喘息合併;ACOS29例)、 平 中止後、 肺炎の頻度は減少した。ICS中止後の肺 均年齢(64.8±15.1歳) ;男性49例、女性15例。A群: 炎による入院期間は中止前より短縮し、抗菌薬投 16例(男: 女、14:2) 年齢65.3±18.2歳、ACOS 与期間、CRP陰性化までの期間も短縮した。ICS 5例、 非喫煙者1例。B群:16例(男: 女、12:4) 中止による自覚症状は著変無く1秒量は軽度改善 年齢69.3±11.5歳、ACOS 5例、非喫煙者3例。C群: した。症例2は79歳男性(%FEV1.0 85.8%, ブリ 32例(男: 女、23:9) 年齢62.2±14.8歳、ACOS ンクマン指数 1060)肺炎による頻回の入院が必 19例、 非喫煙者11例。 なお非喘息・ 非喫煙者は4 要であったが、ICSを中止後、 肺炎の頻度は減少 例( B 群:1 例 、C 群:3 例 ) 認 め た 。 【結論】 した。ICS中止後の肺炎による入院期間、 抗菌薬 COPD患者の半数、特にACOSでは約2/3の症例に 投与期間、CRP陰性化までの期間は著変無かった。 副鼻腔炎を認めた。喫煙、喘息の既往は閉塞性障 ICS中止による自覚症状は変化無く1秒量は軽度改 害の原因として重要であるが、非喘息・非喫煙者 善した。【考察および結語】COPDに対するICS投 4例中3名に副鼻腔炎を認めたことはCOPDの診断 与は、 高度気流閉塞症例(%FEV1.0<50%), 時に留意しておく必要があると思われた。 ACOS症例に推奨されるが、症例1のように高度気 流閉塞を呈しても肺炎を繰り返す症例ではICS中 止を検討すべきと考える。今後、症例を蓄積しさ らなる検討を行う予定である。 −91− C会場 9:46∼10:14 座長 川山 智隆 久留米大学医学部内科学講座呼吸器・神経・膠原病内科部門 COPD 57 COPD 患者の呼吸音についての検討 58 CAM は副鼻腔炎例の肺機能を改善する 国立病院機構福岡病院呼吸器内科 福岡山王病院呼吸器内科 ○石松 明子、中野 博、野上 裕子、吉田 誠、 ○力丸 徹、永渕 雅子、松永 和子 岩永 知秋 【目的】 我々は以前から、 慢性副鼻腔炎患者は閉 【目的】COPDの聴診所見として古くから呼吸音の 塞性障害を来しやすい事を報告してきた。慢性副 減弱が特徴と記述されてきたが、近年は肺機能検 鼻腔炎にCAMが有効である事は良く知られてい 査、 画像診断方法の発展に伴って早期からCOPD る。 今回、CAMが副鼻腔炎例の肺機能にどのよ が診断される一方で聴診所見は確立されていない うな影響を与えるか明らかにする。 【対象】 平成 と言わざるを得ない状況である。COPDが社会医 25年1月から26年11月までに当院を受診し、 副鼻 学的関心事になった現在日常臨床でもっとも汎用 腔CTと肺機能検査を同時期に施行した症例の中 される聴診がCOPDの診断においてどのような意 で副鼻腔病変を認め3カ月以上CAMを投与した14 味をもつものかを明確にする必要があると考え本 症例(男性10例、女性4例、平均年齢57.9±11.3; 研究を企画した。 【対象】COPD群:(当院に通院 非喫煙3例、既喫煙9例、現喫煙2名)。なお喘息や または入院中の男性患者でGOLDの診断基準を満 気管支拡張薬を使用した症例は除いて検討した。 たすもので、 病状が安定している患者)、 健常対 【方法】CAM投与前後の肺機能の変化をmatched 照群:(定期健康診断を受ける当院男性職員) 各 p a i r 解 析 で 比 較 し た 。【 結 果 】 % V C:9 5 . 6 ± 20名。 【方法】 座位で安静呼吸、 深呼吸を各々60 13.4→99.6±13.8%( P<0.01)、FEV1/FVC:72.8 秒間行わせて左右前胸部、左右背側上部、左右背 ± 6 . 1 → 7 3 . 1 ± 6 . 3 %( N . S . ) 、 % F E V:8 3 . 6 ± 側下部の計6か所で呼吸音を収録した。マイクロ 11.3→88.1±11.9%( P<0.05)、FEV1.0:2.44± ホンで収録された信号は増幅器をへてAD変換器 0.59→2.57±0.56L( P<0.05) 、 吸入後FEV1/ でAD変換しパソコンに入力、 解析は吸気呼気の FVC:75.1±6.8→75.4±6.4%( N.S.) 、 吸入後 最大流速について高速フーリエ解析を行いパワー FEV1.0:2.52±0.48→2.65±0.56L(P<0.05) 【結論】 スペクトルを求めた。呼吸流速はニューモタコ方 副鼻腔病変を伴う症例ではCAMにより肺機能が 式のフローセンサーで測定した。 【結果】 安静呼 改善する可能性がある事が示唆された。 吸において吸気呼気ともにCOPD群で健常群より 呼吸音は強かった。 −92− C会場 10:14∼10:49 気管支喘息 座長 東元 一晃(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科呼吸器内科学) 59 咳失神を契機に発見された気管支喘息の 一例 60 Aspergillus niger 気道内定着・気管支炎 によりステロイド抵抗性喘鳴・難治性喘鳴を 来たした1例 福岡青洲会病院 沖縄県立南部医療センター・こども医療セン ター呼吸器内科1 沖縄県立八重山病院 内科2 ○小山 倫太郎、杉本 幸弘、渡辺 真、 久和 啓邦、中里 未央、高山 昌紀 症例は42歳,男性。1カ月前から咳嗽, 喀痰,微熱 ○比嘉 真理子1、天久 康絢1,2 が出現し, 自宅で様子を見ていたが改善せず, 咳 嗽後に一過性の意識消失発作も伴うようになっ 症例は71歳、女性。12年前よりステロイド不応性 た.当院救急外来に受診しジスロマックを処方さ の喘息と診断され、吸入ステロイド等にて加療さ れ経過観察していたが, 咳嗽の改善なく徐々に咳 れていた。外来通院時は慢性的に喘鳴が聴取され、 嗽後失神の頻度も増加してきたため精査加療目的 しばしば内服ステロイドを投与された。X年Y月、 に入院となった。 BMIは37.9と高度肥満があり, 喘息発作で入院し、1週間ステロイド静注をうけ 身体所見で全肺野に著明なWheezeが聴取された。 たが、喘鳴は消失せず呼吸器科紹介となった。難 胸部X線や胸部CTで明らかな異常陰影を認めず, 治性喘息、もしくは気流制限の可逆性自体がない 血液検査で白血球数増加と若干の肝機能障害を認 と推測され、診断の見直しが必要と考えた。微熱・ め, IgE(RIST)は著明に高値であった。アレルギー 黄色痰・湿性咳嗽・喘鳴あり。アレルギーより感 検査で多くの抗原に対するアレルギー素因が認め 染性の病態を考える症状であった。スパイログラ られ, 呼吸機能検査で気管支喘息として矛盾しな ムは閉塞性ではなく、 拘束性パターンであった。 いフローボリューム曲線であったため, 気管支喘 PEFをモニタすると、 日内変動が少なくCAM投 息と診断された。一過性の意識消失発作は咳嗽後 与のみで徐々に上昇した。 