調査士 教材見本

調査士
「NEW
教材見本
4WDノート」は,旧不動産登記法の時代に,本学院が中・上
級者向講座用のテキストとして開発・制作し,受験者・合格者において ,「調
査士受験の最高の実戦テキスト 」と絶賛された「 4WDノート 」
(「新訂二版 」
は,6冊で平成15年10月~12月に発行)について,新不動産登記法の施行よ
り約5年半が経過し,ほぼ改正作業が完了したと判断したので,ここに満を
持して,旧版を全面的に改訂・増補して制作しているものです 。「不動産の
表示に関する登記 」と「 民法 」について ,全8分冊( B5判で ,合計で約1,500
頁位となる予定)で制作しています。
この新規教材をメインテキストとして ,「2011年受験
調査士合格力特訓ゼ
ミ」の「択一特訓コース 」(全8回)を通学・通信講座で,学習者・再受験
者を対象に本年10月より開講いたします 。この教材の概要を以下に掲げます 。
「NEW
4WDノート」の制作意図と内容について
「NEW 4WDノート」は,本学院の土地家屋調査士合格指導講座の中・上級者向講
座の実戦テキストとして,旧法時代の受験者,合格者に絶賛された旧版を新不動産登記法
の施行により,全面的に見直し,補充して制作しているもので,2011年度の秋講座(「合
格力特訓ゼミ」)の「択一特訓コース(全8回)」のメインテキストとして使用するもの
です。
本学院では,旧法時代に「4WDノート」(6冊)を制作し,受験者,合格者に広く愛
用されました。この「4WDノート」は,4輪駆動(4Wheel Drive=4WD)の自動車
のように,4輪(重要事項,条文,先例,判例)がそれぞれしっかり駆動し(活用され),
悪路(困難な状況)も踏み越える安定した走り(順調なペース)で,受講生を目的地(合
格)まで運んでくれるという意味で名付けられたものです。
今回制作の「NEW 4WDノート」は,現在の調査士試験の午後の部において問われ
る知識の「水準」,「範囲」を明確にし,更に今後問われてくると思われる知識までを収
録した内容となっております。「NEW 4WDノート」における「4輪」は,「重要事
項・条文による要点整理」,「判例・先例」,「実例」,「参考事項」とします。
本教材は,基本書であり,過去問の出題事項をメインに解説した「調査士合格ノート
Ⅰ」「 同
Ⅱ」よりも,今後の出題予想に基づき,ハイレベルの知識をも教示するた
めの中・上級者向の択一式試験の実戦テキストとして,開発・制作したものです。なお,
初学者,学習経験の浅い方は,本教材を読みますと,学習上の混乱を招く恐れがあります
ので,まずは「調査士合格ノートⅠ・Ⅱ」等で基礎学習をしっかり行って下さい。
1.全体の構成
調査士試験(午後の部)の択一式試験の出題範囲を網羅し,各科目・分野ごとに次の
8冊に分けてあります。「総論」と「民法」は,分量の関係で,さらに分冊しています。
なお,「調査士法」は,「調査士合格ノート
Ⅱ」の第7章の範囲・内容の学習で充分
であると判断し,本教材の中に入れておりません。
分冊
1A
1B
1C
分
不動産の表示に関する登記(総論)1~3
2
土地の表示に関する登記
3
建物の表示に関する登記
4
5A
5B
野
区分建物の表示に関する登記
民法に関する事項(総則,物権,担保物権,
債権,相続のポイント指導)
(ii)
2.内
容
(1) 過去の本試験で問われている知識(条文,判例,先例,実例,解釈等)を徹底的に
解明して,今後の択一式試験で問われると思われる知識を網羅した内容となってお
ります。
(2) 本教材で学習される方々は,「中・上級者」ですので,過去問でよく問われている
事項の収録を基本とし,①過去に出題されたことのない事項(判例,先例,実例を
含む。),②条文・先例等で現れていない「制度趣旨」「理由」,③受験生が日頃
目にすることない実務家向の機関誌・専門書の論説等をベースとした記述も多数収
録することを意図しています。
3.1講の構成(「民法」は除く。)
(1) 出題頻度の高い項目,新傾向の項目を抽出して1講(大項目)とし,適宜に中項目
及び小項目を設けて,広くカバーしています。
(2) 以下の4つのパーツに分かれています。
【A
要点整理】 小項目ごとに重要事項をコンパクトに掲げ,その根拠となる条文
も適宜示しています。重要な箇所は,太字で示しています。なお,判例・先例
等で,例えば,「最判昭和61・12・16 →40頁」としてあるものは,その「要
旨」「理由」等が該当頁に収録されていることを示しています(他の講又は他
の分冊に飛んでいるものもあります。)。
【B
判例・先例】 【A】で記述されている重要な判例,先例について,その要旨
を示しています。必要に応じて,問題文(ネタ)としても用いられる「判決の
理由」,「先例の照会・回答」も収録しています。なお,「判決の理由」等で
太字で示してある箇所は,重要ですので,必ず読んで下さい。
【C
実 例】 【A】で記述されている実務家向の機関誌「登記研究」の質疑応答
等を収録しています。
【D
参 考】 【A】に収録されていないが,関連して学習しておいてほしい判例
・先例・実例及び用語の解説等を収録しています。
(注)B~Dが収録されていない項目もあります。なお,本教材の各冊の末尾で,
B,C,Dで収録した判例・先例・実例の索引を収録します。
4.「民法」の内容
(1) 過去の本試験で問われた内容,今後問われるであろう内容について,民法の基礎学
