中渓 正樹 * はじめに 高いタービン・エンジンを装着した新型双発機が 出現することで長距離洋上飛行が現実的なものと 2003 年 11 月 14 日に NPRM − Extended なり、FAA は要件を定め、それに合致する場合 Operations(ETOPS)of Multi-engine Airplanes; にのみ FAR121.161 からの Deviation Authorization Proposed Rule[Docket No. FAA.2002.6717; Notice としてタービン・エンジン双発機の長距離洋上飛 No. 03. 11] RIN 2120.AI03 −が発行されました。 行を承認することにしました。それが当時 ETOPS は双発機による長距離洋上飛行の要件 ですが、現在はそれを原則禁止している条項であ ETOPS(Extended Range Operation with Twinengine Airplane)と称されたものです。 る FAR121.161 に係る特別承認として Advisory その要件とは 1 航空機・エンジンの設計上の Circular 120-42,120-42A とその関連ドキュメント 要件(Capability と Reliability)、2 運航方式及び による要件に基づいて行われています。 3 整備方式に関わるもので、それを定めるもの 本 NPRM は要件を整理・統合・追加し新たに FAR として設定することを提起しています(Part 1, 21, 25, 33, 121, および 135)。 として、1985 年に Advisory Circular120-42(我国 の通達に相当する)が発行されました。 最初は 60 分を 120 分に延長するものに始まり 本改訂案は各方面からの意見を聴取の上、2005 ましたが、その後の実績の蓄積と更なる高信頼性 年春頃の立法化が予定されています。すでに、さ エンジンやそれを装着した新型機の出現で 1988 まざまな意見が出され、立法化までには紆余曲折 年には Advisory Circular120-42A が発行されるこ が予想されますが、本改定案には長距離運航の安 とにより 180 分に延長され、そして ETOPS はご 全性にかかわるほとんどの課題が網羅されている く通常の運航形態として普及し、今日に至ってい と思いますので、その全体を連載で紹介します。 (注)NPRM : Notice of Proposed Rule Making ます。(航空技術 2002 年 12 月号「ETOPS の歴 史とエアラインの取り組み」参照) 1999 年に ATA(Air Transport Association)によ ETOPSとその変遷 る 207 分への延長申請がなされ、FAA がそれに 係る意見聴取を行ったところ、その反応として、 1980 年頃までは、主としてエンジンの信頼性 ETOPS は FAR121.161 からの Deviation から、双発機が長距離洋上飛行を行うことは現実 Authorization としてではなく、Regulation として 的ではなく、従って FAR121.161 によって双発機 FAR に定めるべきとの意見が多く寄せられたた はダイバージョン可能な空港からエンジン 1 基不 め、2000 年 6 月に正式に航空会社、航空機およ 作動時速度で 60 分間の飛行距離以上離れた地点 びエンジンメーカー、FAA などその他関係者で を含むルートを飛行してはならないとされていま 構成される、法に基く専門委員会(略称: ARAC) した。 による検討が開始され、その成果を基に今回の 1980 年代に入り 767 や A300 などの信頼性の *Nakatani Masaki 日本ビジネス航空協会 副会長 [email protected] 46 NPRM が発行されました。 その基本は従来の Advisory Circular を受け継ぐ ものですが、加えて重要な変更もなされています。 航空技術 No.590〔04-05〕 従来からの変更のポイント 国際的動向 上述のように近年は ETOPS はごく通常に行わ 欧州の JAA では既に Working Group による基 れるようになった中で、エンジンの信頼性は十分 準の作成に着手しており、そのメンバーが ARAC に高くなり、2 基のエンジンが故障によって偶発 と連携を密にしています。 的に同時に停止する蓋然性は無視できるレベルに ICAO も既に ANC(航空委員会)が ICAO なっています。そうした実績の蓄積によって要件 ANNEX に Standard and Recommendation として設 が整理され、双発機については 180 分を超える、 定することを決定しおり、2001 年 5 月に ARAC 場合によっては 240 分を超える ETOPS の要件が との会合を持っています(現在 ICAO ANNEX で 整いました。 は“双発機による洋上飛行については一定距離以 一方ヒューマン・エラーあるいは火山噴煙など 内に Diversion 空港を確保する方式に係り国の許 自然現象に起因する複数基エンジンの停止は無視 可を取得すること“としていますが具体的な部分 できないことがクローズアップされるようになり は各加盟国に預けています) 。 ました。また Diversion は実績としてエンジン故 障によるものよりも、むしろ燃料供給システムな ど他の重要システムの故障や、火災、あるいは機 我国のETOPS 内での重病人の発生に起因する場合が現実である 1989 年 6 月に航空局技術部長による“双発機 ことも認識されました。さらに Diversion が発生 による長距離進出運航実施承認審査基準”、運航 した場合、その着陸空港において乗客や乗員を厳 課長による“双発機による長距離進出運航に係る しい自然環境から守り、避難させる為の施設や消 運航体制の審査基準細則”および安全課長による 火・救難能力が重要事項として採り上げられるよ “双発機による長距離進出運航に係る飛行機およ うになりました。 び整備体制の審査基準細則”が発出され、その後 こうした事柄はエンジンの装着基数とは関わり 数回の改訂がなされています。また 2002 年 4 月 の無いものであることから ETOPS の要件の一部 には技術部長により“双発機による 180 分を超え は今回の NPRM で 3 発機及び 4 発機にも(180 る長距離進出運航実施承認審査基準”が発出され、 分以上の場合)適用されることが提起されていま この中で 207 分の ETOPS に係る要件が明示され す。 ています。 従来 Part135(小型機チャーター等)に従い運 これらは何れも FAA の Advisory Circular120- 航される小型機は航続距離が短いため長距離洋上 42、120-42A および関連ドキュメントを踏襲した 飛行は不可能であり,従って Regulation を設ける ものとなっており、これによって我国の航空会社 必要も無かったものですが、1996 年頃から航続 が ETOPS 運航を行っています。従って本 NPRM 距離が 6500NM を超え、且つ Diversion 能力が の Regulation 化の後、早い時期に、それに対応し 180 分を超える新世代機が出現するようになった て措置がなされると考えられます。 事を受け、Part 121 における ETOPS の要件の一 部は、180 分以上の飛行を行う場合、エンジンの 装着基数にかかわらず適用されるべく Part135 へ の条項の追加が今回提起されています。 これらすべてを総称して ETOPS(Extended Operations)としています。 航空機および エンジン製造者の課題 1. ETOPS 仕様の Certification 取得には、エンジ ンのほか ETOPS に関連する貨物室消火、防氷、 電源、燃料、APU 等の各系統の設計および試験 に係る追加要件が、Part 25 および 33 の改訂によ ETOPS に係る FAR の改訂案 47 って新しく課せられます。 2. 要件として製造経験が問われ、双発機に関して Part 121オペレーター(我国の 航空運送事業者に相当)の課題 は過去に Part 25 に従い航空機の Certification を 1. 双発機による 60 分を超える運航の場合、従来 取得した経験の無い製造者は ETOPS 仕様に関わ とほぼ同じく以下の要件を満たさなければなりま る Certification を取得することが出来ません。 せん。 A.機材要件;最長 Diversion 時間に応じて ETOPS 3. 航空機が使用に供された後、一定期間は指定さ 仕様として型式承認された機材を使用しなけれ れた方式に従い個別の不具合発生状況や、統計的 ばならないことと、通信機器の装備要件があり、 な信頼性(IFSD :飛行中のエンジン停止等)を 飛行区域によっては SATCOM の装備が必須と モニターし対応措置とともに FAA に報告し、承 認を得る義務が生じ、そのためにはオペレーター なります。 B.運航要件− Diversion 空港の確保;消火・救 を含めた進化した信頼管理体制の構築と運営が要 難、搭乗者の避難に関わる所定の要件を満たし、 求されます。 且つ最低気象条件を満たす空港を、認可された 所定の距離以内に飛行計画の段階で、および飛 4. 3 お よ び 4 発 機 に も こ れ ま で に は 無 か っ た 行中は常に、確保する必要があります。その為 ETOPS 仕様の型式承認の取得が必要となります。 には絶えず気象情報をモニターし Diversion 空 港の変更やルートの変更に備えます。所定の距 5. 更に On-Demand オペレーションで使用される 離は貨物室消火系統や酸素供給系統など、それ 小型機についても、ETOPS 飛行を行うものにつ 自体に作動時間限界を有する系統による制約を いては ETOPS 仕様の型式承認の取得が必要とな も考慮して定められます。 ります。 North Pacific、North of NOPAC、North Pole 等 では新たに 180 分を超える ETOPS が実施され ることになり、また緯度が 78 度を超える極圏 では常に ETOPS 要件が課せられますので、我 国航空会社にとっても新しい挑戦となります。 C.運航要件−燃料搭載;従来の燃料搭載基準に加 NPRM(安全性の向上と信頼性管理体制の進化)の概要 要件(現行) 60 min迄 60 min以上 Part121 の双発機 Section121.161 Advisory Circular が適用 AC120-42,42A Part121の 3発又は4発機 要件なし Part 135(注1) 要件なし 要件なし 要件なし(注2) 要件(改訂案) 60 min迄 60 min以上 180 min迄 180 min以上 Section121.161 現行practiceを 左記に要件を が適用 FARに新設 追加してFAR に新設 要件なし 要件なし 要件をFARに 新設 要件なし 要件なし 要件をFARに 新設 (注1)エンジンの数に無関係 (注2)厳密にはETOPSではないが、従来FAAは180分を限度としてOperational Specificationにて認めている。 48 航空技術 No.590〔04-05〕 現行のadvisory circularとpolicy ETOP要件 Part121 双発 適用ある場合 着陸可能空港 turbine 機 適用なし から60min↑ には適用なし 定義 ETOPS (extended operations for Two engine aiplanes) Part121 3発以上 Part 135 運航 なし なし FAR改訂案 Part121 双発 Part121 3発以上 着陸可能空港 から60min↑ 着陸可能空港 着陸可能空港 から180min↑ から180min↑ ETOPS (extended operations) ETOPS (extended operations) Part 135 運航 ETOPS (extended operations) 着陸可能空港 迄の最大許容 距離 207min 規定なし 180 min 240 min(路線 時間限界のあ 240 min に特別許可あ るシステムの 限界迄 る場合は240 min↑) 貨物室消火 持続時間 diversion limit +15 min 要件なし 要件なし diversion limit+15 min 消火・ 救難能力 ICAO category 要件なし 4 要件なし 180min↓ICAO ICAO category 要件なし 7 category 4 180min↑ICAO category 7 旅客救済計画 北極圏運航に 要件あり エンジンの 信頼性基準 IFSD rate 北極圏運航に 北極圏運 要件あり 航に要件 あり ・0.02/1,000Hrs 要件なし for 180min ・0.01/1,000Hrs for 207min 特定ETOPS 適用空域 北極圏 作動時間限界 システム 要件あり 要件なし ・0.05/1,000Hrs ・0.2/1,000Hrs for 3 eng for 120min ・0.02/1,000Hrs ・0.1/1,000Hrs for 4eng for 180min ・0.01/1,000Hrs for 180min ↑ 要件あり 指定なし 北極圏 適用空域あり 適用空域あり 適用空域あり 型式証明のlimit 要件なし (207min↓) 要件なし 要件なし Par25 appendix L Par25APDXL 猶予期間8年 空港の出発時 気象条件 要件あり 要件なし 要件なし 要件あり 要件あり 要件あり ETOPS整備 プログラム 要件あり 要件あり 要件なし 要件あり 要件あり 要件あり 通信能力 SATCOM for 207 min 要件なし 要件なし 追加装備と SATCOM (180min↑) ETOPS に係る FAR の改訂案 北極圏 要件あり diversion diversion limit+1 min limit+1 min (猶予期間8年) (猶予期間6年) 追加装備と 追加装備と SATCOM SATCOM (180min↑) (180min↑) 49 え、Diversion を前提とした燃料搭載要件にも 間は、新規に ETOPS を開始する場合にのみ、電 従うことになります。 