胸部CTでは右上葉に に引き続く病歴と, 他に意識消失発作を来す明ら 小粒状影あり、そのほか中枢性気管支拡張もみら かな原疾患が無かったため咳失神と考えられた。 れた。気管支鏡検査を施行し、気管支洗浄液は好 咳失神を契機に発見された気管支喘息の報告は稀 中球優位、アスペルギルス抗原2.5陽性、表面黒色 であり,若干の文献的考察を加え報告する。 コロニーの糸状菌Aspergillus niger が培養され た。 アスペルギルス特異的IgE、 沈降抗体は検出 さ れ ず 、A B P A と は 診 断 さ れ な か っ た 。 Aspergillis niger による気管支炎病態と考え、 ITCZ20mg/日を投与したところ、 さらにPEFは 改善し、数年持続した喘鳴が消失した。文献的考 察を加えて報告する。 −93− C会場 10:14∼10:49 座長 東元 一晃 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科呼吸器内科学 気管支喘息 61 新生児慢性肺疾患を呈した児で、学童期 および青年期における呼吸機能評価が行えた 1例 62 気管支喘息を合併した慢性好酸球性肺炎 における呼気 NO 濃度の変化に対する検討 国立病院機構沖縄病院呼吸器内科1 琉球大学大学院医学研究科感染症・呼吸器・消 化器内科学2 産業医科大学医学部呼吸器内科学 ○宇山 和宏、矢寺 和博、西田 千夏、 ○知花 賢治1,2、稲嶺 盛史1,2、藤田 香織1,2、 生越 貴明、山崎 啓、渡橋 剛、 仲本 敦1、久場 睦夫1、大湾 勤子1、 川波 由紀子、石本 裕二、迎 寛 藤田 次郎2 症例は10代前半の青年期の男性。 在胎26週5日、 1055gで出生、 出生直後から肺の換気障害が持続 【背景と目的】 慢性好酸球性肺炎(以下CEP) に し、 新生児慢性肺疾患( chronic lung disease of 気管支喘息が合併することは知られており、呼気 the newborn;以下CLD)3型と診断された。 在宅 NO濃度(FeNO)の変化が喘息の症状のみの変化 酸素療法を導入されていたが、2歳時に中止でき でなく、慢性好酸球性肺炎の病態を知る上でも有 た。その後は自覚症状もなく、通院も中断してい 用だとされている。 今回当院のCEP症例でFeNO たが、学校健診で胸郭異常を指摘されたため再診 測定を行っている3症例について検討を行った。 となり、 労作時呼吸困難があるため紹介された。 【結果】3症例は男性2例、 女性1例。3例ともCEP 胸部画像では両肺びまん性に気腫性変化、両側下 診断時に気管支喘息、アレルギー性鼻炎または副 葉優位に気管支壁の肥厚があり、呼吸機能検査で 鼻腔炎が診断されていた。 治療は1例がステロイ は可逆性のある閉塞性換気障害を認めた。CLDの ドパルスを施行し、2例は経口プレドニンの内服 慢性期では、喘息と類似の臨床的特徴がみられる を開始し症状は軽快。 現在は3例とも経口プレド とされるが、CLDはリモデリングを主とする病変 ニン内服中である。FeNO測定の経過中に呼吸器 であり、症状の改善や発作の予防に吸入ステロイ 症状が出現し、FeNO濃度が上昇した症例は2症例 ド薬は有効でないといわれている。本症例は呼吸 あり、 経口プレドニンの増量で軽快し、FeNOも 機能検査で可逆的な気流制限を認めており、既知 低下した。しかし、CEPの増悪はなく、気管支喘 のCLDに加え、 喘息を合併していると考えられ、 息の増悪によるFeNOの上昇と思われた。 【結語】 吸入ステロイド薬の治療を開始し、 改善した。 今回の検討ではFeNO測定でのCEPに対するフォ CLDによる呼吸機能障害の症例のなかにも、喘息 ロー期間が短く、検討した症例も少ない。CEPが の合併があり、抗喘息薬による治療効果が期待で 増悪し、FeNOの上昇を認めた症例はなく、 関連 きる症例もあると考えられ、若干の文献的考察を 性は不明であった。しかし気管支喘息の増悪によ 含めて報告する。 るFeNOの変化はみられていたことから、FeNO を指標にして経口プレドニンの調整をすること で、CEPの再発が起こりにくくなる可能性がある と思われた。 −94− C会場 10:14∼10:49 座長 東元 一晃 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科呼吸器内科学 気管支喘息 63 喘息患者における PM2.5 の短期的影響 に関する観察研究 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科呼吸器内科学1 長崎県環境保健研究センター2 健康保険諫早総合病院3 長崎大学病院 臨床研究センター4 ○尾長谷 靖1、田村 圭2、土田 朋子1、 土肥 正敬2、山内 康生2、泊 慎也3、 深堀 範1、河野 哲也1、福島 千鶴1、 本多 隆2、河野 茂1 【目的】 大気中PM2.5濃度と気管支喘息患者におけ るPEFR(ピークフロー値) との関連を大陸から の越境汚染が卓越する長崎県において検討する。 【方法】2013年8月から気管支喘息患者52名を長崎 県環境保健研究センターとの共同前向き観察研究 として登録し、PM2.5と喘息症状、PEFRの変動の 関連を検討している。 期間A:2013年10月の高濃 度黄砂期間、 期間B:10月末のPM2.5濃度が日平均 で35mcg/m3を頻回に超えた期間、期間C:2014年 1月中旬の日最高値120mcg/m3となった期間、 期 間D:2014年3月中旬の日平均で40mcg/m3を数日 超えた期間の前後のPEFRの変動を比較検討した。 【成績】 期間A、Cでは変動を認めず期間Bで低下 傾向( p=0.05) を示し期間Dで明らかな低下 ( p=0.02) を認めた。【結論】PM2.5の気管支喘息 への影響因子として接触暴露時間および濃度、気 圧や温度、湿度などの既知の因子に対する相乗効 果、喘息患者側の因子としての気道過敏性や重症 度、治療管理状況などが考えられる。今回の検討 で暴露時間の重要性が示唆された。PM2.5の独立し た影響を抽出するため検討を継続している。 −95− C会場 10:49∼11:17 症例 1 座長 柏原 光介(熊本市医師会熊本地域医療センター呼吸器内科) 64 全身麻酔下片肺洗浄によって対側肺の改 善も得られた自己免疫性肺胞蛋白症の1例 65 8 年以上経過を追跡し、増悪と改善を認 めた特発性肺胞蛋白症の 1 例 産業医科大学呼吸器内科学 産業医科大学若松病院呼吸器内科学1 産業医科大学病院呼吸器内科学2 ○丈達 陽順、石本 裕士、西田 千夏、 ○島袋 活子1、笹原 陽介1、野口 真吾1、 山崎 啓、渡橋 剛、川波 由紀子、 西田 千夏2、山崎 啓2、吉井 千春1、迎 寛2 矢寺 和博、迎 寛 症例は69歳の女性で、3年前に自己免疫性肺胞蛋 症例は60歳代の女性。20XX年に胸部異常陰影を 白症の診断に至り、気管支鏡を用いた区域洗浄を 指摘され右上葉に限局性のcrazy-paving 繰り返し実施していた。区域洗浄はその都度奏功 appearanceを認めた。気管支鏡検査を施行したが し、在宅酸素療法(HOT)を中止することができ 診断がつかず胸腔鏡下肺生検を施行した。