習を修了していることを前提として,「択一演習による論点解決型」の形式で,記
述しています。
(2) 「過去問を含む択一問題の提示」→「重要論点の抽出と論点解説」→「他事例への
論及」→「判例の要旨(事案の概要を含む。)」とする予定です。
(iii)
「NEW
4WDノート」(全8冊)のうち,第1
分冊 1A の「1-4
登記の対象となる土地」に
ついて,改訂されたものを「教材見本」として,次頁
以下(33頁~53頁)に収録しました(最終的な印刷物
においては,内容の一部が変更されることもありま
す。)。
本講を一読し,本教材の記述のレベル・内容等を確
認して下さい。
(iv)
1-4
A
登記の対象となる土地
要点整理
〔1〕
登記の対象となる土地
民法上の土地は,私権の目的として認められる地表の特定の範囲を意味するから,
登記の対象となる土地は,私権の客体となり得るものでなければならない。
日本国政府の行政権の及ぶ領土内の陸地部分の土地は,登記能力ある土地といえる
(最判昭和61・12・16 →40頁,札幌高判平成11・1・26 →8頁)。また,私権の客体
たり得るためには,人が社会生活において独占的・排他的に支配し,利用することがで
きるものであること(支配可能性)を必要とするが,必ずしも陸地部分に限らず,水面
下の土地であっても,池沼,ため池等は一般に私権の客体となり得る。
1
海面下の土地
(1) 登記実務上,陸地と公有水面との境界が問題となるが,潮の干満の差がある水
面にあっては,春分・秋分における満潮位を,その他の水流水面については,高
水位を標準として定めるとし(昭和31・11・10民甲2612号回答 →49頁),海面下
に没する土地については,原則として,私人の所有権は認められないものとされ
ている(昭和33・4・11民三203号通知 →49頁)。したがって,土地の全部又は
一部が海面下に没した場合は,土地の滅失又は地積の減少として取り扱われる
(法37条,42条,43条5項)。もっとも,海面下に没する土地であっても,当該
土地が海面下に没するに至った経緯が天災等によるものであり,かつ,その状態
が一時的なものである場合には,私人の所有権は消滅しないものと解されている
(昭和36・11・9民甲2801号回答 →49頁,釜山地判大正3・12・3 →39頁)。
(2) 最高裁判所の判例では,海面下の土地は,海がいわゆる公共用物であって,国
の直接の公法的支配管理に服し,特定人による排他的支配の許されないものであ
り(大判大正4・12・28 →34頁),国が行政行為などにより一定範囲を区画する
ことにより排他的支配を可能にしたうえで,その公用を廃止して私人の所有に帰
属させる措置をとらない限り,所有権の客体となる土地に当たらないと解される
とし,さらに,現行法は,海の一定範囲を区画してこれを私人の所有に帰属させ
るという制度を採っていないが,民法施行以前に私人の所有に帰属させたとき,
又は,私有の陸地が自然現象により海没した場合について,当該海没地が人によ
る支配利用が可能であり,かつ他の海面との区別が可能であるときには,私的所
有権の客体たる土地としての性格を失わないものと解されるとした(最判昭和61
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・12・16 →40頁)。
2
人工海面
(1) 従来,所有権の客体であった土地が,人工的に掘削されて,港湾や養殖池,貯
木場等として利用されている場合,これらの人工海面は,自然現象によって海没
した土地と異なり,一定の目的の用に供するため人為的に作り出されたものであ
るから,その目的により,海没の状態に差異がある。
そして,それは,土地として利用する意思を捨て,海面とする意思に基づく場
合と,逆に土地利用の一態様として人工的にそのような状況を意図的に作り出し
た場合とがある。
(2) 土地所有者の意思により,土地利用の一態様として,人工海面下の土地とした
場合には,人による支配利用が可能であり,かつ,他の海面と区別しての認識が
可能な限り,所有権の客体たる土地の性格を失わないものと解される(前掲最判
昭和61・12・16,昭和43・3・26訟-335号回答 →46頁,静岡地判平成13・9・
14 →48頁)。反面,港湾建設の目的のために海洋に面している土地を全面的に掘
削してしまったような場合には,海面下となった土地は,登記能力を認めるべき
ではないと考えられる。
3
公有水面埋立地
(1) 公有水面であっても,埋立ての免許(公有水面埋立法2条)を受けた者が,公
有水面を埋め立て,その竣功認可を受ければ,その竣功認可の告示の日から埋立
地の所有権を原始的に取得する(同法24条)。
公有水面法24
(所有権の帰属等)
条
①
第22条第2項ノ告示アリタルトキハ埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ其告
示ノ日ニ於テ埋立地ノ所有権ヲ取得ス但シ公用又ハ公共ノ用ニ供スル
為必要ナル埋立地ニシテ埋立ノ免許条件ヲ以テ特別ノ定ヲ為シタルモ
ノハ此ノ限ニ在ラス
②
前項但書ノ埋立地ノ帰属ニ付テハ政令ヲ以テ之ヲ定ム
(2) 一般に竣功認可のあった埋立地は,地方自治法7条の2第1項のいわゆる所属
未定地であるから,総務大臣の告示及び都道府県知事の告示がなければ所在が確
定せず,管轄登記所が定まらないので,登記をすることができない(昭和30・5
