スマートフォンの仕事での利用に関する調査結果

スマートフォンの仕事での利用に関する調査結果
平成25年3月27日
MCPC技術委員会・アプリケーションWG
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はじめに
スマートフォンの普及が急速に進行している。一般的には新たなコミュニケー
ションツールとして広がってきているが、一方で仕事の道具としても欠かせないもの
となりつつある。
MCPCではこれまで、携帯電話やスマートフォンなどのモバイルデバイスの安
心・安全な使い方の啓発に取り組んできた。昨今BYOD(私物端末の仕事利用)と
言われる利用形態が注目されているが、実態としてスマートフォンが仕事にどう使
われているか、またセキュリティ対策は十分であるかを明らかにすることが重要と
考えた。
本報告は、いわゆるビジネスパーソンに対し、スマートフォンの活用実態とセ
キュリティ意識を調査したものである。スマートフォンの普及、活用の広がりについ
て企業規模等の属性ごとに特徴を明らかにした。そこから見えてきた活用状況とセ
キュリティ対策の実態について、取り組むべき課題とともに整理した。
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調査概要
●調査方法:Webアンケート方式
●調査期間:2012年9月20日(木)~10月12日(金)
●調査対象者:全国のビジネスパーソン8万人
●有効回答数:2153件
●回答者属性:別紙
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回答者属性
<性別>
<役職>
<年代>
7%
4%
3% 2% 3% 1%2%
10%
社長・会長
22%
16%
専務・常務
取締役
26%
部長・次長クラス
27%
課長クラス
係長・主任クラス
一般社員
23%
37%
93%
男性
20~29歳
50~59歳
女性
その他
30~39歳
60歳以上
40~49歳
24%
<企業規模>
5%
0%
1%
4%
1%
9%
31%
10人以下
10~29人
17%
30~99人
100~499人
1% 5%
3
3%
1%
情報通信業
運輸業
不動産業
1%
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建設業
卸売・小売業
金融・保険業
7%
5000人以上
農業・林業・漁業
製造業
電気・ガス・熱供給・水道業
28%
0%
1%
医療・福祉
教育・学習支援業
サービス事業
公務
1000~4999人
11%
<業種>
13%
500~999人
23%
契約・派遣社員
38%
その他
結果1:スマートフォンの仕事利用浸透度と契約区分
●スマートフォンを仕事で使っている人/使っていないが使いたい人/使いたくない人の割合
使っている
全体
使いたい
1175
使いたくない
638
<傾向>
297
◆全体として使っている人が、過半数を
企業規模
超えている。
100人未満
262
100~1000人未満
311
1000人以上
602
0%
20%
98
191
60%
◆小企業の方が利用比率が高い
80
349
40%
32
185
80%
100%
●スマートフォンを仕事で使っている人の会社支給と個人所有の割合
会社支給
企業規模
全体
591
100人未満
◆小企業では個人所有の比率が高く、
大企業では会社支給の比率が高くなる。
158
345
0%
◆全体的には概ね半々の比率である。
169
153
100~1000人未満
<傾向>
584
93
1000人以上
4
個人所有
20%
257
40%
60%
80%
100%
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結果2:活用されているアプリケーション
●スマートフォンアプリの利用比率(企業規模別)
1000人以上
100~1000人未満
100人未満
メール
電話
地図
アプリケーション
電話帳
カメラ
Skype、LINE等
Facebook等
名刺管理
社内SNS
Web会議
チャット
その他
0%
10 %
20 %
30 %
40 %
50 %
60%
70 %
<傾向>
◆端末機能が主として使われており、追加したアプリの利用は比較的低い。
◆Skype・LINEやFacebook・Twitterは小企業と大企業とで利用比率に大きな差がみられる。
◆電話を使っていない人が2~3割いる
◆地図の利用率は小企業が多い
◆名刺管理も小企業の方が利用している
⇒全体的に、小企業の方がアプリケーションの活用度が高い
5
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80 %
90 %
100 %
結果3:活用されている社内システム
●スマートフォンでの社内システムの利用可能比率(企業規模別)
1000人以上
100~1000人未満
100人未満
メール
スケジューラー
社内システム
グループウェア
社内稟議
勤怠管理
ファイルサーバー
内線電話
業務特化システム
何もない
0%
10 %
20%
30%
40%
50 %
60 %
70 %
80 %
90 %
<傾向>
◆大企業の方が利用可能な社内システムは多い
