有毒アルブミン類を含む植物 0.概要 有毒アルブミン類 (リシン、アブリンなど)は、蛋白合成を阻害する植物毒素で あり、数種類の遺伝学的に関連性のない植物に含有されている。 有毒アルブミン類を含有するトウゴマ、トウアズキの種子は艶がありきれいなの で、ネックレス、装飾用などに使われ、小児が誤って食べると中毒を起こすことが ある。なお、トウゴマに含まれるリシンは生物兵器として知られている。 有毒アルブミン類の種子を1 ∼ 2個咀嚼すると致死的となる。消化管の重篤な刺 激症状、体液電解質喪失によるショックが出現する。遅発性の肝臓、中枢神経、腎 臓、副腎、膵臓などにおける細胞毒性が出現する可能性がある。 [毒性] ・いかなる有毒アルブミン類の種子も、1∼ 2 個の咀嚼でも致死的になる可能性 がある 1 ) ・熟した種子は固い殻で覆われ、消化されないため、そのまま嚥下した場合で は、種子の示す毒性は極めて低くなるが、咀嚼または完全に噛み砕いた場合で は、種子1個でも極度の症状が発現することもある 1 )。若い種子の場合は 殻が軟らかく容易に噛み砕くことが可能であるため危険である 2), 3) ・トウゴマ、トウアズキ以外の有毒アルブミン類については、症例報告が少な く、中毒量、致死量が明らかでない 経口 [ヒト中毒量] トウゴマ 小児・ 2 個 以 上( 3 歳男児):重篤な胃腸炎を起こしたが、回復し、 5 病 日 に退院した 1), 4) 成人・ 4 個( 2 8 歳 ・ 39 歳がそれぞれ摂取):重篤な胃腸炎を起こしたが、 回復した 1 ) , 4 ) ・ 1 2 個( 2 1 歳 ):摂取 3 0 分後に嘔吐し始めた。最終的には回復した 1 ) ・ 3 0 個( 2 1 歳 ):自殺企図で種子を摂取した(いくつかは咀嚼した)。 嘔吐、激しい下痢が起こり、脱水、循環虚脱となった が、後遺症なく 5 病日に退院した 1 ) , 5 ) Jatropha m u l t i f i d a 小児・おそらく果実 1 0 個以上( 8 . 5 歳・ 9 . 5 歳がそれぞれ摂取) : 難治性嘔吐、仙痛様腹痛、水様性下痢が起こった。来院時には脱水状態で あった。輸液を行い、両名とも 5 病日に退院した 6) [ヒト致死量] トウゴマ 小児 ;1個 :毒性は極めて高く、おそらく致死量となる 1)。 な お、症例としては報告されていない 4 ) 成人 ;3 , 5 , 6 個をそれぞれ摂取した 3 例の死亡が報告されて いる 4 ) 8 個:致死的と推定されている 2) リシン ・ LDLo ・ 3 0 0μ g / k g:成人男性 7) -1 - ・ 1m g / k g : リシンの吸収が非常に低いため最小致死量 ( L D L o )におそらく近い 1 ) ・ 2mg/kg 7 ) ・ 30mg :成人で致死になりうると推定される 1) トウアズキ 小児;1個以上 :摂取し死亡した例が報告されている 1 ) , 3 ) 成人;少なくとも 1/2∼2 個:種子を咀嚼し、重篤で致死的に なり得る中毒が発現 1 ) , 3 ) アブリン; LDLo :7 μg/kg 8 ) [中毒学的薬理作用] 蛋白合成阻害作用 1) [症状] ・重症になるかは、有毒アルブミン類を含有する種子の咀嚼程度によって異な る。摂取後 6 時間たらずで消化器系症状が現れることが多い。しかし、症状 発現は数日間遅れることがある 1) 直接的曝露によって、口腔咽頭部、食道または胃の刺激症状を伴う重篤な消 化器系損傷が引き起こされる。臨床上ではアルカリによる腐食(化学熱傷) と類似しているが、通常曝露後 2 時間以上経過して発現する 1 ) 嘔吐および下痢が必発で認められ、重症では脱水が起こる 1 ) ・遅発性症状 :遅発性細胞毒性は主に動物実験で報告されているが、ヒト経口摂 取での出現には論議がある 2 8 , 3 2 ) 遅発性細胞毒性は肝臓、中枢神経、腎臓、副腎および膵臓におけ る細胞毒性によるものであり 1), 4), 9 ) 典型的には曝露 2∼ 5 日後に発現する 1 )。曝露後 1∼ 5 日間は遅発的症状が発現し ない可能性がある 1) ・毒性の不定性:トウゴマまたはトウアズキの場合、大量に摂取しても、臨床症 状はほとんどもしくは全く発現しないことがある。これは有毒 アルブミン類含有量の変動または消化管における吸収の悪さに よるためであろう。種子を咀嚼せず丸ごと嚥下した場合は症状 が発現する可能性は一層低くなる 1) [治療] ・いかなる有毒アルブミン類の種子も、1∼ 2 個の咀嚼でも致死的になる可能性 がある。有毒アルブミン類大量曝露の場合は全身症状出現までに潜伏期間が あるので、 8 時間の観察が必要である 1 )。また、トウゴマを摂取した場合 は、咀嚼の有無、植物の部位の有無にかかわらず、少なくとも 24 時間は必 ず経過観察するとの説もある 1 0 ) ・症状のある場合 は、医療機関に入院するべきである 1 ) ・無症状で、早期に徹底的に基本的処置(胃洗浄、吸着剤、下剤など)が行わ れた場合は、外来での観察が可能である 1 )。外来患者では、数日の間毎日 症状を観察することが臓器障害(肝臓、中枢神経、腎臓、副腎、膵臓)を確 認するために重要である 1 ) , 4 ) , 9) ・積極的な基本的処置(胃洗浄、吸着剤、下剤など)を行い、体液電解質バラン スに細心の注意を払い支持療法を行うことが重要である 1) ・解毒剤・拮抗剤はない 1 ) -2 - 1.名称 1 )ト ウ ゴ マ R i c i n u s c o m m u n i s 1), 11) 別名:ヒマ 11) Castor bean 1) C a s t o r B e a n P l a n t 1 ) C a s t o r O i l P l a n t 1 ) K o l l 1 ) M o l e B e a n 1) M o y B e a n 1 ) P a l m a C h r i s t i 1) とうだいぐさ科 11) インドまたは小アジア、北アフリカの原産といわれる 11) 南アメリカ、ハワイにみられる 1 ) , 1 2) ヒマシ油 :トウゴマの種子から得られる液状不乾性油である 1 3) リシン; C A S N o .: 9 0 0 9 - 8 6 - 3 7 ) 9 0 6 7 - 2 6 - 9 7) 2 )トウアズキ A b r u s precatorius 1), 14 ) 別名:B u d d h i s t R o s a r y B e a d 1 ) C r a b ' s E y e s 1) Indian Bead 1 ) Indian Liquorice 1 4) I n d i a n L i c o r i c e S e e d 1) J e q u i r i t y B e a n 1) Jungle Bead 1 ) L o v