源系統および燃料供給系統の能力が所定の要件を D.整備要件; ETOPS 認定整備従事者による特別 満たすことが求められます。 飛行前点検をはじめ、特別な整備実施体制、お よび信頼性管理体制が求められ、それが FAA 3. 運航要件− Diversion 空港の確保; Part 121 の監督下に置かれます。 オペレーターと同様ですが、Diversion 空港の消 火・救難能力に関する要件は免除され、且つ航空 2. 3 および 4 発機では従来特別な要件無しに長距 機の消火系統その他の時間限界を有する系統の時 離洋上飛行を実施していたのですが、180 分を超 間限界に関わる要件は Regulation 発効後 8 年間 える運航の場合、ETOPS に係る双発機と同様な は免除されます。 機材、運航、整備要件に従わなくてはならなくな り、ルート選択の自由度が制限される可能性があ 4. 運航要件−燃料搭載;従来の燃料搭載基準に加 ります。現行機材は貨物室の消火持続時間に係る え、Diversion を想定した燃料搭載要件にも従う 要件を満たしていないので、Regulation 発効後 6 ことになります。 年以内に改修または新仕様機材を導入することで 対処しなければなりません。 5.整備要件; ETOPS 認定整備従事者による特 別飛行前点検を含め、Part 121 オペレーターと同 3. 南・北極ともに緯度が 78 度以上の地域を飛行 様な要件が課せられます。 する場合、エンジンの基数や Diversion 空港まで の距離の如何に関わらず ETOPS の機材、運航、 6. Polar area の運航;これについて ETOPS とは および整備要件に加え、特別な付加要件が課せら 別に、一定の要件がこの飛行区域の全ての運航に れます。 課せられます。 Part 135オペレーターの課題 (注 1)Commuter : FAR part 119.21(a)(4) に定義されているもの。 Part 135 は Commuter( 注 1) お よ び On- 機材はターボジェット以外、客席 9 席以 Demand オペレーション(注 2)に課せられるオ 下、最大有償搭載重量 7,500 lbs 以下、 ペレーター要件であり、我国航空法にはこれに相 運航形態は時刻表に基づき最低週 5 便以 当するものが定められていませんが、米国から飛 上運航する定期便(有償) 来する航空機はこの要件に基づき運航されるもの ( 注 2) On-Demand Operation : FAR part が多いと予測されます。180 分以上 240 分以内の 119.21(a)(5)に定義されているもの。 ETOPS が認められますが以下の要件が課せられ 機材はターボジェットを含む客席 30 席 ます。 以下、有償搭載重量 7,500 lbs 以下(これ 1. 経験要件;原則少なくも 12 ヶ月間のタービン 以 上 の 客 席 の 場 合 は part 121 に よ る エンジン機による国際ルート運航経験が求められ Supplemental operation と な る )、 ます。 運航形態はチャーター(有償) 2. 機材要件; Part 121 オペレーターと同じ Part 25 および 33 に基づく ETOPS 仕様としての型式 承認を有することが求められます。但しこれは Regulation 発効 8 年後であり、それまでの移行期 50 (つづく) 6 月 号 に 「 そ の 2 : ハ ー ド ウ ェ ア ( 機 材 ) の 要 件 」、 7 月号に「その 3 :整備を含むオペレーションの要件」を連 載します。 航空技術 No.590〔04-05〕 中渓 正樹 * 先月号(その 1)では改訂案の背景と概略につ いて述べました。今回は、エンジンや機体システム 等ハードウェアに対する要求事項について解説しま す。 エンジンの設計および 試験に係る要件 エンジンの空中停止、推力の喪失、あるいは推 力制御の不能、などの事態を引き起こすことの無 ETOPS Configuration, Maintenance and Procedures Standard(CMP)(Part1.1) いよう、エンジンの設計・製作・試験には Part CMP Standard とは FAA が ETOPS のハードウ 適性(Engine Type Design Eligibility)を保証する エアー適性を判断する基準であり、当該エンジ ものであり、それのみが直ちに機体や運航の ン・機体の組み合わせが設計・試験および運用の ETOPS Certification を可能とするものではありま 全ての段階で満たすべき設計と取り扱い上の要件 せん。 を示すパッケージです。原型である非 ETOPS 機 1. 双発機に装着されるもので使用実績が 250,000 の型式証明の Amendment(補完・修正)を成す 時間未満のエンジンに係る要件(Part 33.200 : もので、機体やエンジンの設計の要件、整備の要 Early Extended Operations Eligibility and Requirement , 件、運航の要件、更には実運航実績に基づき必要 Subart G : Special Requirement Turbine Engine aircraft となるそれらの変更はすべてこの CMP Standard Engines , Part 33) として管理されています。内容としては 1 機体 33 にて新たな要件が課せられます。 但しこの要件に適うエンジンの使用は ETOPS に要求されるうちの一要素であるエンジン本体の ワールド・ワイドの総使用実績が 250,000 エン やエンジンの設計要件(改修仕様も含む)に加え、 ジン飛行時間未満のエンジンについて ETOPS 適 2 特別検査項目、3Hardware の時間限界 4 修 性を保証する上で以下の設計・試験に係る要件が 理持ち越し基準、5ETOPS に係り特に要求され 課せられます。 る整備方式および 6 運航方式が含まれ、具体的 A. エンジンの停止、推力の喪失、あるいは推力 には設計仕様、サービス・ブレティン、サービ 制御不能を惹き起こすような整備ミス、故障あ ス・レター、改修仕様書類、メンテナンス・マニ るいは不具合が発生しないように設計上の留意 ュアル、整備要目、運航規程等がその容を形成し が払われているかについて、FAA による(設 ます。CMP は FAA によって管理されますが、設 計に係る)承認が必要となります。 計・製造者、オペレーター、FAA で共有され、 Airworthiness Directive(AD)によって更新される “生きたドキュメント”です。 B. 過 去 10 年 間 に 、 当 該 エ ン ジ ン 製 造 者 が Certification を得た類似のエンジンの使用実績 データが十分に蓄積されており、それに照らし て、エンジンの停止、推力の喪失、あるいは推 力制御の不能を惹き起した、(惹き起こしたか *Nakatani Masaki 日本ビジネス航空協会 副会長 [email protected] 1 もしれない)問題点に対する再発防止策が設計 において採りいれられている事(十分な実績が 航空技術 No.591〔04-06〕 ない場合別途 FAA の承認が必要) 。 C. 以下の試験が実施されなければなりません、 なお実施に先立ってその Plan に係り FAA の承 認が必要となります。 (1)3,000 サイクル試験 Start, Take Off , Climb, Cruise, Descent , メンテナンス・プログラムに従った整備で 発見され対処できることを確認しなければ ならない。 (d)上記の異常は当該型式エンジンの設計や、 あるいは派生型式の非 ETOPS エンジンの 使用実績などから、その発生がある程度推 Approach, Landing ,Thrust Reverse, を Simulate 測できるモードや頻度でなければならない (模擬)したものを 1 ミッション・サイクルと (予測もつかなかった、というものが多く して最低 3,000 サイクルの試験を行うこと。1 あると適性が承認されない事がある)。 エンジンのみ作動による Diversion の Simulation も適宜織り交ぜること。 (2)振動耐性試験 上記の 3,000 サイクル試験は、2 軸構成ター 2. ETOPS 機のエンジンの耐空性を保つ上での要 件(Item 33.3(c)of Appendix A : Instruction for Continued Airworthiness , Part 33) ビンエンジンの場合、低速、および高速ロータ ETOPS 仕様機に装着されるエンジンのコンデ ー(3 軸構成の場合は中速ローターを含め)に ィションをモニターする方式・手順が Instructions アンバランス状態を仕組み、それによる回転振 for Continued Airworthiness としてエンジン製造者 動(最大サービス許容値の 90 %の振動レベル) により設定されなければなりません。それによっ が発生した状態で行うこと。またそこでは達成 てエンジン 1 基不作動による Diversion に際し すべき最低の振動サイクル総数が一定の回転数 て、当該エンジンが必要最大推力や抽気出力が出 ピッチ毎に指定されていること。 せることを飛行前に確認できることが求められま (3)3,000 サイクル試験実施前の性能記録の採 す。とりわけ双発機の ETOPS 仕様機に装着され 取 るエンジンの場合、適性が承認されるに先立って、 試験に先立って Calibration Run(校正試運転) モニターのための方式・手順が実証(Validate) を実施し出力、推力特性を記録しておくこと。 されていなければなりません。 (4)3,000 サイクル試験実施後の検査 (a)Calibration Run を実施し、3,000cycle 試 3. その他の要件 験実施前の性能記録と照合して出力または その他要件として Part 33.71(オイル・タンク 推力特性の変化が所定の範囲であることを のキャップの設計要件)Part 33.90(Initial mainte- 確認する。 nance Inspection Test)が定められます(説明略)。 (b)On Wing(機体装着)の状態で外部から の目視点検を行う。この場合実施方法とリ ミット値についてはオペレーターにより使 用されるメンテナンス・マニュアルに従っ て行うこと。 (c)その後エンジンを分解し、エンジンの停 航空機の設計および 試験に係る要件 1. ETOPS 仕様承認を得る上での基本要件(Part 25.1535) 止、推力の喪失、あるいは推力制御の不能 A. 最長 Diversion 時間に加え、ミッション飛行時 を惹き起こすような(異常な磨耗や変形な 間を加味してリスクを考慮した要件に適合する どの)痕跡が無いかについて検査すること。 ことが求められています。つまり同じ 180 分の 異常ある場合は対策を施すと共に、根絶で ETOPS 運航でも、目的空港まで 5 時間の飛行 きない性質のものである場合は、それが現 と 10 時間の飛行ではトータルのリスク度合い 実に運航中の不具合となって発生する前に が(例えばオイル消費率が大きい場合など)異 ETOPS に係る FAR の改訂案 2 なることに配慮するべきとしています。 B. 航空機の信頼性と同様に重要なこととして、 ETOPS Group 1 Systems(例示) ・油圧系統、油圧系統、電力系統等、エンジンの Diversion 発生時、そのときの機材上の不具合 数にリンクした Fail Safe 冗長性を有するもの。 が及ぼす乗員のワークロード増、オペレーショ ・燃料供給系統、Thrust Reverser、Engine Control な ンの複雑化、乗員乗客の身体的環境への影響を ど直接的にエンジン停止、推力喪失に関係する 配慮することを挙げています。 もの。 C. 以下 2 項に述べる Part 25 Appendix L に適合す ること。 ・ Emergency Generator、APU などエンジン停止に 際しバックアップとなるのもの。 ・防氷システムなどエンジン 1 基不作動巡航高度 2. 航空機システムに係る要件(Section I(a)of での飛行に重要なもの。 Appendix L : Extended Operation , Part 25) ETOPS Group 2 Systems(例示) A. 防氷システム ・長距離航法機器、通信機器、機器冷却システム、 エンジン 1 基不作動で、且つ Decompression (客室与圧の喪失)が発生し、着氷が起こりや など、Diversion 中に不具合が発生すると、影響 の大きいもの。 すい状況にある低高度(10,000 Ft 以下)で ・貨物室消化系統や酸素系統などそれ自体に時間 Diversion する場合でも、安全に飛行できるよ 限界があり、それによって ETOPS の Diversion う、機体およびエンジンの防氷システムを装備 時間が制限されるもの。 