生理~生理を知って技術の幅を広げよう

Ⅸ.
∼生理を知つて技術の幅を広げよう∼
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唾液
。通常、1日 に100∼1901分 泌されます。
・第一 胃内の酸を中和 し、胃内の酸性化を
防 ぎます。
・咀 しゃ く 料にぬ り
め を与 え、食道 の損
飼
傷を防 ざます。
■
・唾液中には、尿素が存在 し、窒素化合物
を再利用 しています。
第一 胃は、大 きな発酵 措 といわれてい ます。 容 積
は1001程 度 と、 かな り大 きな ものです。 乳 牛 に 摂
取 された飼料 は 、第 一 胃で微生物 に よって分解 され 、
VFA‐ (揮発生脂肪酸γ酢酸、酪酸、プロピオン酸
卒らこ
││ま
す=こあvFAは、乳牛の主要
│と
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なエ ネル ギ ー源 とな ります。
第一 胃 と二 胃の 内容物 は、常 に行 った り来 た り し
てお り、消化過程 で も、第一 胃 と二 胃のはた らきは
殆 ど同 じです。
通常 、1回 の反す う時間は40∼50分で、
それが 1日 8∼ 9回 、合計 8時 間程度 が反
す うに当て られて い ます。飼料 中の NDF
含量 と関 係 が深 く、 NDF合
量 が高 くな る
程反 す う時 間 やかふ返 しの回数 は多 くな り
ます。 これ らを確認 す る こ とで、粗飼料 と
濃厚飼料 の バ ランスが どうな って い るかの
判 断材料 とな ります。
ル ニ メン微生物
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数の細菌やプ ロ トッア (原生動脅 )が 牛息
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第下 胃内で、繊維状 の飼料 は マ ッ トを形成 します。
この マ ッ トには、微生物 が生息 した り、濃厚飼料 が
ひ っかか り、反す うされ ます。粗飼料 が短 がす ぎた
その ため、濃厚飼料 を一 度 に多給 す る と、
ル ニ メンのpHは 急速 に低下 し、
繊維分解菌
り、摂取量 が少 なす ぎ る とマ ッ トが しっか りと形 成
されず、飼料 が どん どん下の方 へ逃 げてい って しま
の活 動 が低 下 し、その 回復 に時 間が かか る
い、飼料 の利用効率 が悪 くな って しま い ます。
ため、発酵 の効率 が悪 くな って しまい ます。
一 般 に、飼料 中 に繊維 が多 い と酢酸 が、デン
プンが多 い とプ ロ ピオ ン酸 が多 くな ります
第 三 胃の はた らき
・水分や V F A な
どの発酵産物 や塩類 を吸収 しま
す。 これに よって第四 胃での 消化 を助 け ます。
粗 い飼料片 を選別 して第二 胃へ もどすな ど、 第
二 胃か らの内容物 の流 入 を調節 して い ます。
1み ′峰 `ノ
肝臓 のはた
らき
C
“ :即 彙 Vノ
・糖 の再 合成
グル コー スは乳牛の エ ネルギ ー 源 として重要
な物 質です。 しか し、飼料 中の グル コー スは、
第一 胃内で微生物 に利用 し尽 され乳 牛 は吸収 で
きな いため、肝臓 で合成 して い ます。
グル コー スは、 プ ロピオ ン酸 や乳酸、ア ミノ
第 四 胃の は た ら き
人間の 胃 と同 じよ うに、塩酸 やペ プシンを分泌
し、 タンパ ク質の消化 を行 い ます。
第 四 胃のp H は 2 位 と、 強 い酸 性 です 。 そのた
め第 一 胃か ら流れて きた細菌 やプ ロ トゾアは死滅
し、 消化 され、腸 か ら吸 収 され ます。
酸等 か らつ くられます。
・アンモ ニ アか らの尿素の合成
第一 胃で微生物 に利用 されなか ったアンモ ニ
アは 胃壁 か ら吸収 され、肝臓 で尿素 に合成 され
唾液 として再利用 された り尿 と して排泄 され ま
す。尿素 の合成 には、多 くの エ ネルギ ー を必要
とします。 また、肝臓の処理能 力 に も限界があ
るため、処理能力 を越 え る ようなアンモ ニ アの
吸収 はアンモ ニ ア中毒の原 因 とな ります。
・遊離脂肪酸 か らのケ トン体 の生成。
・解毒 ∼体 内に入 った毒物 を無毒 な もの に再合成
した り、排泄 した りします 。
・グ リコー グンの合成 、分解 と貯蔵 。
・蛋 白質、脂質、核酸 の合成 。
│ .