病理組 た期間もあったが、 呼吸不全の進行( O2 5l: 織で肺胞腔内にPAS陽性の好酸性の沈着や、電顕 PaO2 62 Torr)もみられ、全身麻酔下片肺洗浄を にてlamellar bodyを認め、血清抗GM-CSF抗体が 目的に入院となった。入院時の血液検査ではKL-6 7.908μg/mlと陽性であったため特発性肺胞蛋白 が5503 U/mlで、 胸部HRCTではびまん性に高度 症と診断した。診断後去痰剤を開始し悪化はなく のcrazy paving appearanceが認められた。 入院 KL-6は600U/ml台を推移していたが、2年後に画 後、 全身麻酔下に1l×10回の右片肺の全肺洗浄を 像上増悪を認めKL-6は6266U/mlと高値を示した。 行った。洗浄中の呼吸状態も安定しており人工肺 その他の治療は追加せず、その2カ月後には陰影・ の使用は不要であった。術後10日で退院とし、時 KL-6の改善を認めた。 さらに診断から6年後にも 機をみて左肺の全肺洗浄も行う予定としていた 増悪がみられ、KL-6も4160U/mlと上昇を認めた。 が、退院後の経過が良好で、左肺野の陰影も着実 去痰剤のみ継続し気管支鏡下区域洗浄を検討して に軽減し、4ヶ月後にはHOTを中止することがで いたところ、 増悪から1カ月で改善がみられKL-6 きた。肺胞蛋白症に対する気管支鏡を用いた区域 も低下を認めた。 初診から8年経過した現在も去 洗浄において、非洗浄部分の陰影改善も得られる 痰剤のみで悪化はなく通院中である。肺胞蛋白症 とする報告があるが、全身麻酔下片肺洗浄におい の臨床経過の多くは不変、 もしくは増悪するが、 ても、非洗浄部分(対側肺)の改善が期待できる 25%∼30%で自然寛解する。 長期的な経過に関す 本症例の経験は、侵襲の強い本治療を計画するう る報告は少なく、今回我々は肺胞蛋白症と早期に えで示唆に富む経験であったと考え報告を行う。 診断し、8年の経過で2回にわたって増悪と改善が みられた1例を経験したので若干の文献的考察を 加えて報告する。 −96− C会場 10:49∼11:17 座長 柏原 光介 熊本市医師会熊本地域医療センター呼吸器内科 症例 1 66 肺移植後に肺胞蛋白症を再発し約 5 年の 経過で死亡した遺伝性肺胞蛋白症の一例 1 長崎大学病院感染症内科 (熱研内科) 十善会病院呼吸器内科2 3 長崎大学大学院腫瘍外科 (第1外科) 長崎医療センター呼吸器外科4 1 67 一側性延髄梗塞による呼吸不全に対して 人工呼吸管理を行いウィーニングに成功した 一例 社会医療法人雪の聖母会聖マリア病院 ○高田 綾子、迫田 頼武、有森 陽二郎、 松元 崇史 1 1 ○高木 理博 、田中 健之 、神白 麻衣子 、 古本 朗嗣1、土橋 佳子2、宮崎 拓郎3、 3 3 【症例】65歳男性。1週間前から自宅で体動困難と 4 なり、意識障害、呼吸不全にて当院救急搬送となっ 1 山崎 直哉 、永安 武 、森本 浩之輔 、 た。 来院時の意識レベルはJCS3 であり、 画像検 有吉 紅也1 査にて気管支肺炎像を認めた。意識障害に伴う誤 松本 桂太郎 、土谷 智史 、田川 努 、 3 3 嚥性肺炎による呼吸不全と診断し、気管挿管のも 肺胞蛋白症は約90%が抗GM-CSF自己抗体を有す と人工呼吸管理を開始した。その後ウィーニング る自己免疫性肺胞蛋白症であり、遺伝性肺胞蛋白 を進め、一度抜管したが意識障害が遷延し無呼吸 症は1%以下とまれである。遺伝性肺胞蛋白症の治 が散見された。このとき、右Horner徴候、両上肢 療法は確立されておらず、肺移植療法の役割もわ 失調、 嚥下障害、 左上下肢温痛覚障害を認めた。 かっていない。症例は36歳時に肺胞蛋白症を発症 頭部MRI画像を撮像したところ、延髄右側梗塞の し、42歳時に生体肺移植を受けた。移植後に遺伝 所見を認め、これが中枢性呼吸障害を引き起こし 子異常によるGM-CSFレセプターβ鎖の欠損が判 たと考えられた。その後リハビリテーションの進 明し遺伝性肺胞蛋白症と判明した。術後の経過は 行とともに意識レベル、無呼吸は改善し、人工呼 良好であったが、移植後約1年5か月後には肺胞蛋 吸器離脱後は高流量システム酸素療法を行った。 白症を再発した。全肺洗浄を繰り返し行い、小康 第49病日に酸素療法を中止することができた。 状態が得られていたが、閉塞性細気管支炎症候群 【考察】 中枢性延髄梗塞により中枢性換気障害が や侵襲性肺アスペルギルス症を発症し、 術後5年 生じることは知られているが、一側性延髄梗塞に の経過で死亡した。剖検所見では両肺に肺胞蛋白 より換気障害を呈する症例はまれである。またこ 症の再発所見が認められた。遺伝性肺胞蛋白症に の換気障害は少なくとも1ヶ月以上遷延すること 対して肺移植を行ってもGM-CSFレセプターを欠 が多いとされる。今回延髄右側脳梗塞による換気 損した骨髄由来の肺胞マクロファージが再発を引 障害に対して行った呼吸療法について文献的考察 き起こす。理論上、骨髄移植が根治的治療になり を加え報告する。 うるが、 これまで臨床的に成功例の報告はなく、 近年、遺伝子治療した肺胞マクロファージの自己 移植療法も研究されている。本症例を通して遺伝 性肺胞蛋白症に対する移植療法の役割について考 察し報告する。 −97− C会場 11:17∼11:52 症例 2 座長 髙田 昇平(国立病院機構福岡東医療センター呼吸器内科) 68 Primary Ciliary Dyskinesia(PCD)の 一例 69 濃緑色を来した膵性胸水の 2 例 国立病院機構九州医療センター呼吸器内科1 大分大学医学部呼吸器感染症内科学講座 国立病院機構九州医療センター内科2 ○向井 豊、山末 まり、牛嶋 量一、菅 貴将、 久留米大学医学部呼吸器神経膠原病内科3 ○田口 和仁1、佐々木 潤1、岡山 雄亮1、 小野 朋子、橋本 武博、城 幸督、 安田 ちえ、水上 絵理、吉川 裕喜、 竹中 慎一1、武岡 宏明1、熊野 友美1、 鳥羽 聡史、串間 尚子、梅木 健二、 一木 昌郎1、藤森 尚2、河邉 顕2、 安東 優、門田 淳一 星野 友昭3 Primary ciliary dyskinesia(以下PCD)は1981年 症例1は35歳男性、症例2は53歳男性。主訴は共 に提唱された、先天的な線毛の形態異常により粘 に発熱であった。 生活歴における飲酒は共に3合 液線毛輸送機能が障害され、慢性副鼻腔炎、滲出 /日以上の大酒家であった。画像上主膵管が破綻 性中耳炎、気管支拡張症、不妊等を呈する稀な疾 し仮性嚢胞内に膵液が漏出し嚢胞から連続して胸 患である。内臓逆位を伴うPCDはKartagener症候 腔内を穿破した膵性胸水と考えられた。いずれも 群として認識されており、内臓逆位のない症例と 破綻部主膵管を超えるように膵管ステントを留置 約半数ずつ存在するとされる。今回我々は、幼少 し胸腔ドレナージと膵炎治療が行われ改善した。 