家庭内における男女の役割から見る タイ女性のライフ

家庭内における男女の役割から見る
タイ女性のライフスタイル
~なぜ女性の社会的地位が向上したのか~
人間社会学部 現代社会学科
問い・仮説
問い:
1. 女性がどのような経緯を経て社会的に活躍出来る場
が出来たのか。
2. なぜ、タイ女性は働き続けようとするのか。
 仮説:
仮説
1. タイの教育制度が充実し、学歴社会となったことで男
女という垣根がなくなり能力で判断するようになった。
2. 自分自身の能力を活かし続けたいと
考えた女性が増加した。
考えた女性が増加した

北タイにおける「仕事」の定義/女性の労働状況

「仕事」=「ンガーン(ngan)」
≠:生産活動のみ(経済活動)。
≒:その人の名誉や関係を形成(社会活動)。
その人の名誉や関係を形成(社会活動)

語句の意味
①「家の外の仕事(ngan norg hyan)」
hyan)」・・主に稲作。
主に稲作。
②「家の仕事(ngan hyan)」・・家事より広い概念。
・・料理、掃除、介護、家族関係の維持etc

労働力率・・65.1%
(2006年度時点)
タイの就労パターンの特徴・・
タイの就労パタ
ンの特徴
①結婚・出産を機に仕事を辞めることはなく、生涯を通じて働き続ける。
②労働力曲線は逆U字型。
研究の背景

タイの伝統的な家族「双系制」
・・母系・父系という概念があまり強くなく、どちらかの系統に偏らないこと。
・農業に女性も参加。男性と同様の労働を強いられていた。

家庭内における女性の役割
・性別役割分業によるステレオタイプの概念強い。
その分、家庭内における女性の地位高い。

教育
・2000年度国立大学の女子学生の比率49.7%、
高等教育53.0%、私立大学57.8%

国の法律
先行研究 「家を化粧する」
平井京之介
『村から工場へ 東南アジア女性の近代化経験』 2011

タイにおいて仕事というものは、元々主に2つの意味を持っていた。これらの仕事について、
性分業は特に関係なく、男女が相互しあっていたと考えられる。しかし、平井はタイ女性の仕
事の出来栄えとして女性のステイタスを測る基準があると指摘している。具体的には、「家を
化粧する」ということが女性の仕事の出来栄えを示すものとした。
つまりは・・
“「家を化粧する とは もともと家を掃除し 装飾を施し 家を
“「家を化粧する」とは、もともと家を掃除し、装飾を施し、家を
訪問客に綺麗にみせることを意味した。しかし、いまではそれ
は 家に飾り棚や木製長椅子 ステレオ テレビ 冷蔵庫 扇
は、家に飾り棚や木製長椅子、ステレオ、テレビ、冷蔵庫、扇
風機、ビデオなどを揃えることを意味する。”
インタビュー調査1
現地においてインタビュー調査・フィールドワーク実施。
◎コンケーン大学教授(プアパンさん)の奥様
 しつけ・ワットにおける男女の役割
農村部においては男女役割あり。中級階級はほぼなし。
・農村部においては男女役割あり。中級階級はほぼなし。
しかし、宗教においては男尊女卑は未だに強い。
 教育に関する考え
・タイ社会自体高い教育を求める
⇒高い教育や価値観を求め、子供の教育に関心強める親増加。
高い教育や価値観を求め 子供の教育に関心強める親増加
・女性も男性と同様の仕事につけるようになった。
インタビュー調査/フィールドワーク2
女性が働き続ける理由 ~プアパンさんの場合~
1. 収入を得たい。
2. 働くのが当たり前の社会。
働
り前 社会。
3. 家庭内での主導権を維持し続ける為。

◎コンケーン大学女性専任講師(ケイさん)

