マルチデバイス時代の メールマーケティング事例紹介

業界キーマンと探る注目キーワード大研究
株式会社アマナ 高氏 × エクスペリアンジャパン 吉澤
吉澤 和之
エクスペリアンジャパン株式会社
マーケティング部
メールマーケティング エバンジェリスト
高 和丙氏
株式会社アマナ
WEB マーケティング事業部
WEB マーケティング部 マネジャー
モバイルシフトする消費者とミスコミュニケーションが起きていませんか?
マルチデバイス時代の
メールマーケティング事例紹介
急速なマルチデバイス化により、多くの企
こうした調査を踏まえ、エクスペリアンジ
スに加え、BtoC ビジネスへと事業を拡大し
業はその対応に追われている。特にプッシュ
ャパン マーケティング部 メールマーケティ
ていたことがあった。
ング エバンジェリストである吉澤和之氏は、
「フォトブックなどの BtoC 向け商材のプロ
型の主戦力であるメールは受け手側の環境に
「 誰 も が 実 感 し て い る よ う に、iPhone や
モーションを強化し、その施策の一環として
な中、積極的にマルチデバイス対応に取り組
Android での閲覧が増えたこと、それを支え
『T ポイント』や『Naver まとめ』との提携を
み、少しずつ成果を上げている企業も登場し
る高速 LTE 化の普及がその背景にあると考え
行ったことが、個人ユーザーの急増につなが
ている。その1つとして、ストックフォトや
られる。メールの閲覧環境はモバイルが一般
りました。つまり、モバイルによる閲覧は個
フォトブックサービスで知られるアマナイメ
化しており、もはや PC だけではないことは
人ユーザーの急増とリンクしており、そうし
ージズと、その施策支援を担ったエクスペリ
明白」と語る。
た新しいユーザー層に対する対応として、モ
影響されやすく、喫緊の対策が必要だ。そん
アンジャパンの事例を紹介する。
約9割の企業がメールのマルチ
デバイス対応に課題を感じている
新しいユーザー層拡大により、
モバイル対応が急務に
バイル対応が課題に上がってきたわけです。
そうしたことを踏まえて、どのような施策や
デザインが求められるのか、デザイナーたち
その実感は、企業側にも当然得られていた。
を含めた議論が頻繁に行われるようになりま
近年、スマートフォンやタブレットなどの
株式会社アマナ(以下、アマナ)WEB マーケ
した」(高氏)
普及やネット環境の進化などにより、ユーザ
ティング事業部 WEB マーケティング部 マネ
ー側のマルチデバイス化が急速に進んでいる。
ジャーの高和丙氏は「早い段階から社内で『モ
メール配信システム『MailPublisher』を提
バイルファースト』という言葉が飛び交って
供するエクスペリアンジャパンによる独自調
いた。ただしサービスの性格上、現状として
高氏の実感として、マルチデバイス化のス
査によると、企業の約9割がメールのマルチ
は取り組みが遅れていた」と振り返る。しか
ピードは想像以上であり、クリエイティブも
デバイス対応に課題を感じているという。ま
し、モバイルによるサイト閲覧比率が急増し
含め早急な対応が求められた。しかし、あえ
た、海外を含めた HTML メール閲覧率の調査
たことをきっかけに、急速にモバイル対応へ
てサイトではなく、「メール」の対応から着
では、モバイルによる閲覧がここ1年で急増
の意識が高まっていったという。その背景に
手した。プッシュ戦略の重要ツールであり、
していることが明らかになった。
は、ストックフォトなど既存の BtoB ビジネ
短いスパンで PDCA が回せるメールの最適化
マルチデバイス対応の第一歩は、
閲覧デバイスの把握から
こそ、サイトを含めたマルチデバイス対応に
モバイルでの閲覧は65.5%とアマナの8%を
おける有効な指標になると考えたからだ。
大きく上回る。こうした数値を鑑みても、業
そこでアマナが利用したのが、
『MailPublish
種や業態によって閲覧デバイスの割合は異な
er』の「開封エンゲージメントサービス」で
る可能性が高く、だからこそ自社のユーザー
ある。HTML メール受信者のデバイス状況を
のデバイス状況の把握、可視化が重要という
分析し、ユーザーの実態を把握することで、
わけだ。
サイトを含めたクリエイティブの最適化の指
アマナでは、想像以上にモバイルによる閲
標としたわけだ。このアプローチについて吉
覧が増加していることを受け、社内での調査・
澤氏は「非常に重要なステップ」と評する。
分析を行った。その結果、新しい顧客層であ
る個人ユーザーだけでなく、既存顧客もスマ
ートフォンやタブレットデバイスで情報を収