時より副鼻腔炎をはじめとした気道感染を反復し, 膵性胸水の報告は認められるも実際に経験するこ 画像上気管支拡張を認め、内臓逆位を伴わない24 とは稀と思われ濃緑色の胸水鑑別に本疾患が必要 歳男性の気管支粘膜上皮の超微構造異常を電子顕 であると思われたため多少の文献を参考に報告し 微鏡で確認し、確定診断に至ったPCDの一例を経 たい。 験した。そこで若干の文献的考察を加えて報告す る。 −98− C会場 11:17∼11:52 座長 髙田 昇平 国立病院機構福岡東医療センター呼吸器内科 症例 2 70 全身性エリテマトーデス(SLE)に硬化 性縦隔炎を合併した一例 71 肺癌との鑑別に苦慮した肺静脈奇形の一 例 熊本中央病院呼吸器内科1 熊本中央病院呼吸器外科2 国立病院機構長崎医療センター1 長崎大学医学部第2内科2 ○那須 信吾1、平田 奈穂美1、貞松 智貴1、 ○山手 亮祐1、土井 誠志1,2、永吉 洋介1,2、 濱田 昌平1、稲葉 恵1、牛島 淳1、 2 2 山本 和子1,2、久冨 恵子1,2、長島 聖二1,2、 2 河野 茂2 松原 恵理 、大場 康臣 、丸塚 孝 、 吉永 健1 症例は53才、女性。主訴は胸部異常陰影。既往歴 症例は51歳、男性。乾性咳嗽、前胸部痛を主訴に に特記事項なし。 生来健康だったが、200X年1月 近医を受診し、 胸部X線写真にて両側胸水貯留あ の検診にて胸部異常陰影を指摘され近医受診。胸 り、 当院紹介入院となった。CTにて前縦隔の腫 部CTを施行され多発結節影を認めたため精査目 瘤性病変と両側胸水を認めた。胸水はリンパ球優 的にて同年2月当科紹介となった。胸部CT上右上 位の滲出性胸水であった。 前縦隔病変に関して、 葉に1カ所、左下葉に4カ所の最大径12mmの多発 各種腫瘍マーカーの有意な上昇なく、MRIにて特 する境界がやや不明瞭な結節影を認めた。1ヶ月 異的な所見が認められなかったため、胸骨正中切 の経過フォローにて陰影に変化が見られず肺癌を 開下前縦隔腫瘤摘出術を施行した。しかし周囲へ 疑い気管支鏡内視鏡を行ったが有意な所見が得ら の癒着が強く摘出困難で、生検で終わった。病理 れなかった。確定診断の為呼吸器外科紹介し同年 組織では、著明な線維化や、表層の炎症性、浮腫 6月に胸腔鏡下左下葉部分切除術が施行された。 性変化を認め、硬化性縦隔炎に矛盾しない所見で 病理所見にて毛細血管の増生を認め肺静脈奇形と あった。その後、黒色便が出現し貧血が進行した 診断された。肺静脈奇形は主に幼少期に発見され ため、 上部消化管内視鏡検査を施行したところ、 る疾患で頭頸部や四肢に多く見られるが肺に生じ 出血性胃潰瘍を認めた。止血処置と保存的加療を ることは非常にまれである。遺伝性出血性毛細血 行ったが、止血確認後も貧血が進行し、血小板が 管拡張症とは鼻出血の有無、皮膚、口腔内、消化 減少した。貧血は溶血性貧血のパターンであった。 管の毛細血管拡張などが見られず区別された疾患 精査にて抗核抗体陽性、漿膜炎、腎障害、血液異 である。本症例含め文献的考察を行い報告する。 常あることから、SLEと診断した。SLEに硬化性 縦隔炎を合併した貴重な症例を経験したため、報 告する。 −99− C会場 11:17∼11:52 座長 髙田 昇平 国立病院機構福岡東医療センター呼吸器内科 症例 2 72 粘液栓様の陰影を呈した肺葉内肺分画症 の1例 国立病院機構福岡病院内科 ○横山 哲也、河野 徳子、鈴木 邦裕、 門脇 雅子、石松 明子、古森 雅志、 吉田 誠、野上 裕子、岩永 知秋 56歳男性。約10年前より健康診断で胸部異常陰影 を指摘されるようになり、喀痰も出現するように なった。1年前に胸部の違和感を自覚したため当 院を受診した。 胸部CTで左肺下葉に棍棒状の陰 影があり、粘液栓様であったため、アレルギー性 気管支肺アスペルギルス症の可能性を疑われた。 しかし、 好酸球増多、IgE上昇はなく、 また、 気 管支鏡検査で粘液栓も確認できなかったため、し ばらく去痰剤を内服し経過観察された。今回、健 診で胸部異常陰影を指摘され、喀痰が増えたこと もあり、 当院を再受診したところ、 胸部CTで左 肺下葉の粘液栓様の陰影が増大していた。胸部造 影CTを撮影したところ、 下行大動脈から分枝す る血管が粘液栓様陰影に流入し、左肺静脈に還流 している血管が確認されたため、肺葉内肺分画症 と診断した。その後、左肺下葉切除術を施行した。 気管支拡張症を背景に粘液栓様の陰影を呈したた め、診断に苦慮した肺葉内肺分画症の症例を経験 したため、病理所見も併せて報告する。 −100− C会場 14:25∼14:53 抗酸菌症 1 座長 大湾 勤子(国立病院機構沖縄病院呼吸器内科) 73 一般病棟で肺結核治療中に喀痰の抗酸菌 塗抹検査が陽性に転じて接触者検診を行った 1事例 74 人工呼吸管理を要した粟粒結核の一例 北九州市立門司病院呼吸器内科 ○佐野 ありさ1、伊井 敏彦1、井手口 優美1、 国立病院機構宮崎東病院呼吸器内科1 国立病院機構宮崎東病院内科2 小玉 剛士1、柳 重久1、比嘉 利信2 ○野田 直孝、金 民姫、三宅 恵、廣瀬 宣之、 安元 公正 症例は54歳女性。 基礎疾患なし。2014年6月下旬 【はじめに】 肺結核診断時の喀痰抗酸菌塗抹が陰 から微熱、間欠的に38℃の発熱出現。近医でAZM 性で初期治療中に塗抹所見が陽性に転じて接触 を処方され一旦軽快。7月下旬に再び38℃の発熱 者検診を行った事例を経験したため報告する。 が出現し同医を再診。LVFXを処方されたが解熱 【病歴】 患者は86歳女性で脳梗塞により長期臥床 せず、食欲不振、白色痰も出現し8月中旬に再診。 し介護施設で生活していたが、 喘鳴が出現した 肝機能障害( AST433, ALT270,T-Bil0.6) を指摘 ため胸部X線検査を行われ両肺尖部の結節と左胸 され他医を紹介された。 胸腹部CT上胆嚢壁肥厚 水貯留を指摘され当科を紹介受診した。3回の喀 と肺野のびまん性陰影を認めたため当院を紹介受 痰抗酸菌検査で塗抹陰性であったが、 培養陽性 診。喀痰抗酸菌塗抹Gaffky1号、Lamp法陽性のた で同定検査の結果から肺結核と診断し、 治療目 め粟粒結核と診断し入院。INH隔日+RFP+EBで 的に当科入院となった。 治療開始した。 治療開始3日目にビリルビン上昇 【結果と接触者検診の概要】INH+RFP+EB+PZA ( T-Bil0.2→7.2)し肝機能も再増悪。同時に急性期 の投与を開始した。 抗結核薬投与開始6日後の吸 DICスコア4点となり酸素化も悪化した。治療開始 引喀痰で抗酸菌塗抹所見が陽性に転じた。 一般 4日目の胸部CTでは粟粒影に加え両下肺に浸潤影 病棟入院中に排菌を確認したため、 患者は結核 が出現していた。呼吸不全が進行し、治療開始13 病棟へ転棟し治療を継続した。 接触者には 日目に気管内挿管、人工呼吸管理となった。経過 T-SPOT検査を行った。 中肝機能障害の遷延、人工呼吸器関連肺炎の合併、 【検診結果】検診対象61名(医師1名、看護師37名、 低アルブミン血症に伴う下痢や全身浮腫などが遷 看護助手8名、理学療法士2名、看護学生2名、薬 延したが、1ヶ月半頃から全身状態が改善し約2ヶ 剤師1名、 事務10名) のうち接触直後のT-SPOT 月後には人工呼吸管理から離脱できた。