e B e a n 1) L u c k y B e a n 1 ) M i e n i e - m i e n i e 1) O j o d e p a j a r o 1 ) Prayer Bead 1) R o s a r y P e a 1) Seminole Bead 1 ) Weather Plant 1 ) 熱帯の多くの領域に分布している 1) アブリン ;C A S N o .: 1393-62-0 8) 3 )ハリエンジュ Robinia p s e u d o a c a c i a 1), 11) 別名:ニセアカシア 11 ) B l a c k A c a c i a 1) B l a c k L o c u s t 1 ) 間違えて呼ばれる植物名: ア カ シ ア(ハリエンジュは世間一般でアカシアと 呼ばれるが、これは真のアカシアではない) 11 ) まめ科 11 ) 北、東、中央アメリカ原産である 1), 11 ) Phasin ;C A S N o .: 1392-87-6 23 ) 4 )ナンヨウアブラギリ J a t r o p h a curcas 1), 14 ) 別名:Barbados nut 1 ) -3 - C u r c a s b e a n 1 ) Physic nut (J a t r o p h a m u l t i f i d a もP h y s i c n u tと呼ばれる) 1 ) Purge nut 1) 熱帯、亜熱帯の北、南アメリカ、アフリカ、アジア原産である。フロリダ、 ハワイで帰化、栽培されている 1 5) とうだいぐさ科 1 5) 5 )インテゲリマ J a t r o p h a h a s t a t a 1 ) , 1 6 ) 別名:ナンヨウサクラ 1 6) J a t r o p h a i n t e g e r r i m aともいわれる 1 ) P e r r i g r i n a 1 ) とうだいぐさ科 18) キューバ原産である。南フロリダで装飾用として栽培されている 1) 6 ) Jatropha m u l t i f i d a 1) 別名:C o r a l P l a n t 1 ) Physic nut (ナンヨウアブラギリも Physic nut と呼ばれる) 1 ) とうだいぐさ科 1 7) 熱帯原産である。南フロリダからテキサス、ハワイでしばしば植えられてい る 17 ) 2.分類コード 5 −8 1 −1 4 0 0− 110 3.成分 ・組成 ・主な有毒アルブミン類は、リシン、アブリン、ファシン、ロビンである。しかし、 他にも存在する 1 ) ・有毒アルブミン類は 2 つのおおよそ等しい大きさのサブユニットが 1 つ の ジ ス ルフィド結合で結び付けられたアルブミンほどの大きさの分子である 1) ・数種類の遺伝学的に関連性のない植物が化学的に類似した高分子の有毒アルブミ ン類を含有している 1) ・J a t r o p h a 属のすべての種類は有毒アルブミン類を含んでいると考えられている。 どの部位であれ、 J a t r o p h a 種のいかなる種類の摂取であれ潜在的に危険である と考えられる 1 5) , 17) , 1 8) 1 )ト ウ ゴ マ R i c i n u s c o m m u n i s 全草が有毒であるが、特に種子が有毒である 1 2 ) リシン( r i c i n :有毒アルブミン類)を含有する 1 ) 種子を乾燥したもの (ひまし): 脂肪油 (ヒマシ油)3 0 ∼50% 、その他g l o b r i n , n u c l e o a l b u m i n , g l u c o p r o t e i n ,リ シ ン, l i p a s e などのタンパク質およびricinine ( 有 毒 アルカロイド)を含む 1 9) リシン含有量 : ・ 一 般 に 約 1∼ 1 0%と考えられている 1 ) ・種子には、 1∼ 5% が 含 有 さ れ る 2 0 ) ヒマシ油 :トウゴマの種子を圧搾するとヒマシ油がとれ、絞りかすにリシン が残る(リシンは油に溶けないので、ヒマシ油の中には溶け込ま -4 - ない) 2)。ヒマシ油は水酸基をもつリシノール酸が約 90% で 主成分である。残余はオレイン酸、リノール酸、ステアリン酸 など数種を含む 1 3 ) 図1 リシンの構造 2 1 ) B鎖が左側で、A鎖が右側である。底部にある2つの鎖間の肉太活字体 部分はジスルフィド架橋を示す [図 ] 2 )トウアズキ A b r u s precatorius 全草が有毒であるが、特に種子が有毒である 2 2 ) アブリン ( a b r i n: 有毒アルブミン類)、 abric acid (配 糖 体) 、abrine ( N - m e t h y l t r y p t o p h a n )、脂肪分解酵素を含有する 9 ) , 2 2) , 2 3) アブリン含有量: 0.15%と推定される 1) グリチルリチンを根に含有する 2 2) 3 )ハリエンジュ Robinia p s e u d o a c a c i a 樹皮、葉、種子はファシン (p h a s i n) 、ロビン( robin )という有毒アルブミン 類、ロビチン (robitin :配糖体) を含有する 2 4 ), 2 5)。花は有毒ではな い 1) 4 )ナンヨウアブラギリ J a t r o p h a curcas 全草にcurcin (有毒アルブミン類)と、グリセリン酸(リシノール酸や c r o t o n o l e i c a c i dと類似した物質)を含有する 1 5 ) 種子はしゃ下効果のある油と1 2 -デオキシ -16-ヒドロキシホルボールエステ ルを含有する 1 5 ) 枝は強い刺激臭のする乳液を含む 14 ) 5 )インテゲリマ J a t r o p h a h a s t a t a 全草が有毒であるが、樹液と種子はj a t r o p h i n(curcin : 有毒アルブミン 類)、しゃ下効果のある油、樹脂を含有する。葉はサポニン様物質を含有 する 1 8) J a t r o p h aのこの特定の種類からの中毒の報告はないけれども、密接に他の 有毒な種と関係があるため、潜在的に有毒であるとして扱われるべきである 1 8) 6 ) Jatropha m u l t i f i d a -5 - 全草が有毒であるが、特に樹液、種子が c u r c i n(有毒アルブミン類)、刺激 性ホルボール類、不揮発性油を含有する。乳液には刺激性のマスタードオイ ルを生成するチオグリコシドが含まれる 17 ) 種子は h e l l o i l , p i n h o e n o i l 、o l e u m infernale (オイルの名称) , o l e u m r i c i n i m a j o r i s(オイルの名称)として知られている黄色 の不揮発性油 2 9∼ 4 0%が含まれている。