第 3 回(4/26) ファッション、トレンド、消費行動 ――ファッションの社会的

「流行文化論/流行論」 火曜日 1 限 16-204 教室
担当:榎本 2016/4/26
第 3 回(4/26) ファッション、トレンド、消費行動 ――ファッションの社会的機能
1. 連絡・報告
お詫び: 授業 Web サイト、来週に更新します。
2. BBS 投稿から
「…1週間の出来事でチェックシートにあまり丸をつける事が出来ませんでした。何でかなと考えた時にあまり
外に出かけないなと思いました。自宅から大学、バイト、休日は家で引きこもり、これでは「新しい事」は出
来ない。前にテレビでインテリアショップ Francfranc の社長の教えで「残業はするな、でも真っ直ぐ家に帰る
なよ」と遊びは仕事の要素で大事だと言っていて、それは就職活動「大学時代何をやっていた」にも言える事
なのかもしれないと思った。外に出て新しいことに出会う機会を自分で作らなければいけないなと思いました。」
「…私は授業で発言するのが苦手なのですが、このままではダメだと思っています。就活の時だけでなく、社会
に出てからも自分の意見を言葉に出来るという力はとても大切な事だと思います。この授業を通して身に付け
ていきたいです。」
「…初めて聞いた使えたらかっこいい言葉(可視的など)もどんどん使って頭がいい人風になれたらいいな、と
思いました!」
「難しい言葉が出てきても流すだけが多いけど一つ一つ分かりやすく教えてくれるので時間が経っても忘れるこ
となく覚えられました。」
「…アノミーの意味を覚えました。」
「「ファッション」という言葉には様々な意味があるのだと改めて知りました。授業を受けるまではおしゃれ、
着こなし、洋服..などそのままの意味だと思っていたけれど、「ファッション」から表象されるその人の感情表
出や趣味など沢山の意味があることを学び、とてもタメになりました。」
「『表象とは』という疑問をソフトバンクのお父さんなどの写真を例に出して考えて、わかりやすく楽しかった
です。見えない精神文化をファッションで表象していると聞き、ファッションのはたらきがよくわかる授業で
した。」
「ファッションという言葉の意味をきちんと調べたり学んだりする機会が今までなく、他にも自分が思っている
意味とは違う別の意味がある単語があるかもしれないと思いました。これからは身近な言葉の意味も深く考え
てみたいです。また、ファッションという言葉の深い意味を学ぶことでまた一つ新しいことを身につけられた
と思います。」
「…確かに〔たしかに〕洋服を見るだけでその人がどういうタイプの人なのかなど、ふんわりではありますが、
掴み取ることができます。」
「「表現〔表象〕文化」という言葉を初めに聞いたとき、どのような意味なのかあまりわかりませんでしたが、
説明を受けているうちに理解しました。確かに〔たしかに〕友達一人一人になんとなくイメージするものがそ
れぞれあります。また、ファッションは心理的に大きな影響を与えているということにとても納得しました。
スーツを着ると仕事を頑張る気に、明るい色の服を着たら気分も明るく、フェミニンな服を着たら女の子らし
くしようという気になります。今まで考えもしなかったけど言われてみればそうだなという発見がとてもワク
1
「流行文化論/流行論」 火曜日 1 限 16-204 教室
担当:榎本 2016/4/26
ワクします。」
「「ファッション」の意味を改めて調べてみましたが他にも普段使っている言葉で意味は?と聞かれると答えら
れないものもあるのではないのかと疑問に思いました。わからないことをそのままにするのではなく少しでも
疑問に思ったりわからないことは自分から進んで調べたり聞こうと思いました。」
「…授業中にスライドを写真で撮るのはアリかナシか。他の授業では学生が考えるのではなく先生が決めたルー
ルに従っていたのでそこで初めて考えさせられました。」
「バスの中で静かな時とうるさい時がある。それを社会学的に考えられるのは驚きでした。色んな視点から社会
