アジア給与実態から見る日本の課題

アジア給与実態から見る日本の課題
ヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント・ジャパン株式会社
髙井 健
ビジネスディレクター Ken Takai
「岐路に立つアジア」
21 世紀はアジアの時代と言われて久しい。
調査結果で明らかになったことは次の3点で
今や世界の成長エンジンとなり、生産拠点のみ
ある。①日本における昇給率はアジアで最も小
ならず消費市場としての地位を確立している。
さい。②高度なスキルや長い経験を必要とする
世界の多国籍企業がアジア市場での成長をかけ
職種では、中国、香港、シンガポールにおける
てしのぎを削り、
日系企業もその例外ではない。
給与水準は日本を上回る傾向にある。③日本人
ヘイズでは早くからアジアの成長力に着目
とアジア他国の転職動機、現職に留まる動機は
し、2001 年の日本進出を皮切りに、中国、香港、
異なる。
シンガポール、マレーシアに拠点を設け、アジ
具体的には、まず今年の予測昇給率について
ア5カ国・地域でホワイトカラー専門職を対象
日本では 63%の企業が最大3%の昇給と回答
にした人材サービスを提供している。9年前か
し、中国では 60%が6%以上の昇給と答えて
ら毎年職種別平均賃金を調査し、昇給率、求人
いる(図1)。日本の昇給率は2%台で推移し
動向、転職動向などの分析を加えて「ヘイズア
ており、当社の調査結果は精度が高いと考える。
ジア給与ガイド」の名称で発表している。
2016 年版では 3000 社(従業員数 600 万人)
次に職種別の給与水準では、企業に高い価値
をもたらす職種、例えばメーカーにおける研究
から回答を得、1200 職種を超えるホワイトカ
開発部長職や最高財務責任者(CFO)、最高情
ラー専門職の国別平均賃金を明らかにした。そ
報責任者(CIO)や社長職などにおいて、日本
して、調査を通じて見えてきたアジア各国の実
の給与水準はアジア各国に後れをとっている
態を「岐路に立つアジア」と名付けた。
昨年までの楽観論が影をひそめ、今後1年
間で自国経済が減退すると見る企業が 43%を
占め、昨年比 25 ポイント増加した。経済状況
(図2)
。日本は格差の小さい国と好意的にとら
える向きもあるが、貢献が金銭的に報われない
図1:国(地域)別予測昇給率
が改善すると答えた企業は 15%に留まった。
中国
一方で自社の企業活動が拡大するとの答えが
香港
60%を占めたことは興味深い。多くの企業が
昇給に対して慎重な姿勢を示し、人材のスキル
不足によって効率的な事業運営が損なわれる恐
れがあると考えている。
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昇給率や給与水準が低い日本
2016年6月号
日本
マレーシア
シンガポール
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100