すること、また防氷システムで防護されていな ・操縦系統(の操舵力)、自動燃料重心制御系統や い機体の領域は着氷しても軽微であり、機体の 空調系統など Diversion 中に不具合が発生すると 制御に影響を与えたり、多大な空気抵抗を生じ 乗員に過剰なワークロードを課する、あるいは るものではないことが示されなければなりませ 搭乗員に身体的悪影響を及ぼすもの。 ん。別途本要件への適応方法に係る Advisory Circular が発行される予定です。 B. 電力系統 180 分以上の ETOPS を行う航空機には独立 した 3 系統以上の電力系統を備えていることが ・ SATCOM、GPS 等 Diversion を含め長距離飛行 の安全性を補強する目的で装備されるもの。 3. 燃料供給系統と APU に係る要件(Section I of (b)Appendix L : Extended Operation , Part 25) A. 燃料供給系統の設計 求められます。従って双発機の場合 APU 燃料供給系統に不具合がある場合でもエンジ Generator は重要な役割を担うことになります。 ンには所定の圧力(通常 0.5 psi)で、要求され る最大流量が確保されることが求められます C. 作動時間限界を有するシステム ETOPS Significant System(注)のうち作動時間 限界を有するものは、その能力が明確にされな (このためには、Suction Feed は用を為さないの で Booster Pump による加圧が必要となる。)。 (1)180 分以上の ETOPS に供する双発機の場 ければならないとし、特に最も制限的なものは、 合、各メイン・タンクに少なくも 1 つの その能力がフライト・マニュアルに記述される Booster Pump が確保され、また少なくも 1 ことが求められます。 つの Cross Feed Valve の作動電力がエンジン (注)ETOPS Significant Systems 不具合が発生した場合 ETOPS 運航に悪影響を及 ぼすシステム、あるいはその機能が Diversion に重 要な役割を果たすシステムで Group 1 と Group 2 に 分けられている。 3 あるいは APU により駆動される発電機以外 のバックアップ電源から確保されなければな らない。 (2)燃料の量が所定レベル以下になった時、乗 員に警告灯などでそれを報せる警告手段がな 航空技術 No.591〔04-06〕 ければならない(それが無いために発生した、 5. CMP に係る要件(Section I (d) of Appendix L : すべてのエンジンが停止した 2 例がある)。 Extended Operation , Part 25) 機体、エンジン、ETOPS Significant System に B. APU の設計 係るアセスメントを行い、その結果として APU は従来の地上における補助動力ではな ETOPS 運航の信頼性を保つ上で必要な、機材構 く、飛行中の重要なバックアップ機能を提供す 成、整備および運航要件が特定された場合には るものであるので、より高い信頼性(Adequate Configulation Maintenance and Procedure(CMP)に Reliability と表現されている)が求められます。 明記されることが求められます。 また空中における始動および連続運転の作動可 能範囲も機体のそれと同じでなくてはなりませ 6. フライト・マニュアルに係る要件(Section I (e) ん(但し最高 45,000 Ft)。これは APU が必要 Appendix L Extended Operation Part 25) となった場合も、ルートやフライトレベルなど ETOPS に係るフライト・マニュアルの追加記 変更することなく飛行できる事に配慮したもの 載事項を以下 5 項目としていますが、ここでは性 です。 能データの記載は求められていません。 飛行中の APU は通常電力確保のみに使用さ A. 許容される最大 Diversion 時間を含め、ETOPS れますが、客室与圧のためにも Bleed Air を供 に係る特別な Limitation があれば Special 給できる場合もあるので、その場合の作動可能 Limitations に記載する。 範囲も明確に保証することが求められます。 B. 必要な Markings や Placards について。 C. ETOPS に必要な搭載機器、装置および乗員の C. エンジン・オイル・タンク給油口キャップ Procedure。 キャップは取り付けエラーがあっても危険な D. 2C に述べる作動時間限界を有するシステムの オイルロスには至らないような設計になってい うち、最も制約的なシステムとその時間限界。 ることが求められます(本要件に呼応したタン E. 以下の記述“このエンジンと機体の組み合わ ク側の設計要件は Part 33.71 に定められてい せの Type Design の Reliability Performance につ る)。 いて Part 25.1535 に照らして評価した、そして 所定の CMP Standard を満足すれば、xxx 分の 4. Engine Conditioning Monitoring に係る要件 ETOPS を行うに相応しいと認める。但しこの (Section I (c) of Appendix L : Extended Operation , 記述は ETOPS の実施を承認するものではな Part 25) 指定されたエンジンパラメーターをモニターす ることで異常を検知し、事前に整備処置を行う事 い”つまりフライト・マニュアルはハード・ウ エアーの能力を保証するだけのものであること を Remind している。 を目的とした Engine Conditioning Monitoring に関 して、オペレーターには新たに Part 121、および 7. 双発機に係る要件(Section II Two Engine 135 でその実施が求められており、またエンジン Airplanes Appendix L Extended Operation Part 25) 製造者には先に述べたように Part 33 でそのため A. 実績に基づき承認を得る場合の要件 の Instruction を設けることが求められています。 航空機が Diversion を含め ETOPS 飛行を安 機体製造者としてもそのための Instruction を設け 全に行うことができる能力、および信頼性を達 ること、およびそれは双発機の場合には、ETOPS 成していることをフリートの経験実績から証明 仕様承認を得る前に検証されたものでなければな し、その双発機の機体とエンジンの組み合わせ らない事が要件となっています(3、4 発機の場 について ETOPS 仕様承認を得るための要件を 合は検証は要件とならない)。 以下としています。但し同時に上述の 1 項から ETOPS に係る FAR の改訂案 4 6 項の要件を満たしていることが条件となりま IFSD のワールド・ワイドな実績(12 ヶ月移 す。 動平均)が、承認を得ようとしている最長 (1)要求される経験 当該機体・エンジンの組み合わせでの実績 Diversion 時間に見合ったものでなければな りません、つまり; が、原則としてワールド・ワイドで 250,000 (a)120 分までの運航については:略 エンジン時間必要である。他の機体における 0.05/1,000 エンジン時間以下で、且つ CMP 実績を取り入れることもできるが、その場合 に記載されており、その効能が実証されて でも“Significant Portion”は当該航空機にお いる新規のまたは追加の防止対策を講じる ける実績で無ければならない。 ことで 0.02 に向けての改善が期待される (2)推進系統の評価 以下の実績データに基いて為される。 (a)発生したすべての In Flight Shut Down に 係る詳細データ。 ものであること。 (b)180 分までの運航: 120 分の CMP Standard にて、ほぼ 0.02/1,000 エンジン時 間以下であること、あるいは CMP にリス (b)Unscheduled Engine Removal Rate と、そ トされており、その効能が実証されている の 6 ヶ月および 12 ヶ月移動平均の時系列 新規または追加の再発防止対策を完遂する 推移、主な取り卸理由等の概要。 ことで略 0.02 が期待されるものであるこ (c)推進系が理由であった出発遅延、フライ ト・キャンセル、離陸断念、Diversion。 と。 (c)180 分を超える運航: 120 分または 180 (d)総エンジン時間および総サイクル。エン 分の CMP Standard にて、ほぼ 0.01/1,000 ジン時間ごとの Age Distribution(エンジン エンジン使用時間以下であること、あるい の使用時間分布)。 は CMP にリストされており、その効能が (e)信頼性に影響する推進系のコンポーネン トの MTBF。 (f)In Flight Shut Down Rate の 6 ヶ月および 12 ヶ月移動平均。 実証されている新規または追加の再発防止 対策を完遂することで略 0.01 が期待され るものであること。 (5)飛行試験 すべての発生した In Flight Shut Down お エンジンの不作動や、最悪のシステム故障 よび推力制御不能については、発生の可能 など、実運航で発生の可能性がある異常事態 性も含め原因が特定され、有効な再発防止 において、航空機の飛行特性や性能、および 策の施されている事が求められます。そし 乗員が適切に対応出来るかどうかを検証する てこの再発防止対策は CMP Document に記 ために試験飛行の実施が要求される。 載されます。 (3)機体システムの評価 先述の 2 項の要件に従って ETOPS Early ETOPS Method とは、航空機に係わる Significant System に係る信頼性の実績データ ETOPS 仕様承認を、当該エンジン・機体の組 に基き評価を行う。すべての発生した不具合 み合わせによる運航実績無しに取得するための および発生の可能性については原因が特定さ 方式で、要件としては; れ、有効な再発防止対策が施されていること が求められます。そしてこの再発防止対策は CMP Document に記載されます。 (4)In Flight Shut Down(IFSD)Rate 当該機体・エンジンの組み合わせにおける 5 B. Early ETOPS Method (1)実績データの評価 当該航空機製造者が過去に Part 25 に従っ て Certification を取得した航空機で経験し た、設計、製造、運航上の、整備上の関連あ る問題点に係り、行った設計上の対処を明ら 航空技術 No.591〔04-06〕 かにすることが求められる。問題点とは 果発見された問題点は、7B(8)に述べる ETOPS Group1 Systems に係るもので、IFSD “問題点を追跡し、対策を講じるシステム” や Diversion を惹き起こした、あるいはその 可能性があったものを指す。実績経験には、 に則り適切に処理されることが要求される。 (5)新技術の検証試験 類似の、あるいは他の製造者の航空機に装着 設計に新技術が導入された場合、あるいは された同じ機器に係るものを含むことも認め 製造工程に新技術が導入された場合は、試験 られる。こうした評価は新機種の信頼性を知 の上、それらが適切であることを証明しなけ 見する上で極めて有効なものであり、換言す ればならない。 ればこうした経験の無い製造者は Early (6)APU の検証試験 ETOPS Method に基づいては ETOPS 仕様承 認を得ることが出来ないことになる。 (2)推進系統の設計 装着するエンジンは Part 33.200 に基き、 エンジン不作動時のバックアップとして APU を使用する場合は、サンプル APU で 3,000 Equivalent Airline Operational Cycle の試 験をした上で分解検査を行うことが要求され ETOPS Eligibility が承認されたものでなけれ る。また試験や検査の結果発見された問題点 ばならない(“エンジンの設計および試験に は、7B(8)に述べる“問題点を追跡し、対 係る要件 1 項”参照)。機体製造者にはその 策を講じるシステム”に則り適切に処理され エンジンを装着した推進系統が IFSD を惹き ることが要求される。3,000 Equivalent Airline 起こさないような設計が求められるが、この Operational Cycle の詳細については別途 AC ことを解析、試験、および他の航空機による が発行されるが、高高度における低温での始 実績などに基いて証明しなければならない。 動や、地上での高温での始動・運転、更には 解析結果は次の IFSD Rate が見込まれること 電力と抽気負荷をかけた状態での耐久試験な を示さなければならない: 0.02/1,000 エンジ どが含まれる。 ン 時 間 ( 1 8 0 分 以 下 の E T O P S の 場 合 )、 0.01/1,000 エンジン時間(180 を超える ETOPS の場合) (3)整備および運航の Procedure エンジンを含む ETOPS Significant System (7)航空機の飛行試験(Demonstration Test) 当該機体・エンジンの組み合わせで、実際 の運航環境下で Diversion を含む ETOPS 飛 行ができることを飛行試験において Demonstrate(実証)することが要求される。 