Global Taxation: Industry Insights

Global Taxation: Industry Insights
中国QFII/RQFII制度
―外国機関投資家は過去のキャピタル・ゲイン税
を支払う必要あり
キャピタル・ゲインにも10%の源泉徴収税が適用されるか否
かが明確になっていないことは、市場に不確実性をもたらし
ていました。
中国では、2009年に国家税務総局(SAT)が外国機関投
2014年11月15日にストックコネクト制度が発足し、広範な
資家の利息収入および配当収入に源泉徴収税を適用す
非居住者投資家による中国A株市場への投資と、中国本土
ることを告知しましたが、その一方で、キャピタル・ゲイン税
の投資家による香港証券市場への投資について、新たな道
(CGT)については何ら方針が示されておらず、以来、外国
が開かれました。同制度発足前は、株式投資について中国
機関投資家が支払うべきCGTの算定と支払いの手続きに
本土の投資市場への参入は、QFII制度とRQFII制度を通し
関する指針が不明確な状況が続いていました。その結果、
てのみ認められていました。また、中国本土の投資家による
必要な認可を得て中国A株市場への投資を行っている外国
海外市場への投資は、適格国内機関投資家(QDII)制度を
機関投資家はそれぞれ、税務アドバイザーの助けを借りて、
通してのみ認められていました。
支払うべきCGTの発生額を決定しなければなりませんでし
た。2014年終盤に上海・香港ストックコネクト
(ストックコネ
ストックコネクト制度の発足を受けて、SATと中国証券監
クト制度)が発足したのを受けて、SATは先ごろ、適格外国
督管理委員会(CSRC)は共同で財税[2014]79号(以
機関投資家(QFII)制度および人民元適格外国機関投資家
下「通達79号」)を出しました。 通達79号により、QFII/
(RQFII)制度を活用している投資家へのCGT適用に関す
RQFIIが2014年11月17日以降に株式の取引で得たキャ
る指針を発表し、さらに、ごく最近になって、未払い税額を中
ピタル・ゲインについては、源泉徴収税が一時的に免除さ
国政府に納付するようにとの通達が出されました。本号で
れ、中国本土企業の株式もこれに含むことが明らかにされ
は、中国のCGTの算定をめぐり、QFII/RQFIIがこれまでに
ました。同通達は、この一時的な免税措置の有効期間を明
直面してきた問題を分析した上で、依然として未解決となっ
示していませんが、ストックコネクト制度を通して取引される
ており、中国政府の税金納付命令に応じるために対象とな
A株式からの配当収入に対する源泉徴収税10%の適用が
る投資家が判断しなければならない問題を明らかにします。
明記されており、これにより、QFII/RQFIIが中国株式から得
る配当収入に対する源泉徴収税の課税取り扱いは、現地市
非居住者であるポートフォリオ投資家による中国A株への投
場経由で投資した場合でもストックコネクト制度経由で投資
資は、2002年以降はQFII制度を通して、また2011年以降
した場合でも同じになります。中国との租税条約に基づく税
はRQFII制度を通しても行われてきました。QFIIは従来、中
の減免を受けるためには、現地市場を通して投資した場合
国有価証券の売買益については中国の営業税を免除され
と同様に、SATの承認を事前に得る必要があります。QFII/
ていましたが、国税函[2009]47号(以下「通知47号」)に
RQFIIが2014年11月17日よりも前に得たキャピタル・ゲイ
従い、QFIIが中国の有価証券への投資で得た配当収入や
ンについては、通達79号は、現行法に従って源泉徴収税が
利息収入については10%の源泉徴収税が課されることに
適用されるとしています。
しかしながら、現行法は、CGTの
なりました。
しかし、同通知には、QFIIが中国A株取引で得た
課税方法についても、またQFII/RQFIIが2014年11月17日
キャピタル・ゲインの税制上の取り扱いについて明確な記載
よりも前に得たキャピタルゲインについて発生する可能性
がありませんでした。QFIIが中国有価証券の売却で得た
がある税の決定、算定、支払いに関する指針についても、
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これまで何ら定めていません。このように現行法の手続き面
は、各年について行う必要があります。さらに、各投資家は、
をめぐる曖昧さのために、これまであった潜在的な租税債務
租税条約に基づいて中国のCGTの免除を受けられる可能
に関する不確実な状態が続くことになりました。
性がないか、ある場合は、免除を受ける資格があることを証
明するために、居住証明に加えて、どのような書類を提出す
中国の税務当局、過去に発生したCGTの支払い求める
SATは2015年1月19日、QFII/RQFIIが2014年11月17日
よりも前に得たキャピタル・ゲイン(以下「2014年11月より
も前のキャピタル・ゲイン」)にかかる源泉徴収税について
は、通達79号に従い2015年末までにSATに支払う必要が
ある旨、現地カストディアン銀行に通告しました。SATは、現
地カストディアン銀行を管轄する各地の税務局を通して、未
払いのCGTを徴収する方針です。CGTの支払いを命じる
今回の通知は、QFII/RQFIIとその顧客がここ数年問い続け
てきた重要な質問の一つに答えるものでしたが、CGTの決
定や支払いの要件を満たすための手続き面をとりまく、残さ
れた重要な問題には触れませんでした。具体的には、QFII/
べきかについても確認する必要があるかもしれません。
1月19日の通告を受けて、上海市税務当局(STB)は現地
カストディアン銀行を代表する業界団体と会合を持ち、その
際に、当局より要件に関する説明がありましたが、依然とし
て多くの点が不明確なままになっています。その中には、納
税申告書の提出にかかわる要件や租税条約に基づく免税申