・17民甲930号通達 →103頁)。もっとも,埋立地が規則97条の地番区域内に所在
する場合には,その埋立地の所在地は確定しているものと解されるので,竣功認
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可後は,その登記をすることができる(昭和32・9・11民甲1717号回答 →104
頁)。
なお,公有水面埋立法の規定により埋立ての免許を受け,海面の一部を区画し,
コンクリートによる養魚場を築造した者は,竣功認可の告示により,その構築物の
地盤の所有権を取得するので,養魚場の地目を「池沼」として,表題登記をするこ
とができる(昭和36・2・17民三173号通知 →50頁)。
4
無願埋立地
(1) 公有水面埋立地法に基づく免許を受けずに埋め立てられた陸地を,「無願埋立
地」という。私人が公有水面埋立法に基づく免許を受けずに公有水面の埋立てを
しても,その所有権を取得することはなく,占有を継続したとしても,その所有
権を時効取得することはできない(那覇地判昭和55・1・22 →43頁等)。当該陸
地の取扱いをどうするのか問題となる。
(2) 判例によれば,海面下の地盤は原則として,私所有権の存在を認めず(最判昭
和61・12・16 →35頁等),投入された土砂も地盤に付合しないから(最判昭和57
・6・17 →38頁),公有水面埋立法35条1項但書の原状回復義務(公有水面埋立
法36条,35条1項)の免除がされない限り,当該埋立地は,所有権の対象となら
ない。原状回復義務が免除された場合,当該陸地は,(無償で)国有地となる
(同法35条2項)。
なお,埋立ての免許が失効した場合の埋立ても(同法34条),無願埋立地と同様
の扱いとなる。
(3) さらに,公有水面埋立法に基づく埋立免許を受けて埋立工事が完成した後,竣
功認可がされていない土地であっても,長年にわたり当該埋立地が事実上公の目
的に使用されることもなく放置され,公共用財産としての形態,機能を完全に喪
失,その上に他人の平穏かつ公然の占有が継続したが,そのため実際上公の目的
が害されることもなく,これを公共用財産として維持すべき理由がなくなり,同
法に基づく原状回復義務の対象とならなくなった場合には,土地として,私法上
所有権の客体となる(最判平成17・12・16 →44頁)。
5
河川法の適用又は準用のある河川の敷地
河川法の適用又は準用のある河川の敷地は,原則として,私権の目的となり,登
記能力を有するが(河川法2条1項,法43条),常時継続して河川の流水下にあっ
て私人の支配可能性が存在しない状態にある土地部分は,私権の目的となり得ない
(河川法2条2項,法42条,43条5項)。勿論,流水下に没する状態が一時的な場
合は,私権の目的であることに変わりはない。なお,河川法の規定が適用又は準用
されない,いわゆる普通河川(→53頁)については,私権の目的となる。
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<参考>
河川(流水下)敷地となった土地の私権の帰趨(旧河川法下)(大判昭
和16・7・1) →52頁
6
寄
洲
海岸等に砂が堆積して寄洲が生じた場合,これを地積の増加による地積変更の登
記として処理する見解(昭和36・6・6民三459号回答 →49頁参照)と,本来一筆
の土地の境界は客観的に定まっているものであり,移動する性質のものではないの
で(最判昭和31・12・28,最判昭和43・2・22 →
頁),寄洲によって生じた土地
は,新たに生じたものとして,表題登記として処理すべきとする見解(大判明治37
・7・8)がある。寄洲の所有権の帰属については,種々の見解があるが,判例に
よれば,当該寄洲は,接続地に附加したような状態にあったとしても,土地の所有
権はその土地の上下に及ぶものであるから,土地の上部への付合はあり得ても,土
地の筆界の外への付合はあり得ないとし,民法の付合の適用すべきものではないと
して,国有地であるとする(大判明治37・7・8 →42頁,山口地裁下関支部判昭和
60・11・18 →43頁)。
7
海底隆起
(1) 海面下の地盤が自然現象によって隆起し,陸地となった場合,その所有者は,
国である。判例として,大地震によって隆起した海岸について,国有地と認定し
た事例(東京地判昭和56・7・23)や自然に干上がって陸地化した土地が国有地
であることを前提として時効取得の成否を否定した事例(和歌山地判昭和62・5
・27)がある。
(2) ある土地が海没後,再び自然現象で再隆起し陸地となった場合,まず問題とな
るのは,海没した土地の所有権が消滅したのかどうかである。この判断基準は,
前記1を参照されたい。海没した土地が所有権の客体たる土地性を喪失していな
いときは,再隆起した土地の所有権は,海没前の所有者に帰属すると解されよう。
〔2〕
1
土地の個性
土地の一個性
所有権その他の物権の客体となるものについては,その独立性,特定性が要求さ
れる。
(1) 土地の自然状態は,公有水面によって断たれるまでは物理的に連続するから,
これを物として取引の対象の土地とするには,必要な範囲で人為的に区分しなけ
ればならない。しかも,この区分は,事実上の区画によるのではなく,区画した
それぞれを土地の登記記録に登記しなければならない。すなわち,不動産登記法
上は,土地の登記記録の表題部に一筆の土地として登記されたものが1個の土地
