短縮モノポールアンテナ近傍に配置された物体による放射電界への影響

短縮モノポールアンテナ近傍に配置された物体による放射電界への影響
Effect of an Object Existing near a Shortened Monopole Antenna to Radiated E-field
岩谷 祥来 †‡
Yoshiki Iwatani
藤井 勝巳 ‡
Katsumi Fujii
和氣 加奈子 ‡
Kanako Wake
須賀 良介 †
Ryosuke Suga
チャカロタイ ジェドヴィスノプ ‡
Jerdvisanop Chakarothai
橋本 修 †
Osamu Hashimoto
†
‡
青山学院大学
Aoyama Gakuin University
渡辺 聡一 ‡
Soichi Watanabe
情報通信研究機構
NICT
1. はじめに
30MHz 以下におけるイミュニティ試験/ばく露評価用の標
準電界の発生源として,短縮モノポールアンテナを使用した
場合に,アンテナ近傍に配置された物体が,アンテナから生じ
る電界強度に与える影響を検討する.具体的には,アンテナの
極近傍に配置された物体が,短縮モノポールアンテナに与え
る影響について,モーメント法に基づく電磁界シミュレータ
(FEKO)を用いて評価を行う.
2. 短縮モノポールアンテナを用いた標準電界法
短縮モノポールアンテナを用いた標準電界法とは,アンテ
ナから発生する電界強度を,アンテナに入射する電力を測定
すれば理論式を用いて決定する方法である.文献 [1] では,電
界強度 E は入射電力 Pin の平方根と比例関係にあり,とくに,
波長 λ に比べてエレメント長が,0.08λ 以下の場合には,入
射電力に対して,周波数に依らず一定の強さの電界を発生で
きることを明らかにした.しかしながら,物体に,電界を照射
するためには,アンテナ極近傍に物体を配置することになる
ため,物体がアンテナの特性に影響を与え,理論計算どおりの
電界強度が得られないことが考えられる.このことは,イミュ
ニティ試験/ばく露評価において,過大もしくは過小評価の要
因となる. 図 1 解析条件
10
Deviation of E [%]
3. 数値シミュレーションによる評価
0
-5
-10
2
3
1
図2
4
5
6 7 8 9
2
3
10
Frequency [MHz]
d の変化による電界強度の偏差(w=1.0m,h=0.01m)
4
Deviation of E [%]
物体が,電界強度に与える影響を特徴付けるパラメータと
して,アンテナからの距離,寸法,金属大地面から物体底面ま
での高さが挙げられる.いま,図 1 のように太さ 14mm,長
さ 2.5m のモノポールアンテナから距離 d 離れた位置に,電
子機器を模擬した一辺の長さ w の立方体を配置する.金属大
地面から物体までの高さは h=0.01m とし,物体はアンテナに
与える影響が最も大きくなるように完全導体とした [2].また,
アンテナ及び金属大地面も完全導体として計算しており,アン
テナ単体での共振周波数は 28.7MHz であった.本モデルを用
いて,d と w を変化させたときのアンテナの入力インピーダ
ンスの変化から,電界強度の変化量を求め,物体の有無による
影響を評価した.
図 2 に w=1m として,d を変化させた際の電界強度の偏差
を示す.同図から,共振周波数付近では,d=2m であっても偏
差が極めて大きくなることが分かった.一方,10MHz 以下で
は,d=1m において,最大偏差が 1.0% 以下であり,物体によ
る影響が十分に小さいことが分かった.
図 3 は h=0.01m,d=1m に固定し,w を変化した際の電界
強度の偏差である.同図から,10MHz 以下では,w=2.5m で
あっても,発生する電界強度の偏差は最大 2.8% であることが
分かった.
低周波数帯においては,アンテナと物体の間に不要な結合が
生じるものの,物体からの散乱波がアンテナ上の電流に与える
影響は小さいため,インピーダンスの変化も小さい.アンテナ
により発生する電界はインピーダンスの大きさに反比例するた
め,インピーダンスの変化量がそのまま電界の変化量となる.
したがって,電界への影響も小さくなったものと考えられる.
d = 0.3m
d = 0.5m
d = 1.0m
d = 2.0m
5
w = 0.1m
w = 0.5m
w = 1.0m
w = 1.5m
w = 2.0m
w = 2.5m
2
0
-2
-4
2
1
図3
3
4
5
6 7 8 9
2
3
10
Frequency [MHz]
w の変化による電界強度の偏差(d=1.0m,h=0.01m)
4. まとめ
本稿では,短縮モノポールアンテナを用いた標準電界発生
法について,アンテナ近傍に配置された物体(金属体)がアン
テナから発生する電界に与える影響について評価した.その
結果,物体がアンテナにより発生する電界に与える影響は小
さく,本発生法は有用であることを明らかにした.
参考文献
[1] 岩谷他, 信学ソ大, B-4-9, Sep. 2015.
[2] 岩谷他, 信学技報, EMCJ2015-114, Jan. 2016.