診断・治 陽性が7名、 陰性は54名であった。 陰性者は3ヶ 療の遅れにより粟粒結核からARDSに進展し呼吸 月後に再検査し、 陽性に転じた者は認められな 不全をきたしたと考えた。 かった。 【考察】 塗抹陰性で呼吸器症状が乏しい肺結核患 者であっても、 初期治療中は喀痰検査を定期的 に行い、 塗抹所見を注意深く観察すべきである と思われた。 −101− C会場 14:25∼14:53 座長 大湾 勤子 国立病院機構沖縄病院呼吸器内科 抗酸菌症 1 75 Severe ARDS、多臓器不全を合併する も救命しえた粟粒結核の 1 例 76 当初 Meigs 症候群が疑われた結核性胸膜 炎の一例 済生会熊本病院呼吸器センター呼吸器内科 神宮 直樹、保田 祐子、荒川 尚子、 国家公務員共済組合連合会浜の町病院初期臨床 研修センター1 国家公務員共済組合連合会浜の町病院呼吸器内 科2 高木 誠、一門 和哉 ○石田 浩一1、藤田 明孝2、前山 隆茂2、 ○辛島 聡志、川村 宏大、仁田脇 辰哉、 阿南 圭祐、久永 純平、坂田 能彦、 鶴田 伸子2、樋口 和行2 78歳、 女性。2014年8月中旬、 全身倦怠感と食欲 不振を主訴に当院消化器内科を受診した(第1病 症例は生来健康な48歳女性。201X年9月11日頃よ 日)。食道裂孔ヘルニアの診断で入院となったが、 り38度台の発熱と軽度の右胸痛が出現したので前 第2病日に突然の血圧低下と呼吸状態悪化をきた 医を受診し、 クラリスロマイシンを処方された。 し、HRCTで両肺に小粒状影、 小葉間隔壁肥厚、 しかし呼吸困難感も出現し、9月21日に前医でお すりガラス状陰影を認めた。 敗血症性ショック こなった胸部レントゲン写真と胸腹部CTで右多 ( APACHEIIスコア24、SOFAスコア12) で挿管 量胸水と7.5cm大の右卵巣腫瘍を認めたため、 人工呼吸管理となり、P/F比64とsevere ARDSの Meigs症候群の疑いで当院婦人科に紹介となった。 診断で当科転科となった。 集学的治療とともに、 画像上は卵巣皮様嚢胞腫が考えられ、腹水や局所 原因検索目的で第4病日に行ったBALの検体で結 圧痛がないことより、右胸水と無関係と判断され 核PCRが陽性であったため粟粒結核によるARDS て当科に入院となった。胸水は細胞診陰性、リン と判断し、第6病日よりINH+RFP+EBによる3剤 パ球上昇とADA高値であり、 採血でTSPOT陽性 併用療法を開始した。第11病日に加療継続のため であることから結核性胸膜炎としてHRPZによる 回復期病院へ転院、第106病日にroom airで歩行可 治療診断を開始した。すみやかに解熱し胸水も次 能な状態で居宅系施設に退院した。 第に落ち着き外来通院となった。卵巣疾患を伴う 粟粒結核は結核菌が血流に侵入して血行性に全身 胸水では腫瘍性胸水、 特にMeigs症候群が想起さ に播種する非常に重篤な病態で、病理学的には結 れるが、結核性胸膜炎は常に鑑別にすべきと考え 核結節が多臓器にみられるものと定義される。粟 られる。 粒結核は結核の1∼2%を占めARDSを合併する頻 度は7%以下であるとされている。ARDS合併粟粒 結核は予後が極めて不良で死亡率が高い。 今回 我々は急速に進行するも早期診断により救命しえ たARDS合併粟粒結核を経験したことから文献的 考察を含めて報告する。 −102− C会場 14:53∼15:28 抗酸菌症 2 座長 是枝 快房(国立病院機構南九州病院呼吸器科) 77 気管支鏡にて隆起性病変を認めた肺門縦 隔リンパ節結核の一例 78 結核病棟死亡退院例の検討 国立病院機構沖縄病院呼吸器内科1 琉球大学医学部感染症・呼吸器・消化器内科学 講座2 公立学校共済組合九州中央病院呼吸器科 ○中島 信隆、藤平 智道、山本 宜男、 ○藤田 香織1、稲嶺 盛史1,2、知花 賢治1、 古藤 洋 仲本 敦1、大湾 勤子1、久場 睦夫1、 藤田 次郎2 症例は22歳、 来日2年目のネパール国籍の男性。 健康診断にて両側肺門リンパ節腫脹を指摘され当 院受診。生来健康で基礎疾患はなし。自覚症状は 【目的】 近年、 当院の結核病棟入院症例の死亡率 認めず。 身体所見に異常所見なし。 胸部単純CT が増加傾向にあり、2割前後が死亡退院となって にて気管前、気管分岐部および両側肺門部リンパ いる。今回結核死亡例について臨床的検討を行っ 節腫大を認めたが肺野病変は認められなかった。 た。 【対象と方法】対象は、2011年1月から2012年 気管支鏡検査を施行したところ、右B4入口部に表 12月までに、 当院結核病棟に入院した217例の予 面光沢のある隆起性病変があり、一部は自壊が疑 後を調査し、死亡退院となった44例についてレト われる白苔の付着を認めた。同部位からの検体採 ロスペクティブに検討した。【結果】 結核病棟入 取行い、 抗酸菌塗沫および結核菌PCRは陰性で 院 217例中、男性は134例、女性は83例で、男女 あったものの、抗酸菌培養で結核菌陽性を得、肺 比は1.61:1であった。死亡退院は20.3%( 44/217) 門縦隔リンパ節結核と診断した。本症例では画像 であった。 平均年齢は70.8歳( 16-103) で男性よ 上の鑑別診断としてサルコイドーシス、悪性リン り女性が高齢の傾向であった( 68.1 歳 vs 75.0 パ腫、リンパ節結核等が考えられたが、自他覚症 歳)。平均在院日数は 101.1日であったが、多くは 状なく、一般血液検査上も異常所見を認めないこ 入院早期に死亡されていた。基礎疾患は、結核病 とから第一にはサルコイドーシスを考えた。内視 棟入院全患者に比し死亡退院患者で精神科疾患 鏡所見が無ければサルコイドーシス疑いとして経 ( 10.3% vs 20.5% ) や寝たきり患者( 10.8% vs 過観察とした可能性もあり、肺門縦隔リンパ節腫 31.8% ) 、悪性腫瘍( 7.0% vs 20.5% )が多く認め 脹の鑑別としてリンパ節結核を慎重に除外するこ られた。入院後14日以内に死亡退院した患者の平 との必要性を再認識した。 均年齢は81.0歳で、血清アルブミン値は平均2.5g/ dL、 末梢リンパ球数は平均686.4/mm3であった。 【結語】 結核病棟入院死亡症例は高齢者の割合が 高く、自覚症状を訴えがたい認知症等の合併症を 有する場合もあり、診断が遅れる可能性もあるた め注意が必要である。 −103− C会場 14:53∼15:28 座長 是枝 快房 国立病院機構南九州病院呼吸器科 抗酸菌症 2 79 当院における外国人結核患者の動向 80 CAM に短期間 AMK、IPM/cs を併用し 軽快した肺 M.abscessus 感染症の一例 国立病院機構福岡東医療センター呼吸器内科 済生会飯塚嘉穂病院呼吸器科1 九州大学大学院医学研究院附属胸部疾患研究施 設2 ○大塚 淳司、田尾 義昭、中垣 憲明、 池亀 聡、中野 貴子、吉見 通洋、 高田 昇平 ○橋口 波子1、猪島 一朗2、伊地知 佳世1、 猪島 尚子1 我が国では結核罹患率は減少傾向を認めるが、外 国人結核患者数は増加傾向を認める。