地学実験 (天文パート) 1太陽日の測定 by S. Nishiura 2007.12.16. 1. 目的: 天文分野の学習指導に必要不可欠な i) 天体望遠鏡の組み立て方、ii) 基本的な使用方法、 iii) 投影板を使用した太陽観察の方法、の修得を主な目的とする。さらに天体望遠鏡の追尾 機能を利用して、太陽の天球上での移動速度を測定し、簡単な計算から1太陽日を算出する。 この結果を文献値と比較し、測定誤差を評価することで、本実験方法の精度や妥当性を考察 する。 2. 原理: 地球の自転は、地軸を中心とした西から東回りの回転運動である。このため太陽は、見 かけ上、天球を東から西に向けて移動することになる。これを太陽の日周運動という。日常 的な一日の長さは、この見かけの太陽の運動に基づいて決められている。しかしながら地球 は太陽の周りを約 1 年かけて公転運動しており、地球の自転運動に、この公転運動が加味さ れるため、太陽が天球上を一周する時間は、実際の地球の自転周期よりも約 4 分長くなる。 地球の自転周期は1恒星日と呼ばれ、1平均恒星日は 23 時間 56 分 4.0905 秒である。これに 対して、太陽が天球上を一周する時間は1太陽日と呼ばれる。 1太陽日は地球から観察される太陽の運動に基づくため、比較的容易な観測と計算によっ て導出されることが期待される。つまり地球から見て、太陽が天球上を一周するために要す る時間を1太陽日と捉えることができる訳である。従って、太陽が天球上を移動する角速度 を ωsol (deg/s) とすると、太陽が天球上を一周する時間 Tsol (s) は、 Tsol = 360 ωsol で、表される。 従って、望遠鏡などを用いて太陽の日周運動の角速度 ωsol を求めれば、容易に1太陽日 Tsol が求められるはずである。 3. 器具: • 8cm 屈折望遠鏡 (ビクセン製 A80M または A80Nf) • 赤道儀 (ビクセン製 GP2、一軸モータードライブ付き) • アイピース (ビクセン製 PL20.0mm または PL30.0mm) • 太陽投影板 (ビクセン製 A80M 用または A80Nf 用) • 方位磁針、ケント紙、定規、ストップウォッチまたは時計。 4. 方法: 以下の手順で観測データを取得し、1太陽日を求める。 1. 天体望遠鏡を組み立て、太陽観測用の投影板を取り付ける (詳細は省略)。 2. 太陽投影板に太陽の全体像を投影して、フォーカスを合わせ、モータードライブのス イッチを入れて太陽の追尾観察を行う。 3. 太陽投影板にケント紙を固定し、太陽の輪郭を丁寧になぞって円を描く。 4. モータードライブのスイッチを切ると同時に、その瞬間の時刻 (t0 ) を記録する。 5. 太陽の像が投影板上のケント紙から出ないうちに、モータードライブのスイッチを再 度入れ、同時にその瞬間の時刻 (t1 ) を記録する。 6. ケント紙上を移動した太陽の輪郭を丁寧になぞる (Figure 1 参照)。 7. 上記の観測を 3–5 回繰り返す。 8. ケント紙上の太陽の直径 2Rs と、時間 t1 − t0 の太陽の移動量 ` を測定する。 9. 理科年表などから、2Rs に相当する太陽の視直径を調べ、これと比較することで、` に 相当する太陽の移動角度を算出する。 10. 以上の測定量から1太陽日を導出する。 Figure 1: 投影板に記録された太陽の位置 5. レポート課題: • 本実験で得られた1太陽日の測定値および測定誤差を示せ。 • 本実験による1太陽日の導出手段について、その妥当性や精度向上の方法を考察せよ。 • 本プリント「4. 方法」で省略された、望遠鏡使用のための準備や使い方、使用上留意 すべき点などを簡潔にまとめてレポートにて「付録」として報告せよ。 • 地球の自転運動・公転運動・地軸の傾きと、1太陽日・1恒星日の関連性について資料 調査を行い、レポートにて「付録」として報告せよ。 参考資料: • 国立天文台編 (2006): 理科年表 平成 19 年, 丸善株式会社 • 国立天文台編 (2007): 理科年表 平成 20 年, 丸善株式会社 • 若生康二郎編 (1979): 地球回転, 恒星社
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