に係る運航および整備の Procedure は適切で これは基本となる当該型式証明を得るために あることが実証されなければならないが(特 行われる試験飛行とは別に、付加的に行われ にヒューマン・エラーを避ける観点で)、こ るもので、実際の場では両者を組み合わせ行 の過程で明らかになった問題点は 7B(8)に うことはできるが、目的はまったく異なるも 述べる“問題点を追跡し、対策を講じるシス のであり、少なくも 1,000 Flight-cycle の飛行 テム”に則り適切に処理されること。 試験が要求される。エンジンに係るサイクリ (4)推進系統の実証試験 ックな試験は 7B(4)に述べた 3,000 Cycle 7B(2)項で述べたように装着されるエン Test で既にカバーされているので、本試験で ジン本体は Part 33.200 に基き 3,000 Cycle はむしろ巡航における試験に重点をおき、低 Test および Vibration Test が実施され、更に 温での凝縮した水分の氷結の影響等を含め、 分解検査が行われるが、本項ではその Test 1 基不作動巡航における能力、および信頼性 は Engine Accessory, Nacelle, Thrust Reverser 等が装着されたいわゆる全装備の状態で行わ れることを Remind している。また検査の結 ETOPS に係る FAR の改訂案 の確認が為される。 (a)飛行試験に含まれるべき項目 i. ETOPS 飛行の模擬(APU の高高度での 6 始動を含む)。 ii. 最長の巡航の後、承認を得ようとしてい る最長 Diversion 時間の飛行。 直ちに明らかにし、2 タイムリーに FAA に 報告し、3 必要な対策を立案し、4 それに 関し FAA の承認を得、5 実行し、6 評価 iii. エンジン 1 基不作動状態で、承認を得 する、一連のアクションをシステマティック ようとしている最長 Diversion 時間の に行う体制である。本項の体制は Early MCT(最大連続定格推力)による飛行。 ETOPS Method による型式証明取得時まで有 iv. 可能性が考えられる最悪の故障や不具 合が発生した状況での Diversion。 v. 代 表 的 な 複 数 の Diversion 空 港 へ の Diversion の実行。 vi. 長距離巡航を行った後、厳しい地上環 境でのオペレーション(高湿、高温、低 温)の繰り返し実施。 効に機能しなければならないものであるが、 実運航に供された後も Part 21.4 に従い航空 機、エンジン製造者、オペレーター、FAA を包含する同様な体制が ETOPS の安全性を 確保する上で最も重要なものとして別途確立 される。 (9)信頼性の承認基準 (b)7B(7)(a)iii、iv、および v 項の試験 これは ETOPS Method による型式証明取得 飛行において、操縦特性、性能、および乗 の最終関門であるが、7B(7)航空機の飛行 員が対応する上での難度に係わる検証が行 試験で明らかになった問題点のタイプおよび われる。 その発生確率は既に ETOPS 型式証明を取得 (c)不作動エンジン模擬はその位置が均等に した航空機のそれと比較して同様であること なるよう配慮すること(7B(7)(a)iii につい が要求されている。比較対象は当該製造者に ては同一エンジンで MCT Diversion を行 よるものには限らないが NON ETOPS 機は比 う)。 較の対象にはならない。即ち予期しないよう (d)本飛行試験はオペレーターに推奨する整 なタイプの故障や不具合が数多くランダムに 備マニュアルおよびオペレーション・マニ 発生する場合は型式証明には至らないことが ュアルに準じて行い、その適切性およびヒ ありうる。 ューマン・エラーが介在しない事を検証す る。 ( e) 飛 行 試 験 終 了 後 、 ETOPS Significant C. 実績と Early ETOPS Method とのコンビネー ションの場合 System について目視点検を行い、且つエ 7A(1)で要求される実績 250,000 エンジン ンジンについては Gas Path Inspection を行 時間は別途これを補うものがあれば 15,000 エ うことによって、IFSD や Diversion を惹き ンジン時間(場合によってはそれ以下)に減じ 起こすような問題点の有無を確認する。問 ることができる。但し以下の項目の要件を満た 題点のある場合は“問題点を追跡し、対策 すことが必要である、即ち; 7A(5)飛行試験 を講じるシステム”に則り適切に処理され 7B(1). 関連ある実績データの評価 7B(2) 推 ることが要求される。 進系統の設計 7B(3)整備および運航の (8)問題点を追跡し、対策を講じるシステム 7B(4)推進系統の実証試験、7B(6) Procedure 7B(4)推進系統の実証試験 7B (5)新技術の検証試験 7B(6)APU の検証試 APU の検証試験、7B(7)航空機の飛行試験 験 7B(8)問題点を追跡し、対策を講じるシ の過程において見出された ETOPS Significant ステム 7B(9)信頼性の承認基準。 System の問題点を解決するために、“問題点 7 を追跡し、対策を講じるシステム”が確立し 8. 3 発または 4 発機の ETOPS 仕様承認に係る ていなければならない。これは 1 問題点を 要件(Section II Airplanes With More Than Two 航空技術 No.591〔04-06〕 Engine , Appendix L : Extended Operation , Part 25) “推進系統の実証試験”は課せられていません。 但し(6)信頼性の承認基準に関しては双発機 の 7B(9)とは異なり比較の対象として、派生 A. 実績に基づき承認を得る場合の要件 双発機の場合(7A 項)と同じ内容の、以下 の要件が課せられます。 型の非 ETOPS 機をも含めるとしています。こ れは当分は ETOPS 型式証明を得た航空機が数 少ないであろう事を救済する処置です。 (1)要求される経験 (1)整備及び運航の Procedure (2)機体システムの評価 (2)新技術の検証試験 (3)飛行試験 (3)APU の検証試験 しかし双発機の場合には課せられる“推進系統 (4)航空機の飛行試験(Demonstration Test) の評価”“In Flight Shut Down(IFSD)Rate”は (5)問題点を追跡し、対策を講じるシステム 課せられていません。理由は 3、4 発機の場合、 (6)信頼性の承認基準 計算上 IFSD Rate が夫々 0.2 および 0.1 以下で あれば残りの 2 基が同時偶発的に停止する可能 C. 実績と Early ETOPS Method とのコンビネー 性は無視できる一方、現実の IFSD Rate はそれ ションの場合 よりもはるかに低いため 1 基が不作動になって 8A(1)で要求される実績 250,000 エンジン も、その後必要な推力は常に確保されるとの前 時間は別途これを補うものがあれば 15,000 エ 提が成り立つからでです(4 発機に関しては 1 ンジン時間(場合によってはそれ以下)に減じ エンジンだけが残る場合、この推力は飛行に関 ることができる。但し以下の項目の要件を満た して有意とは見なされない。更にもう 1 基が不 すことが必要である、即ち; 8A(3)飛行試験 作動となる 4 発機の確率は IFSD Rate が同じで 8B(1)整備および運航の Procedure 8B(2)新 あれば、3 発機の 3/2 倍である) 。 技術の検証試験 8B(3)APU の検証試験 8B (5)問題点を追跡し、対策を講じるシステム B. Early ETOPS Method 8B(6)信頼性の承認基準。 双発機の場合(7B 項)と同じ内容の、以下 (1)から(6)の要件が課せられますが、同上 (つづく) の理由で双発機の場合とは異なり“推進系統の 評価”“In Flight Shut Down(IFSD)Rate” “関 連ある実績データの評価”“推進系統の設計” 7 月号には「その 3 :整備を含むオペレーションの要件」 を連載します。 お知らせ 航空科学博物館(成田) 2. 航空写真教室 1. 成田空港飛来機展(2003 年度) 趣味撮影ポイントや撮影秘話などについて、航空 写真の第一人者から話しを聞くことができます。 平成 15 年度に成田空港に飛来した航空機の中か ら、新たに乗り入れたエアラインや珍しい航空機を 写真や模型で紹介します。 期 間: 6 月 13 日(日)13 時から 場 所:航空科学博物館 館内外 日 時: 6 月 1 日(火)∼ 27 日(日) 場 所:航空科学博物館 2F 展示室 ETOPS に係る FAR の改訂案 ここに掲載された行事についてのお問い合わせは、 「航空科学博物館」 〒 289-1608 千葉県山武郡芝山町岩山 111-3 TEL 0479-78-0557 8 中渓 正樹 * (その 1)では改訂案の背景と概略、(その 2) ではハードウェアの要件について述べました。今回 は航空会社など 121 オペレータに課せられる運航、 整備上の要件について解説します。 トを飛行する場合、Part 121 Appendix O に従い FAA の承認を取得していなければならない。そ の ETOPS 承認はオペレーターの Operations Specifications(運航規程)に記載される" 更に、レシプロ・エンジン機についても、 Part 121オペレーター に求められる要件 Diversion 可能空港からエンジン 1 基不作動速度 (無風)で 60 分の飛行距離以上離れた地点を含む ルートを飛行する事を原則禁止するが、地勢特性 121 オペレーターとは国内および国際の定期航 や、オペレーションの種類、あるいは航空機の性 空会社(Domestic および Flag Operator)、および 能によっては承認する、との条項を新設し、現時 30 席以上、あるいは有償搭載重量 7500Lbs 以上 点では難しいにしろ、更に信頼性が向上すること の機材を使用するチャーター・オペレーター を期待し、将来に向けての含みを残しています (Supplemental Operator)を指しますが、この運航 (この場合エンジンの装着基数については言及さ に係り以下に述べる、1 項から 13 項の要件が課 れていません) 。 せられます。 1. ル ー ト の タ イ プ と 航 空 機 に 係 る 制 限 (Part 121.161) 2. 通信能力に係る要件(Part 121.99, 121.122) Diversion 時の予想ルート上を含め、音声通信 冒頭(4 月号の「はじめに」参照)に述べたよ が行えることが要求され(行えない場合には HF うに、現在 ETOPS は Part 121.161 で双発機が Data-Link 等によるデータ通信能力が必要)、特に Diversion 可能空港からエンジン 1 基不作動速度 180 分を超える ETOPS 運航の場合には、加えて (無風)で 60 分の飛行距離以上離れた地点を含む SATCOM による ATC 通信およびカンパニー音声 ルートを飛行する事を禁止していることに係り、 通信能力が要求されます。これら通信能力は飛行 その Deviation Authorization として行われていま ルートや高度に影響されるため、ETOPS の飛行 すが、本 NPRM ではこの Part 121.161 を以下の 計画に際してはルート・高度の選定(Diversion ように改訂することを提案しています。 時のルートを含め)に関連して通信を確保するた “Diversion 可能空港からエンジン 1 基不作動 めの条件を課さなければなりません。 速度(無風)で、双発タービン・エンジン機の場 合は 60 分、3 発または 4 発タービン・エンジン 機の場合は 180 分の飛行距離以上離れた地点を含 3. ETOPS Alternate の消火・救難能力に係る要件 (Part 121.7, 121.97, 121.106) むルートを飛行する場合、および FAA により ETOPS Alternate とは Diversion に備えて指定さ “an Area of ETOPS Applicability”(Part 121.7 で定 れるエンルートでの Diversion 用空港を指します 義されている)として指定されている空域のルー (9 項参照)。ETOPS Alternate に Diversion する場 合は、出発地代替空港や目的地代替空港の場合と *Nakatani Masaki 日本ビジネス航空協会 副会長 [email protected] 44 異なり、何らかの機材故障や不具合を抱え、緊急 航空技術 No.592〔04-07〕 性を以って行われるわけですから、それに対応し の身の安全を確保する手立てや、Diversion 先から て以下のような消火・救難能力に係る要件が課せ の脱出の手立てが実証されなければなりません。 られます(但し、これは飛行計画作成上の要件で あり、飛行中の乗員はこれに拘らず、適した Diversion 空港を選定出来ることは勿論です) 。 6. 