◆メール・スケジューラは利用比率が高い。
⇒ 一般的な連携手段が多いことによるものと思われる。
◆社内稟議・勤怠管理等、社内システムとの連携が必要なものは普及がほとんど進んでいない。
◆小企業の方がスマートフォンの活用度が高いのに対し、社内稟議等の利用比率が低い。
⇒ 小企業では個人的な利用にとどまっていることが推測される。
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100%
結果4:利用規則の有無(禁止も含む)
●スマートフォンの利用規則の整備状況(企業規模別、全体に対する割合)
利用可・ルールあり
利用規則なし
利用規則
100人未満
利用可・ルールなし
分からない
66
100~1000人未満
37
利用禁止・罰則あり
13
144
1000人以上
利用禁止・罰則なし
136
28
9 9
420
0%
20%
16
94
27
20 22 20
40%
60%
80%
75
40
100%
<傾向>
◆大企業の方が利用ルールが整備されている
◆小企業(100人未満)では、75%が利用ルールがない状態である。
⇒ 小企業のほうがスマートフォンの活用が進んでいることを併せ考えると、利用ルールがないままBYODが
進行している
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結果5:セキュリティに関する意識①
●どのようなセキュリティ脅威を意識しているか(企業規模別)
1000人以上
100~1000人未満
100人未満
セキュリティ脅威
紛失・盗難
個人情報漏えい
ウイルス、マルウエア感染
位置情報の悪用
詐欺(まがい)被害
感じていない
0%
10 %
20 %
30 %
40 %
50 %
60 %
70 %
<傾向>
◆ウイルスや不正アプリ、あるいは盗難・紛失による個人情報に対する意識が高いが、
一方でセキュリティ脅威を感じていない人が10%程度存在する。
◆位置情報悪用に関する脅威を感じている人は30%強であり、低いといえる。
◆この傾向に、会社規模による差異はほとんど見られない。
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80 %
90 %
100 %
結果5:セキュリティに関する意識②
●どのようなセキュリティ対策を実施しているか(企業規模別)
1000人以上
100~1000人未満
100人未満
パスワードロック
リモートロック
セキュリティ対策
ウイルススキャン
リモートワイプ
行っていない
アプリ制限
Webフィルタリング
機能制限(MDM)
利用監視
シンクライアント化
その他
0%
10 %
20%
30%
40 %
50 %
60%
70%
80 %
90 %
100%
<傾向>
◆パスワードロックの利用率は約8割とかなり高い。
◆MDM導入率が大企業でも10%程度しか存在しない。
⇒ 管理者の負担が大きいことや、プライバシーにかかわるため、MDMの導入に消極的な可能性もある。
◆ウイルススキャンの活用が少ない(3割程度)。
⇒ iPhoneでは、ウイルススキャンが一般的でないことも一因と思われる。
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結果6:使っていないが使ってみたい方の意識①
●どのようなアプリケーション/サービスを使いたいか?
(スマートフォンを仕事で使っている人と使っていないが使いたい人との比較)
使いたい人
使っている人
メール
電話
Skype、LINE等
アプリケーション
地図
電話帳
名刺管理
Web会議
社内SNS
カメラ
Facebook等
チャット
その他
0%
10 %
20 %
30 %
40 %
50 %
60 %
70 %
80 %
90 %
<傾向>
◆主に端末機能が使われている。特にカメラは期待以上に活用されている。
◆Skype・LineやWeb会議・名刺管理などクラウド系サービスは期待されているほど使われていない。
⇒ 会社の制限や漠然としたセキュリティ不安によるものと思われる。
10
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100%
結果6:使っていないが使ってみたい方の意識②
●どのような効果を期待するか
(スマートフォンを仕事で使っている人と使っていないが使いたい人との比較)
使いたい人
使っている人
どこでもメール・資料活用
いつでもどこでもネット
スケジュール管理が楽に
情報共有がスムーズに
効果
資料持参が楽に
客先訪問で道に迷わない
直行直帰が増
稟議・決裁が早く
社内報告が簡単に
仕事にFacebook等活用
その他
0%
10 %
20 %
30%
40%
50 %
60 %
<傾向>
◆情報共有や資料の活用が期待されるほど活用されていない。
⇒ クラウド系サービスの活用が進んでいない。
◆稟議・決済や社内報告の利用率は10%以下である。
⇒ 社内システムの整備が追い付いていないことが読み取れる。
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70 %
80 %
90 %
100%
結果7:使いたくない方の意識
●なぜ使いたくないか?
