知的財産講議(第三回) 弁理士 高島敏郎 1.発明の定義 (1)自然法則の利用 (2)技術的思想の創作 (3)高度のもの 2.特許を受けるための要件 (1)産業上利用性(29条1項柱) (2)新規性(29条1項) (3)進歩性(29条2項) (4)その他 公序良俗(32条) 拡大先願(29条の2) 1.発明の定義 発明とは自然法則を利用した技術的思想の創 作のうち高度のものをいう(特2条) (1)自然法則の利用 ①自然法則→自然界で経験により見出される法則 例:水は高い所から低い所に流れる、油は水に浮 く 自然法則でないもの → 人間の純知能的、 精神的活動によって見出される法則 数学上の公式,論理学上の法則(計算方 法?),経済学上の法則や人為的な取り決め (金融,保険制度等),心理法則,但し生理学 上の法則は自然法則と解すべき(∴手術方法等 の医療行為は発明に該当) ②自然法則の利用 ∴自然法則自体は発明に該 当せず 自然法則の新たな発見は発明に該当せず(例: 遣伝子の塩基配列の発見) → 「自然法則の利用」であるには、 (i)実施が可能であること(例:×永久機関 ∵ 実施不可能) (ii)一定の確実性をもって反復可能性があるこ と 反復可能性があれば一定の確実は低くても可 (例:○真珠の養殖方法,×常温超伝導の方 法) (iii)自然法則についての正しい認識は不要 上記要件を満たすのであれば、結果として 利用している *発明に理論付けは不要だが、作用や効果に疑問が生じる場合に備 えて、実験結果を残しておくか、予め第三者機関に原因と結果 を立証してもらっておくのが好ましい(特に化学,薬学の分 野)。 ③技術的思想 (i)技術 → 産業上,文化上を問わないが、自然法則を利用しな いものは発明の対象から除外(例:×野球の投球技術) 知識として客観的に他人に伝達できるもの (例:×カンやコツ) (ii)技術的思想 → 発明は技術に内在する抽象的な思想(アイデ ア) ∴アイデアとして具体性があれば、技術として具体的でなくて もよい 例×:木星を破壊して地球を覆う球体を作る発明 ×:人間との対話が可能な人形 → 具体性なし ④創作 創作である以上、新しく作り出したものである必要あり。 ∴ 何も作り出さない発見は発明に該当せず。 但し、発見と発明との間に、微小でも両者をつなぐプラ スαがあれば、発明として成立する可能性あり 例:○グルタミン酸の発見→調味料との間に+αあり ⑤高度のもの 実用新案法上の考案と区別する意味 2.特許を受けるための要件 (1)産業上利用性 ①産業 ②利用できる (2)新規性 新規→特許出願時に秘密状態を脱していないこと 出願時→時分まで問題 ∴午前に発表、午後に出願不可 具体的には、 ①日本国内外で公然知られたものでないこと ②日本国内外で公然実施されたものでないこと ③日本国内外の刊行物で公然知られたものでないこと (3)進歩性 (1)産業上の利用 ① 産業 → 生産業(鉱工業,農林水産業)の他、生産を 伴わない運輸,通信,交通,広告業も含む。 近年では、保険,金融等のサービス業も含む (例:ビジネスモデル特許) ・医療業 → 産業ではない、と解釈 ∵医療は人類の健康のために広く開放されるべき ∴ 手術方法や治療方法は特許不可 ただし、医療器具や医薬品は特許の対象、また、 人体を必須の構成要素としないものも対象となりうる (例:○毛髪を使った遺伝子の解析方法)。 以下、特許庁の審査基準参照 ②利用 利用は、現に又は直ちに産業上利用できること は必要ではなく、産業上利用できる可能性があ れば足りる。 ∴何に利用できるかわからないような発明は、 特許不可 ・経済性は必要か? → 不要 ・技術的不利益伴うものはどうか? → 不利益 の程度による(不利益大きければ実質的に実施 不可)
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