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は じ め に
ワクチン類の製造は,通常病原微生物等を原材料として行われるため,その製造
には他の医療用医薬品とは異なる特別な技術,設備を必要とし,十分に教育訓練さ
れた従事者によって行われている。また,製品の保管や取り扱いもそれぞれの製品
により異なるため,細心の注意のもとに管理されている。
ワクチン類の大部分は感染症の予防のため,一部は治療薬や診断薬として用いら
れている。ワクチンは疾病の感染予防の重要な手段として用いられ,国民の健康保持,
増進や公衆衛生の向上に寄与している。さらに,わが国においては公衆衛生や医療
技術の向上等もあり,感染症の発生は著しく減少している。
ワクチン類は多くの感染症の予防に成果を上げ,患者発生や死亡者の大幅な減少
に重要な役割を果たしてきた。一時期,予防接種に対する国民の認識は予防効果か
ら副反応へ向けられたが,2009 年の新型インフルエンザ,近年では麻疹や風疹の流
行などにより,予防接種の必要性について改めて認識されてきているところである。
ワクチンの副反応を左右する品質管理についての規定は専ら生物学的製剤基準であ
り,製造過程一般に関しては医薬品および医薬部外品の製造管理および品質管理の
基準によって管理されている。なお,より一層の安全性の向上を目指し,平成 15
(2003)年施行の改正薬事法では,殆どのワクチン類は「生物由来製品」に指定され,
「感染症定期報告」が義務づけられるなど,原料および感染性因子に対してさらに厳
しい対応が求められることとなり,添加物の減量や除去,さらに精製,改良等が進
んでいる。
わが国において生物学的製剤の品質管理が制度化されたのは,昭和 24(1949)年
痘苗,BCG ワクチン,百日せきワクチンの基準が制定されてからである。その基本
的な法律は薬事法であり,この法律の中に,医薬品製造業や医薬品製造販売業の許可,
品目ごとの製造販売の承認,生物学的製剤基準の制定や国立感染症研究所による検
定,都道府県の薬事監視員やその立入り検査などの定めがある。生物学的製剤の品
質管理の制度と運用の基本はこの法律で定められている。
この小冊子は,ワクチンがどのような品質管理のもとで,製造され安全性の管理
が行われているか,また,ワクチンを取り巻く法規制やその取り扱いがどのように
行われているか等について概説したものである。
一般社団法人日本ワクチン産業協会
PR 委員会 編集委員会
本書の内容は,平成 25 年 8 月現在の内容を反映したものです。
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ワクチンの製造
目 次
はじめに
1.ワクチンの製造
1)ワクチン・治療薬・診断薬
2)製造用株
3)製造に使用される培地,細胞,動物
4)ワクチンの抗原となるウイルスや細菌の培養
5)ワクチンの精製
6)無毒化または不活化
7)最終バルク
8)凍結乾燥
9)小分製品
10)包装
11)有効性の管理
12)安全性の管理
13)ワクチンに含まれる添加物
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ワクチンを取り巻く法規制
1)ワクチンの開発
2)ワクチンの製造と GMP
3)ワクチンの製造販売と GVP・GQP
4)生物学的製剤基準
5)国家検定
6)国家検定の手続き
7)ワクチンの市販後管理
8)ワクチン類の規制
9)国有ワクチン類の備蓄および供給
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用語解説
ワクチン類の取り扱い
2.ワクチンを取り巻く法規制
3.ワクチン類の取り扱い
1)予防接種ワクチンの取り扱い
2)ワクチン類の保存条件と有効期間
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5.主要参考文献
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主要参考文献
4.用語解説
6.参考資料
参考資料 index
1)ワクチン類の生産実績
2)ワクチン類の輸出実績
3)インフルエンザワクチンの製造株と流行型の変遷
4)予防接種実施率の推移
5)予防接種 個別・集団別実施状況
6)伝染病 患者数・死者数の推移
7)製造販売業者別ワクチン類一覧表
8)ワクチン類に関するお問い合わせ先一覧
9)一般社団法人日本ワクチン産業協会 会員名簿
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参考資料
編集後記
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