たまねぎのセル成型苗育苗 (8月)

たまねぎのセル成型苗育苗
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はじめに
新潟県のたまねぎ栽培では、積雪のため越冬を確実におこなうことが大切です。しかし、うまく越
冬しその後の管理がよくても、越冬前までの苗の大きさを挽回することは極めて難しいものとなって
います。すなわち、育苗でいかに充実した苗に仕上げ、越冬前までにしっかり根を張らせておくこと
がポイントとなります。苗の仕上げ(は種時期と定植時期、苗質等)がたまねぎ生産に重要となって
います。
機械化一貫体系の確立が進む中、たまねぎ栽培の定植作業についても既に定植機による機械化が図
られています。そこで、機械移植に適したセル成型苗育苗のポイントについて記述します。
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地床育苗とセル苗育苗の違い
慣行の地床育苗では,手まきでのばらまき、は種機、シードテープで 1m 当たり 60 本程度の苗立
ちで,55 ~ 60 日育苗して葉を切らずに定植します。セル成型苗は,288 穴や 448 穴などの小さいポ
ットにコーティングした種子を 1 粒まきします。
苗質のちがいは,セル苗は 1 株当たりの培土量が少なく根張りに制限があるため、育苗日数がかか
っても苗が細く小さいものとなっています。また、かん水で苗の倒伏を防ぐため葉切りがおこなわれ
ます。地床育苗より苗質が劣るため、育苗及び定植・活着には周到な管理が必要となりますが、十分
管理すれば慣行の栽培方法と収量はそれほど低下しません。すなわち、セル成型苗は早く根鉢を形成
し、早く定植して、スムーズに活着させることがポイントとなります。
セル育苗の育苗方法の違いと苗質
セル育苗の方法としては、①セルの下から根を地面に張らせ苗を大きくする方法、②セルトレイを
架台に上げて根を出させず細い苗で早く根鉢を形成させる方法があります。
セルの下から根を地面に張らせる(直置き)方法では、葉鞘径が太く地上部重も重くなりますが、
根を切るため根重が少なくなります(図 1、図 2)。一方、セルトレイを架台に上げて根を出させない
(上床)方法では、葉鞘径が細く苗は小さいのですが、根は多くなります。また、剪葉(葉切り)処
理は、混んだ苗の徒長やムレを防止するために行いますが、それによって根の伸びが悪くなることが
わかります。根鉢の形成は、上床では 50 日育苗でほぼできるのに対し、直置きでは根鉢が崩れやす
く育苗日数が長くかかります。
50
地上部重
根重
15
40
13
30
11
20
9
10
7
3.6
地上部重(g/20本)
mm
3.4
3.2
3
2.8
2.6
あり
なし
直置
あり
なし
5
あり
上床
なし
直置
図1、トレイの置床と剪葉(葉切り)処理の違いによる
葉鞘径(50日育苗)
上床、剪葉あり
0
根重(g/20本)
3
あり
なし
上床
図2、トレイの置床と剪葉(葉切り)の違いによる生育
上床、剪葉なし
直置き、剪葉あり
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直置き、剪葉なし
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セル育苗の育苗方法
①資材の準備
288 穴セルトレイの場合、うね幅 140 ㎝、株間 12 ㎝、4条植(23,800 株/ 10 アール)として、
成苗率 90 %で計算すると、10 アール当り、コート種子(2L サイズ)2.6 ~ 2.7 万粒、トレイ数 92
~ 95 枚、専用培土 250 リットル程度が必要となります。
②地床準備
セルトレイを直置きする方法では、トレイを設置する1週間前までには施肥・耕耘・うね立てを
し砕土をよくし、トレイを並べる時には十分かん水し表面を均平にしておきます。セルトレイを上
床する方法では、葉菜類を育苗するように垂木に直管などを通して地
面から上げておきます。
③は種
セルトレイにネギ用培土など購入培土を詰め、専用の鎮圧板で均一
な深さのは種穴を開け、コーティング種子を用い、は種板で1穴1粒
ずつは種を行います。その後、トレイ全体に均一に底から水が出るく
らいかん水します。
④トレイの設置
直置きする方法では、根切りシートなどを敷いてトレイを隙間
なく並べ育苗箱と地床が隙間なく密着するように板などで押し
て、トレイの端に土を盛り乾燥を防ぎます。セルトレイを上床
する方法では、直管などの上にそのまま隙間なく並べます。
たまねぎの発芽適温は、20 ℃で、許容範囲が 15 ~ 25 ℃とさ
れており、30 ℃以上では発芽率の低下が著しくなります。
高温期のは種ですので、遮光資材で気温を下げ、発芽まで(1
週間程度)乾かないように新聞紙や遮光シート等で被覆します。
⑤育苗管理
かん水は、発芽直後は乾燥に弱いので水がトレイの底に浸透するまで毎朝十分に行います。その
後その日の夕方にはトレイ表面が少し乾くくらいにとどめ、本葉2葉期以降はしおれないように、
また伸びすぎないようにかん水間隔・回数に注意します。
肥料切れは致命的ですので、葉色が淡くなり始めてきたら、遅れない
ようにかん水時に液肥(200 ~ 300 倍、400 ~ 500ml /トレイ)を施用し
ます。
葉切りは、倒伏やムレる前に草丈 12 ~ 15 ㎝くらいまで数回カットしま
す。葉切り直後は葉の切り口を早く乾燥させて、病気の発生を防ぐため
かん水を控えます。
直置きの場合、定植の5~7日前に、育苗箱を持ち上げ断根します。
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栽培の注意点
①セル育苗は、1 穴の培土量が少なく培地が乾燥しやすいため,慣行育苗に比べかん水や追肥など
できめ細かい管理が必要です。
②育苗中は,肥料切れを起こさないで葉色の濃い充実した苗に仕上げることが重要です。
③若苗ほど定植後の活着がよいので育苗日数が伸びないように努めます。また、セル育苗では慣行
よりやや早まき・早植えで年内の生育量を確保するようにします。(早まき遅植えは厳禁)
④苗が小さいため、ほ場の砕土や土壌水分は慣行以上に注意を払い、活着をスムーズにしてくださ
い。
写真提供:園芸研究センター
【経営普及課専門技術指導担当(野菜)後藤 豊】
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