整備に係る要件(Part 121.374) Part 121 Appendix O に従い、FAA の承認を取得 消火・救難能力については、ICAO Annex に定 して ETOPS を行うオペレーターは次の A から H められた基準(機体のサイズに応じて消火クルー の要件に従って整備を行うことが要求されます。 の編成や車両数を定めた能力基準)を以って次の A. Configuration Maintenance Procedures ように指定しています。 A. 180 分 ま で の ETOPS の 場 合 は 、 ETOPS Standard(CMP) CMP に定められた要件に基いて整備が行わ Alternate は ICAO Category 4 に相当する消火・ れる体制が確立していることが要求されます。 救難能力を具備すること。 CMP に係る変更は Airworthiness Directive によ B. 180 分までの ETOPS に関する例外許可で行わ ってのみなされます。 れる 207 分 ETOPS の場合は、207 分の Diversion 時間内にある ETOPS Alternate は、少 なくも 1 つは ICAO Category 7 であること。 C. 180 分を超える ETOPS については、全ての B. Continuous Airworthiness Maintenance Program(CAMP) CAMP は Part 121. Subpart L の要件に基く総 ETOPS Alternate が ICAO Category 7 であること。 合的な監視プログラムであり、一連の整備作業、 但し、この能力が常時具備されていることを 検査、監査、や信頼性データ分析などにより構 条件にはしていません、飛行中の航空機からの 成されますが、本項ではそれを ETOPS に適用 要請を受けた後、30 分以内に機材や人員を当 すべく発展させたものを設定し、実施する事を 該空港の近傍から補強し、整えることができる 要求しています。機体製造者により推奨された 場合も ETOPS Alternate として指定することが もの、あるいは、従来から当該オペレーターで 出来るようになっています。 活用している CAMP を ETOPS に合わせて追 加・発展させたもの、の何れでも良いとされて 4. 性能データ(Part 121.135 (10) ) 先に、“航空機の設計および試験に係る要件” (6 月号 p.33 参照)の 6 項で、フライト・マニュ います。CAMP に含まれるべき事項を以下(1) から(8)に述べます。 (1)ETOPS Pre-Depurture Service Check アルには追加性能データは含まれないことを述べ 所定の訓練を受けて認定された ETOPS 認 ましたが、本項でエンジン不作動時および客室与 定整備従事者による、ETOPS Significant System 圧不作動時の巡航速度が、FAA が承認するオペレ に係る特別な飛行前点検が要求されます。 ーターの規程に記載されることを求めています。 (2)Dual Maintenance ETOPS Dual Maintenance と は ETOPS 5. Passenger Recovery Plan(Part 121.135 (24) ) Significant System に係る定例、非定例整備に 定期国際航空会社(Flag)とチャーター・オペ おいて、同じ作業が、同じタイミングで、別 レーター(Supplemental)に対しては、Diversion のシステムに対して行われる事を指し、Part を行った際の Passenger Recovery Plan を実証した 121.7 に定義されています(例えば複数のエ 上で Operations Specifications(運航規程)に定め、 ンジンの燃料 フィルターを同時に交換する FAA による年毎の監査を受ける事が要求されま など)。これが同一人により行われた場合、 す。そこでは通信の確実性、Diversion 先の施設 ヒューマンエラーが介在すれば、これが共通 の適切性、NOTAM や気象情報の適確度、グラン の原因となり、複数システムの同時故障を引 ド・ハンドリングの適切性、その他、乗客・乗員 き起こす可能性があります。本項では ETOPS に係る FAR の改訂案 45 ETOPS において、できる限り Dual Pooling や Borrowing に重要な役割を果たし Maintenance を避ける整備方式が要求されて ます。具体的には Illustrated Parts Catalog おり、また整備従事者が一人しかいない場合 (IPC)にマーキングを施すなどで行われます。 などで Dual Maintenance が不可避の場合に は、定められた手順に従い齟齬の無いことを 確認することが要求されています。 (3)Verification Program ETOPS Significant System の故障修復や、 (8)Reliability Program 信頼性管理の方式は現存のもの(FAA 承 認のもの、あるいは、夫々の Continuous Analysis and Surveillance (CAS))に ETOPS の 要素を取り入れ補強する事が求められます。 IFSD Rate のトレンドの異常に対してなされ 本方式の運用においては、ETOPS にとって る処置など重要な整備が行われた場合には、 重要な事象の発生に基き、一連の調査、報告、 飛行試験も含む確実な検証が必要となりま 検討、対策が行われます。 す。大切なことは、誰がその検証を発動する かと、どのような試験・検査を行うかであり、 そのための手順を定めておくことが求められ 報告については、Part 121.703 による一般的 な報告義務に加え、以下については発生後 72 時間以内に FAA への報告が求められます。 ます。飛行確認試験は ETOPS Entry Point 以 (a)In-Flight Shut Down 前であれば、Revenue フライトにおいても実 (b)Diversion or Turn Back 施できます(ETOPS Entry Point の定義につ (c)Uncommanded Power Changes or Surges いては後出 10 項参照)。 (d)Inability to Control the Engine or Obtain (4)Task Identification どの作業が ETOPS 認定整備従事者により なされなければならないかを、定例整備作業 シート、あるいは Work Package に明示しな ければなりません。 (5)Centralized Maintenance Control Procedures ETOPS に係る整備の複雑性と重要性に鑑 み、その作業計画や指示はテクニカル・サー Desired Power (e)Problems with Systems Critical to ETOPS (f)Any other Event Detrimental to ETOPS ETOPS に関連し Part 121.703 に基き報告すべ き事象、あるいは、上記 6 項目の事象の発生原 因について、機体あるいはエンジンの製造者と 共に究明し、再発防止対策をたて、FAA に報 告の上承認を得ることが求められています。 ビスセンター、あるいは整備指揮所など 1 箇 所にてなされるべきとされています。 C. Propulsion System Monitoring いきち (6)ETOPS Program Document IFSD Rate の 12 ヶ月移動平均が次の閾値 を ETOPS に係る整備については間接業務をも 超えた場合は、FAA と共にそれをもたらす根 含め、業務内容、手順、責任がドキュメント 本原因や、体制上の不備が無いかを究明するこ 化されていなければなりません。このドキュ とが求められます。 メントはそれを以って業務が実施できる内容 のものであり、Maintenance Program に参照され、 その位置付けが明確化されていなければなり ません。運航開始の 60 日前までに FAA に提 出され承認を得ること、および、その後の改 定についても承認を得る事が求められます。 (7)ETOPS Parts Control ETOPS に関係する部品、およびその (1)双発機で 120 分以内の ETOPS の場合; 0.05/1,000Eng. Hr (2)双発機で 120 分以上 180 分以内(含 207 分の特例)の場合; 0.03/1,000Eng. Hr (3)双発機で 180 分以上の場合; 0.02/1,000Eng. Hr (4)3 発機の場合; 0.2/1,000Eng. Hr (5)4 発機の場合; 0.1/1,000Eng. Hr Configration を明確化し、管理する方式の確 立が求められます。これは特にパーツの 46 D. Engine Condition Monitoring 航空技術 No.592〔04-07〕 異常を早期に発見し故障を未然に防ぐため、 H. Procedual Changes エンジン製造者により設定された Instructions 整備および認定訓練の Procedure に for Continued Airworthiness に基き、特定のパラ "Substantial"な変更がなされる場合は、事前に メーター(ローター回転数や EGT など)につ FAA の承認を取得しておくことが求められて きコンディションをモニターし、データを収 います。何を以って"substantial"とするかは実績 集・解析し、対策を立てる体制構築が求められ や成績に応じて、FAA とオペレーター間で定 ま す 。 そ の 他 、 SOAP( Spectrographic Oil められます。 Analysis Program)も含めることが好ましいと されています(“エンジンの設計および試験に 7. 乗 員 と 運 航 管 理 者 に 対 す る Passenger 係る要件”2 項 (6 月号 p.33) 参照) 。 Recovery Plan に係る訓練要件(Part 121.415) 乗員と運航管理者には Passenger Recovery Plan E. Oil Consumption Monitoring 補充オイル量からエンジンおよび APU のオ イル消費率を計算してモニターし、オペレータ に関して、訓練を受けることが要求されます。 夫々には明確に役割と責任が割り振られ、訓練 はその個々の役割に特化されて行われます。 ーのリミット(製造者の推奨値の範囲で設定す る)を超えないように管理すること、また、 8. 飛 行 中 の エ ン ジ ン 不 具 合 時 の 対 処 ( Part ETOPS 飛行直前の消費率の移動平均値を以っ 121.565(a)) て、当該飛行にてオイルの必要量が確保される 事を確認・処置することが求められています。 “機長(PIC)はエンジン 1 基が故障(Fail) で停止した場合、あるいは更なる損傷を防止する ため意図的に停止したときは、直ちに安全に着陸 F. APU In-Flight Start Program ができる、最も近い空港に着陸しなければならな 飛 行 中 の APU の 始 動 能 力 ( Cold Soak い”としています。この要件は以前から課せられ Starting Capability)を確認するため、FAA の承 ていたものですが、マイナーな表現の変更がなさ 認の下、定期的なサンプリング試験の実施が求 れています。 められています。具体的な試験方法、間隔、サ ンプル数を定める上で必要な、APU の信頼性 9. Diversion 空港に係る要件−出発前−(Part および性能のアセスメント手法については、別 121.624) 途 Advisory Circular が発行されます。 Diversion に備えて指定される空港は厳密には Part 121.7 で“ETOPS Alternate"として定義されて G. Maintenance Training ETOPS に関わるすべての従事者は、その特 性についての訓練を受けることが求められてい ます。 いますが、それに係る要件として以下があります。 A. Adequate Airport と ETOPS Alternate “出発許可書、あるいは飛行許可書には ETOPS Alternate が記載されており、機は常に また、ETOPS 整備従事者の認定はエンジンと それら空港のうち何れかの空港から、承認され 機体の組み合わせを特定した型式に限定してな た最長 Diversion 時間内の位置に存在するよう されますが、そのためには追加特別訓練プログ に飛行が計画されていなければならない”とさ ラムを受けた上で、既に当該型式の ETOPS 認定 れています。そして、ETOPS Alternate の選択 資格を取得した者の監督下での ETOPS Task の実 に関して、“オペレーターは最長 Diversion 時間 施経験が求められます(当該オペレーターにと 内の位置に存在するすべての”Adequate Airport って新機材の場合には、実施経験は航空機製造 “(Part 121.97 で定義されている、Diversion 先 者による訓練を以って替える) 。これら一連の訓 として適性ある空港)を ETOPS Alternate 対象 練プログラムには FAA の承認が求められます。 として検討し、その結果 ETOPS Alternate とし ETOPS に係る FAR の改訂案 47 て選択された空港を出発許可書、あるいは飛行 60 分、3、4 発機の場合は 180 分を最初に超える 許可書に記載しなければならない”としていま 地点を指す)。