(3)成人女性の鼠径ヘルニアにおけるヘルニア囊内子宮内膜症の検討 みやざき外科・ヘルニアクリニック ○ 宮崎恭介 【目的】成人女性の鼠径ヘルニアでは、ときにヘルニア囊に Nuck 管囊腫を合併し、病 理学的に子宮内膜症の迷入を認めることがある。今回、当院での成人女性のヘルニア囊 内子宮内膜症の症例を retrospective に検討した。 【対象と方法】2003 年 4 月から 2010 年 5 月までに成人鼠径ヘルニア修復術 2527 例を行い、女性 494 例(19.5%) 、平均年齢 44.5 歳(20〜93 歳)であった。このうち、外鼠径ヘルニアに Nuck 管囊腫合併例を 61 例に認め、出来る限りヘルニア囊を末梢まで剥離した。ヘルニア囊に硬結を認めた 51 例でヘルニア囊を切除し子宮内膜症の有無を病理学的に確認した。また、術後に遺残ヘ ルニア囊切除を 3 例に行った。 【結果】ヘルニア囊内子宮内膜症を 27 例に認め、平均年 齢 41 歳(27〜62 歳)であった。初回手術時に確認できた例は 24 例で、その特徴的な 症状は性周期に一致したヘルニア囊の増大を認め、次第に鼠径部に硬結と痛みを認める という症状であった。一方、末梢ヘルニア囊を残した例のうち、3 例で術後性周期に一 致した鼠径部痛と硬結を認め、再手術で遺残ヘルニア囊内子宮内膜症を確認、鼠径部痛 は消失した。 【結語】閉経前女性の外鼠径ヘルニアで、性周期に一致したヘルニア囊の増 大、 鼠径部硬結と痛みを認める場合にはヘルニア囊内に子宮内膜症を認めることがあり、 初回手術時にはヘルニア修復と同時にヘルニア囊の全剥離が重要である。
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