の政治的態度の図式 すべてが citizen として想定

平成 19 年 3 月 17 日 高畠読書会 『丸山真男講義録〔第三冊〕政治学 1960』 第二講・第三講
報告:
近藤順茂
第二講
態度・意見及び行動
政治的分析の諸方法
37
政治的態度の形成と変化
41
政治的態度の構造 62
政治的無関心(権力状況からの引退の態度) 67
49 ローウェル(1923)の政治的態度の図式
すべてが citizen として想定され、主知主義的でアパシー(無関心)、下意識の問題がとり上げ
られていない。ここから始めて、政治的態度(→心理学的アプローチ)や政治的無関心の問題に移
っていくという順番が、近代から現代の現象へという典型的述べ方で、面白いというか微笑まし
かった。この図式は授業で尾形にも高畠にも聞かされなかった。古臭いからかと思われるが。
満足・穏和:リベラル⇔保守的
不満足・過激:革命的⇔反動的
明るい楽天的・変革:リベラル⇔革命的
暗い悲観的・頑固:保守的⇔反動的
獲得・維持・増大+価値充足感:リベラル
↓(右翼化)
↑(左翼化)
喪失・減退+価値充足感:保守
↓
↑
喪失・減退+価値剥奪感:反動的
↓
↑
獲得・維持・増大+価値剥奪感:革命的
62-67 政治的態度の重要性を説いている。
政治的態度の重要性の指摘=制度論的アプローチや主知主義的(上の用語)に対して、一言
で言えば行動主義的アプローチの弁証ということだろう。政治行動の直接原因:心理と経
済的利害。63 政治行動の科学的観察において心理的アプローチが基本的に重要。67 威信:
自己の世界に対する地位。他者の自己についてのイメージ。66 心理的媒体(恐怖感・嫉妬
感・孤立感・不安感)によって、始めて客観的条件と政治的反応の仕方が結びつく。態度=
経験を通じ、対象・状況への反応への指令、影響を及ぼす精神的神経的用意の状態(Allport)
。
A→f→(X)→f→B 出来事 AB から導き出される仮説的構成。
1
74
上記政治的態度につながるマア同じことだが、それをマルクス主義につき駄目押し。
それを言うのが丸山の時代的使命だった。階級的利害の即事から対事(ルカーチ)=ベンサ
ムに近い利害心理学。客観的事実政治意識をつなぐものは功利性についての合理的計算だ
との仮説。人格構造、象徴構造というフィルターの無視。非合理的エモーションや暗示作
用の契機を無視、衝動の歴史過程の中への合理化。
77
イデオロギーに寄食・78 政治化が同時に非政治家(私化)・78 断片化で刹那的。
この辺の表現は、あたかもエーリッヒ・フロム『正気の社会』
(人間疎外・異常社会の糾
弾の学生ベストセラー社会心理学教科書)あたりと同様の書き方を思わせる。これも時代
的役どころか。永井陽之助(東京工大)の様に外書の翻訳そのものだったのもいた。
79 個人は積木を持った子供のように、断片を持って独りぼっちにされる。
第三講 86 の感じにもつながる。アパシーは学歴や教育程度があっても、あるから。
78
持続的方法的経営・専門化・分業化はアパシーの絶好の発酵源。
技術と目的の関連が見失われ、意味ではなく効果(効率のための効率)。第三講 116 企業の
ゴールとは何か?と同じ点。
83
たとえ一人一人の市民は政策を形成できなくても、それを判断できる。
政治は技術的に複雑だから素人の判断力を超えるとは、政治を行政の問題にすりかえる
官僚の発想。政策の良否の判断資格は立案者でなく、影響を蒙る者。
→エーリッヒ・フロムと同じ小集団活動、コミュニケーション
→直接的集団に埋没せずに社会的視野と関心を広げる=知性の時代。職人的知性と人間
的知性の違い。この辺、カール・マンハイムの知識人論のようだが、これは現在どう
か?
⇔政治問題の一層の行政問題化、行政問題の政治化。むしろ直接集団に埋没することに
よる影響力の行使。社会的視野と関心を広げると不確実性(リスク)が増大する。
第三講
集団とリーダーシップの政治過程
序説―集団関係への接近態度 86
集団化の諸形態
89
リーダーシップの課題と機能 105
結語 135
86 序説:人間行動の identification が困難なのは機能分化によって・・
分析(含む自己認識)は実体概念でない。複数の機能概念のうち、ある行動に対してはどの概念
2
を適用して考えるのか。
機能は分化されているし、入り組んでもいる。
自分の行動の認識もこれ、
大変だ。第二講 79。以下の例を考えても~
90­94 群集:サラリーマンの飲み屋での生態
かつて私が愛した広い飲み屋で会社の仲間と飲む時間=一方では街頭におけるマス。個性は抹
殺、平均化、抽象化。店員に対しオーダーを言い、料理を渡され、場所の提供を受ける対象。酒
によりエネルギーを一挙に消費する傾向を持つカタルシス、モップ mob そのもの。自分の場が
なくなり・・⇔しかし、そこでする話は会社そのもの。→強烈アイデンティティーの醸成か?
