平成24年度 基礎研究費 研究成果報告書

公立大学法人横浜市立大学における研究費の取扱に関する規程
第 15 号様式の 1(第 40 条)
平成24年度 基礎研究費 研究成果報告書
提出日:平成25年8月28日
私は、下記研究課題に係る研究費について、以下のとおり研究成果を報告します。また当該研究費の執行につ
いては、規程等を遵守し、適正に使用いたしました。
1 研究者情報
氏名(職位)
: 上村 雄彦(教授)
※医学科は氏名に教室代表者名を記載
所属: 国際総合科学群人文社会科学系列
2
グローバル・タックスの実現をめぐるポリティックスと今後のゆくえ
研究課題名 ※50 字以内
3 交付額
550,000 円
5 研究概要 ※600~800 字程度で記入してください。絵、図の挿入も可
本年度はグローバル・タックスの導入をめぐるポリティックスと今後のゆくえを展望することをめざした。
その背景には、グローバル・タックスの現実化に向けての動きが加速していることがある。とりわけ、通貨、
株式、債券、デリバティブなどあらゆる金融商品の取引に課税する金融取引税などは、金融業界や各国の財務
省の反対で最も実現がむずかしいと考えられてきたが、2011 年 9 月に欧州委員会は欧州金融取引税に関する
EU 指令を加盟国に提示した。
これに対して、イギリスは大反対する一方、フランス、ドイツ、オーストリア、ベルギーなど 11 カ国はこの
構想を推進しようとしている。G20 に目を転じてみると、アメリカなど主要国は反対しているが、南アフリカ
やブラジルは構想を支持している。一方、日本では、2012 年 8 月に成立した「社会保障の安定財源の確保等を
図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」に、
「国際連帯税について国際的な
取組の進展状況を踏まえつつ、検討すること」という文言が入ることとなった。しかし、経団連は、国際連帯
税の導入に明確に反対を表明している。また、実質的に政府の税制を決定づけていく「平成 25 年度自民党税制
改正大綱」では、
「国際連帯税」の推進どころか、その言葉さえないという状況である。すなわち、現在国際連
帯税の議論は完全に後退しているといえよう。
これらは、まさにグローバル・タックスの実現をめぐる欧州内部の、日本の、そして国際的なポリティック
スであり、市民社会の動きも含めて、現在の動向を把握、分析することは大変重要だと考え、本年度はこれら
の諸点について研究を深化させた。
これらの研究成果は、フィンランドでの KEPA seminar、科研費研究会、国際連帯税フォーラム、国際連帯
税創設を求める議員連盟総会、世界連邦日本国会委員会総会、環境省政務官勉強会の場で報告され、とりわけ
議員連盟総会や環境省政務官勉強会では政策形成につながる報告ができた。これらをもとに、 Economie
Applique という学術誌に英語論文を掲載することができたことは、大きな成果であると考えられる。また、こ
れらの成果は、2013 年度に入って著書や論文という形で刊行されており、今年度も当初設定した目標を上回る
研究成果を上げることができたと考えられる。
6 研究発表(投稿準備中、投稿中、発表予定を含む)
※記載にあたっては、例えば発表論文の場合、論文名、著者名、掲載誌名、査読の有無、巻、最初と最後の頁、発表年(西暦)に
ついて記入してください。記載の順番は、現在から順に発表年次を過去に遡って記載し、通し番号を必ず付してください。
公立大学法人横浜市立大学における研究費の取扱に関する規程
第 15 号様式の 1(第 40 条)
<著書>
1.
「ダーウィンの悪夢―アフリカの絶望と先進国の関係を暴く」三上貴教編著『映画で学ぶ国際関係Ⅱ』法律
文化社、2013 年 5 月、120-123 頁。
2.
「地球環境ガヴァナンス」吉川元編著『混迷するグローバル・ガヴァンナンス』法律文化社、2013 年 10 月
刊行予定。
3.
「飢餓・貧困を構造的に理解し、処方箋を考える―『なぜ世界の半分が飢えるのか―食糧危機の構造』
(ス
ーザン・ジョージ著/小南祐一郎・谷口真里子訳、朝日新聞出版/1984 年刊)書評」佐々木寛編著『平和を考
える 100 冊』日本平和学会、2013 年 10 月出版予定。
4.上村雄彦編著『グローバル協力論入門―地球規模課題の解決をめざして』法律文化社、2013 年 11 月刊行
予定。
<論文>
1."From Tobin to a Global Solidarity Levy: Potentials and Challenges for Taxing Financial Transactions
towards an improved Global Governance", Économie Appliquée, tome LXV, 2012, no 3, pp. 59-94(査読有).
<学会発表・招待講演>
1.
「金融取引税の最新の動向と国際連帯税の取組み」
、2012 年度国際連帯税創設を求める議員連盟総会、2012
年 9 月 3 日(於:参議院議員会館)
。
2."Why is Innovative Financing/Financial Transaction Tax Now?"、IMF・世界銀行総会サイドイベント「金
融取引税・国際連帯税は世界を救うか?―革新的資金メカニズムを巡る世界のリーダーと市民社会との対話」
、
2012 年 10 月 11 日(於:青山学院大学国際会議場)
。
3.
「脱原発、縮格差は可能か?」
、
「友愛平和の風を吹かせるために―これからの平和・環境・福祉運動につい
て考えよう」
、2012 年 10 月 13 日(於:財団法人雲柱社 賀川豊彦記念館)
。
4.
「温暖化とエネルギーで変化する食住への危機―脱原発と地球規模問題の解決をめざして―」かわごえ環境
ネット、2012 年 11 月 18 日(於:川越市市民ホール)
。
5.
「脱原発は可能か?―日本の市民社会が与えた影響と途上国への示唆―」
、2012 年度国際開発学会秋季大会
研究報告、2012 年 12 月 1 日(於:神戸大学)
6.
「99%の連帯で金融・経済を変えるグローバル・ガバナンスへ―トービン税からロビンフッド・キャンペー
ンまで―」
、PARC 自由学校講義、2012 年 12 月 7 日(於:アジア太平洋資料センター)
。
7."Global Taxes for Global Issues: Potential of Financial Transaction Tax", KEPA Symposium on FTT,
2013 年 2 月 5 日(於:Little Parliament, Helsinki, Finland)
。
8.
「欧州金融取引税と第 11 回革新的開発資金に関するリーディング・グループ総会報告」
、2013 年度第 2 回
科研費研究会、2013 年 2 月 16 日(於:横浜市立大学)
。
9.
「欧州金融取引税と第 11 回革新的開発資金に関するリーディング・グループ総会報告」
、2013 年度国際連
帯税創設を求める議員連盟総会、2013 年 2 月 26 日(於:参議院議員会館)
。
10.
「欧州金融取引税と第 11 回革新的開発資金に関するリーディング・グループ総会報告」
、2013 年度世界
連邦日本国会委員会総会、2013 年 3 月 6 日(於:衆議院議員会館)
。
11.
「国際連帯税の最新の状況について―気候資金ガヴァナンスを手掛りに―」
、環境省政務次官勉強会、2013
年 3 月 19 日(於:環境省)
。
公立大学法人横浜市立大学における研究費の取扱に関する規程
第 15 号様式の 1(第 40 条)
7 研究成果による知的財産権の出願・取得状況
知的財産権の名称
発明者名
権利者名
知的財産権の種類、 出願年月日
番号
1
2
3
(和暦)
取得年月日
(和暦)