若し、予報気象が変化し、Weather す。こうして選択された ETOPS Alternate を以 Minima が確保できそうに無い場合には、別の って、後述の搭載燃料の計算などがなされます。 Adequate Airport を加えて ETOPS Alternate として 指定する、それも出来ない場合にはルートを変更 B. ETOPS Alternate に求められる可用性 するなど、飛行許可書の変更が出来ます。FAA 気象状況については、到達が予定される時間 としてもこの要件により飛行スケジュールが阻害 帯に気象情報、予報、またはそれらの組み合わ される可能性を認識していますが、頻繁に起こる せから、Operations Specification(運航規程)に 場合にはそれに備え Minima を引き上げておく、 記載された"ETOPS Alternate Minima"(下記 10 などのオペレーターによる対策がとられる事を期 項参照) 待しているようです。 以上である事が示されなければなら ないとしています。 滑走路の状況などについては、Field Condition Report が到着予定時間帯に安全な着 陸ができるものとして、使用可能である事を示 11.作動時間限界を有するシステムのフライト・ マニュアルに定められた制限時間値と飛行計画 (Part 121.633) していなければならないとしています(ここで A. 180 分以内の ETOPS の場合、飛行計画におけ 言う時間帯は、最も早い予想着陸時刻から、最 る ETOPS Alternate 迄の飛行に要する時間は時 も遅い予想着陸時刻までとしています)。 間制限の最も厳しいシステムの時間制限値より 但しこれは出発前の要件であり、一旦飛行が 15 分短くなくてはならないとしています。こ 開始されると次の 10 項の要件に従うことにな の場合、ETOPS Alternate 迄の飛行時間はエン ります。 ジン 1 基不作動時速度(無風、標準気温)で計 算したものです。また 15 分は飛行場での進 C. ETOPS Alternate の消火救助能力に係る要件 先に 3 項に述べた消火・救難能力等に係る要 件を満たすことが求められます。 入・着陸に要する時間を見込んだものです。 B. 180 分以上の ETOPS の場合、飛行計画におけ る ETOPS Alternate 迄の飛行に要する時間は、貨 物室消火システムの持続時間制限値より 15 分 D. 上述の 9A、9B、および 9C の要件を満たさな 短くなくてはならないとしています。この場合、 い限り出発許可書、あるいは飛行許可書には ETOPS Alternate 迄の飛行時間はエンジン全エン ETOPS Alternate として記載してはならない事を ジン作動時速度(風、と温度による補正をした 明確化しています。 もの)ので計算したものです。15 分は飛行場で の進入・着陸に要する時間を見込んだものです。 10. Diversion 空港に係る要件−飛行中−(Part 121.631) C. 180 分以上の ETOPS の場合、飛行計画におけ る ETOPS Alternate 迄の飛行に要する時間は、時 ETOPS Alternate の気象状況については、飛行 間制限の最も厳しいシステムの時間制限値より 中にレビューが行われ、指定されているすべての 15 分短くなくてはならないとしています。この ETOPS Alternate の 状 況 が 、 到 着 時 間 帯 に 場合 ETOPS Alternate 迄の飛行時間はエンジン 1 Operations Specification(運航規程)に定める 基不作動時速度(風、と温度による補正をした Operating Minima 以上であろう事を示さなけれ もの)ので計算したものです。15 分は飛行場で ば、ETOPS Entry Point を超えて飛行を継続する の進入・着陸に要する時間を見込んだものです。 ことは出来ないとしています(ETOPS Entry Point D. 現在 3、4 発機で上記 11B の要件を満たさな は Part 121.7 に て 定 義 さ れ 、 飛 行 ル ー ト 上 い航空機が存在しますが、この場合は本 Adequate Airport への飛行距離が双発機の場合は Regulation 発効後 6 年間は ETOPS を行っても 48 航空技術 No.592〔04-07〕 よいとし移行期間を設けています。 (3)12.B(1)(a)の計算に際しては、風速予 報精度にかかわる補正を行うこととする。即 12. ETOPS における燃料搭載基準(Part 121.646) ち、FAA が承認する Wind Model による予報 Diversion を想定した必要燃料を以下の条件で計 を採用している場合は、予想風速を 5 %分、 算し、これと目的地までの通常の搭載基準による必 燃料増加の方向に補正して必要燃料を計算す 要燃料の、多いほうを搭載することとしています。 ることとし、FAA が承認する Wind Model に A. 3、4 発機で Adequate Airport からエンジン 1 基 よる予報を採用していない場合には必要燃料 不作動時巡航速度で 180 分以内を飛行する場合 の 5 %を補正量としてプラスする。 でも、全エンジン作動時巡航速度で 90 分以上 (4)更に、12.B(1)(a)の計算に際しては下 離れて飛行する場合には、以下の条件で計算す 記(a)∼(d)の内、最多の量を以って補正 る Diversion 必要燃料を配慮しなければなりませ 量としてプラスする。 ん。即ち最も条件の厳しい地点で客室の急減圧 (a)機体への着氷の影響については Icing が が発生して、酸素供給にかかわる安全制限高度 予報された区間の 10 %に対して補正を行 (Part121.33 に定める)まで降下し、Adequate う。その間は機体およびエンジンの防氷に Airport に到着後、1,500ft で 15 分間ホールドし た後、進入・着陸を行なうという条件です。こ れは 3、4 発機の NON ETOPS 飛行(180 分以内) に対しても、場合によっては、Diversion にかか 消費される燃料も加算する。 (b)Icing が予報された全区間で機体およびエ ンジンの防氷システムに消費される燃料。 (c)当該オペレーターが巡航燃料消費性能劣 わる燃料搭載要件が課せられると言う事です。 化モニターによる補正プログラムを採用し、 B. ETOPS 飛行の Diversion に係る燃料の計算につ 必要燃料計算の補正を行っていない場合に いては、風、温度、その他、Icing 等の気象条 件を採りいれ計算した下記 12.B(1) (a) 、 (b) 、 (c)の最大値と 12.B(2)の合計とします。 は、必要巡航燃料の 5 %を補正量とする。 (d)APU が必要な動力源となっている場合は その作動時間に応じた必要燃料を加算する。 (1)(a)最も条件の厳しい地点で客室の急減圧 が発生して、酸素供給にかかわる安全制限高 度 ( Part 121.333 に 定 め る ) ま で 降 下 し 、 13. Appendix O to Part 121 以上の 12 の項目は ETOPS に係る個々の要件 Adequate Airport 上空に到達するのに必要な ですが、Appendix 0 では Diversion 時間やエリア 燃料、但し、下記 12.B(3)および 12.B(4) を限定して、夫々の要件を確定しています。その の補正がなされたもの。 中で 1985 年以来実施されてきた ETOPS の承認 (1)(b)最も条件の厳しい地点で客室の急減圧 や Practice を Regulation 化すると共に、180 分を が発生して、且つ同時にエンジン故障が発生 超える将来の ETOPS の要件も定めています。以 し、酸素供給にかかわる安全制限高度 上の 12 の項目の要件は、本 Appendix のなかで (Part121.333 に定める)まで降下し、エンジ 特に適合の除外が認められている場合を除いて、 ン 1 基不作動時巡航速度で Adequate Airport 全ての ETOPS に課せられます。また、本 上空に到達するのに必要な燃料、 Appendix において更に制約的な要件が課せられ (1)(c)最も条件の厳しい地点でエンジン故障 る場合があります(例えば 13C. Polar Operation)。 が発生して、エンジン 1 基不作動時巡航高度 まで降下し、エンジン 1 基不作動時巡航速度 で Adequate Airport 上空に到達するのに必要 な燃料、 A. 双発機に係る ETOPS 承認 (1)75 Minutes ETOPS (a)Caribbean/Western Atlantic Area (2)空港に到達後 1,500 Ft で 15 分ホールドし 従前から、Caribian, Western Atlantic, た た後、計器進入・着陸するのに要する燃料 まに North Atlantic で行われたものであり、 ETOPS に係る FAR の改訂案 49 機材に係る ETOPS 承認を必要とせず (Review はされるが)、前述 6 項の整備に が課せられる。 (6)180 Minutes を超える ETOPS 係るものの一部と、最長 Diversion 時間に 180 分 ETOPS の運航経験を前提として、下 対して 11.項のシステムに係る制限が課せ 記 13A(7)から 13A(10)で指定された空域 られる。特認として復路での出発前特別点 での 180 分を超える ETOPS が特認される。 検の要件は除外される。 通常は 180 分以内の ETOPS 運航に務めるが、 (b)Other Area 予期しない気象状況など、止むを得ない場合、 機材に係る ETOPS 承認を必要としない 指定された空域の特別要件を満たすことによ もので(Review はされるが)、要件として り実施されるもので、MEL は“180 Minutes は 11 項のシステムに係るもの、および 6 ETOPS”に対するものに加え、燃料計システ 項の整備に係るものが課せられると共に、 ム、APU、自動推力設定システム、SATCOM、 十分な経験実績が問われる。 自動着陸システム(One Engine Inop)の作動 (2)90 Minutes ETOPS (Micronesia) 120 分 ETOPS の機材、運航、および整備 が要求される。Extended Range Entry Point 到達 以前に SATCOM あるいは SATCOM Data Link に係る要件が課せられるが、特認として、復 を使用し、ETOPS Alternate に係る情報の更新、 路での出発前特別点検の要件は除外される。 航空機の状態や、システムの Capability 等に ま た 、 MEL は “ 120 分 Extended Range 基くフライトプランの見直しが要求される。 ("ER")”が適用される。 (3)120 Minutes 機材、運航、整備に係る 120 分 ETOPS の (7)North Pacific この空域では一番近い ETOPS Alternate を 207 分以内に確保することを条件に、180 分 要件、および MEL としては“120 分 を超える ETOPS 実施が便毎に特認される。 Extended Range("ER")”が適用される。 政治的、軍事的理由、火山の噴火、予期しな (4)138 Minutes (a)120 分承認の延長許可 い気象状況、一時的な空港閉鎖、あるいは、 その他の天候に係る事態ゆえに 180 分以内の 120 分承認の下、特定の飛行に係り特認 ETOPS 運航が不可能な場合にのみ実施され されるものであり、機材は 120 分 ETOPS、 るもので、機材、運航、整備には最低 180 分 運航と整備には 138 分に相当する ETOPS ETOPS 要件と、最長 Diversion 時間に対して の要件と、最長 Diversion 時間に対して前 11C.項のシステムに係る制限が課せられる。 出 11A.項のシステムに係る制限が課せら ( 8) Polar Area( North Pole) and North of れる。更に、運航、整備従事者には 120 分 ETOPS と 138 分 ETOPS の差異訓練 NOPAC この空域では一番近い ETOPS Alternate を (FAA 承認)が求められる。 240 分以内に確保することを条件に、180 分 (b)180 分 ETOPS 承認の使用 を超える ETOPS の実施が便毎に特認され 機材には 180 分 ETOPS、運航と整備に る。この地域に特有な自然現象、例えば火山 は 138 分 ETOPS の要件が課せられる。 の噴火、地上における厳しい低温度、予期し MEL と し て は 、 "beyond 120 Minutes ない気象状況、一時的な空港閉鎖、あるいは、 ETOPS"が課せられる。運航、整備従事者 その他の天候に係る事態ゆえに 180 分以内の には 138 分 ETOPS と 180 分 ETOPS の差 ETOPS 運航が不可能な場合にのみ実施され 異訓練(FAA 承認)が求められる。 るもので、この適用に係る判断基準を (5)180 Minutes Operations Specifications(運航規程)に設け、 機材、運航、整備に係る 180 分 ETOPS の FAA の承認を得なければならない。