それは密接にリシノール酸 や crotonoleic acidと関係がある 1 7) 4.製造会社及び連絡先 記載なし 5.性状 ・外観 1 )トウゴマ ・一年生草本である 11) ・さく果は通常刺をもつが時にないこともあり、 3片 で 3室となり、各室に 1 種子 をもつ 11)。さく果は緑色または赤色である 1) ・種子 は楕円形で光沢があり黒っぽい褐色の斑点がある 11 )。まだらで、色 は白、灰色、茶色で、 1∼ 2 c mの長さである 1 ) , 1 2 ) ・茎は太い円柱状で直立し、高さ2 m 位である。普通まばらに分枝する 11)。 しかし、たいていの場合は、頑丈な繊維質の根とやわらかい木のような茎をも つ樹木のようになり、高さ 6∼ 9 mに達する 1 ) ・葉は長い柄をもち互生している。その直径は30 ∼ 100cmもあり、楯状で掌状 に 5∼ 11中裂している。裂片は卵形または狭卵形で尖り、きょ歯がある。毛は なく光沢があり、色は緑色または褐色を帯びる 11 ) ・花は大形の総状花序で、茎の先の方から下の方の節へと順に直立した総状花序 となる。これは長さ 20cm位でぎっしりと沢山の単性花をつける。秋に花をつ ける。雄花は花序の下部にあり、雌花は上に集まる。雄花は 5個の花弁をも ち、花糸は多数に分かれて黄色のやくをつけ、その数は1 5 0 0以上もある。雌 花は小さな 5 花被片からなり、子房は肉質の毛をもち3室になっている。花柱 は基部から 3 分し更に2分する 11)。花は緑がかった白からさび色である 1 ) <リシン > 熱や衝撃によって活性を失う 2) 分子量: A鎖 (30000Da), B 鎖( 3 3 0 0 0 D a )か ら な る 2 3 ) 2 )ト ウ ア ズ キ ・つる植物である 1 ) ・約 3 c mの長さのエンドウ豆形をしたさやに約1c mの長さの堅い卵形の種子を 含む 1) ・種子は光沢があり、赤い種子で、さやに付着している部分が黒い 1 ) , 1 4)。 類似した外観を示すものにR h y n c h o s e i a p r e c a t p r i u sが あ る が 、 R h y n c h o s e i a p r e c a t p r i u sでは、さやに付着している部分は赤い 1) また、トウアズキには、黒い種子で白い斑入りのもの、白い種子で黒い斑入り のものもある 1 ) ・花はエンドウのような花で、花の色は藤色、赤∼紫か、あるいは時折白色であ る 1 ) , 1 4)。小さく、房となり 2 . 5∼ 7 . 6 c m( 1∼ 3インチ)の長さである 1) -6 - ・小葉の大きさが均一な羽状複葉をつける 1 4) ・若いときは 茎は緑であるが、植物が成熟するにつれて、樹皮は灰色になる 1) <アブリン > 6 0℃ 3 0分の加熱に耐える 2 3) 8 0℃ 3 0分で大部分の毒性が失われる 2 3) 分子量: 6 3 0 0 0∼ 6 7 0 0 0 D a 2 3 ) 3 )ハリエンジュ ・落葉高木である。高さは1 5 mぐらいになる 11 ) ・枝葉はほとんど無毛で、托葉は通常針状になる。葉は互生し、有柄の奇数羽状 複葉、小葉は4∼ 8対、対生し、卵形または楕円形、頭部は鈍形円形またはわ ずかに凹み、末端には細い微凸起があり、基部は円形または鈍形で短柄があ る。長さ 2∼ 3 . 5 c mぐらいである。葉質はうすく、鮮緑色である 11) ・花は長さ 1 0∼ 1 5 c mの総状花序で、初夏の頃、小枝上の葉腋から葉より短い総 状花序を垂れ下げ、白色の蝶形花を開き芳香を放つ。がくはつりがね形で頭部 は歯状に浅く5裂するが、 2 枚のくちびる状にみえる雄弁は大きく、下部は黄 色味を帯びる 11) ・豆果は広線形、長さ 5∼ 1 0 c m、幅 1 2∼ 1 5 m mで、平たく、無毛である。中に 4∼ 7個の腎形の黒褐色種子を生ずる 11) , 26 ) <ファシン >:加熱により毒性、凝集作用を失う 2 3) 4) ナンヨウアブラギリ ・落葉低木である 1 4 ) ・浅裂の葉は大きい 1 4)。葉は暗緑色で卵形∼わずかに3∼ 5裂の裂片となって いる 15 ) ・花は黄色∼緑色である 1 4 ) , 1 5 ) ・種子 :果実は約 1 . 3∼ 1.9cm( 1/2∼ 3 / 4インチ)の長さとなる 3 つの黒い種子 を含んでいる 15) 。種子は卵形をしている 14 )。種の内部は白く、 油分に富む 1 5) ・果実 :小さいカプセルのようなやや多肉質の丸い果実で、直径2 . 5∼ 3 . 8 c m( 1 ∼ 1 . 5インチ)である 1 5 )。若いときは多肉質、緑色で、熟すると黄 色となる。果実は一般に黒茶色に乾燥し、殻あるいは果皮が乾燥して、 でこぼこになる 1 5 ) 5) インテゲリマ ・常緑小低木である 1 6) ・さく果は小さく、球形で、 3つの角がある。さく果はそれぞれ 3つの種を含む 18 ) ・樹液は乳白色か、あるいは水様である 1 8) ・葉は楕円からわずかに卵形でしばしばバイオリンのような形をしている 1 8) ・花は桃赤色とピンクである 1 6) 6) J a t r o p h a m u l t i f i d a ・小木あるいは一般に 9 1∼ 213cm( 3∼ 7フィート)の高い潅木である、しかし 6 1 0 c m( 2 0 フィート)に届くこともある 1 7) ・さく果:黄色で通常 3つの角がある。 2 . 5 c m( 1インチ)よりわずかに大きい 17) ・果実は未熟なものは緑色で、熟すると黄色になる 6) ・葉は深く 9∼ 11 つ切れ込みの入った掌状である 1 7 ) -7 - ・花は小さい黄色の花弁を持っており、中心部分は緋色である。小さい一片のサ ンゴに似ている 1 7 ) 6.用途 トウゴマ:種子を圧搾するとヒマシ油がとれ、絞りかすは肥料として用いられる 2)。なお、絞りかすに含まれる有毒アルブミン類のリシンは生物兵 器の一種である 2) トウアズキ:ネックレス、数珠、装飾用ビーズとして用いられる 1) 7.法的規制事項 該当なし 8.毒性 [概要] ・いかなる有毒アルブミン類の種子も、1∼ 2 個の咀嚼でも致死的になる可能性 がある 1 ) ・熟した種子は固い殻で覆われ、消化されないため、そのまま嚥下した場合で は、種子の示す毒性は極めて低くなるが、咀嚼または完全に噛み砕いた場合で は、種子1個でも極度の症状が発現することもある 1 )。若い種子の場合は 殻が軟らかく容易に噛み砕くことが可能であるため危険である 2), 3) ・トウゴマ、トウアズキ以外の有毒アルブミン類については、症例報告が少な く、中毒量、致死量が明らかでない 経口 [ヒト中毒量] トウゴマ 小児 ・ 2 個以上 ( 3 歳男児): 嘔吐、仙痛様の腹痛、下痢が生じた。