・ア ミノ酸 の代謝、変換`
この ように乳牛の肝臓は、様 々な働 きをす る大
切 な部分 です。 この肝臓の機 能 が低下 す る と、子L
牛 に色 々 と障害 が生 じて きます。
乳牛 を急激 にやせ させな い等、肝臓 にで きるだ
け負担 をかけな い乳牛管理 が大切 です。
C
小腸 の は た ら き
′
J ′杉σVノ Vみ ′trノ
大腸 の は た らき
・消化酵素 に よる飼料 の消化 と栄養素の吸収 を行
・大腸 では、 VFA、
い ます。
・十 二 指腸 では、す い液 が分泌 され ます。 す い液
無機物 が吸収 され ます。
・消化酵素の分泌 はな く、主 に微生物 に よる分解
には、 タンパ ク質分解 、脂肪分解、炭 水化物分
と栄 養素の吸収 が行 われ ます。
第一 胃発酵 や小腸 での消化 を うけなか ったセ
解 の酵素 や重炭酸塩 な どが含 まれて い ます。
アンモ ニ アや水、その他の
ル ロー ス、ヘ ミセル ロー スや デンプンは、大腸
内で微生物 に よる分解 を うけ吸収 され ます。
タンパ ク質 の消化
(│)タ ンパ ク質の 分画
。溶解性 タンパ ク (SIP)
第 一 胃です ぐに溶け るタンパ クの こ と。尿素、アンモ ニ ア、
溶解性 タンパ ク
分解
解セ
性
パク
ンノ
タン
粗タンパク
(CP)
硝酸態窒素 な どの非 タンパ ク態窒素 (NPN)と
グ ロプ リ
一
ンな どす く
:に第 胃溶液に とけ出す蛋 白質の こ と。
。分解性 タンパ ク (DIP)
第 一 胃です ぐに溶 け る溶 解性 タンパ ク と、 第 一 胃内で微生
非分 1解性
パク
タンノ
物 に よって分解 を うけ るタンパ クを合わせた もの。
。非分解性 タンパ ク (UIP)
第 一 胃内で微生物 による分解 を うけず、第一 胃を素通 りし
第 四 胃まで行 き、そ こで 胃液 によって消化 され るタンパ ク
の こ と。 一 般 にバ イパ スタンパ ク と呼ばれて い る もの。
結 合 タンパ ク
図 2 タ ンパ ク質の分画
。結合 タンパ ク (BP)
非分解性 タンパ クの中で、第四胃以下で も消化、吸収 され
ず、糞 として排泄 されるタンパ ク。発熱 した乾草やサイ レー
ジでは、 タンパ クが熱に よって変性 し、結合 タンパ クの割
合 が多 くなる6
.