働くのが当たり前
働くのが当たり前。
◎フィールドワーク
◎
ド
ク 生涯学習センターでの職員の会話。
生涯学習セ タ
職員 会話

会社の地位と学歴を尊重する社会。
調査結果の分析・考察

宗教上における男尊女卑

しつけ・子育て:バンコク既婚男女における子供の世話
女性:2.0時間 男性:1.4時間 ⇒男女とも協力的。

教育制度の整備 ⇒ 男性よりも女性の進学率高い。
男性よりも女性の進学率高

女性が働き続ける要因(家庭内における地位を維持し続けるため。)
(家庭内における地位を維持し続けるため )
・・もともとの仕事の定義:家の仕事(ngan hyan) だけでは地位が低くなる?
女性の願い・思い:「対等な立場でいたい」・「家庭内を良くしたい」
先行研究:外面(貯蓄、家の世話)・インタビュー調査:内面(外の仕事を家の仕事に生かす)
ビ
まとめ
「女性がどのような経緯を経て社会的に活躍できる場が出来たのか」:

1.
2.
タイの伝統的な生活 ⇒ 農業 ⇒ 女性の仕事の概念を広げた。
教育制度の改定。
男性も女性も教育を受けられる環境と学歴を重視する社会認識が女性の
が

1.
社会的な活躍に拍車をかけた。
※同様の仕事には就けるようになったものの管理職の割合はまだ低い。
※同様の仕事には就けるようになったものの管理職の割合はまだ低い
「なぜ、タイ女性は働き続けるのか」:
インタビュー調査や先行研究を通じて見えてきたタイ女性の思いは、
インタビュ
調査や先行研究を通じて見えてきたタイ女性の思いは、
“「いい奥さんであり続けたい」”という形を労働に置き換えている。
2.
タイにおける女性が働き続けることが当たり前という社会的慣習。
性 働 続
り前
う社会 慣習。
引用・参考文献
・Ajjima Wacharaporn 「現代のタイにおける女性の就労参加と社会的地位」、神戸学院大学人文学会、『人間文化』、第22号、
2007
・Ajjima Wacharaporn 「現代のタイに社会における性別役割分業意識を問う‐先行研究レビュー‐」、神戸学院大学人文学会、
『人間文化』 第24号 2008
『人間文化』、第24号、2008
・Ajjima Wacharaporn 「現代のタイ社会における既婚女性の就労継続の背景 -バンコクと隣県調査を中心として-」、神戸学
院大学人文学会、『人間文化』、第25号、2009
・馬越徹、『国際理解教育と教育実践1 アジア諸国の社会・教育・生活と文化』、株式会社エムティ出版、1994
・落合恵美子(他)、「変容するアジア諸社会における育児援助ネットワークとジェンダー ‐中国・タイ・シンガポール・台湾・韓国・
日本-」、教育学研究、『第71巻(第4号)』、2004
・外務省 「各国・地域情勢」 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/thailand/data.html (2012年11月24日 閲覧)
・厚生労働省
厚生労働省 「平成22年版 働く女性の実情」 http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/josei
http://www mhlw go jp/bunya/koyoukintou/josei-jitsujo/dl/10ajitsujo/dl/10a
all.pdf (2012年11月27日 閲覧)
・タイ総理府次官室・国家女性問題委員会 著「タイの女性 アジア女性シリーズ No.8」 ㈶アジア女性交流・研究フォーラム
2001
・橋本康子 「共働き社会における女性の「専業主婦化」をめぐって -タイ都市中間層を事例に‐」
タイ都市中間層を事例に 」
集』 第111・112号 2003
四国学院文化学会 『論
・橋本泰子・斧出節子、「第3部 タイ」、落合恵美子・山根真理・宮坂靖子、『双書 ジェンダー分析15 アジアの家族とジェン
ダー』、勁草書房、2007
・速水洋子、「第42章
速水洋子 「第42章 タイ社会と女性」、綾部
タイ社会と女性 綾部 恒雄(他)、『タイを知るための60章』、明石書店、2003
恒雄(他) 『タイを知るための60章』 明石書店 2003
・平井京之介、『村から工場へ 東南アジア女性の近代化経験』、NTT出版株式会社、2011
・吉崎邦子、「第2章 タイにおける女性と教育」、(財)アジア女性交流・研究フォーラム、「東南アジア諸国における『中間階層』の
研究」、1999
・和田幸子、「第1章 現代タイにおける『中間階層の特質』」、(財)アジア女性交流・研究フォーラム専門委員会、「現代タイにおけ
る『中間階層』の研究」、1996