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であり(法2条5号,規則4条1項),これが法律上の「1個の土地」というこ
とになる。
(2) 土地の一部の物権変動
一筆の土地の一部を取引の対象とすることは自由であるが,その物権変動を第三
者に対抗するためには,これを分筆して,当該部分を一筆の土地とし,登記しなけ
ればならない(大判大正13・10・7 →45頁,最判昭和30・6・24 →46頁)。
(3) 土地の特定
土地の登記記録は,一筆の土地ごとに設けられ,その物理的状況を明確にするた
め,その表題部に所在,地番,地目,地積が登記される(法34条1項)。しかし,
これだけでは土地の特定をすることができないため,地図によって,登記されてい
る土地の位置・区画を明確にすることとされている(法14条)。
2
一筆の土地の要件
(1) 形式的要件
土地の登記記録の表題部に登記された土地が法律上の一筆の土地として取り扱わ
れ,これが土地の個数を決定する基準となる(法34条,27条3項)。
(2) 実質的要件
一筆の土地として登記されるための要件は,全体が接続していること (道路,水
路等で隔てられていないこと。) ,字 (地番区域でないものを含む。) を異にしな
いこと,地目が同一であることである(法39条,41条1号・2号)。
3
土地の分合行為
(1) 土地の分合には,一筆の土地を数筆の土地とする「分筆」と数筆の土地を一筆
とする「合筆」のほか,分筆と合筆を同時に行う「分合筆」とがある。
(2) 登記上の一筆の土地を分合するには,土地の分筆又は合筆若しくは分合筆の登
記をすることとなるが,この登記は,登記上の一筆の土地の一個性を変更する登
記であり,登記がなされて初めて効果が生ずるところから,形成的な処分の登記
といわれる。
(3) 適法な分筆処分がなされた場合は,登記の記録と地積測量図に基づき,地図上
に記録された分筆線によって表象される区画の土地が,一筆の土地となる。
(4) 土地の分合行為は,土地の所有者だけができるのであって,他の者が申請する
ことは許されない(法39条1項)。例外として,登記官が職権ですることができ
る場合がある(法39条2項・3項)。
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土地が共有である場合には,共有者全員で申請することを要する。ただし,一
筆の土地の一部が別地目となり,又は地番区域を異にするに至ったときは,共有
者の1人から申請することができる。
法39条
(分筆又は合筆の登記)
①
分筆又は合筆の登記は,表題部所有者又は所有権の登記名義人以外
の者は,申請することができない。
②
登記官は,前項の申請がない場合であっても,一筆の土地の一部が
別の地目となり,又は地番区域(地番区域でない字を含む。第41条第
2号において同じ。)を異にするに至ったときは,職権で,その土地
の分筆の登記をしなければならない。
③
登記官は,第1項の申請がない場合であっても,第14条第1項の地
図を作成するため必要があると認めるときは,第1項に規定する表題
部所有者又は所有権の登記名義人の異議がないときに限り,職権で,
分筆又は合筆の登記をすることができる。
4
分合筆の錯誤
(1) 所有者以外の申請に基づきなされた分筆,合筆の登記は無効であり,その登記
は抹消されるべきである。また,所有者の申請に基づきなされた登記であっても,
申請手続の錯誤により所有者の意図した土地と異なる土地が形成された場合には,
実際上の妥当性を考慮して,分筆又は合筆前の状態に戻すことを認めており,
「分筆錯誤」又は「合筆錯誤」を登記原因として当該登記を抹消することができ
るとしている(昭和38・12・28民甲3374号通達 →51頁)。なお,分筆の登記の完
了後に,抵当権設定の登記をしたり,第三者に所有権移転の登記をしたように,
第三者の登記があるような場合は,無効の行為の追認(民法119条ただし書)の法
理より,当該登記の抹消を認めていないのが実務の一般的な考え方である。した
がって,このようなときは,抵当権設定の登記等を抹消した後に,土地の分筆
(又は合筆)の登記の抹消をすることができる。
(2) 分筆は,分筆地がその対象である既登記の土地の範囲内に存しなければならな
いから,分筆の登記の対象土地の範囲外である隣地土地を実測して分筆地とした
分筆の登記は無効ということになる。この場合には,分筆により開設された登記
記録は対応すべき土地が存在しない登記記録となるのでは無効であるので,「分
筆地不存在」を登記原因として,土地の表題登記を職権により抹消する。分筆元
地の登記記録については,「分筆地不存在」を原因として分筆の登記の抹消及び
地積の表示を回復するものとしている(昭和53・3・14民三1480号回答 →1-2
54頁)。
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B
判例・先例
(1) 〔釜山地判大正3・12・3〕
一時的に海面下に没した土地の所有権
(要旨)土地が風浪等により一時的に水没しても,原状回復が可能な場合は,なお
陸地である。
(理由)所謂土地トハ区画セラレタル陸地ヲ指称スルモノナルヲ以テ河川池沼ノ如キ水地モ
法律ニ禁止ナキ限リハ亦土地トシテ所有権其他ノ私権ノ目的トナルコトヲ得ヘシト雖モ
海面ハ公衆ノ使用ニ供セラレ個人ノ独占スルコトヲ得サルモノ即チ所謂公共物ニ属シ其