(a タ ンパク質 の消化
く雛
凛とし
アンモニア
菌体 タンパ ク
菌体 タンパ ク
非分解性タンパク
結 合 タン パ ク
図 3 タ ンパ ク質 の消化の流れ
-100-
① 分 解性 タンパ クの消化
前 ペ ー ジの 図 3 の ように摂取 された分解性 タンパ クは、第 一 胃で微生 物 によって分解 されアンモニ ア
とな ります。微生物 は、 このアンモニ ア と炭水化物 を利用 し増殖 して い きます。 そのため、分解性 タン
パ クが少ない と炭 水化物 の消化 が悪 くな り、糞 に繊維 や穀物のツプが るようにな
出
ります。逆 に、分解
一
パ
性 タン クが多す ぎる と、 余 ったアンモニ アは第 胃壁 か ら吸収 され肝臓で尿素 に合 成 され ます。 この
尿素 は 、唾液や第 一 胃、大腸 であ る程 度は再利用 され ますが多 くは尿 として体外 へ排泄 され無駄 になっ
て しまいます。 また、 アンモ ニ アを尿素 へ つ くりか えるの には、多 くの エネル ギ ー を必 要 とす るため栄
養分の ロス も大 き くな り肝臓 へ の負担 も大 き くな ります。肝臓 で処理 で きな い程 アンモ ニ アがで きる と、
アンモ ニ アは血 液 に よって体 中にまわ リアンモ ニ ア中毒 を起 こ し乳牛 に害 を与 えて しま い ます。 タンパ
ク とエ ネルギ ー のバ ランスを とるこ とが大切です。
② 非 分解性 タンパ クの役割 り
第一 胃でつ くられる微生物 か らの菌体 タンパ クの生産量 には限界があ ります。そのため、産乳量が多
くタンパ クの要求量の多 い牛な どは、 タンパ クの要求量を菌体 タンパ クで満たすことがで きず非分解性
タンパ クの要求量が多 くな ります。また、乳量が多 くなる と菌体 タンパ クだけでは、乳牛に絶対 に必要
な必須アミノ酸を十分 に供給する こ とが難 しくなって きます。そのため、不足 しやすい必須ア ミノ酸を
第一 胃で分解されない形 (第一 胃で分解 されるとアンモニアにならて しまいます)│で含んだ飼料の給与
も考 える必要があるで しょう。
③ 硝 酸態窒素の消化
‐
硝酸態窒素は下図の ように第一 胃内で微生物の作 用 をうけ亜硝酸 とな り、さらに作用 をうけアンモニ
ア とな リジL牛に利用 されます。 つ ま り、硝酸態窒素 も微生物の作用をうけスムーズにアンモ ニアになれ
ば、乳牛の栄養源 となるのです。 しか し、その量が多す ぎた り微生物に十分なエネル ギーが供給 されて
いない と、アンモニアヘの移行がスムー ズに進 まず第一 胃に亜硝酸 がたまり第一 胃か らそのまま吸収さ
れ血液中に入 ります。血液中で亜硝酸は赤血球 と結合 し、赤血球 が酸素を運搬できな くして しまい ます。
そのため、体内では酸欠 が起 こり、食欲不振や繁殖 障害な どの悪影響を与えひ どい場 合は死んで しまい
ます。
正 常時の
第一 胃
アンモニア
菌体タンパク
アンモニア
吸収
図 4 硝 酸態窒素の消化
-101-
菌体 タンパ ク
炭水化物の消化
(!)炭 水化物 の分画
。細胞内容物 中の炭水化物
C C
F S
N 佃
OCC
タ ン パ ク、脂 質
非構造性炭 水化 物
( 糖デンプン ペクチン)
糖、デンプン、 ペ クチンは、第一 胃内で微生物 に よって
急速 に分解 され る。
。構造性炭 水化物 (繊維)
ヘ ミセル ロー ス,セ ル ロー スは、第一 胃内で微生物 によ
ヘ ミセ ル ロー ス
ってゆ っ くり分解 される。
リグニ ンは乳 牛 に も微生物 に も分解、利用 されず、その
ル
ロ
ス
まま糞 として排 泄 され る。牧 草 の生育が進む程 、牧草中の
OCW
︱I A D F
N D F II
セ
ー
リグニ ンが多 くな りし好性、採食量は低下 します。