学として考えられることがわかり面白いと思いました。」
「普段、何気なく使っている言葉が違う意味だと初めて知りました。」「ファッションという言葉の本当の意味
を知ることができました。」
「ファッションはよく 80 年代風など書いてあることがありますが、風であって完全な再現という形ではリバイバ
ルすることはありえないということに関心を持ちましたました。」
「ファッションは回帰されるけど完全じゃなく、今の時代に合わせてあるというところはたしかに!と共感しま
した。最近ガウチョやジージャンなど昔流行ったものが現代風になってるものが多いので理解しやすかったで
す。」
「普段当たり前に自然にあふれているファッション、流行について社会学的に考えるのはとても面白いです。授
業内で流行はまわりまわって復活するが、その時代に合わせて変わってきていると言っていてなるほどと思い
ました。この話を聞いて私は「ルーズソックス」が一番に頭に浮かびました。90 年代は女子高生が制服に合わ
せてはいていて、約 20 年後の現在は私服でスニーカーと合わせてはいていて昔のとは違い、丈が短くなってい
ます。ですが、昔と同じように制服に合わせてはくのも流行っています。制服のときの丈は昔と同じく長い丈
です。時代とともに変わりつつある流行も、変わらない流行もあるのかなと思いました。」
「洋服に関して、今は 70 年代のアイテムが流行っており、現代風が取り入れられ、回帰されているということは
最もだと思いました。このような規則性があるなら、次流行る洋服も想定出来るのかなと疑問も抱きました。」
「ファッションはとても文化的であると思います。日本の女子大生同士や男子大生同士の着こなしが最近さらに
似通ってきているのは、周囲と同じを好み、同じことで安心感を覚える日本人の習性を表しているのではない
でしょうか。小・中・(高)と義務で着ていた制服が連帯感や秩序を保つためのものであったから、日本人(私服
を着る機会の多い大学生)にとっては「みんなと同じがベスト」が自然なものなのかなと考えました。」
「ファッションは私たちにとって、その時の流行りにとても乗りやすい分野だと思います。日本人は特に、みん
なと一緒ということに安心感を持ちやすく、自分だけ一歩前に出るような行動を苦手としているのが特徴とし
ています。ファッションの面でも、流行にのって同世代の人たちはどうしても似たような服装になってしまう
はよくあることです。」
ほか多数!
過去の投稿から
「ファッションの意味に、時間や場所の過ごし方というのがあってスタバを思い付きました。ビルの中に入って
るスタバでは、カウンター席が通路側にあって必ず一面窓ガラスで中の人が見えるようになっています。これ
2
「流行文化論/流行論」 火曜日 1 限 16-204 教室
担当:榎本 2016/4/26
は、スタバ側がわざとガラス窓の通路側に設計しているそうです。その理由は、「スタバという場所でカフェ
をしている自分」がファッションとして成り立っているからです。洋服と同じようにガラス越しに人の視線を
感じることで、満足感や優越感が高揚するのだと思いました。ほかにも例えば、ひとりでスタバを SNS に投稿
するのはよく見かけますが、ひとりでマックを載せる人はあまり見たことがありません。スタバで過ごす時間
そのものが、本来の商品のコーヒー類よりもファッションアイコンとしての役割が大きいのだなと思いました。」
3. ファッションをめぐる神話 (前回の続き)
①「ファッションは非合理的」?
古典的な理解: 流行は人びとの感情による自然発生的(非制度的)で予測困難な現象
cf. 社会科学の古典的前提:目的合理的(制度的慣習・効用・利害・目的・手段に合致)な行為
⇓
 無秩序なアノミー的行動ではない
 日常的な社会関係・役割・コミュニケーションとの関連性がみられる行動
 慣習的な行為をもっては解決しえない問題状況への遭遇
 ルーティーン化された日常の倦怠感からの解放欲求
↓
 社会制度や社会の秩序を乗り越えようとする人びとの集合的な営み
②「ファッションは回帰(リバイバル)する」?