輸液を行った。下痢は 3 日以 上続いたが、回復し、5 病日に退院した 1 ) , 4 ) ・ 2 個( 1 2 歳男児): 咀嚼した。 3 日間下痢を伴わない悪心および嘔吐を訴えていた。10 病日退院した 2 7 ) ・ 10 個以上 ( 8 歳女児): 咀嚼した。悪心、嘔吐、激しい腹痛、多量の下痢および脱水、方向感 覚の欠如を呈した。嘔吐は 3 病日、下痢は 4 病日に消失した。5 日 目には短時間ではあるが顕微鏡下で血尿および円柱尿が観察された。 1 3 病日退院した 2 7) 成人 ・ 4 個( 2 8 歳男性): 咀嚼し飲み込んだ。 4 時間後、持続する胆汁性嘔吐、広範で急激な腹 痛、爆発的な水様性下痢が起こった。活性炭、下剤を投与し、輸液な どの対症療法を行った。回復し、 4 病日に退院した 1), 4) ・ 4 個( 3 9 歳男性): 生のトウゴマを完全に咀嚼した。斑点状に血液の混じった嘔吐が起こ -8 - った。喉の焼け付くような痛み、疝痛様の腹痛、水様性下痢が起こっ た。活性炭、下剤を投与し、輸液などの対症療法を行った。全ての症 状は 1 2 時間以内に消失した。 5 日間経過を観察したが、溶血や遅発 的な細胞毒性は出現しなかった。 1 ) , 4 ) ・ 12 個( 2 1 歳男性): 摂取 3 0 分後に自ら嘔吐し始めた。最終的には回復した 1), 33) ・ 30 個( 2 1 歳男性): 自殺企図で種子を摂取した (いくつかは咀嚼した)。摂取 3 時間後、 嘔吐や腹部痙攣を伴う激しい下痢が起こり、続いて脱水、四肢のチア ノーゼを伴う循環虚脱となった。対症療法を行い、 5 病日に後遺症な く退院した 1 ) , 5 ) J a t r o p h a m u l t i f i d a 小児 ・おそらく果実 1 0 個 以 上( 8.5 歳・ 9.5 歳男児がそれぞれ摂取): 摂取 1 時間後難治性嘔吐、仙痛様腹痛、水様性下痢が起こった。来 院時には脱水状態であった。輸液を行い、3 6 時間後、嘔吐と下痢は 消失した。両名とも 5 病日に退院した 6) ・中毒例で測定された血中濃度 有毒アルブミン類では、一般的に測定は行われない 1) リシン ・トウゴマ 3 0 個( 2 1 歳男性): ラジオイムノアッセイで血漿、尿中濃度を 4 日間測定した。 リシンの血漿濃度は 1, 2, 3, 4 病日ではそれぞれ 1 . 5 , 1 . 5 , 1 , 0 . 9μg / L で、ゆっくりと減少した。尿中濃度は 1 , 2 病日は検出さ れず、 3, 4 病日ではそれぞれ 0.3, 0.3μg /Lであった。尿への 2 4 時間排泄量は 3, 4 病日でそれぞれ 0 . 7 2 , 0 . 6μ g/24H であった 1 ), 5 ) [ヒト致死量] ・ 経 口 トウゴマ 小児 ・1個 :毒性は極めて高く、おそらく致死量となる 1) なお、症例としては報告されていない 4 ) 成人 ・数個 ( 2 6 歳男性): 摂取数時間後、嘔吐、下痢が起こった。 3 日後来院した。嘔吐、下痢 は持続しており、脈は弱かった。治療によって、下痢は消失し、嘔吐 の回数は少なくなったが、 6 病日死亡した ( 1 9 0 0 年の症例 ) 2 8) ・ 3, 5, 6 個をそれぞれ摂取した 3 例の死亡が報告されている 4) ・ 8 個:致死的と推定されている 2 ) ・ 15 ∼ 20 個( 2 4 歳男性): 2 時間以内に激しい腹痛、圧痛、嘔吐、下痢、四肢の先端チアノー ゼ、血圧低下、腎臓付近の痛みが出現した。尿の顕微鏡検査では赤血 -9 - 球、上皮細胞、顆粒円柱がみられた。 3 病日、いったん回復したよう にみえた。 1 0 病日尿量が増加し、1 2 病日、先端チアノーゼが再び起 こり、幻覚が出現し、血圧が低下し、死亡した(1934 年の症例) 2 8 ) ・死亡例 死亡例 3 例 [ 1 0∼ 1 2 個( 1 5 歳)、数個 (成人)、 15 ∼ 20 個(成人) ] のいずれも 6∼ 1 2 日間の重篤な嘔吐、下痢の後に末梢血管虚脱を起 こしている 4 ) ・解剖所見 ・ 剖 検 で 、1 例では、胃点状損傷、肺、腎臓、腸管うっ血、脳、髄膜の うっ血と点状出血、心膜滲出が認められた 4 ) ・ 他 の 1 例(成人)では、腎不全となり死亡した。剖検で小出血、巣 状壊死、炎症、変性が腎臓、肝臓、心臓、脾臓に認められた 4) ・死亡率 ・約 3.4% :有症例 4 0 8 例 中 死 亡 例 1 4 例 約 8.1% :第二次世界大戦以前、有症例 1 6 1 例中 1 3 例死亡 約 0.4% :第二次世界大戦以降、有症例 2 4 7 例中 1 例死亡 (1 9 5 0 年) 上記のように近年、適切な治療が行われた場合では死亡率は低くな ってきている 4) ・約 1.9% [ 7 4 6 例(うち 4 0 9 例は p o i s o n c o n t r o l c e n t e r への電話 相談)の中毒例での死亡例報告は 1 4 例 ]] 1 4 例の死亡例の内 1 2 例 は 1930 年以前、更にその内 9 例 は 1900 年以前の症例である 2 8) リシン ・ LDLo ・ 300μg / k g:成人男性 7) ・1 mg/kg: リシンの吸収が非常に低いため最小致死量( L D L o )におそらく近い 1) ・ 2 m g / k g 7) ・ 30mg:成人で致死になりうると推定される 1 ) トウアズキ 小児 ・1個以上 :摂取し死亡した例が 1949、1 9 5 8、 1 9 6 2 年にフロリダで報 告されている 1), 3) 成人 ・少なくとも 1 / 2∼ 2 個 :種子を咀嚼し、重篤で致死的になり得る中毒が 発現した 1 ) , 3 ) アブリン ;LDLo : 7μ g / k g 8) 皮下 [ヒト致死量] リシン ・ 成 人 男 性; LDLo :4 3 μg / k g 7 ) 注射 - 10 - リシン ・ 1 ∼3 μg / k g が致死的であると証明されている 1 ) 経路不明 [ヒト致死量] リシン ・小児; LDLo : 500 μg / k g 7 ) [動物急性毒性] リシン 経口; LDLo :ラット: 3 0 m g / k g 7) マウス: 3 0 m g / k g 7) ウサギ: 0.5mg/kg 7) LD50 :マウス: 2 0 m g / k g 2 0) 吸入; LD50 :マウス: 3∼ 5 μg / k g 2 0) 静注; LDLo :イヌ :1 6 0 0 n g / k g 7 ) LD50 :マウス: 2200ng/kg 7) 5μ g/kg 20 ) ウサギ: 540ng/kg 7) 腹腔内; L D 5 0:ラット: 1 5 0 0 n g / k g 7 ) マウス: 2 2 μg / k g 2 0) マウス: 2 μg / k g 7 ) 皮下; LD50 :マウス: 22100ng/kg 7 ) 2 4μ g/kg 2 0 ) 筋注; LD50 :イヌ : 600ng/kg 7 ) 経気管; L D 5 0:ラット: 5 μg / k g 7 ) イヌ: 5μ g/kg 7) ネコ: 5μ g/kg 7) ウサギ: 0 . 