集しはじめていることが明らかになった。
とする人が8%も高かった。モバイルで閲覧
「さらに一歩進んで、未だそうした利用をし
するユーザーは「提案型」を望むという仮説
ていないユーザーにも効率的にサービスを活
が肯定されたのである。
用してもらえるよう、モバイル対応が必要と
考えるようになりました。そこでクリエイテ
ィブの最適化の必要性を再認識したわけです」
「一番目につき、まず取り組みたくなるのが、
(高氏)
PDCA を回しながら、
小さな改善を繰り返していく
こうした取り組みを振り返り、高氏は「最
やはりクリエイティブの最適化です。しかし、
そこで、まずは訴求の切り口から検証をは
適化」を進める有効な方法について次のよう
やみくもに取り掛かるのではなく、まずは自
じめた。提供側が訴求したいジャンルの画像
に語る。「ボタン一つを変えても閲覧率が上
社のユーザーのデバイス状況を正しく把握す
を絞って、より訴求力を強めた「提案型」と、
がることはないでしょう。しかし、そうして
ることが大切です。その上でどのデバイスに
多様な画像を掲載してユーザー側の選択を促
得られた小さなセオリーを少しずつ積み重ね
フォーカスするかを選定し、クリエイティブ
す「ピックアップ型」の2種類について、ク
ることで最適化が図られ、得られたノウハウ
や配信タイミングをどうするかを考え、結果
リエイティブの A / B テストを実施した。
をもとにサイトの最適化にもつなげることが
の分析を行って反映し、最適化を図っていき
できる。PDCA サイクルを回しながら、小さ
ます。ブラウザの分析は比較的行われていま
な改善を繰り返していくことが大切だと実感
すが、盲点になりがちな『デバイス』という
しました」
切り口で分析し、可視化することが大切です」
その言葉に頷きつつ、吉澤氏は「メールだ
(吉澤氏)
けでなくサイトまでを含めた全体を見据えた
最適化が不可欠」と語る。
モバイルユーザーとの
ミスコミュニケーションを把握する
「たとえば、メールでの閲覧率は高いがコン
バージョンは低いといったこともよく聞かれ
「開封エンゲージメントサービス」による
その結果、提案型のほうが圧倒的に CTR が
ます。しかし、情報閲覧はメールで、購入は
メール配信により、アマナのメールクライア
高いことがわかった。
PC でといったように、デバイスの多様化に
ントは64%が AppleMail、8%が iPhone であ
次にアマナでは、「モバイル対応」と「最
従ってユーザーの購買行動が複雑化している
ることが判明した。アマナのユーザーは主に
適な訴求」という両軸で、クリエイティブ最
ことも少なくありません。マルチデバイス対
デザイナーなどのクリエイターであり、Mac
適化施策を行った。新しいユーザー層は「モ
応においては、そうしたことも踏まえて、全
利用者が多いことから AppleMail が最も多い
バイル」で閲覧し、かつ「提案型」を望むと
体最適化を行うことが重要といえるでしょう」
ことは想定内だったが、8%という iPhone で
いう仮説を立て、さらに「すぐに削除してし
の閲覧率は想像以上の高さだったという。
まう」という課題をもとに、モバイル表示を
このようにマルチデバイス対応においては、
「しかし、モバイルによる閲覧が増えている
意識した「提案型」と、PC 表示を想定した「ピ
商材やサービスによって対応すべきデバイス
にも関わらず、その半数以上がすぐにメール
ックアップ型」の2種類についてテストを実
や購買導線などが異なり、それぞれが仮説を
を削除してしまうことが判明しました。それ
施した。件名などのコピーやビジュアル、ボ
検証しながら全体を最適化していく必要があ
は新しい顧客であるモバイルユーザーとのミ
タンの位置や大きさについても細やかな変更
る。とはいえ、どこから手を付けてよいか迷
スコミュニケーションが起きている可能性が
を加えてメール配信を行った。
う人も少なくはないだろう。まずは本事例を
(吉澤氏)
結果としては、全体を見ると「提案型」と
参考に、自社のユーザーのデバイス状況を把
「ピックアップ型」の効果はほぼ変わらないが、
握し、クリエイティブなどの最適化の糸口と
なお吉澤氏によると、エクスペリアンの調
モバイル閲覧分だけに特化して分析したとこ
なる「メールの対応」からはじめてみてはい
査では調査対象に EC サイトが多いこともあり、
ろ、提案型の方が「読んだ」「少し読んだ」
かがだろうか。
高いことを意味します。早急に対応しなけれ
ばと思いました」(高氏)
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