当院におけ る外国人結核患者の動向や臨床像を明らかにする 症例は78歳女性。肺結核後遺症に慢性肺アスペル ことを目的とし、2011年から2014年に、当院にて ギルス症を合併し、itraconazole( ITCZ)の内服 入院加療を行った外国人結核患者を対象に、その 治療を行っていた。 治療開始から約2年後に、 右 臨床像を検討した。全結核入院患者数は533名で、 上葉の主病巣および左舌区の病変が徐々に増悪 外国人結核患者数は21名(男性16名、 女性5名) し、 臨床症状の悪化も認めたため入院となった。 であった。 平均年齢は27.6歳であった。 有空洞症 気管支内視鏡検査の結果、左右の気管支吸引痰か 例は42.9%、塗抹陽性例は71.4%であった。17例は らMycobacterium abscessusを検出したため、 全剤感受性結核であり、多剤耐性結核は1例であっ AMK、IPM/cs、CAM3剤にて加療を開始したと た。出身国は3カ国で、ネパールが9名と最も多く、 ころ、両肺の病変は速やかに改善した。15日目よ ネパール人の増加傾向を認めた。職業は学生が多 りCAM、LVFXの内服に変更し退院となった。今 く、発見動機は定期検診が多くを占めた。ネパー 回約6ヶ月が経過した段階でも明らかな増悪はな ル人患者は、ネパール人同士で集団生活をしてい く、内服治療のみで病勢を維持することができて る症例が多く、同じ学校の学生や同居者から複数 いる。今回、化学療法に難渋するといわれている の患者が発生しているケースもあり、入国後に国 肺M.abscessus感染症にたいしてAMK、IPM/cs 内での新規感染が否定出来ない症例も認められ の点滴期間は14日間と短期であったにも関わら た。外国人結核対策には、入国時の健康診断が重 ず、化学療法が有効であった症例を経験したため、 要と考えられるが、定期検診を行い、入国後の新 文献的考察を加えて報告する。 規感染発病にも注意する必要があると考えられ た。 −104− C会場 14:53∼15:28 座長 是枝 快房 国立病院機構南九州病院呼吸器科 抗酸菌症 2 81 器質化肺炎を併発した非結核性抗酸菌症 の1例 大分大学医学部呼吸器・感染症内科学講座 ○橋本 武博、吉川 裕喜、菅 貴将、牛嶋 量一、 小野 朋子、山末 まり、向井 豊、鳥羽 聡史、 橋永 一彦、串間 尚子、梅木 健二、 平松 和史、安東 優、門田 淳一 症例は75歳、女性。20XX−4年に胸部異常陰影を 認め、気管支鏡検査でMycobacterium intracellulare が検出され、 肺非結核性抗酸菌症( NTM症) と 診断された。 自覚症状もなく経過観察となった。 20XX−2年5月に画像所見の悪化を認めたため、 クラリスロマイシン( CAM) 、 リファンピシン ( RFP)、エタンブトール( EB)の3剤で治療を開 始した。EBの副作用が出現したため同薬剤を中 止し、CAM、RFPの投与を継続した。 しばらく 画像所見の悪化は認めなかったが、20XX年2月頃 から右肺S6に空洞を伴った2.5cm大の結節影を認 めた。同年11月には咳嗽の出現とともに、結節影 は4cm大まで増大し、 周囲にすりガラス影を伴う ようになった。気管支鏡検査を行ったところ、抗 酸菌培養ではM.intracellulare が検出されたが、組 織検査では器質化肺炎の所見であり、NTM症に 器質化肺炎が併発したものと考えられた。興味深 い病理所見を呈したNTMの一例を経験したので 報告する。 −105− C会場 15:28∼15:56 感染症 3 座長 原永 修作(琉球大学大学院医学研究科感染症・呼吸器・消化器内科学講座) 82 器質化肺炎の経過中に肺クリプトコッカ ス症を発症した 1 例 83 器質化肺炎との鑑別を要した播種性クリ プトコッカス症の一例 福岡大学筑紫病院 鹿児島市立病院内科 ○青山 崇、牛島 真一郎、児玉 多、 ○内門 義博、松山 洋美、新村 昌弘、 赤木 隆紀、宮崎 浩行、原田 泰志、 福田 宏正、籾 博晃、濱崎 哲郎 永田 忍彦 症例は71歳女性。微熱と湿性咳嗽を主訴に近医受 症例は94歳の男性。2013年の年末頃より呼吸困難 診。 胸部レントゲンで右上肺野に浸潤影を認め、 を自覚するようになったため、2014年1月に近医 肺炎の診断でCTRXを投与されるも改善せず当科 を受診し、肺炎の診断で当院呼吸器内科を紹介さ を紹介受診した。GRNX内服に変更するも症状や れ入院となった。抗菌剤を投与したが、改善に乏 陰影は改善せず、 細菌性肺炎は否定的と考えた。 しいため器質化肺炎を疑い、プレドニソロンの投 基礎疾患に関節リウマチがありMTX内服中で 与が行われ、画像所見は改善傾向であったが、そ あったことから、器質化肺炎を疑い入院加療とし の後再び胸部レントゲン、 胸部CTの悪化が見ら た。発熱は持続し全身状態が悪化したため、気管 れた。喀痰検査、血液培養検査よりクリプトコッ 支鏡検査を行い洗浄液に一般細菌を認めないこと カスが検出された。抗真菌剤の投与で改善傾向を を確認後、 器質化肺炎と診断しPSL 30mg/dayで 示した。以上のような、器質化肺炎の経過中に肺 治療を開始し、速やかに解熱し陰影は縮小した。 クリプトコッカス症を発症した症例を経験したの しかしその後の組織診断でクリプトコッカス菌体 で、文献的考察を加えながら報告する。 を検出し、 血清クリプトコッカス抗原も陽性で あったことから、肺クリプトコッカス症と診断を 改めた。髄液細胞診でもクリプトコッカス菌体を 検出したため、播種性クリプトコッカス症と最終 診断した。L-AMB点滴静注+5-FC内服を開始し、 症状や陰影は改善した。髄液検体でクリプトコッ カス菌の消失を確認した後にFLCZに変更し、 現 在も内服継続中である。 今回、 器質化肺炎との鑑別を要し、PSL内服によ り一時的に症状や陰影の改善を認めた播種性クリ プトコッカス症の一例を経験したので、若干の文 献的考察を加えて報告する。 −106− C会場 15:28∼15:56 座長 原永 修作 琉球大学大学院医学研究科感染症・呼吸器・消化器内科学講座 感染症 3 84 器質化肺炎の病理所見を呈した肺クリプ トコックス症の 1 例 85 上気道炎よりレミエール症候群を呈した 若年健常者の一例 国立病院機構長崎医療センター呼吸器内科1 国立病院機構長崎医療センター臨床検査科2 長崎大学病院第二内科3 福岡山王病院呼吸器内科1 久留米大学病院呼吸器・神経・膠原病内科2 ○永渕 雅子1、松永 和子1、南 秀和1、 ○中武 美香1、永吉 洋介1,3、土井 誠志1,3、 1 1,3 力丸 徹1,2、星野 友昭2 1,3 太田 賢治 、山本 和子 、久冨 恵子 、 長島 聖二1,3、黒濱 大和2、伊東 正博2、 症例は23歳男性、高熱、右下顎部周囲の痛みを主 河野 茂3 訴とし、発症4日目に当院受診。初診時右下顎に 圧痛伴う大豆大リンパ節1個触知し、WBC1770/ 【症例】65歳男性 μl( Neu87%)CRP7.69mg/dl Plt7.4×104/ DICス 【主訴】咳嗽 コア3点 プロカルシトニン84.6ng/mlであった。 