請手続きも含まれます。STBは納税申告書の提出期限や納
税期限を示しませんでしたが、その一方で、QFII/RQFIIは
かかる要件を可及的速やかに満たすことが求められていま
す。SATは、未払いCGTを2015年末までに徴収するつも
りだと見られています。
RQFIIが納税義務を果たすために守るべき納税申告の要件
や納税手続きは、未だ明らかにされていません。現地カスト
実現益の計算については先入先出法(FIFO)、証券ごとの
ディアン銀行は、CGTの決定や支払い手続きをサポートし
個別法、加重平均法のいずれかで行うべきだろうというの
ないのが市場慣行であり、そのため、対象となる投資家は、
が、現地の市場参加者の見方です。有価証券の各売り注文
通達79号によって中国における運営にどのような影響を受
については、譲渡された各証券の売却とみなされ、
しかるべ
け、同通達に基づく納税義務を果たすためにどのような要
く課税されます。STBは、税額は売却益の総額をベースに
件を満たす必要があるのか、さらには租税条約による救済
計算しなければならず、売却益と売却損の相殺は認めない
措置が適用され得るのかを見きわめるにあたり、選任した税
としています。ファンド会計人に税金の発生額を算定するよ
務アドバイザーに頼らざるを得ません。
う指示していたQFII/RQFIIは、これまでのCGT発生額や納
税引当金の額を計算する際に用いた前提について評価し、
つまり、2014年11月より前のキャピタル・ゲインにかかる源
泉徴収税支払いを求めたSATの通達に従うためには、すで
にQFII/RQFIIのファンド会計人に連絡があったように、対象
何らかの変更がある場合は、ファンド会計人に伝える必要が
あります。また、自らが選任した税務アドバイザーにも伝える
必要があるかもしれません。
となるQFII/RQFIIは、2014年11月17日よりも前に行った
中国の有価証券の取引に伴うCGTのエクスポージャーにつ
時効の適用についても不明確なままになっています。SAT
いて評価する必要があり、これまでCGTの発生額や納税引
とSTBは、現在、時効の年数を3年とすべきか5年とすべき
当金の額を算定していた場合はその際に用いた前提につ
か、あるいは時効はなしとすべきか、意思決定の途上にあり
いても評価する必要があります。取引の分析とCGTの算定
ます。STBと現地カストディアン銀行の会合では、当局より、
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適用される時効の年数について結論を得るにはSATとのさ
結び
らなる確認作業と影響を受ける各地の税務当局とのすり合
中 国 の 税 務 当 局より現 地 カストディアン 銀 行 に 対し
わせが必要であるとの説明がありました。この問題は、各地
の税務当局とSATによる結論が出るまで解決しません。時
効に関する詳細は、通告があり次第、現地カストディアン銀
行から連絡があるものと思われます。
また、現地カストディアン
銀行側からSTBに対して、遡及的に適用されるCGTに遅延
利息を課さないよう要請がなされ、STBが現在検討してい
るところです。
て、QFII/RQFIIに過去のCGTを支払う義務がある旨の通
告が行われたことによって、SATは非居住者投資家に10
%の源泉徴収税を適用する方針であることが明らかになり
ましたが、対象となる投資家がそのためにどういう手続きを
踏む必要があるのかについては、十分明らかになっていませ
ん。適用対象となるQFII/RQFIIの顧客は、それぞれの税務
アドバイザーの助けを借りてCGT債務の額を算定し、過去
の中国の有価証券売却益にかかる納税義務を果たす必要
STBより、保有している中国有価証券銘柄がいわゆる「豊
があります。グローバルカストディアンは、現地カストディア
富な土地を有する企業」
(中国の不動産が資産の過半を占
ン銀行から正確な取引データが確実に伝達され、これまで
める企業)に当たるか否かの判断は、QFII/RQFIIがそれぞ
に生じた指図がQFII/RQFIIが選任した税務アドバイザーに
れ選んだ方法に基づいて独自に行うことができるとの説明
伝えられるよう、適用対象となる顧客を支援することができ
がありましたが、どういう方法を適用するかは投資家が選
ます。現地カストディアン銀行は、未払い税の支払いが円滑
ぶことができます。選択された判断方法を監査する権限は
に行われるよう取り計らう責任のある管轄の税務当局に、対
SATにありますが、どういう方法で豊富な土地を有する企
象となる外国人投資家の立場が確実に伝わるようにしなけ
業か否かを判断したかについては、QFII/RQFIIが管轄の税
ればなりません。各顧客は、自らの税務ポジションを評価す
務当局に税金を納める際に合わせて報告することができま
るために必要な措置を講じるとともに、どのような影響があ
す。こうした判断は、QFII/RQFIIが豊富な土地を有する企
るか担当のクライアントサービスチームや選任した税務アド
業に当たると判断した有価証券にかかる中国のCGTについ
バイザーと話し合うべきです。
て、租税条約に基づく免除を受けられるか否かに影響を及
ぼす可能性があります。
いわゆる「レッドチップ」株式銘柄の発行体が中国居住企業と
みなされる場合には、QFII/RQFIIは、かかる株式を売却して
得たキャピタル・ゲインについてもCGTの課税対象に含める
必要があるかもしれません。
レッドチップ銘柄とは、中国本土
外で法人登記され、香港証券取引所に上場している中国資
本の企業が発行する株式のことです。QFII/RQFIIは、税務ア
ドバイザーとともに保有銘柄を再点検し、
レッドチップ銘柄が
含まれる場合はその発行体がどういう企業か調べ、CGT債
務を計算する際に、これらの銘柄にかかるキャピタル・ゲイン
を含める必要があるか否かを判断する必要があるでしょう。
3 | JANUARY 2015
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