中国の自動車産業は、現在、転換期を迎 えています。その中で、上海市

 中国の自動車産業は、現在、転換期を迎
えています。その中で、上海市は、嘉定区
の安亭鎮に「上海国際汽車城」
(以下、上海国
際自動車城)の構想を掲げ、2005 年末の基
礎工事完成を目指して、急ピッチで建設を
進めています。今回は、中国の自動車業界
と上海が目指しているアジアの自動車産業
集積地についてレポートします。
はアジアの自動車産業集積地となるか?
1.中国の自動車業界について
(1)中国の自動車産業の特徴
中国の自動車産業の特徴として挙げられるのは、トラック・バスの生産比率
が、乗用車より高いことです。しかしながら、近年、自動車生産量の急速な伸
びとともに乗用車の生産比率が上昇しています。1990 年は総生産量 51 万台
のうち1割に満たなかったのが、2003 年には 444 万台中4割強となりました。
乗用車の生産比率が、トラック・バスの比率を上回るのは時間の問題です。
(2)中国の自動車業界は、生き残りに懸命
中国は WTO 加盟により、2006 年中には完成車の輸入関税を 100%から
25%に引き下げる予定で、輸入車の急増が予測されています。
さらに政府は、2002 年末で 100 数社あった自動車会社を、2015 年には3
・
4社の大型自動車企業(集団)に統合し、国際競争にも耐えうる企業を育成す
る 計 画 で す。 現 在 約 3,000 社
ある部品製造業者も、かなり淘
汰・再編されるでしょう。
そのため、自動車メーカーの
競争は、現地企業・外資企業問
わずより激しくなり、大衆車及
び高級車の開発に、お互い、し
の ぎ を 削 っ て い ま す。 部 品 製
造業者に対しても、メーカーか
ら非常に厳しい要求が突きつけ
られています。ある日系自動車
F1 レース場の見取り図
(コースは上海の「上」をモチーフにしている)
メーカーの担当者によると、
「現
●
1●
在、品質重視の部品は日系
企業に発注しているが、中
国企業も設備投資により品
質が向上しており、日系企
業の価格も下がってきてい
る。」とのことでした。
2.上海の自動車産業と
上海国際自動車城
(1)上海の自動車産業の現状
急ピッチで工事中の F1 レース場
上海の自動車産業の特徴
は、中国全体とは異なり、生産のほとんどが乗用車ということです。自動車
メーカーは上海フォルクスワーゲン(VW)と上海ゼネラルモーターズ(GM)の
2社で、2002 年の生産量は 39 万台、中国全体の乗用車の 36%を占めてい
ます。
(2)上海国際自動車城の構想
1 製造区、○
2 競輪区(F1レース場)
3 自動車
上海国際自動車城は、主に○
、○
4 研究開発区、○
5 教育区、○
6 新鎮区(生活区)の6地区から構成され、
貿易区、○
自動車関連の全ての商業・社会機能を備えた総合自動車開発区となっています。
1 製造区
○
製造区は、既にフォルクスワーゲン(ドイツ)
、部品のデルファイ(米国)
、
小糸製作所、塗料の中国塗料など約 100 社(うち日系企業は、約 20 社)が進
出しています。
2 競輪区
○
F1レース場及び周辺施設の建設が、急ピッチで進められています。F1レー
ス場は、全長 4.5km で、20 万人を収容する観客席を備えます。アジア有数の
国際サーキット場となるでしょう。2004 年3月に完成、9月には中国初のF
1が開催される予定です。上海市内とレース場を結ぶ電車路線も同年4月に開
通予定で、所要時間は 15 分程度です。
3 自動車貿易区
○
貿易区内には、新車・中古車の交易市場、展示会場、物流、修理場などがあ
ります。
4 研究開発区
○
研究開発区は、国内外自動車技術センター、情報センター、サプライヤー研
●
2●
究センター、研究開発センター、自動車認証センター及び教育訓練センターを
設置します。
5 教育区
○
中 国 で 有 名 な 同 済 大 学 の 自 動 車 学 院 が 建 設 中 で あ り、2004 年 6 月 に
1万5千人の学生を募集する予定です。
6 新鎮区(生活区)
○
ドイツの著名デザイナーにより設計され、緑化率は 60%に及び、約3万人
が居住できます(2004 年に完成予定)。隣にはゴルフ場の建設も計画されて
います。
上海市のこの肝いりプロジェクトは、中国一の乗用車生産基地と、アジア地区の自
動車貿易の中心地となることを目指しています。
3.上海は、アジアの自動車産業集積地となるか?
(1)上海市政府の取り組み
上海市政府は、長年自動車製造業者の育成に力を入れてきました。設備投資
について、業者の国家機関への申請(投資額により必要)と同時に独自に内容
を審査し、許認可までのつなぎ融資を低金利で実施します。上海地区の部品製
造業者の多くは、最新鋭の設備や技術を有し、自動車産業発展の原動力になっ
ています。
上海自動車汽車城の入り口(奥の白い建物は、「上海フォルクスワーゲン」)
●
3●
建設中の同済大学自動車学院(将来多くの優秀な人材が輩出される))
(2)今後の課題
今後、上海の自動車産業の更なる拡大を図るためには、上海フォルクスワー
ゲン・上海ゼネラルモーターズに次ぐ、第3の企業誘致が必要です。それに伴
う部品市場拡大も期待されます。
また次の段階として、今後需要の増加が予想されるガソリンの確保なども課
題となるでしょう。
4.おわりに
中国の自動車業界は、拡大基調ではありますが、競争にさらされ、各社とも生き残
りをかけて懸命に新車の開発・低コスト化に努めています。その中で、上海は、「上
海国際自動車城」の完成で、製造はもとより人材の育成・研究開発の基盤は充実し、
また、F 1の開催により世界的に注目を浴びています。上海がアジアの自動車産業集
積地になるかは、優秀な企業・人の集積をどれだけできるか、そしていかにエネルギー
問題等を解決していくかに掛かってくるでしょう。
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4●