個人端末を利用したくない
セキュリティが不安
会社が支給してくれない
利用したくない理由
会社が仕事利用を禁止
仕事利用メリットなし
紛失の危険性が高い
スマホの使い勝手が悪い
通信コストが高い
会社の規定が厳しい
利用状況の監視に抵抗
スマホの知識不足
その他
0%
10 %
20 %
30 %
40 %
50 %
60 %
<傾向>
◆「個人端末を利用したくない」という意見が半数近くある。
⇒ BYODに対する消極的な意見が半数近くある
⇒ コストやプライバシーに対する抵抗感
◆セキュリティへの不安は強い
◆スマートフォンの使い勝手、利用に関しては否定的な意見は少ない
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70 %
80 %
90 %
100%
まとめ
本調査を通じて、2つの傾向が読み取れる。
●特に小規模の企業で顕著であるが、 「勝手BYOD」が着実に進行している。
スマートフォンの仕事利用は小規模企業の方が先行しており、また個人所有の割合も高い。具体的には、
100人以下の企業において、スマートフォンを仕事で使っている人の内、個人所有と回答した割合は65%に
達する。しかしながらスマートフォンの利用規則について「会社で規定している」との回答は25%に過ぎない。
この結果から、「多くの人が個人で契約したスマートフォンを仕事で利用しているが、会社は何ら管理を行っ
ていない」という状況が読み取れる。この状況を「勝手BYOD」と呼びたい。
その一方で、利用者からはセキュリティや紛失に対する不安の声がある。また一般論として、正しく管理
されていないと重要情報の流出等の危険が増すと考えられる。リスク管理と仕事の効率とのバランスを考え
た正しいルール作りが重要といえる。
●スマートフォンへの「期待」と「現実」に大きなギャップがある。
スマートフォンに期待するサービス・機能や、期待される効果に関して、スマートフォンをこれから使いたい
と考えている人と、既に使っている人との間に大きなギャップがある。特にプライベートで活用しているクラウ
ド系サービスを仕事で利用する期待が高い一方で、実際には使われない傾向が見られる。これはセキュリ
ティ不安や社内利用の規制によるもの考えられる。
スマートフォンの仕事利用をさらに拡大するためには、仕事で安全に使える環境の整備とセキュリティに対
する過度な不安の払しょくが必要である。仕事での活用に適した、使い勝手とセキュリティを両立させたアプ
リやサービスの開発が望まれる。
携帯電話が今や手放せないものになったように、スマートフォンも我々の生活に不可欠なものと
なりつつある。仕事でもプライベートでも、より便利に、そして安心して使えるものになることを期待
したい。
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スマートフォンの仕事での利用に関する調査結果
制作・編集
MCPC技術委員会 アプリケーションワーキンググループ
<検討・制作メンバー>
主査:後藤義徳(NTTドコモ)、副主査:塩田岳彦(パイオニア)、
安達智雄(NEC)、今城忠浩(ベーステクノロジー)、竹下清(ソフトバンクモバイル)、
寺西賢二郎(ベーステクノロジー)、平山幸一(トレンドマイクロ)、藤田健(リックテレコム)、
米倉和則(KDDI)、事務局:横尾俊夫(MCPC)
問合せ先
MCPC事務局
E-mail: [email protected] URL: http://www.mcpc-jp.org/
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