ある時代のファッションは、歴史とともに人びとの記憶の箱に納められている(集合的記憶)
↓ しかし
 完全な再現というかたちでの流行回帰はありえない

復古調アイテム
に注がれる現代的な(異なった)まなざし・意味
cf. アレンジ
③ 消滅と制度化
「消滅型」「定着型」といった単純な類型論
⇓
モンペからスカートへ
ex.
マキシからミニへ
スカートからパンツへ
←スタイル(アイテムの構成要素)の変化
←アイテム(スカート)のなかでの変化(下位レベルでの変化)
 下位レベルでの変化は、上位レベルでの変化よりも制度化されにくく、消滅しやすい
 変化している部分はどこか、制度化されるものは何か、という具体的視点が必要
④「流行の発生には階級格差が関連する」?
古典的理解
「滴下モデル」:流行は上流階級の人びとが採用し、その後に大衆クラスの人びとがそれを模倣
して広まる(トップダウン原理)
「草の根モデル」:革新的な流行は民衆や大衆の生活や
ストリート
トムアップされて上流階級へと波及していく
⇓

 歴史文化の背景と社会経済の状況をふまえた理解が必要
3
から生まれ、しだいにボ
「流行文化論/流行論」 火曜日 1 限 16-204 教室
担当:榎本 2016/4/26
(土屋 2009: 43)
⑤「流行は予測可能」?
現代的状況:
流行は、何らかの
仕掛け
(ギミック)によって作り上げることができる、という信念
流行は予測するものではなく仕掛けるものだ!
ex. マーケティング、マーチャンダイジング、広告・宣伝
⇓


cf.「資源」 お金(媒介手段)「買いたいけれどお金がない」⇔ その逆(以下同様)
時間(暇)
「買い物に行く時間がない」「買い物を楽しむヒマがない」
空間(場所)
「商品を売っている店が近くにない」
情報(知識・センス)「商品を選ぶ知識や情報、センスが足りない」
社会関係(友人)「周りの友人たちは流行にあまり関心がない」
 流行現象には個人の心理や行動(ミクロ世界)だけではなく、集団や組織、産業、地域社会・
国家といったマクロ世界のダイナミックな社会的相互作用とも深い関連性がある
4. 外見:ファッションの第 1 の特質
衣服を身に着けること
 各人が自分自身の主人となること(自己演出、セルフ・プロデュース)
 自らのアイデンティティを具体化すること
外見:個人を測定し自己を定義づけるためのひとつの基準
↓
ファッション:
4
「流行文化論/流行論」 火曜日 1 限 16-204 教室
担当:榎本 2016/4/26
「モノを所有することによって個人は、自らが時勢に乗っていることや、趣味趣向やライフスタ
イルにみる社会変化に参画していることを表明する欲求を満たしている」(Leonini, 下線榎本)
* 衣服を同じくする者たちは、ひとつの集団(価値観や行動様式の類似性)を形成する
cf. 1950-60 年代の若者の学生運動とそのファッション
土日の原宿・神宮前陸橋、アキバ系、渋谷ストリート・ファッション
5. 時勢:ファッションの第 2 の特質
「ファッションに追随する者は、たんに特定のモードからえられる威光だけを目当てにしている
のではなく、まさに
流行に乗る
流行っている
からそうするのである」(tessarolo)
=
流行に乗ること
への欲求



ファッションの掟に従うこと
個人レベル: 他者との差異化をはかりながら、自らにイメージを与える
集合的レベル: 自らを集団へと関係づけることを可能にする
「ファッションに追従することは、人びとのなかで埋没し目立たないようにし、また自己にそぐ
わないステレオタイプ的評価を回避しながら変身するための戦略となっている」(Leonini)
ファッション
時代遅れ
というレッテルの貼られた旧来モデルを破棄させつつ、新規モデルを採用させるこ
とを容易にする社会的機能
 ファッションは止まることを知らず、つねに時期尚早か手遅れかのどちらか
 そこで起こることはすべて偶然的で必然性がない
参考 1 )ファッションに反対する者
 自らもその希少性のゲームそのものに参加
 ファッションを否定することですら、そのゲームのひとつの手(自己のアイデンティティ主張)
 初期の新奇さが失われた段階で拒絶反応も消滅、or 適応?