性質所有権ノ目的トナルコト能ハサルモノトス惟法規ニ基ク官庁ノ処分ニ因リ個人カ使
用埋築等ノ私権ヲ取得スルコトアリト雖モ何人モ之ニ対スル所有権ヲ取得スルコトナシ
而シテ海面カ元来ノモノナルト土地ノ崩壊流出等ニ因リ成リタルモノナリトハ毫モ其性
質ニ変異ヲ来サス均シク所有権ノ目的タル可能性ナキモノトスル是故ニ土地カ崩壊流出
シテ海面トナルトキハ其所有権ハ直チニ消滅ニ帰ス是レ不動産登記法第79条(現行
法
42条)ニ土地ノ滅失アリタルトキハ遅滞ナク其登記ヲ為スヘキ旨ヲ規定シタル所以ナリ
<中略>土地カ如何ナル形状トナレハ海面ニ変シタリト云フカ潮水ノ自然ノ浸漫ハ之ヲ
判定スルノ標準タルヘシト雖モ風濤海嘯等ニ因リ一時浸漫ヲ見ルモ之ヲ原状ニ回復スル
コトノ可能ナル場合ニ於テハ尚ホ陸地タルコトヲ妨ケサルヲ以テ其浸潮ハ継続的若シク
ハ連続的ノモノナラサルヘカラサルハ勿論ナリ
(2) 〔大判大正4・12・28〕
海面下の土地の所有権
(要旨)海面は行政上の処分により一定の区域を限り私人に権利を取得させること
はあるが,海面のまま私人の所有とすることはできない。
(理由)海面ハ行政上ノ処分ニ因り一定ノ区域ヲ限リ私人ニ之カ使用又ハ埋立開墾等ノ権利
ヲ得セシムルコトアルハ勿論ナリト雖モ海面ノ儘之ヲ私人ノ所有ト為スコトヲ得サルハ
古今ニ通スル当然ノ条理ナリ然リ而シテ上告人ハ折橋政嘉外1名カ明治5年中払下ヲ受
ケタル荏原郡羽田村鈴木新田糀谷村地先ニ於ケル百五十町歩ハ寄洲及ヒ海面ナリシコト
並ニ其寄洲及ヒ海面ノ払下ハ埋立開墾ノ為メナルヲ以テ開墾成功ノ上ニ非サレハ所有権
ノ移転アルヘキニ非サルコトヲ主張シ被上告人モ政嘉外1名ノ払下ヲ受ケタル百五十町
歩カ寄洲及ヒ海面ナリシコトヲ主張セシコト原判決ノ事実摘示ニ依リ明カナリ故ニ原院
ハ該百五十町歩カ寄洲及ヒ海面ナルコトヲ認メナカラ政嘉外1名ニ於テ払下ニ因リ直ニ
所有権ヲ取得シタリト為シタルモノト謂フヘシ果シテ然ラハ海面ヲ以テ私人ノ所有ト為
スコトヲ得ルモノト判定シタルニ外ナラスシテ所有権ニ関スル法則ヲ不当ニ適用シタル
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不法ノ裁判ナリト謂ハサルヲ得ス
(3) 〔最判昭和61・12・16〕
海面下の土地の所有権
(要旨)1
「海」は,社会通念上,海水の表面が最高高潮面に達した時の水際線
をもって陸地から区別されるところ,かかる「海」は,国が行政行為など
により一定範囲を区画することにより排他的支配を可能にしたうえで,そ
の公用を廃止して私人の所有に帰属させる措置をとらない限り,所有権の
客体たる土地に当たらない。
2
私有の陸地が自然現象により海没した場合についても,人による支配
利用が可能であり,かつ,他の海面と区別しての認識が可能である限り,
所有権の客体たる土地としての性格を失わないものと解するのが相当であ
る。
(理由(抄))
4
不動産登記法による登記の対象となる土地とは,私法上の所有権の客体となる物と
しての土地をいう。所有権の客体となる物は,人が社会生活において独占的・排他的
に支配し利用できるものであることを要する。日本領土内の陸地が所有権の客体たる
土地に当たることについては疑いがないが,海水とその敷地(海床)とをもって構成
される統一体としての海が土地に当たるかどうかについては,一考を要する。
海は,社会通念上,海水の表面が最高高潮面に達した時の水際線をもって陸地から
区別されている。そして,海は,古来より自然の状態のままで一般公衆の共同使用に
供されてきたところのいわゆる公共用物であって,国の直接の公法的支配管理に服し,
特定人による排他的支配の許されないものであるから,そのままの状態においては,
所有権の客体たる土地に当たらないというべきである。
しかし,海も,およそ人の支配の及ばない深海を除き,その性質上当然に私法上の
所有権の客体となりえないものではなく,国が行政行為などによって一定範囲を区画
し,他の海面から区別して排他的支配を可能とした上で,公用を廃止して私人の所有
に帰属させることが不可能であるということはできず,そうするかどうかは立法政策
の問題であって,かかる措置をとった場合の当該区画部分は所有権の客体たる土地に
当たると解することができる。
そこで,現行法をみるに,海の一定範囲を区画しこれを私人の所有に帰属させるこ
とを認めた法律はなく,かえって,公有水面埋立法が,公有水面の埋立てをしようと
する者に対しては埋立ての免許を与え,埋立工事の竣工認可によって埋立地を右の者
の所有に帰属させることとしていることに照らせば,現行法は,海について,海水に
覆われたままの状態で一定範囲を区画しこれを私人の所有に帰属させるという制度は
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採用していないことが明らかである。
しかしながら,過去において,国が海の一定範囲を区画してこれを私人の所有に帰
属させたことがあったとしたならば,現行法が海をそのままの状態で私人の所有に帰
属させるという制度を採用していないからといって,その所有権客体性が当然に消滅
するものではなく,当該区画部分は今日でも所有権の客体たる土地としての性格を保
持しているものと解すべきである。
ちなみに,私有の陸地が自然現象により海没した場合についても,当該海没地の所
有権が当然に消滅する旨の立法は現行法上存しないから,当該海没地は,人による支