機材に 要件、MEL は、"Beyond 120 Minutes ETOPS" 係る 240 分の型式承認、ならびに、運航およ 50 航空技術 No.592〔04-07〕 び Configuration, Maintenance and Procedures 距離が、エンジン 1 基不作動速度で 180 分の飛 Standard(CMP)の 240 分 ETOPS 該当要件、 行距離以上となる場合は ETOPS の要件が課せら 更には、後述する 13C 項における 8 項目の れます。そして地域の如何に係らず、240 分まで 特別配慮要件が課せられる。 の ETOPS が定例的に行える承認を得ることが出 (9)240 Minutes Area of Operations 来ます。この場合 240 分以内の最も近い Pacific Oceanic Area(米国西海岸とオース Adequate Airport を ETOPS Alternate として指定し トラリア、および、ニュージーランドおよび なければなりませんが、これがルート選定上困難 ポリネシアの間); South Atlantic Oceanic な場合は、中でも最も近いものを ETOPS Area ; Indian Oceanic Area ; オーストラリアと Alternate として指定しなければなりません。この アフリカ間の Oceanic Area では 240 分以内 場合 ETOPS に係る MEL の適用が求められ、 の ETOPS が承認される。この場合、ルート FQIS(燃料計システム)とカンパニー通信のため としては ETOPS Alternate を最も近くに指定 の SATCOM の作動が必須であり、機体とエンジ できるよう選定しなければならない。要件と ンの組み合わせについては、承認される最長 しては、当該オペレーターが既に 180 分 Diversion 時間に応じた ETOPS 型式証明を取得し ETOPS の承認を得てその実運航経験を有す ていなければなりません。最長 Diversion 時間に対 ること、機材に係る 240 分の ETOPS 型式承 して 11.項のシステムに係る制限が課せられます。 認、および Configuration, Maintenance and Procedures Standard(CMP)の 240 分 ETOPS C. Polar Area(North &South Pole)and ETOPS に係る全要件、更には後述する 13C 項にお Beyond 180 Minutes North of NOPAC Area ける 8 項目の特別配慮要件が課せられる。 (10)Beyond 240 Minutes Area of Operations 南・北極の緯度 78 度以上の地域の冬季は気象が 厳しく極寒となり、また万一の場合のサポート・ Pacific Oceanic Area(米国西海岸とオース サービスも限られているため、 “an Area of ETOPS トラリア、および、ニュージーランドおよび Applicability"として指定され(1 項: p.44 左下)エ ポリネシアの間); South Atlantic Oceanic ンジンの数、あるいは空港からの距離の如何に係 Area ; Indian Oceanic Area ; オーストラリアと らず、この地域での運航には ETOPS の要件が課せ 南米、南極地域の間の Oceanic Area では特定 られます。前述 13A および 13B に述べる要件に加 の都市間路線に限り、240 分を超える えて、Diversion 飛行およびその後の乗客の保護を ETOPS が承認される。この場合ルートとし サポートするため、以下が要求されます。 ては ETOPS Alternate を最も近くに指定でき (1)ETOPS Alternate としての要件 るように選定しなければない。当該オペレー (2)Diversion 先の空港における乗客の ターが 180 分を超える ETOPS の連続 24 ヶ Recovery Plan 月運航経験を有し、且つ、その内の 12 ヶ月 (3)燃料の凍結をモニターし、防止する手順 が 240 分 ETOPS である場合にのみ、240 分 (4)通信能力とその確保 を超える ETOPS 運航の承認を受けることが (5)MEL に係る特別要件 出来る。機材は最長 Diversion 時間に見合っ (6)特別訓練 た ETOPS 型式承認を有することと (7)Solar Flare Activity が活発な時期の乗員へ Configuration, Maintenance and Procedures Standard(CMP)の 240 分を超える ETOPS に係る全要件が課せらる。 の影響防止 (8)極寒防護服のような特別装備品の搭載 Polar オペレーションの承認を得るには、 FAA 立会いの下に実証飛行を行うことを含 B. 3、4 発機に係る ETOPS 承認 3、4 発機については、Adequate Airport からの ETOPS に係る FAR の改訂案 め、プログラムの検証を行う必要性が検討さ れています。 (つづく) 51 中渓 正樹 * 7 月号では航空会社など 121 オペレーターに課 せられる運航・整備上の要件を述べましたが、今 回はチャーターなどを行なう 135 オペレーター に係る要件について解説します。 6,500NM を超え、且つシステム能力的にも ETOPS 要件を満たす新機材が出現したことによ り、従来はあまり実績の無かった長距離洋上飛行 が行われるようになったため、こうした場合も対 象としたものです。 Part 135オペレーター に求められる要件 Part 135 オペレーター(以下、「135」と略す。) FAA は今日まで、135 オペレーションに関し、 “ETOPS として”ではありませんが“ポリシーと して”何らかのかたちで 180 分を超えない範囲で 洋上飛行を承認してきました。それ故に、1996 とは Commuter と On-Demand を指しますが、(両 年に JAA(Joint Aviation Authorities)が 120 分以 者の定義については“135 オペレーターの課題” 上の商用飛行について制限を課すと提起したのに 2004 年 5 月号 p.50 参照)商用飛行であると言う 対し、FAA は 180 分を主張したものです。 観点から、Diversion の発生を極小化する、ある 135 オペレーションに係る ETOPS 要件は 121 いは発生したときの手当について準備をしておく のそれと次の 2 点において異なっています。先ず、 必要性は Part 121 オペレーター(以下、「121」と Diversion 先での消火救難・能力要件は課せられ 略 す 。) に 同 じ で あ る 、 と の 立 場 か ら F A A は ません。すなわち、たまにしか同じルートを飛行 ETOPS(Extended Operation for Part 135 Operations) しない 135 オペレーションに、常時その能力の具 を提起しています。また、これは ICAO の 備を条件とするのは現実的ではないためです。ま Standard and Recommended Procedure である Annex た、IFSD Rate に係る承認要件も課せられません、 VI 4.7.4 の趣旨とも一致するものです。 つまり、全体として機数や年間運航時間が少なく、 135 の場合は 121 と異なり、オペレーターの規 模や運航態様にバラエティーがあることを考慮 し、着陸可能な飛行場からエンジン 1 基不作動時 速度(無風、標準気温)で 180 分の飛行距離以上 統計値としてあまり重要な意味を持たないためで す。 以下、1 から 5 項に具体的要件を解説します。 1. Polar Operations(Part 135.98) 離れた地点を含むルートを飛行する場合に、 北緯 78 度以上の地域(アラスカ州を除く)は ETOPS 要件を適用することを基本としています。 Polar Area と指定され、最長 Diversion 時間の如 この場合、エンジンの装着基数は双発、3、4 発 何に係らず、すべての飛行に対し FAA の承認を の如何に係りません。ヘリコプター、または 10 得ること、具体的にはオペレーターの Operational 席以下のプロペラ機を使用する Commuter は使用 Specifications(運航規程)に以下が定められてい 機材の能力からして承認の対象とはなり得ませ ることが求められます。 ん。一方、チャーター・オペレーション(On- A. エンルートでの Diversion 空港に係る要件の設 Demand)の場合は、1996 年以降、航続距離が *Nakatani Masaki 日本ビジネス航空協会 副会長 [email protected] 56 定と、飛行の実施に際してこれを指定する手順。 B. Diversion 先の空港における乗客の Recovery Plan。 航空技術 No.593〔04-08〕 C. 燃料の凍結をモニターし、防止する手順。 D. 通信能力要件。 5. Appendix H to Part 135(Part 135.98) 本 Appendix H で 135 オペレーターの ETOPS E. MEL に係る特別要件。 実施に係る要件が規定されます(以下、A ∼ G F. 当該地域運航にかかわり必要とする特別訓練。 項)。なお、この場合の ETOPS とは 180 分以上 G. Solar Flare Activity が活発な時期の乗員への影 240 分以内と本 Appendix で定義されています。 響防止。 H. 極寒防護服のような特別装備品の搭載要件。 A. 運航経験要件 以下の運航経験があることを前提にしていま 2. パイロットの訓練要件(Part 135.98) す。 ETOPS ではパイロットの初期、移行、および (1)T 類タービン・エンジン機による、国際ル 昇格の各訓練に乗客の Recovery Plan に係る訓練 ートでの 12 ヶ月の運航実施経験が必要(ハ が付加されます。内容は、乗客や他の乗員に対す ワイ路線は国際ルートに含まれるが、カナダ、 る手当てや安全、および避難に関するパイロット メキシコ路線は除かれる)。 の役割に係るものです。 (2)本 Regulation 発効日時点で 121 または 135 オペレーターとして承認を受けている場合、 3. 空港からの最大距離に係る制限(Part 135.364) 所定の要件を満たす Airport(以下、エンルー ト代替空港)から、エンジン 1 基不作動時速度 T 類ターボ・ジェット機の運航経験は国内の ものであっても、最大 6 ヶ月までは上記(1) の経験と見なす。 (無風、標準気温)で 180 分の飛行距離以上離れ (3)T 類タービン・エンジン機以外の型式の航 た地点を含むルートを飛行する場合は、Appendix 空機による国際ルート運航経験も、FAA が H to Part 135 に定める要件を満たさなければなら 認める場合は上記(1)の経験と見なす。 ないと規定しています(上記の所定の要件とは目 的地空港や代替空港が一般的に具備すべきものを 指す)。 B. 機材に係る要件 ハードウェアーとしての航空機に係る設計要 エンジン 1 基不作動時速度については、121 の 件は本来運航形態の如何には係りが無いもので 場合はルートに係る承認を得る際、航空機のモデ すから、ETOPS 機の設計要件である Part ル毎に 1 つのルートに 1 つの速度の承認を得、 25.1535 は 121 Operation と同様に 135 にも課せ これを以って Diversion 距離や搭載燃料計算の基 られます。ただし、本 Regulation 発効後直ぐに 礎とします。一方、135 の場合は同じルートを飛 これを課すことは実際的ではありませんので、 行する頻度は少なく、また Short Notice で様々な 段階を追って適用されます。従って、既に型式 ルートを飛行するため、前もって速度を特定する 承認を得ている航空機に ETOPS 要件が追加適 代わりに、事前に航空機のモデル毎に一定の速度 用されることはありません。ただし、新規に 帯に関する承認を受けておき、飛行の実施に際し ETOPS を開始するオペレーターには、以下の てはこの速度帯から適切なものを選定する方式を (1)および(2)の要件、および別途 Advisory 採るようになっています。 Circular に定める要件が課せられます。また、 オペレーターは本 Regulation 発効 8 年後まで、 4. 整備に係る要件の適用について(Part 135.411) 在来の機材(ETOPS 設計要件非適合)をその ETOPS については、135 オペレーターに課せ フリートに追加することが出来ますが、それ以 られる一般的な整備要件(Part 135.411 (a)(2))に 降は ETOPS 設計要件に従い型式承認された機 加え、Appendix H to Part 135 の要件(下記 4.G 項 材しか追加できません。 参照)が課せられます。 ETOPS に係る FAR の改訂案 (1)電力系統;独立した 3 系統以上の電力系統 57 を備えていなければならない。夫々の系統は 画について。 本 Appendix H で作動が要求される全システ (a)飛行計画における ETOPS Alternate 迄の ムに、Diversion 飛行の間、電力が供給出来 飛行に要する時間は、貨物室消火システム る事。 の持続時間制限値より 15 分短くなくては (2)燃料供給システム; Diversion が発生し、 ならない。