107分) 山田あかね監督 犬の幸せ、犬と幸せ/松本侑壬子

用 は 年 間 約 五 〇 億 円 と い う。二 〇 一 二
の 犬 と 猫 が 殺 処 分 さ れ、そ の た め の 費
年 の﹁ 動 物 愛 護 法 ﹂の 改 正 後 も、新 た な
山 田 あ か ね 監 督 は、二 〇 一 〇 年 に 愛
犬 ゴ ー ル デ ン・レ ト リ ー バ ー を 重 い 病
の原発二〇キロ圏内に取り残された名
や、二〇一一年の東日本大震災後、福島
︿犬の幸せ、犬と幸せ﹀
ジャーナリスト
飼 い 主への 譲 渡 は 実 際 に は 引 き 取 り 数
で 喪 い、悔 恨 の 思 い か ら イ ギ リ ス へ 行
前のない犬猫の姿を目の当たりにして
松本 侑壬子
れている。映画の中でかなみは﹁動物愛
映画が多いのは、それだけ人間との絆が
犬は動物の中でも映画に登場するこ
とが最も多い。ドキュメンタリーより劇
き、犬 の 保 護 施 設 や 動 物 病 院 を 訪 ね 歩
ショックを受ける。
も い る。犬 猫 の 里 親 探 し を す る 保 護 団
11
We learn 2015.11·12
© スモールホープベイプロダクション
の一八・七% に過ぎ ず、残 りは殺 処 分さ
強く、賢くて演技ができたり扱いやすい
いた。帰国後、訪ねた先輩の渋谷昶子監
護 セ ン タ ー﹂で 殺 処 分 を 待 つ 犬 の 表 情
か ら だ ろ う。今 年 も 少 年 少 女 と 犬 の 感
の?﹂と言われたのが、本作を作るきっ
体﹁ちばわん ﹂
︵千葉︶では、崩壊したブ
し か し ま た、過 酷 な 状 況 の 中 で 一 頭
でも多くの命を救おうと奮闘する人々
督から﹁そこまでやるなら、映画にすべ
だが、ドキュメンタリーである本作で
は、犬 を 取 り 巻 く 深 刻 な 現 実 が 浮 き 彫
か け に な っ た。取 材 を 始 め て 四 年 間 で
リーダーの店や愛 護センターからこれ
きよ。何のために映像の仕事をしてきた
動物語が何本も公開された。
りにされる。人間に愛されて飼われてい
二〇〇時間もの映像がたまった。
た。
﹁犬猫みなしご救援隊 ﹂
︵ 広 島 ︶は、
ま で に 五 〇 〇 〇 頭 以 上 の 命 を 救って き
る幸せな犬ではなく、捨てられたり災害
テ レ ビ の 仕 事 で 俳 優・小 林 聡 美 と 出
会 っ た こ と で、山 田 監 督 の 分 身 の よ う
で行き場を失った犬や猫の実態と、そう
した犬猫を何としても救い出そうと奮
上を保護している。震災後、福島の原発
シ ェル タ ー に 救 い 出 し た一〇 〇 〇 頭 以
二 〇 キ ロ 圏 内 か ら一四 〇 〇 頭 を 救 い 出
林︶を主人公としたドラマの形でドキュ
メンタリー部分を構成、映画は新タイプ
した。
なテレビ・ディレクター 久野かなみ︵小
のドキュメンタリードラマとなった。小
闘 す る 保 護 団 体 や ボランティアの 活 動
も 飼 い、鳴 き 声 や 臭 気 な ど 環 境 問 題 で
林は、犬猫の置かれた厳しい現実に衝撃
に光を当てている。犬好きで家中に何匹
近所迷惑な〝困った住人〟が、マスコミ
を受け、揺れる取材者の気持ちをリアル
心に響く。
うかで決まる ﹂との監督の言葉が素直に
れる姿⋮。
﹁犬の幸せはどんな人と出会
犬 と 飼 い 主 の 絆、保 護 犬 を 受 け 入 れ
る老人ホームでの老人と犬の愛情あふ
はあるが、本作ではきちんと実態を踏ま
で ト ピック と し て 取 り 上 げ ら れ る こ と
に表現している。
日本では、二〇一三年度現在、一日に
三 五 〇 頭、一 年 間 に 一 二 万 八 二 四 一 頭
えながら、犬への愛情と客観的な問題を
見つめ、これからを展望する総合的な視
点に立つ。
『犬に名前をつける日 』
日本映画(107 分)
監督:山田あかね
出演:小林聡美、渋谷昶子、上川隆也ほか
公開中