5μ g/kg 7) アブリン 経口; LDLo :ラット: 300mg/kg 8) ウ サ ギ: 2 1 m g / k g 8) 静注; LD50 :マウス: 2 0μ g/kg 8) 腹腔内; L D 5 0:マウス: 2 0 μg / k g 8) , 2 3) 2 . 8μ g/kg(70ng/25g) 1) 皮下; LD50 :マウス: 0 . 2 m g / k g 1) 9.中毒学的薬理作用 1 )蛋白合成阻害作用 1) 有毒アルブミン類の主な毒性作用は蛋白合成阻害と考えられる 1) ・内皮損傷 1) ・重篤な場合では、広汎性および深在性の毛細血管性出血の発現 1 ) ・遅発性細胞毒性(主に動物実験) 肝臓、腎臓、膵臓に特に細胞毒性が現れ 4 )、副腎、中枢神経において も細胞毒性を反映した遅発性症状が現れる 1 ) - 11 - 遅発性細胞毒性のヒト経口摂取での出現には、論議がある 32) 遅発性細胞毒性は動物実験での非経口投与でもっとも明白に報告されて いる。しかし、ヒト経口摂取では典型的ではない 2 8)。 1990 年の文献調査では、ヒト経口摂取で発症した症例の報告はなかった 4) ・1時間以内に生じる赤血球の初期凝集 /沈 殿 物 形 成(試験管内で顕著) 1 ) 作用機序 リシン ・リシンはジスルフィド結合で結合しているほぼ同じ大きさの 2 つ の サブユニット( A 鎖および B 鎖)からできている。結合が切れると、 無傷細胞への毒性は本質的に消失する。B 鎖が細胞壁中のガラクトー スを含んだ受容体に結合すると、細胞内へ能動輸送される 1 ) ・さらに能動輸送された A鎖、或いはエフェクターサブユニットは、お そらく6 0Sリボソームサブユニットの 28SrRNAに作用し、リボソー ムRNA を分解し、蛋白合成を阻害する 1 ) , 2 9 )。リシンは一種のグ ルコシダーゼで A 4 3 2 4を加水分解する 29 )。培養液中では 1 0分子 以下のリシンによって1個のHELA 細胞が死滅すること、またHELA 細胞1個当たり約500,000 のリボソームが存在することから、この 過程は酵素的に増幅されているにちがいない 1 ) アブリン ・リシンと同様に働く 2 9) 図2 リシンの細胞内の機構 2 9) [図 ] 2 )アミノ酸取り込み阻害作用 アブリン ラットを用いた試験では、肝臓でのアミノ酸取り込みを阻害する。試験管内 での実験では、ミトコンドリアでの呼吸は阻害しない 1) - 12 - 10.体内動態 [吸収] 経口 ・有毒アルブミン類の消化管からの吸収は乏しい(アルブミンの大きさであるた め) 1) ・吸収された有毒アルブミン類はおそらくアルブミンと同様に分布する 1) アルブミンの分布域を元にしてリシンの量を計算した場合には、血清濃度か らの計算では吸収された全有毒アルブミン類量を低く見積もってしまう可能 性があるとの考えもある 1 ) ・リシン:全てではないが、多くの細胞の表面にはリシンに特異的な受容体が存 在し、リシンは能動輸送によって取り込まれる 1) ・血漿中濃度 経口で、トウゴマ 3 0 個を摂取した 21 歳男性の場合、リシンの血漿濃度は 1, 2, 3, 4 病日ではそれぞれ 1.5, 1.5, 1, 0.9 μg / L で、ゆっくりと減 少した。(ラジオイムノアッセイ) 1),5) [分布] リシン マウスへ放射性同位元素標識したリシンを注射したところ、肝臓、脾臓、副腎 皮質に主に分布した。骨髄にも明らかな量が認められた 1) アブリン ラットでは、肝臓( 1 2 % ) 、脾臓に主に分布した 1 ) [代謝] 有毒アルブミン類の代謝は明らかではない 1 ) [排泄] 有毒アルブミン類の排泄に関してはほとんど明らかになっていない 1 ) リシン 経口 半減期: 約 8 日 3 0 個のトウゴマ種子 (いくつかは噛み砕いた)を摂取した 2 1 歳男性では、血漿中半減期は約 8 日と計算された 5 ) 尿中濃度 ・ 2 4 時間排泄量: 経口で、トウゴマ 3 0 個を摂取した 2 1 歳男性の場合、リシンは 1 , 2 病日 は検出されず、 3, 4 病日ではそれぞれ尿中濃度 0 . 3 , 0 . 3μ g/ Lであっ た。尿への 2 4 時間排泄量は 3, 4 病日でそれぞれ 0 . 7 2 , 0 . 6μ g/24H で あった (ラジオイムノアッセイ) 1 ) , 5 ) 静脈注射 ヒトガン患者、マウスに静脈注射した場合、一次速度式によって血漿から消 失する 1 ) 11.中毒症状 [概要] ・重症になるかは、有毒アルブミン類を含有する種子の咀嚼程度によって異な る。摂取後 6 時間たらずで消化器系症状が現れることが多い。しかし、症 状発現は数日間遅れることがある 1) 直接的曝露によって、口腔咽頭部、食道または胃の刺激症状を伴う重篤な - 13 - 消化器系損傷が引き起こされる。臨床上ではアルカリによる腐食(化学熱 傷)と類似しているが、通常曝露後 2 時間以上経過して発現する 1 ) 嘔吐および下痢が必発で認められ、重症では脱水が起こる 1) ・遅発性症状:遅発性細胞毒性は主に動物実験で報告されているが、ヒト経口 摂取での出現には論議がある 2 8 , 3 2 ) 遅発性細胞毒性は肝臓、中枢神経、腎臓、副腎および膵臓にお ける細胞毒性によるものであり 1 ) , 4 ) , 9 ) 典型的には曝 露 2 ∼ 5 日後に発現する 1 )。曝露後 1∼ 5 日間は遅発的症状 が発現しない可能性がある 1) ・毒性の不定性 :トウゴマまたはトウアズキの場合、大量に摂取しても、臨床 症状はほとんどもしくは全く発現しないことがある。これは 有毒アルブミン類含有量の変動または消化管における吸収の 悪さによるためであろう。種子を咀嚼せず丸ごと嚥下した場 合は症状が発現する可能性は一層低くなる 1 ) [詳細症状] *経口 ( 1)循環器系症状 頻脈、弱脈が必発である。直接的な心臓への作用は一般的にみられない。体 液電解質喪失によるショックが生じる 1 ) ショック:有毒アルブミン類による直接的な心臓への毒性はみられない。 心臓血管性ショックは通常死因となるが、心臓血管系への直接 的な作用というよりはむしろ、体液の不均衡によるものである 1 ) 血圧低下:体液喪失によって起こる 1 ) β遮断 :リシンで軽微なβ遮断作用が認められている 1 ) , 3 0)。