我々の存在論として、実はまず群集としての自分ありきが先で、そこからの way out として次
がある。もはや先に会社、家族などあって、そこからの way out が群集と言うのでない?翌朝
会社では、日常性と臨時性の分別(93)で、昨晩に比べてシラケる。
95­96 voluntary association としての読書会?
宗教団体・社交クラブ・学問研究会・スポーツ団体、××協議会
流動する社会のなかの自分の position を意識させる。高畠読書会はどういう position を意識さ
せますか?
101 制度というもののもつ社会的機能
個々人の個別的な出来事に対する個別的反応を一般ケースと一般的規範でくくることによっ
て人間行動をルーティン化、人間の環境適応の決断と選択の労を最小限にし、心理的安定を確保
するのである。→聖公会の教会におけるサーバーや教会委員、市民政治研究会や高畠読書会は?
上と同じ点。主権とは例外状態の決断である:リーダーシップの本来の課題。しかし例外状態と
認めたがらない。ルーティンは破られていないし、危機的な状況でもないと言い張る。
111 リーダーの訓練を受けるチャンスに恵まれている。
Discussion による決定過程そのものが、リーダーへの教育課程である。→技術系ノンキャリ大
学出身者に、ケースによる MBA 式議論の仕方やプレゼンテーション・スキルを教える:私の大
学院ビジネススクールの授業における留意点!
112 Sub leadership
human relations の政治的コンテクストによる位置づけ。 Informal group を 肯定的な意味
で sub leadership として位置付けている。社会心理実験の分断的解説でない。支配-服従(リー
ダー-卒伍)の関係において。
116 今日、企業のゴールとは何か?企業は何のためか?答えはそもそも難しいのか?
efficiency と human relations への関心がゴールへの関心に代わることは組織の危険信号。実
3
際の会社では皆、efficiency と human relations ばかり語っているのではないか?第二講 78。
自社の存続(雇用の維持)とか、ステーキ・ホルダーのためとか、利益とか、株主価値とか、何の
ためが言えないから efficiency と human relations に話が行く?しかし企業に大それたゴールと
はあるのか?
122 民主的決定過程は、状況判断のリアリズムを確保する。
たんに followers の利害にとって意味があるだけでなく、指導的役割にとっても組織のフィー
ドバック機能を円滑にして状況判断のリアリズムを確保するため。(伝統社会でも、組織の「御
意見番」)。 130 議会政のリーダーは下級役割からの遊離の警戒のため具体的・個別的で漸進
的。
構成員との考え方の分有。
代表的リーダーの理想型:平凡な意見を持った非凡な人間。
この二つの指摘には、民主的や議会政をよく突っ込んで考えている、さすがと感銘した。民主的
や議会政のイデオローグであることは理想や理念ばかりでなく、その効用や強さに関するリアリ
ズムの認識がある。
129 リーダーシップの統合過程を通じてのあるべき姿
潜在的な漠然とした感情要求が顕在化され、価値体系内部の欲求が矛盾・衝突を経て調整され、
ヨリ高い集団意思に統合、集団への帰属感、指導者との同一化が促進、そこに本来の代表的指導
機能が認知される。高畠からよく聞いた政治学のモチーフ、またはフレーズ。ここから来ていた
か。懐かしいです。
読後の感想
○通常それ自体として断片的に語られる社会心理学の概念が、
リーダーシップのコンテクストの
中に位置付けられて奥底の意味までよく考えられ、解釈・説明されているのに、ヤハリ、さすが
と感心した。→sub leadership=informal group.
○民主的や議会政のもつ強さのリアリズム的認識は、さすがと感心した。
○群集やアパシーは、この授業により語られた状況を超えて、さらに入り繰って亢進・恒常化し
ている。70 に(アパシーは)デモクラシーの想定する citoyen(市民)からの偏差というが、もは
やその市民の方がアパシーからの偏差。むしろ私の出発点は群集とアパシーと置く。
○政策への判断力、知性のあり方、困難。少なくてもこんなものではすまないだろうが?
○人間疎外といった言葉はあまり使われていないがどうしてか。あまりに常態化?感性変化?
以上
4
5