配利用が可能でありかつ他の海面と区別しての認識が可能である限り,所有権の客体
たる土地としての性格を失わないものと解するのが相当である。
原審の確定するところによれば,本件係争地は昔から海のままの状態にあるもので
あって,海没地ではないことが明らかであるから,本件係争地が所有権の客体たる土
地に当たるかどうかは,国が過去において本件係争地を他の海面から区別して区画し
私人の所有に帰属させたことがあったかどうかにかかるものということができる。
5
まず,原審の確定するところによれば,本件係争地を含む前記八か村地先の海面に
ついては,堀田が,安政5年に徳川幕府から新田開発許可を受け,地代金を上納して
開発に着手したものの失敗に終わった,というのである。
徳川幕府の新田開発許可は,当該開発地につき,開発権を付与する性格のものであ
って,後の民法施行により所有権の移行するところの排他的総括支配権を付与するも
のではない。新田開発許可を受けた者は,開発を完了した後,幕府の検地を受けるこ
とによって初めて,当該開発地に対する排他的総括支配権を取得するものであって,
一定期間内に開発を完了しないときは開発権も原則として没収されるのである。開発
に先立ち上納する地代金も,開発対象地の売買代金ではなく,開発免許料ともいうべ
きものである(大阪控訴院大正6年(ネ)第144号同7年2月20日判決・法律新聞1398号
23頁参照)。
そうすると,徳川幕府から堀田に対し新田開発許可があっただけで,埋立てがされ
ないままの状態においては,徳川幕府が本件係争地を堀田の所有に帰属させたものと
いうことができず,本件係争地が所有権の客体たる土地としての性格を取得したもの
とはいうことができない。
6
次に,原審の確定するところによれば,本件係争地については,堀田が明治7年7
月4日に鍬下年季中の新開発試作地として本件地券の下付を受けた,というのである。
当時の地券発行の根拠法令である明治5年2月24日大蔵省達第25号,同年7月4日
大蔵省達第83号,同年9月4日大蔵省達第126号,明治6年3月25日太政官布告第114
号及び同年7月28日太政官布告第272号に照らすと,地券は,土地の所持(排他的総括
支配権)関係を証明する証明文書であって,土地を払い下げるための文書とか,権利
を設定する設権文書ではないことが明らかである(大審院大正7年(オ)第394号同年5
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月24日判決・民録24輯15巻1010頁,同昭和8年(オ)第1959号同12年5月12日判決・民集
16巻10号585頁参照)。
(中略)
7
ちなみに,明治4年8月大蔵省達第39号(明治6年7月20日太政官布告第257号によ
り廃止)は,「荒蕪不毛之地」の開墾を希望する者があれば入札のうえ払い下げるも
のとし,明治8年2月7日内務省達乙第13号は,海面の開墾を希望する者があれば無
償で下げ渡すものとしていたが,明治12年3月4日内務省地理局通知「水面埋立願ニ
付取調上心得」は,水面埋立てについては,まず埋立ての許可を与え,埋立工事が完
了した時点で無代価で下与するか払い下げるものとし,明治14年4月15日内務省指令
は,右の明治12年3月4日内務省地理局通知の以前に払い下げられた海面のうち鍬下
年季中に埋立ての成功しないものは国に返地させるべきものとした。そして,最高裁
判所昭和51年(オ)第1183号同52年12月12日第1小法廷判決(裁判集民事122号323頁)は,
右の明治4年8月大蔵省達第39号に基づき現場で区画を定めて私人に払い下げられそ
の後陸地となった海岸寄洲及び海面につき,「当時の法制によれば,海水の常時侵入
する地所についても,これを払下げにより私人の取得しうる権利の対象としていたと
解することができる」としたうえ,右の私人が払下げにより排他的総括支配権を取得
したと判示した。
(以下略)
(注)排他的総括支配権とは,旧民法施行(明治31年7月)により,民法上の土地所有
権に移行した権利である。
<参考>
最判昭和52・12・12 →44頁
(4) 〔大判明治37・7・8〕
寄洲の付合の成否
(要旨)河川の敷地は,公有地であって,その公用を廃止しない限りは私権の目的
とならず,河川の敷地上に生じた寄洲は官有地に帰属すべきものであって,寄
洲が民有地に接続し,付加したごとき形跡があっても,民法上の付合の法則を
適用すべきではない。
(理由)性質上公共ノ用ニ供セラルヘキ敷地ハ官ニ属スル公有地ニシテ其公用ノ廃セラレサ
ル限リハ私権ノ目的ト為ルコトヲ得サルモノニシテ此法則ハ河川法施行前ト雖行ハレタ
ルモノト解スルヲ当然トス既ニ河川ノ敷地カ私権ノ目的ト為ルコトヲ得サル官有地ナル
以上ハ其敷地上ニ自然ニ土砂ノ堆積シテ生シタル寄洲モ亦其官有地ニ帰属スヘキモノナ
ルヲ以テ仮令其寄洲ハ民有地ニ接続シテ生シ恰モ之ニ附加シタルカ如キ形跡アリトスル
モ此場合ニ民法ノ定ムル附合ノ法則ヲ適用スヘキ限リニアラス蓋土地ノ所有権ハ其土地
ノ上下ニ及フモノナルヲ以テ若シ私権ノ目的ト為ルコトヲ得サル川敷上ニ生シタル寄洲
カ民有地ニ接続シテ生シタルノ故ヲ以テ当然附合ノ法則ヲ適用シ其民有地所有者ノ所有
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ニ帰属スルモノトセハ川敷ヲ以テ私権ノ目的ト為スコトヲ禁シタル法意ニ反スルコト明
白ナレハナリ
(5) 〔山口地裁下関支部判昭和60・11・18〕