(経路不 明、非経口の動物実験、試験管内、培養細胞実験の可能性あり 2 8)) 頻脈:体液喪失によって起こる 1) 脈はヒト・動物共に、しばしば弱く、速い 1 ) ( 2)呼吸器系症状 トウゴマには種々の喘息様反応を誘発するアレルギー性蛋白質が含まれてい る 1) A R D S(成人呼吸促進症候群): A R D S が発症した1例では、気管吸引した液が漿液と同様にタンパク 質を含み、高い血管透過性が示唆された( 経 路 不 明 ) 1 ) ( 3)神経系症状 軽度から中程度の中枢神経抑制作用がみられる 1) 痙攣が発現することもあるが、一般的ではない 1) 中枢神経抑制:傾眠、意識消失が報告されている 1 ) 痙攣:一般的に急性の中毒の症例報告というよりもむしろ、動物か症状の 概要部分での記載で、いくつかの整書に記載されている 1) 手足の間欠性痙攣、その休止の間は筋緊張過度がトウゴマ 10 ∼ 15 - 14 - 個の摂取の 4 2 歳男性で現れた 28 ) 筋束攣縮がみられる(経路不明) 1 ) 視神経障害 :リシン中毒で視神経障害が報告されている 1 ) , 3 0 )。(経 路不明、非経口の動物実験、試験管内、培養細胞実験の可能 性あり 2 8)) 舌下、迷走神経において、リシンと結合、輸送する神経組織 での特異的な受容体が示唆されている 1) ( 4)消化器系症状 出血および組織の脱落を伴う消化管の重篤な刺激症状がみられる 1) 嘔吐および下痢が必発で認められ、しばしば下痢便は潜血陽性となる 1 ) 口腔咽頭部の刺激 :有毒アルブミン類の直接的曝露によって生じる。特に アブリンで起こる 1) 嘔吐・腹痛 ・胃炎 : ・嘔吐と腹痛がしばしば報告されている 1 ) ・重症になるかは、有毒アルブミン類を含有する種子の咀嚼程度によ って異なる 1) ・重症では出血性胃炎、脱水へと進行する 9 ) ・トウゴマ摂取後 1 時間で嘔吐が出現した( 1 2 個摂取、26 歳) 1 ) ・トウゴマ摂取後 3 時間で嘔吐が出現した( 3 0 個摂取、21 歳) 1 ) ・全 5 7 症例で嘔吐と下痢がみられたと報告がある 1) ・ J a t r o p a を 1∼ 7 個摂取した 2 5 例( 2∼ 1 8 歳 :平均 8 歳)の場合、 64 %に嘔吐が、52% に腹痛がみられた。 98% が 2 4∼ 4 8 時間で退院し た 1 ) , 3 1) ・南アフリカではトウゴマの種子を摂取した小児の間で中毒性胃腸炎の集 団発生が通常認められる。種子の珍しいマーブル様の模様が小児にはと ても魅力的であり、さやには多数の種子が入っている 1 ) 血性下痢: ・血性下痢やしぶりを伴った頻繁な排便が有毒アルブミン類中毒の徴候で ある 1) ・下痢便に潜血が一般的にみられ、 3 時間以内にひどい血性下痢となる 1) ・下痢によって脱水が起こる 1 ) ( 5)肝症状 重症では肝障害が起こる 1 ) 低血糖または高血糖がみられる 1 ) 肝酵素( ALT、総ビリルビン、AST 、A L P、 γ-GTP )の上昇が起こる 1 ) 炭水化物代謝: ・組織化学的には、障害は滑面小胞体、肝グリコーゲン枯渇を主としてい る 1 ) 肝酵素上昇 : ・トウアズキで肝酵素値上昇が報告されている 1 ) ・ 0.5∼6 個の種子を摂取した小児で、一過性に肝障害がみられた 1 ) ・トウゴマを 2 0 ヶ月の女児が摂取し (摂取量不明)、 7 2 時間後に遅れて 軽度の可逆的な肝機能検査値異常 [ALT 51 I U/ L( 正常 : 4∼ 30IU/L ), A S T 150 I U /L (正常 : 1 0∼ 50 IU/L ), ALP 9 1 2 I U /L (正常 : 7 0∼ 2 5 8 - 15 - I U /L ) ,総ビリルビン 14mg /d L ,γ-GTP 1 5 0 I U /L ( 正常: 4 ∼26 IU / L) ]が起きた。 1 ヶ月後検査値は正常であった。この 症例では、摂取 2 時間後嘔吐した 1), 32 ) ( 6)泌尿器系症状 血尿がしばしばみられる 1 )。腎障害が報告されている 血尿: ・トウゴマ 1 2 個摂取例 (8 歳小児)で顕微鏡上の血尿と円柱尿が摂取 5 日後短時間認められた 1 ) ・尿検査で血尿を認めたが、赤血球円柱は認められなかった症例が報告 されている 1 ) 腎障害 ・トウゴマ摂取で一過性の血清クレアチニン上昇の報告がある 1 ) , 3 3 ) ・トウゴマ摂取で軽度のタンパク尿、アセトン尿、高窒血症が報告されて いる 1) ( 7)その他 体液電解質・ 酸・塩基平衡 ・代謝 体液および電解質異常が嘔吐および下痢による体液喪失によって生じる。 脱水が有症例の 3分の 1 以上で起こる 1) 脱水 :体液の再分配が重症有毒アルブミン類中毒での主要な問題と なる。下痢は潜血陽性あるいは血性の下痢となる。脱水が起こ る。嘔吐と下痢のある患者 5 7人の 3 分の 1以 上( 2 2人)が脱水と なり、水分補給が必要となったとの報告がある 1 ) アシドーシス:一般的にみられない 1) 乳酸、ピルビン酸は上昇する。乳酸のピルビン酸に対す る割合は保存されている 1 ) グルコース代謝 : 低血糖または高血糖がみられる 1 ) 実験上のリシン中毒ではグルコース代謝に大きな変化が起こる。グリ コーゲン貯蔵が減少し、消化管からの吸収が減少し、グルコース濃度 が低下する 1 ) 高リン酸血症:尿素窒素、無機リン酸が上昇する 1) 血液 有毒アルブミン類は赤血球を凝集させる。赤血球凝集は試験管内では顕著 であるが、臨床症状としては限定的である 1 ) 赤血球凝集: ・赤血球凝集は動物や実験でみられる。しかし、ヒト急性中毒例ではほ とんどみられない 1 ) ・赤血球の脈管内凝集 (沈殿物形成)は実験的に6 0 分以内のリシン曝 露で形成された 1) ・赤血球を凝集させるものは、リシンではなく、他のレクチン( 時に ricine と 呼 ば れ る)であると現在では知られている 1 ) 赤血球溶血: ・トウゴマ摂取 8 8例中で、溶血が 3 例で認められた。 2例は検査結果で 軽度の溶血が認められ、 1例は死亡時に血液が崩壊していたと記述さ れていた 4) - 16 - 眼 縮瞳および散瞳が報告されている。網膜出血が報告されている。1) 縮瞳 :トウゴマを摂取した 4人 中3 人の患者でみられた 1 ) , 2 7) 散瞳 :リシンで報告されている 1 ) , 3 0)。(経路不明、非経口の動物 実験の可能性あり 2 8)) 視神経障害:リシンで報告されている 1 ) , 3 0)。(経路不明、非経口 の動物実験、試験管内、培養細胞実験の可能性あり 2 8)) 網膜出血 :アブリンで報告されている(経路不明) 1 ) , 3) 皮膚 一般的に有毒アルブミン類によって発疹が発現することはない。