【現病歴】 関節リウマチに対してメトトレキサー 頸部エコーで両側リンパ節腫脹を数cm大の複数 トで加療されていた。1か月程咳嗽が持続し胸部 個認めた。 入院後LVFX点滴にて炎症反応、 発熱 レントゲンで右下肺野に陰影を認めたため紹介を ともに改善傾向にあったが、右頸部腫脹は増悪し 受けた。 た。再エコーで、右内頸静脈に血栓性静脈炎を認 【所見】発熱なく、胸部聴診にて呼吸音に異常なし。 めた。その後右顔面腫脹および咀嚼障害が出現し、 CTでは右肺下葉に癒合性の浸潤陰影を認めた。 CTで扁桃周囲膿瘍を疑う陰影と肺野に1cm弱の 反復性の顕性誤嚥のエピソードもあったため、誤 GGAを認めた。 嚥性肺炎の可能性を考慮し抗菌薬を開始したが画 Fusibacterium sp.を検出した。以上よりレミエー 像所見は比較的急速に悪化した。クリプトコック ル症候群と診断し、 扁桃周囲膿瘍の穿刺排液と、 ス症の可能性を考え、血清抗原を測定したところ MEPM、デカドロンの併用を行い軽快した。レミ 陽性であった。他疾患との鑑別診断目的に気管支 エール症候群は罹患率0.6∼2.3人/100万人で若年 鏡にて経気管支肺生検を行った。病理組織におい 健常人に多く発症し、上気道炎から血栓性内頸静 て、 リンパ球主体の炎症細胞浸潤や壁在性に 脈炎、敗血症、多発転移性感染を呈する、致死率 Masson bodyもみられ器質化肺炎のパターンで 7∼19%の疾患である。若年健常人の上気道炎の中 あった。また肺組織のGrocott染色でクリプトコッ に、重篤な病状へ移行するものもあり注意が必要 クス菌体も確認された。フルコナゾール投与によ であるため報告する。 り右肺の陰影は改善した。 【考察】 免疫不全者に発症する続発性肺クリプト コッカス症は多彩なCT所見を呈すが、 その病理 組織像についてはまだ不明な点が多い。今回器質 化肺炎の病理像を呈した続発性肺クリプトコック ス症の症例を経験したので、若干の文献的考察を 加えて報告する。 −107− 血液、 膿瘍穿刺培養から C会場 15:56∼16:24 感染症 4 座長 青木 洋介(佐賀大学医学部付属病院内科) 86 ブタ回虫幼虫移行症による好酸球性肺炎 の1例 87 当科における肺炎球菌肺炎症例の検討 熊本中央病院呼吸器内科 福岡山王病院呼吸器内科1 久留米大学内科学講座呼吸器神経膠原病内科部 門2 1 1,2 ○稲葉 恵、貞松 智貴、那須 信吾、 濱田 昌平、牛島 淳、平田 奈穂美、 吉永 健 1,2 ○松永 和子 、永渕 雅子 、力丸 徹 、 星野 友昭2 【目的】 肺炎球菌は市中肺炎の代表的な起炎菌で あり、当科での臨床的特徴を明らかにする。 症例は77歳男性。20XX年8月中旬ごろより咳嗽が 【対象と方法】2012年4月∼2014年3月に当科にて 出現し市販の鎮咳薬にて症状改善しないため8月 肺炎球菌が起炎菌と判断した肺炎入院症例( 42症 25日当院受診。 胸部レントゲン写真および胸部 例)についてレトロスペクティブに検討を行った。 CTにて肺炎像を認め精査加療目的で同日入院と 【結果】患者背景は年齢72±15歳( 30∼94歳) 、男 なった。炎症反応の上昇あり異型肺炎の可能性を /女=29/13であった。市中肺炎/医療・介護関連肺 考え、AZMの点滴投与を行うも末梢血好酸球数 炎=33/9、重症度分類( A-DROP)は軽症/中等症 増加( 2222/μL)が継続し肺炎像の改善がないた /重症/超重症=9/21/5/7であった。 診断方法は尿 め9月3日にBFを施行。BALF中好酸球50%と増加 中抗原/喀痰培養/血液培養=35/17/6(重複あり) を認め好酸球性肺炎と診断した。血清抗寄生虫抗 であった。入院時WBC 13400±7703/μl( 1800∼ 体が疑陽性であり精査の結果ブタ回虫感染と診断 35100)、 入院時CRP 13.30±11.95mg/dl( 0.28∼ され9月12日よりalbendazoleを投与した。 診断確 51.47)で、PCTが測定された39例中26例(66.7%) 定前9月8日に胸部レントゲン上、肺炎像の悪化お で陽性であった。分離された22株のペニシリン感 よび低酸素血症を認めステロイドの投与を行っ 受性はPSSP/PISP/PRSP=13/5/4であり、 初期治 た。Albendazole開始後はステロイドも減量中止 療はSBT/ABPCが主に使用されていた。膿胸合併 し酸素化も良好である。本症例は生肉の摂取歴や が3例( 7.1%) あり、 転帰は軽快/死亡=41/1(死 ペット飼育歴はないが有機野菜を好んで摂取して 亡率2.4%) であった。 在院日数は11.5±6.4日( 3 いたことが感染源と考えられた。 ∼30)であった。 【結語】 肺炎球菌肺炎の入院症例はPCT陽性例が 多く、血液培養陽性例も少なくなかった。初期治 療はSBT/ABPCが中心で治療経過は概ね良好で あった。 −108− C会場 15:56∼16:24 座長 青木 洋介 佐賀大学医学部付属病院内科 感染症 4 88 摂食嚥下障害アセスメント MASA ∼機 器を使用しない臨床評価∼ 89 当院における医療・介護関連肺炎患者の 摂食嚥下機能の検討 戸畑共立病院リハビリテーション科1 戸畑共立病院呼吸器内科2 産業医科大学呼吸器内科学3 戸畑共立病院呼吸器内科1 戸畑共立病院リハビリテーション科2 産業医科大学呼吸器内科学3 ○大森 政美1、加藤 達治2、長神 康雄2、 3 3 ○長神 康雄1、加藤 達治1、大森 政美2、 3 赤田 憲太朗 、生越 貴明 、山崎 啓 、 赤田 憲太朗3、生越 貴明3、山崎 啓3、 川波 敏則3、矢寺 和博3、迎 寛3 川波 敏則3、矢寺 和博3、迎 寛3 【背景・目的】高齢者における肺炎の死亡率は年々 増加しており、 誤嚥が大きな要素と考えられる。 【背景・目的】医療・介護関連肺炎( NHCAP)は 高齢者に多く、 誤嚥性肺炎がその多くを占める。 The Mann Assessment of Swallowing Ability The Mann Assessment of Swallowing Ability ( MASA) は2002年に米国で脳卒中患者を対象に ( MASA) は、 既に確立された急性期脳卒中患者 開発された信頼性、妥当性が検証された摂食嚥下 における摂食・嚥下障害の評価法であり、嚥下器 障害のスクリーニングテストであり、24項目(200 官の機能評価のみならず、協力動作や聴覚理解な 点満点)で構成され、嚥下器官の機能評価のみな どのコミュニケーション能力、呼吸機能の評価な らず、 協力動作や聴覚理解などのコミュニケー どを各4段階でスコアリングして評価する評価法 ション能力、呼吸機能の評価などが含まれており、 である。 今回我々は、NHCAP患者において、 入 摂食機能障害と誤嚥の重症度を各4段階で判定す 院時のMASAスコアがNHCAPの治療経過や予測 る。特殊な機器を用いることなくベットサイドで 因子として有用であるかどうか検討した。【対象・ 行うことができる。 