寄洲の所有権の帰属
(要旨)海流の作用によって土砂が堆積して形成された海浜地(寄洲)は,接岸地
に付合することなく国の所有に属するものと解すべきである。
(6) 〔那覇地判昭和55・1・22〕
無願埋立地の時効取得(否定)
(要旨)公有水面の埋立免許を受けないで違法に埋立工事を行って埋立地を造成し
た者が,当該埋立工事に係る埋立地につき占有を継続したとしても,その所有
権を時効取得する余地はない。
(理由)原告は,もと公有水面であった本件(イ),(ロ)及び(ニ)の各土地部分について,昭和22
年4月から23年12月にかけて埋立工事を行い,土地化させたものであるところ,原告は,
原告において右埋立工事をするに当たり公有水面埋立法に基づく埋立免許及び竣工認可
を受けなかったが,右埋立工事完了後昭和24年1月1日から20年間右各土地部分の占有
を継続し,その所有権を時効取得した旨主張するので,この点につき判断する。
現行公有水面埋立法は,公有水面を埋め立てて造成した埋立地について,埋立免許を
受けた者が竣工認可を受けなければ所有権を取得しないとし,他方,埋立免許を受けず
に公有水面につき埋立工事を行うことを犯罪として処罰の対象とするほか,埋立免許を
受けないで行った埋立工事に係る公有水面は原状に回復させるべきものとし,ただ,原
状回復の必要がない又は原状回復をすることが不能なものについては,当該埋立工事に
係る公有水面にある土砂その他の物件を無償で国の所有に属させることができるとする
が,右の趣旨は,自然の状態のままで一般公衆の用に供されている公有水面について,
利害関係人の利害を調整しつつ適正かつ合理的な国土の利用を図るため,厳重に埋立て
を規制しようというものであるから,公有水面を埋め立てて造成した埋立地について所
有権を取得するには同法所定の手続によるほかはなく,たとえ,埋立免許を受けないで
違法に埋立工事を行って埋立地を造成した者が当該埋立工事に係る埋立地につき占有を
継続したとしても,その所有権を時効取得する余地はないというべきである。
(7) 〔最判昭和57・6・17〕
公有水面の地盤と土砂の付合の成否
(要旨)公有水面を埋め立てるため投入された土砂は公有水面埋立法24条の規定に
よる竣功認可がされない限り,公有水面の地盤から独立した動産としての存在
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を失わない。
(理由)
(一)公有 水面 を埋め立てるため土砂を投入した場合でも,未だ埋立地が造成されず公
有水面の状態にある段階においては,右の土砂は公有水面の地盤と結合しこれと一体
化したものとしてその価値に格別の増加をもたらすものではないのが通常であり,ま
た,埋立地が造成されてもそれが公有水面に復元されることなく土地として存続すべ
きことが確定されるまでは,なお右の土砂は公有水面埋立法35条1項に定める原状回
復義務の対象となりうるものと考えられること等に照らすと,右の土砂は,その投入
によって直ちに公有水面の地盤に附合して国の所有となることはなく,原則として,
埋立権者が右の土砂を利用して埋立工事を完了し竣功認可を受けたときに,公有水面
埋立法24条の規定により埋立地の所有権を取得するのに伴い,民法242条の不動産の付
合の規定によって直接右の土砂の所有権をも取得するまでは,独立した動産としての
存在を失わないものと解するのが相当である。そして,(二)右の投入土砂の所有権
は,埋立権の存否及び帰属とはかかわりのないものであるから,その所有者は,埋立
権は別にこれを譲渡することができるものと解すべきである。
(8) 〔最判平成17・12・16〕
埋立工事が完成した後,竣功認可がされていない埋立地が土地として私法上所
有権の客体になる場合
(要旨)公有水面埋立法に基づく埋立免許を受けて埋立工事が完成した後,竣功認
可がされていない埋立地であっても,長年にわたり当該埋立地が事実上公の目
的に使用されることもなく放置され,公共用財産としての形態,機能を完全に
喪失し,その上に他人の平穏かつ公然の占有が継続したがそのため実際上公の
目的が害されることもなく,これを公共用財産として維持すべき理由がなくな
り,同法に基づく原状回復義務の対象とならなくなった場合には,土地として
私法上所有権の客体となる。
(理由)本件各埋立地は,公有水面埋立法(昭和48年法律第84号による改正前のもの。)以
下「旧埋立法」という。)2条に基づく大分県知事の埋立免許を受けて海面の埋立工事
が行われ,これが完成したが,旧埋立法22条に基づく竣功認可がされていない埋立地
(以下「竣功未認可埋立地」という。)である。本件の争点は,竣功未認可埋立地であ
る本件各埋立地が取得時効の対象となるか否かである。
2(1) 海は,特定人による独占的排他的支配の許されないものであり,現行法上,海
水に覆われたままの状態でその一定範囲を区画してこれを私人の所有に帰属させるとい
う制度は採用されていないから,海水に覆われたままの状態においては,私法上所有権
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の客体となる土地に当たらない(最高裁昭和55年(行ツ)第147号同61年12月16日第三小
法廷判決・民集40巻7号1236号頁参照)。また,海面を埋め立てるために土砂が投入さ
れて埋立地が造成されても,原則として,埋立権者が竣功認可を受けて当該埋立地の所