しかし、 トウゴマには皮膚症状を誘発する数種のアレルゲンが含まれている 1 ) 皮膚炎: ・皮疹は有毒アルブミン類の場合、あまりみられない 1 ) ・ハリエンジュで紅斑性皮疹がみられた( 経 路 不 明 ) 1 ) アレルギー反応 : ・トウゴマでは主なアレルゲン: 2 5 s t o r a g e a l b u m i n ( R i c c I といわれる) によって感作( I g E反応 )が起こる。即時型と遅延型アレ ルギー反応が産業環境で報告されている 1) その他 体温調節:発熱は主要な特徴である。リシンと多分他の有毒アルブミン 類は動物で発熱作用を有する 1 ) 体温は当初上昇、後に下降する 2 ) 精神医学: 特異的な精神医学的問題は一般的に報告されていない 1 ) 錯乱 :方向感覚の欠如が矛盾しない知見として報告されている 1) 筋骨格 : 疲労 :倦怠感、一般的な虚弱が有毒アルブミン類中毒で関連づけられ ている 1 ) 免疫: アレルギー反応 ; トウゴマ: ・様々の部位がアレルゲンとして知られている 1) ・リシンは抗原である。トウゴマの粉末は取り扱い者にとってアレ ルギーの問題がある 1) ・花粉ではくしゃみ、流涙、かゆみ、鼻漏、咳、喘鳴が記述されて いる 1 ) ・トウゴマまたはトウゴマしぼりかすでは激しい呼吸刺激、目刺激、 かゆみ、鼻のひりひりした痛み、蕁麻疹、水泡がみられた 1) ・アナフィラキシーは、トウゴマのネックレスがつぶれ、粉末が目 にすれて発症した症例で報告されている 1 ) 有毒アルブミン類: 急性あるいは慢性の免疫刺激或いは抑制作用は知られていない 1 ) - 17 - *吸入 ( 1)呼吸器系症状 トウゴマには種々の喘息様反応を誘発するアレルギー性蛋白質が含まれてい る 1) 気管支痙攣 1 ) ぜん息:ヒマシ油抽出後に残る絞りかすに継続して曝露された場合や、 トウゴマを入れていた黄麻布袋が再利用された場合、肺感作と ぜん息様反応がみられた 1 ) 吸入した場合リシンでの中毒が報告されている 1 ) *経皮 皮膚炎:ナンヨウアブラギリ、インテゲリマ、 J a t r o p h a m u l t i f i d aの樹液接 触で皮膚炎が引き起こされる 1 5) , 1 7 ), 1 8) アレルギー反応 : ・トウゴマでは主なアレルゲン: 2 5 s t o r a g e a l b u m i n ( R i c c Iといわれる ) によって感作 (IgE 反応 )が起こる。即時型と遅延型アレルギー反応が産業環 境で報告されている 1 ) ・リシノール酸亜鉛(トウゴマにはリシノール酸が含まれる)は防臭剤として 使用されているが、感作性、発疹が現れた 1 ) *眼に入った場合 アブリン:濃度に依存した刺激によって軽度の結膜炎から眼組織損失が生じる 1 ) リシン:溶液点眼で重症の結膜炎からさらに角膜潰瘍となる 2 ) アレルギー反応 ・トウゴマの種子またはしぼりかすで眼刺激症状が現れた 1) ・アナフィラキシー反応:トウゴマのネックレスがつぶれ、粉末が 目にすれて発症した報告がある 1) インテゲリマ:樹液に接触すると眼刺激症状が現れる 1 8 ) [後遺症] 記載なし [予後] ・トウゴマの場合、たいていの患者は、輸液、電解質補給の治療によく反応し、 不可逆的な後遺症なく回復する 9) ・入院期間: J a t r o p a 摂取では、摂取後 2 4∼ 4 8 時間で 9 8%が退院した。 J a t r o p a を 1∼ 7 個 摂 取 し た 2 5 例( 2∼ 1 8 歳 :平均 8 歳)のフィリピンで 実施された調査である。6 4 %に嘔吐が、 52% に腹痛がみられた。 1 ) , 3 1) [相互作用] 記載なし [胎児への影響] 催奇形性 :母親が妊娠後 8週間避妊薬としてトウゴマ種子を摂取し、乳 児に中程度発達遅滞、頭蓋異形、四肢奇形、椎骨異常、痙攣が起 こったとの報告がある 1) - 18 - 妊娠への影響 : ・妊娠での毒性は記載されていない 1) ・流産:アブリンは薬草商によって堕胎薬として使用されていた 1) 母乳 ・有毒アルブミン類はおそらく母乳に移行しない 1 ) ・トウゴマは多くの国で催乳剤としてとして広く使用されていた 1) 12.治療法 [概要] ・いかなる有毒アルブミン類の種子も、1∼ 2 個の咀嚼でも致死的になる可能性 がある。有毒アルブミン類大量曝露の場合は全身症状出現までに潜伏期間が あるので、 8 時間の観察が必要である 1 )。また、トウゴマを摂取した場合 は、咀嚼の有無、植物の部位の有無にかかわらず、少なくとも 24 時間は必 ず経過観察するとの説もある 1 0 ) ・症状のある場合は、医療機関に入院するべきである 1 ) ・無症状で、早期に徹底的に基本的処置(胃洗浄、吸着剤、下剤など)が行わ れた場合は、外来での観察が可能である 1 )。外来患者では、数日の間毎日 症状を観察することが臓器障害(肝臓、中枢神経、腎臓、副腎、膵臓)を確 認するために重要である 1 ) , 4 ) , 9) ・積極的な基本的処置(胃洗浄、吸着剤、下剤など)を行い、体液電解質バラ ンスに細心の注意を払い支持療法を行うことが重要である 1 ) ・解毒剤・拮抗剤はない 1 ) *経口の場合 経過観察 ・いかなる有毒アルブミン類の種子も、 1∼ 2 個の咀嚼でも致死的になる可能 性がある。有毒アルブミン類大量曝露の場合は全身症状出現までに潜伏期間 があるので、 8 時間の観察が必要である 1) 。また、トウゴマを摂取した場 合は、咀嚼の有無、植物の部位の有無にかかわらず、少なくとも 2 4 時間は 必ず経過観察するとの説もある 1 0) ・症状のある場合は、医療機関に入院するべきである 1 ) ・無症状で、早期に徹底的に基本的処置(胃洗浄、吸着剤、下剤など)が行わ れた場合は、外来での観察が可能である 1) 。外来患者では、数日の間毎 日症状を観察することが臓器障害 (肝臓、中枢神経、腎臓、副腎、膵臓)を 確認するために重要である 1 ) , 4 ) , 9) ( 1)基 本 的 処 置 A.催吐: すでに嘔吐が始まっている場合は行わない 1) B.胃洗浄 : トウゴマ 1 個以上を咀嚼した無症状の患者では、胃洗浄が推奨される 9) C.活性炭 ・下剤の投与 : トウゴマ 1 個以上を咀嚼した無症状の患者では、活性炭の投与が推奨 される 9) 下痢があれば、下剤投与が不要になる 9) - 19 - ( 2)生命維持療法及び対症療法 A.呼吸・ 循 環 管 理 B. 痙 攣 対 策 C.血圧低下対策 D.発熱対策 E. その他の治療法 体液 ・電解質補正: 体液、電解質バランスは、一般的な毛細血管損傷や、嘔吐、下痢のた めに、急激、重篤に悪化する。このため、体液喪失や、体液・電解質 バランスを補正しなければならない 1 ) 急性腎不全を防止するため、適切な体液量、尿量を維持する 1) 低血糖対策: 血糖の低下あるいは上昇をモニターする 1) F. 