参考 2 )現代社会のナルシスト的次元:
 自己に対して注意を集中(自意識)
 老化とファッションによるゲームから外れることへの恐怖
cf. 自己の身体の操作:化粧、美容、ダイエット、日焼け…
5
「流行文化論/流行論」 火曜日 1 限 16-204 教室
担当:榎本 2016/4/26
6. ファッションと消費行動
消費財の社会的機能
 個人の欲求を充足させる
plus…
 価値や差異性、社会的文化的カテゴリー(アイデンティティ)を決定づける
ファッションの消費行動に影響を与える社会学的条件
①「バンドワゴン効果」
②「スノッブ効果」
③「ヴェブレン効果」
「自らが形成する社会集団によって評価されるファッションは、模倣と平等へと志向するひとつ
のメカニズムとして生みだされるが、最終的には集合的ないし個人的なレヴェルでの差異性を
創出することになる」(ジンメル)
7. 文化活動としてのファッション
文化
さまざまな表象、コード、テクスト、儀礼、行動モデルからなる非同質的な総体
規則、慣習、シンボル
状況への適応力を充足させる役割
↓
ファッション
外見のレベルにおいて作動
現実(個人のイメージ)に対する異なる評価の仕方を可能にする
 ファッション →
①
②
 文化活動としてのファッションは、
cf. 行為の「意味」
action の動機、意図、目的…
6
「流行文化論/流行論」 火曜日 1 限 16-204 教室
担当:榎本 2016/4/26
cf.「シンボル(象徴)」
あるものが他のものを代表するとき、その代表するもの
身ぶり、表情、図像、言語、文字、音、暗号…
人為的な、または暗黙の一定の約束による意味づけを通じて作用
⇔「記号」:自然反射的
8. 参考文献
土屋淳二編、2005、『イタリアン・ファッションの現在』学文社、第 7 章
山根常男ほか編、1978、『テキストブック社会学(1)
入門社会学』有斐閣
塩原勉ほか編、1978、『社会学の基礎知識』有斐閣
田中淳・土屋淳二、2003、『集合行動の社会心理学』北樹出版
藤竹暁編、2000、『流行/ファッション』至文堂
市川孝一、1993、『流行の社会心理史』学陽書房
9. 次回の予告
5 月 3 日 祝日
<快楽消費>する社会
【授業 HP】 http://homepage3.nifty.com/t_enomoto/komajo/
【BBS】 http://9113.teacup.com/tenomoto3/bbs
以 上
7
ファッションをめぐる神話 4
④「流行の発生には階級格差が関連する」?
 上位/下位、高級/低級という序列がもはや
流動的な現代社会
 歴史文化の背景と社会経済の状況をふまえた
理解が必要
ファッションをめぐる神話 5
⑤「流行は予測可能」?
 われわれが知っている流行・ファッションとは成
功事例のみ。背後に無数の失敗事例
 人びとの欲求から、意思決定、行動実行にいた
る複雑なプロセスへの着目が必要
外見: ファッションの第1の特質
外見:
 個人を測定し自己を定義づけるための
ひとつの基準
↓
ファッション:
 差異と類似、順応と距離を可視化するコ
ミュニケーション・サブシステム
時勢: ファッションの第2の特質
流行に乗る =
 時代とともに変化する審美的規範にし
たがうこと
流行に乗ること への欲求
 ある傾向への連帯感をもつこと
 他者と同調すること
 差異化への欲求