【方法】 戸畑共立病院は高齢 方法】戸畑共立病院に入院し、嚥下リハビリを施 者の入院患者が多く、高齢患者における摂食嚥下 行されたNHCAP患者10名。 入院時にMASAにて 障害への対応が重要である。誤嚥の関与が疑われ 嚥下評価を行い、MASAスコアとNHCAPの治療 る高齢者の医療介護関連肺炎( NHCAP) や院内 経 過 と の 関 連 性 に つ い て 解 析 し た 。【 結 果 】 肺炎( HAP) の入院患者に対して言語聴覚士が MASAスコアの嚥下障害の程度が悪い症例ほど、 MASAを実施した。【結果】MASAの得点が高い 抗菌薬中止後の再投与の頻度が高く、入院期間も ほど、経口による栄養摂取ルートを確保し退院す 長くなり、胃瘻などの代償方法を検討した症例が る傾向にあったことから、MASAによる摂食嚥下 多い傾向を認めた。【結語】MASAはNHCAPの治 障害アセスメントの有用性が示唆された。 療経過の予測因子として有用である可能性が示唆 された。 −109− C会場 16:24∼16:52 検査 座長 吉田 誠(国立病院機構福岡病院呼吸器科) 90 成人の FDEIA 症例における負荷検査の 有用性 91 環境調査が有効であった夏型過敏性肺臓 炎の 3 例 国立病院機構福岡病院臨床研究部 石松 明子、川野 奈菜、吉田 誠、 済生会飯塚嘉穂病院1 医療法人いこいの森2 九州大学病院胸部疾患研究施設3 岩永 知秋 ○伊地知 佳世1、綾部 仁士1、生野 貴義1、 ○岸川 禮子、杉山 晃子、下田 照文、 樋口 貴一1、井堀 浩司1、萩本 直樹2 【目的】 成人のFDEIA症例を経験したので報告す る。 【成績】症例31F 主訴:呼吸困難。小児期ア 症例はそれぞれ、81歳男性、55歳女性、51歳女性。 レルギー歴なし。スギ花粉症あり。X年4月菓子を 81歳の男性は数年前より4月から11月にかけて右 食べた後10分後に汗をかくほどの運動を行った。 肺上葉の肺炎を繰り返していた。 胸部CTではび 眼瞼周囲が痛く腫脹し、呼吸困難が出現した。近 まん性の小葉中心性小粒状影は呈しておらずスリ 医でアレルギーを疑われてコムギが陽性と言われ ガラス影が認められた。55歳の女性は8月に繰り た。当院を紹介され、コムギのFDEIAが疑われて 返す微熱と労作時呼吸苦を主訴に受診、 胸部CT 負荷検査を施行した。小児期に食物アレルギーの でびまん性小葉中心性小粒状影を認められた。51 病歴がなく、該当食品摂取後の運動で蕁麻疹、呼 歳の女性は他院ですでに夏型過敏性肺臓炎との診 吸困難などのアナフィラキシー症状が出現した。 断がすでについていた。いずれの症例も築20年以 ショックを来した症例もあり、救急部に搬送され、 上の家屋に住み、トリコスポロン・アサヒ抗体陽 当院に紹介されるケースがあった。平成22年から 性であった。 環境調査を行った結果、1例目は家 現在まで約100例に食物運動負荷検査を行い確実 屋のクリーニングを、2例目は引っ越しをし、 そ な診断を行った。原因は加水分解コムギによる即 の後は過敏性肺臓炎の再燃は認められていない。 時型コムギアレルギーが最も多く、次いで従来型 3例目はこれからクリーニングに取り掛かる予定 のWDEIAであった。 食物回避を含めた生活指導 である。2014年夏、飯塚地方の平均気温は平年よ および治療薬処方、エピペン処方などを行って経 り低く相対湿度は高い傾向にあり、そのためか夏 過観察を行っている。 【結論】 食物運動負荷試験 型過敏性肺臓炎を通年より多く経験した。夏型過 は検査環境があると、患者にとっては非常に有用 敏性肺臓炎は古い住宅を好むトリコスポロンが原 な検査である。 因であるため住宅環境の整備が重要であり、我々 が環境調査を行い住宅整備に関与することで治癒 に至ることができた。 −110− C会場 16:24∼16:52 座長 吉田 誠 国立病院機構福岡病院呼吸器科 検査 92 禁煙が呼吸機能に及ぼす短期的効果につ いての検討 93 呼吸器疾患患者に対する運動機能評価と しての 6 分間ペグボード・リング試験の有用 性 医療法人清和会長田病院呼吸器内科1 久留米大学医学部内科学講座呼吸器・神経・膠 原病内科部門2 医療法人明石会曽根病院リハビリテーション部1 医療法人明石会曽根病院呼吸器科2 ○外山 貴之1、井上 譲1、米光 純子1、 ○桑原 章徳1、橋口 波子1,2、猪島 一朗1,3、 猪島 尚子1 嶋田 知生1、樋口 英一1、木下 正治1、 星野 友昭2 【目的】今回、呼吸器疾患患者に対して、6分間ペ 【背景】 長期間の禁煙によって呼吸機能の改善を グボード・リング試験( 6 minute Pegboard and 認める報告はCOPD患者を中心に多数ある。一方、 Ring Test: 6PBRT)の有用性について検討した。 短期間の禁煙が呼吸機能に及ぼす影響については 【対象と方法】呼吸器疾患患者12名を対象とした。 あまり検討されていない。 【対象・ 方法】 対象患 6PBRTは被験者を椅子に着席させ、 肩の高さに 者は当院禁煙外来にて禁煙に成功した患者のう フック2本、さらに20cm上にフック2本をネットに ち、 禁煙外来3ヵ月間前後でスパイロメトリー及 設置し、下段にステンレスリングを左右10本ずつ び強制オシレーション法検査(MostGraph-01)を 掛け、それぞれを同時に1本ずつ上段へ移動させ、 測定できた26名。 禁煙外来3か月間前後でのスパ すぐに下段へ戻す動作を6分間実施した。 移動し イロメトリー及びMostGraph-01の結果を比較、解 た総リング数を6PBRTスコア(以下、スコア)と 析した。【結果】 スパイロメトリーではVC、 した。1. 6PBRTの運動強度を呼吸困難感、上肢疲 %VC、IRV、ICで有意に改善を認めた。一方、閉 労感、 心拍数から推測した。2. スコアと呼吸機 塞性換気障害や気道抵抗の指標となるFEV1.0や 能の指標である肺機能、循環機能の指標である心 FEV1.0%では改善を認めなかった。MostGraph-01 拍数動態との関連を解析した。3.スコアと握力、 では全体の気道抵抗の指標であるR5average、 末 6分間歩行距離、 日常生活動作との関連を解析し 梢気道の不均等換気を反映するR5-R20averageで た。 【結果】 1.運動強度は中等度以下であった。2. 有意に改善を認めた。 【結論】MostGraph-01では 肺活量と正の相関、心拍数動態と負の相関を認め スパイロメトリーより早期に、かつ敏感に短期間 た。 3. 握力、6分間歩行距離、 日常生活動作と の禁煙による気道抵抗や末梢気道の不均等換気の 正の相関を認めた。【考察】6PBRTは呼吸循環機 改善を反映することが示唆された。MostGraph-01 能と運動機能を反映し、運動機能評価として有用 を禁煙外来3か月間前後で検査することによって であると考えられた。 スパイロメトリーでは示すことのできない呼吸機 能の改善を患者に説明することができるため禁煙 の動機付け及び禁煙持続につながることが期待で きる。 −111− Memo
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