この場合の ETOPS Alternate 迄 同時に燃料供給システム・コンポーネントの の飛行時間は全エンジン作動時速度(風 1 つが故障した状態でも、Diversion 飛行の間 と温度による補正をした)で計算したもの は十分に燃料が供給できること。 であり、15 分は飛行場での進入・着陸に C. オペレーターの要件 要する時間を見込んだものである。 (1)ETOPS 運航の計画に際しては、計画され (b)飛行計画における ETOPS Alternate 迄の たルートが所定の要件を満たすエンルート代 飛行に要する時間は、時間制限の最も厳し 替空港から常にエンジン 1 基不作動時速度 いシステム(貨物室消火システムを除く) (無風、標準気温)で 240 分の飛行距離以内 の時間制限値より 15 分短くなくてはなら にあること(所定の要件とは目的地空港や一 ない。この場合、ETOPS Alternate 迄の飛 般的に具備すべきものを指す)。 行時間はエンジン 1 基不作動時速度(風と (2)飛行中の乗員に提供される情報としては、 温度による補正をした)で計算したもので 通常の飛行におけるものに加え、全てのエン あり、15 分は飛行場での進入・着陸に要 ルート代替空港、目的地、目的地代替空港に する時間を見込んだものである。 関する最新の気象情報と運用情報が提供され ること。 (c)本 Regulation の発効時点で、タービン・ エンジン機を運航しているオペレーターの 機材に係わるフライト・マニュアルに上記 D. 運航上の要件 (1)ETOPS Alternate の気象状況については、 (a)および(b)項に必要な制限時間値が 記載されてない場合には、Regulation 発効 飛行中にレビューが行われ、指定されている 8 年後迄の期間は両項への適合が免除され すべてのエンルート代替空港のそれが推定到 る。 着時刻に、Operations Specification(運航規程) に定める Operating Minima 以上であろう事を E. 通信に係る要件 示さなければ、ETOPS Entry Point を超えて 通信に関しては、夫々 2 個の独立した受信機 飛行を継続することは出来ない(この場合 および送信機(内、最低 1 つは音声通信が可能 ETOPS Entry Point とは、飛行ルート上で なもの)と Head Set 2 個、または Head Set 1 個 Adequate Airport への飛行距離が 180 分を最 と Speaker 1 個が搭載され、作動していること 初に超える地点を指す)。もし、予報気象が が求められています。音声通信が不可能な場合 変化し、Weather Minima が確保できそうに無 は、SATCOM や HF データ通信で代替するこ い場合は、別の Adequate Airport を加えエン とが出来ます。 ルート代替空港に指定するか、それも出来な い場合はルートを変更するなど飛行許可書の 変更を行うこととなる。 (2)ETOPS 飛行は計器飛行方式で計画し実行 する。 (3)時間限界を有するシステムの、フライト・ マニュアルに定められた制限時間値と飛行計 58 F. 燃料搭載に係る要件 Diversion を想定した必要燃料を以下の条件 で計算し、これと目的地までの通常の搭載基準 (Part 135.223)による必要燃料のいずれか多い 方を搭載することが求められます。 Diversion に係る必要燃料は、以下(1) 、(2)、 航空技術 No.593〔04-08〕 (5)、(6)の合計とします。 (1)以下の(a)∼(d)の想定のうち最も多い 量。 (a)最も条件の厳しい地点で客室の急減圧が 発生して、酸素供給にかかわる安全制限高 度(Part135.157 に定める)まで降下し、 エンルート代替空港上空に到達するのに必 要な燃料。 (b)最も条件の厳しい地点で客室の急減圧が 発生して、且つ同時にエンジン故障が発生 し、酸素供給にかかわる安全制限高度まで は、その作動時間に応じた必要燃料を見込む。 (注)燃料搭載に係る要件は 121 と 135 では計算概念が 異なっている。今後調整されるものと見られるが、 現 NPRM については 121 の要件の方がより合理性が あると考えられる(即ち上記(3)および(4)の補 正は(1)(a)についてのみ行なうもので、(b)およ び(c)については行なわないものと推測される) 。 G. 整備に係る要件 一般的な整備要件(Part 135.411 (a)(2))に、 以下の項目が追加されます。 (1)Configuration Maintenance Procedures(CMP) 降下し、エンジン 1 基不作動時巡航速度で 当該機体とエンジンの組み合わせに対する エンルート代替空港上空に到達するのに必 Configuration Maintenance and Procedure(CMP) 要な燃料。 に定められた Minimum の要件に基いて、あ (c)最も条件の厳しい地点でエンジン故障が るいは Type Design Document に従って、整 発生して、エンジン 1 基不作動時巡航高度 備が行われる体制が確立していることが求め まで降下し、エンジン 1 基不作動時巡航速 ら れ ま す 。( C M P に つ い て は 、 航 空 技 術 度でエンルート代替空港上空に到達するの 2004 年 7 月号 p.45 参照) に必要な燃料。 (2)空港に到達後 1,500Ft で 15 分間ホールド した後、計器進入・着陸するのに要する燃料。 (3)上記(1)の計算に際しては、風速予報精 ( 2) Continuous Airworthiness Maintenance Program(CAMP) CAMP は総合的な監視プログラムであり、 一連の整備作業、検査、監査データ分析など 度にかかわる補正を行うこととする。即ち、 により構成されるが、本項ではそれを FAA が承認する Wind Model による予報を採 ETOPS に適用すべく発展させたものを設定 用している場合は、予想風速を 5 %燃料増加 し、フォローする事を要求している。機体製 の方向に補正して必要燃料を計算することと 造者により推奨されたもの、あるいは従来か し、FAA が承認する Wind Model による予報 ら当該オペレーターで活用していたものを を採用していない場合は、計算必要燃料の ETOPS に合わせて追加・発展させたものの 5 %を追加補正量とする。 いずれでもよい。 (4)更に、(1)の計算に際しては、下記(a) または(b)の多い方の量を以って補正する。 (a)ETOPS 飛行前点検 所定の訓練を受けて、認定された (a)機体への着氷の影響については、Icing ETOPS 整備従事者による、ETOPS が予報された区間の 10 %の間の空気抵抗 Significant System に係る特別な飛行前点検 の増加分に対する補正量。 が要求される。(ETOPS Significant System (b)Icing が予報された全区間で機体および エンジンの防氷に消費される燃料。 (5)当該オペレーターが巡航燃料消費性能の劣 については、航空技術 2004 年 6 月号 p.34 参照) (b)Dual Maintenance 化をモニターし、必要燃料の補正を行ってい できる限り Dual Maintenance を避ける整 ない場合には、必要巡航燃料の 5 %を 備方式が要求されており、また整備従事者 Diversion を想定した必要燃料にプラスする。 が一人しかいない場合などで、Dual (6)APU が必要な動力源となっている場合に Maintenance が不可避の場合には、定めら ETOPS に係る FAR の改訂案 59 れた手順に従い齟齬の無いことを確認する ETOPS にとって重要な事象の発生に基き 手順が要求される。(Dual Maintenance に 報告、調査、検討、対策の一連のアクショ ついては、航空技術 2004 年 7 月号 p.45 参照) (c)Verification Program ETOPS Significant System の故障修復や、 飛行中エンジン停止の発生率の異常傾向に ンが行われる。 (i)報告については Part 135.415,135.417 に よる一般的な報告義務に加え、以下につ いては発生後 72 時間以内に FAA への 報告が求められる。 対してなされる処置などの重要な整備が行 1In-Flight Shut Down /2Diversion or われた場合は、飛行試験も含む確実な検証 Turn Back /3 Un-Commanded Power が必要となる。 Changes or Surges /4Inability to Control (d)Task Identification the Engine or Obtain Desired Power どの作業が ETOPS 整備従事者によりな /5 Problems with Systems Critical to されなければならないかが、定例整備作業 ETOPS /6Any other Event Detrimental to シートや Work Package に明示されなけれ ETOPS. ばならない。 (ii)ETOPS に関連し、Part 135.415,135.417 (e)Centralized Maintenance Control Procedures に基き報告すべき事象、あるいは上記 6 ETOPS に係る整備の複雑性と重要性に 項目の事象の、発生原因について機体あ 鑑み、その作業計画や指示はテクニカル・ るいはエンジンの製造者と共に究明し、 サービスセンター、あるいは整備指揮所な 再発防止対策をたて、FAA に報告の上 ど 1 箇所にてなされるべきとしている。 承認を得ること。 (f)ETOPS Program Document ETOPS に係る整備については間接業務 エンジン故障の異常なトレンドが探知 も含め、業務内容、手順、責任がドキュメ された場合、どのように対応するかが定 ント化されていなければならない。このド められていること、およびそれをもたら キュメントはそれを以って業務が実施でき す根本原因、或いは体制や制度上の不備 る内容であり、FAA の承認する が無いかを FAA と共に究明し、30 日以 Maintenance Program にその位置付けが明 内に FAA に報告することが求められて 確にされていなければならない。設定時お いる。 よびその後の改定についても、事前に FAA の承認を得る事が求められる。 (g)ETOPS Parts Control (iv)Engine Condition Monitoring 異常を早期に発見し、故障を未然に防 ぐため、特定のパラメーター(ローター ETOPS に関わる部品、およびその 回転数や EGT など)についてコンディ Configuration を明確化し、管理する方式の ションをモニターし、データを収集・解 確立が求められる。これは特にパーツのプ 析し、対策を立てる体制の確立が求めら ールや借用に重要な役割を果たす。 ( h) Enhanced Continuing Analysis and Surveillance System(CASS)Program 60 (iii)Propulsion System Monitoring れる。 (v)Oil Consumption Monitoring 補充オイル量からエンジンおよび 信頼性管理の方式としては、夫々のオペ APU のオイル消費率を計算してモニタ レ ー タ ー の Continuous Analysis and ーし、オペレーターのリミット(製造者 Surveillance(CAS)に ETOPS の要素を取 の推奨値の範囲で設定する)を超えない り入れ補強する。本方式においては、 ように管理する。また、ETOPS 飛行直 航空技術 No.593〔04-08〕 前の消費率の移動平均値を以って、当該 飛行にてオイルの必要量が確保される事 を確認する。 (vi)APU in-Flight Start Program 飛行中の APU の始動能力(Cold Soak Starting Capability)を確認するため、 かの判断は FAA に委ねられる。 (ix)Reporting オペレーターは 4 半期毎に、FAA お よび機体、エンジン製造者に対して Operating Hour および Cycle を報告しな ければならない。 FAA の承認の下、定期的なサンプリン グ試験の実施が求められる。 (vii)Maintenance Training ETOPS に関わるすべての従事者は、 おわりに この NPRM は当局、製造者、運航者の役割に その特性についての訓練を受けることが 幅広く言及しており、その中で事象の発生、報告、 求められる。ETOPS 認定整備従事者の 調査、対策、監査の一連のアクションを、CMP 認定は、特定のエンジンと機体の組み合 や CAMP など共通の土俵上で、関係する全者が、 わせについて型式を限定してなされる。 連携して信頼性の維持向上を図ることを要求して (viii)Procedural Changes 整備および認定訓練の Procedure に "Substantial"な変更がなされる場合は、 事前に FAA の承認を取得することが求 います。これはこれまでには見られないもので、 ETOPS に限らず、今後の信頼性管理全般のあり 方を示していると考えられます。 (おわり) められる。この場合、“Substantial”か否 ETOPS に係る FAR の改訂案 61
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