検 査 循環血液量減少の合併症、低血糖、溶血をモニターする 9 ) 1 )血液/血清化学 ・体液および電解質バランス、肝酵素には特に注意を払わなければなら ない 1 ) ・グルコース代謝 低血糖または高血糖がみられる 1) 実験的なリシン中毒ではグルコース代謝において大きな変化が生じ ている。すなわち、グリコーゲン貯蔵の減少、グルコースの消化管 吸収の低下およびグルコース濃度の低下である。血糖値は低下する と考えられる 1) ・他の検査値 尿素窒素、無機リン酸値の上昇が起こりうる。血清中A S T、 総 ビ リルビン、 ALP 、γ - G T P、乳酸デヒドロゲナーゼの上昇が考えら れる 1 ) 2 )血液学 ・血液学的パラメーターに特に注意が必要である 1) 3 )その他 ・RAST 法 (組織過敏反応の原因となる IgE 結合アレルゲンを検出す るためのラジオイムノアッセイ検査)は、トウゴマに感受性があると 分かっている患者 4 1 名において皮膚試験との間に 9 5%の相関性が あり、トウゴマに接触していない、または間接的に、または密接に接 触した患者 4 9 名においては 97 %の相関性があることが明らかにな った。アレルゲンが疑われる物質に対しては、この試験管内試験は危 険性を伴わず、皮膚試験の代替診断法となる 1 ) ( 3)特異的治療法 [ 解 毒 剤・拮抗剤] 臨床的に有用な解毒剤 ・拮抗剤はない 1) ・多くの抗 体が研究された。しかし有毒アルブミン類中毒で有用ではない 1) 様々な抗体が現れたが、臨床的には用いられていない 1) ・ヤギ抗リシンポリクローナル抗体とマウス抗リシン A 鎖モノクローナル抗 - 20 - 体との両方がトウゴマ抽出物のリシンを無力化することが示された(臨床応 用は行われていない) 1) [排泄促進] 強制利尿:勧められていない。リシンは尿中にほとんど排泄されないため である 9 ) 血液浄化法 血液透析 :分子量から考えて、透析は有効ではない 1 ) リシンは尿中にほとんど排泄されないため、勧められていな い 9) 血液潅流 :血液潅流によって有毒アルブミン類は吸着されるが、施行し た例は報告されていない 1) *吸入の場合 ( 1)基本的治療 A.新鮮な空気下に速やかに移送 B.呼吸不全を来していないかチェック C.汚染された衣服は脱がせ、曝露された皮膚、眼は大量の流水で洗う。 ( 2)生命維持療法及び対症療法 A.咳や呼吸困難のある患者には、必要に応じて気道確保、酸素投与、 人工呼吸等を行う。 B.その他 C.必要に応じて、上記経口の場合に準じて治療する。 *経皮の場合 ( 1)基本的処置 直ちに付着部分を石鹸と水で十分洗う。 ( 2)生命維持療法及び対症療法 洗浄後も刺激感、疼痛が残るなら医師の診察必要 必要に応じて、上記経口の場合に準じて治療する。 *眼に入った場合 ( 1)基本的処置 直ちに大量の微温湯で少なくとも 15 分間以上洗浄する。 ( 2)生命維持療法及び対症療法 洗浄後も刺激感、疼痛、腫脹、流涙、羞明が続く場合は、眼科的診察を 受ける。 必要に応じて、上記経口の場合に準じて治療する。 13.中毒症例 トウゴマ ・成人: 3 個( 4 4歳男性) , 8個 (41 歳女性 )生存例 小児: 2 個( 1 2歳男児) , および 1 0個以上 (8 歳 女 児)生存例 4人のうち 3 人に縮瞳が見られ、 4 人全員に悪心および嘔吐、また咀嚼した量 の多い2人には腹部痙攣、下痢および脱水が認められた - 21 - 2個を咀嚼していた12 歳の男児は、3 日間下痢を伴わない悪心および嘔吐を 訴えていた。1 0病日退院した 1 0個 咀 嚼 し た8 歳の女児は悪心、嘔吐、激しい腹痛、多量の下痢および脱 水、方向感覚の欠如を呈した。嘔吐は3病日、下痢は4病日に消失した。 5 日目 には短時間ではあるが顕微鏡下で血尿および円柱尿が観察された。 1 3病日退 院した これらの患者には尿細管のヘモグロビン沈殿を予防するため、尿のアルカリ 化、および大量補液を実施した 患者は全員後遺症もなく回復した 1 ) , 2 7) ・3 0 個 (2 1 歳 男 性 ) 生 存 例 自殺企図で種子を摂取した (いくつかは咀嚼した)。摂取 3 時間後、嘔吐や 腹部痙攣を伴う激しい下痢が起こり、続いて脱水、四肢のチアノーゼを伴う循 環虚脱となった。対症療法を行い、 5 病日に後遺症なく退院した リシンの血漿濃度は 1 , 2 , 3 , 4 病日ではそれぞれ 1 . 5 , 1 . 5 , 1 , 0 . 9μ g / L で、ゆっくりと減少した。尿中濃度は1, 2病日は検出されず、 3, 4病日では それぞれ 0 . 3 , 0 . 3μg / Lであった。尿への 2 4時間排泄量は 3, 4 病日でそれぞ れ 0 . 7 2 , 0 . 6μ g/24H で あ っ た 1),5) ・数個( 2 6 歳男性)死亡例 摂取数時間後、嘔吐、下痢が起こった。 3 日後来院した。嘔吐、下痢は持続 しており、脈は弱かった。治療によって、下痢は消失し、嘔吐の回数は少なく なったが、 6 病日死亡した ( 1 9 0 0 年の症例 ) 剖検では、髄膜に点状出血がみられた。内臓は全てうっ血していた。胃、小 腸に水様の血液が存在し、粘膜には散在性の小さなびらんがみられた。十二指 腸や盲腸は影響がより少なく、結腸が最も影響を受けていなかった 28 ) ・1 5∼ 2 0 個 (2 4 歳 男 性 ) 死 亡 例 2時間以内に激しい腹痛、圧痛、嘔吐、下痢、四肢の先端チアノーゼ、血圧 低下、腎臓付近の痛みが出現した。尿の顕微鏡検査では赤血球、上皮細胞、顆 粒円柱がみられた。 3病日、いったん回復したようにみえた。 1 0病 日 尿 量 が 5000cc に増加し、尿の比重が 1.008に減少した。 1 2病日、先端チアノーゼが 再び起こり、幻覚が出現し、血圧が低下し、死亡した ( 1 9 3 4年 の 症 例) 2 8) 14.分析法 有毒アルブミン類の測定 ・イムノアッセイ(免疫学的試験) リシンの検出には免疫学的方法が可能である。ラジオイムノアッセイや酵 素免疫測定法(ELISA) などである。これらの方法は広く適用できるわけ ではなく、また臨床的に重要というわけでもない 1 ) ・バイオアッセイ(生物学的試験) チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞を用いたバイオアッセイが報告されて おり、この方法は体液中のリシンを検出する際に使用可能であった。それ 以外にもマウスを用いた毒性試験および Vero 細胞を用いた細胞毒性試験 もある 1) 15.その他 - 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