。NDF、 OCWは 総繊維の こ とで、 セル ロー ス、 ヘ ミセ
ル ロ早 ス、 リグニ ンを合計 した もので飼料 の ガサ を表 し
Ur-::./
て い ます。
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│‐
│‐‐
図 5 炭 水化物の分画
(2)第 一 胃での炭水化物 の消化 と利用
NFC
tル r3-ス
ヘ ミセルロー ス
の= 部
プロピオン酸
下部消化管 ヘ
図 6 炭 水化物の消化 と利用
糞として排泄
骨格筋、心筋、腎臓、乳腺 で利 用
飼料 中の炭水化物 は、第 一 胃で微生物 による分解 を受け酢 酸 や酪酸、 プ ロ ピォン酸な どの VFA(揮
発性脂肪酸)と な ります。第 一 胃でつ くられたVFAは
、 胃壁 か ら吸収 され乳牛の エネルギ ー とな った
り牛乳 になった りします。主な VFAは
、牛体 内で主 に次の ように使 われ ます。
ー
。酢酸 ∼乳牛の エネルギ とな った り、乳脂肪の原料 とな る
。
。プ ロ ピオ ン酸 ∼ そのまま、又 は肝 臓 でグル コー スに合成 され乳牛 の エネルギー となる
。 グル コー ス
は乳糖の原料 とな る。
。酪酸 ∼ 胃壁 か ら吸収 され る時 に、殆 どがケ トン体 とな る。 ケ トン体は、乳牛の エ ネルギ ー とな った
り乳脂肪の原料 とな るが多す ぎる と予L牛に悪影響 を与 える (ケ トー ジス)。
一 般的 には、飼料
中の繊維 が多 くな る と酢 酸、デンプン が多 い とプ ロ ピオン酸の割合が高 くな る と言
われて い ます。
4.代
謝
病
(1)ル ー メンアシ ドーシス
正常時の第一 胃
アシ ドァシス時の第一 胃
子L酸生成菌 により、第一 胃内 に多量の乳酸
pHは 6.5∼7.0位で、デン プンか ら乳酸、手L酸
か らプ ロピオン酸 への微生物による分解がスムー
が生 成 されpHが 低下する。 このため、茅L酸
ズに行われている (図7)。
分解菌 が死滅 し増 々pHが 低下 する (図 8)。
夕三塁の デ ンプ ン
プロピオン酸
一
濃厚飼料 を多給 した リー 時 に多量 に給与 した りす る と、第 胃で多量 の乳酸 が生産 され ます。 そのた
一
め、第 一 胃のpHは 急激 に低下 し乳酸 を分解す る菌 が死 滅 して しま い ます。 そ うな る と、第 胃内の乳
一
一
酸 は プ ロ ピオン酸 へ 変換 されな くな るため、第 胃に蓄積 され第 胃内のpHを 増 々低下 させて しま い
ます。蓄積 された茅L酸は、 胃壁 か ら吸収 され血液pHの 緩衝能 力限界 を越 える と、血液のp耳 を低下 させ
酸 血症 を起 こ して い ます。
症状 と しては、足 を痛 がるように背 を丸めて歩 きひ どい時 には跛行 する。 蹄冠部 が赤 く腫 れ る。
佗)第 四胃変位
⇒
ヘ
妊娠時
押 し
つぶ す
分
図 9 考 え られ る原 因
第四胃変位は図の様に、濃厚飼料の多給により第四 胃のガス発生による拡張、変位。胎児の発育によ
って持ち上げられた第一 胃が、分娩によって正常な位置にもどる時に第四胃を押 しつ暮す。また、分娩
後の食い込みの回復不良によって、第一胃が移動 しやす くなる6ス トレス等t様 々な要因が董なって発
生するといわれています。
症状 としては、食欲の減退、乳量の極端 な減少、排 糞量 の減少な どがあ ります。
予防 としては、サイ レー ジの切断長 を、ル ー メン マ ッ トを形成 す るのに十分 な長 さにす る。
・濃厚飼料 と粗 飼料の パ ランスを考 え、 一 時 に大量 に
給与 しな い。
・良質な粗飼料 を十 分 に与 える等、分娩後の飼料摂取量 を最大 にす る乳
牛管理 を行 う。
等が考 え られます。