有権を取得するまでは,その土砂は,海面下の地盤に付合するものではなく,公有水面
埋立法35条1項に定める原状回復義務の対象となり得るものである(最高裁昭和54年(オ)
第736号同57年6月17日第一小法廷判決・民集36巻5号824号参照)。これらのことから
すれば,海面の埋立工事が完成して陸地が形成されても,同項に定める原状回復義務の
対象となり得る限りは,海面下の地盤の上に独立した動産たる土砂が置かれているにす
ぎないから,この時点ではいまだ当該埋立地は私法上所有権の客体となる土地に当たら
ない。
(2) 公有水面埋立法35条1項に定める上記原状回復義務は,海の公共性を回復するた
めに埋立てをした者に課せられた義務である。そうすると,長年にわたり当該埋立地が
事実上公の目的に使用されることもなく放置され,公共用財産としての形態,機能を完
全に喪失し,その上に他人の平穏かつ公然の占有が継続したが,そのため実際上公の目
的が害されるようなこともなく,これを公共用財産として維持すべき理由がなくなった
場合には,もはや同項に定める原状回復義務の対象とならないと解すべきである。した
がって,竣功未認可埋立地であっても,上記の場合には,当該埋立地は,もはや公有水
面に復元されることなく私法上所有権の客体となる土地として存続することが確定し,
同時に,黙示的に公用が廃止されたものとして,取得時効の対象となるというべきであ
る(最高裁昭和51年(オ)第46号,同年12月24日第二小法廷判決・民集30巻11号1104頁参
照)。
(9) 〔大判大正13・10・7〕
分筆登記未了土地の一部の所有権取得(譲渡)の可否
(要旨)一筆の土地の一部は分筆登記手続前においても,これを数個に区分して譲
渡することができる。
(理由)土地ハ自然ノ状態ニ於テハ一体ヲ成セルモノナリト雖之ヲ区分シテ分割スルコトヲ
得サルモノニ非ス即土地ハ所有者ノ行為ニ因リ互ニ独立セル数個ノ土地ニ区分シ分割セ
ラレ得ルモノニシテ如何ナル範囲ノ土地カ各箇ニ分割セラレタルヤハ所有者ノ為シタル
区分ノ方法ニ依リテ定マルモノトス従テ所有者ハ一筆トナレル自己ノ所有地内ニ一線ヲ
画シ或ハ標識ヲ設クル等ニ依リテ任意ニ之ヲ数箇ニ分割シ其ノ各箇ヲ譲渡ノ目的ト為ス
ルコトヲ得ヘキモノニシテ其ノ之ヲ数箇ト為スニ付テハ特ニ土地台帳ニ於ケル登録其ノ
他ノ方法ニ依リ公認セラルルノ必要ナキモノトス唯不登法ニ於テハ一筆ノ不動産ハ之ヲ
登記簿ノ一用紙ニ記載スルコトヲ要スト為セルヲ以テ(同法15条参照)既ニ一筆トシテ
登記セラレタル土地ヲ右ノ如ク数箇ニ分割シテ譲渡シタル場合ニ於テ譲渡ノ登記ヲ為ス
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ルハ先ツ分割ノ手続ヲ為スコトヲ要スヘシト雖契約ノ当事者間ニ於テハ其ノ以前既ニ権
利移転ノ効力ヲ生シタルモノト謂フヘク又土地台帳ニ一筆トシテ登録セラレタル土地ニ
付テモ登録ノ変更前叙上ノ如ク所有者ハ之ヲ分割シテ譲渡ヲ為スヲ妨ケサルコトハ地租
ニ関スル事項ヲ登録スル土地台帳ノ目的ニ照シテ之ヲ知ルニ難カラス(明治22年勅令39
号土地台帳規則1条参照)
(10) 〔最判昭和30・6・24〕
一筆の土地の一部の売買
(要旨)一筆の土地の一部でも,売買の目的とすることができる。
(理由)一筆の土地といえども,これを区分して,その「土地の一部」を売買の目的とする
ことはできる。そして右「土地の一部」が,売買の当事者間において,具体的に特定し
ているかぎりは,分筆手続未了前においても,買主は,右売買に因りその「土地の一
部」につき所有権を取得することができる。
(11) 〔昭和43・3・26訟一335号(法務省訟務局第一課長)回答〕
海面下の土地の所有権
(要旨)海面下の土地といえども支配可能性のある私有の土地については,所有権
の対象となり得るものと解される。
(照会)中国財務局管財部長から左記事案につき照会がありましたが,これが解釈について
御指示を願います。
記
一
事案の概要
国(中国財務局)は,昭和37年3月広島県呉市所在の旧海軍航空隊用地約13,000坪
を中国製鋼株式会社(以下甲会社という。)に工場用地として売払いした(売払地の
所在については別図1参照)。
この売払地のうち約2,300坪(以下A地という。)は,旧軍が水上飛行機の陸揚用施
設として,幅約150メートル延長約50メートルにわたり鉄筋コンクリート舗装(舗装の
厚さ約50糎)を行い,その舗装は沖合海面下に次第に傾斜して及んでおり,その3分
の1は常時海面下に没している状況にある(別図2参照。最も深い水深約3.7米)。
最近甲会社がA地部分を宅地として造成するにあたり水域工事許可申請手続をしよ
うとしたところ,呉市港湾課(港湾管理者)は,当該地(A地部分)は土地ではなく
公有水面であるから,公有水面埋立法による埋立免許申請手続が必要であるとの見解
を示してきた。
なお,A地を含む売払地は旧軍が大正7,8年頃旧海軍航空隊用地して海面に造成
した土地の一部であるが,未登記であったので,A地を含む売払地について売払地に
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ついて売払後の昭和37年3月28日付で表示登記及び甲会社のための保存登記が行われ
ており,その地目は宅地となっており,固定資産税が賦課されてきている。
二
問題点
(一)
A地は私有権の対象となるか。
(二)
公有水面埋立法の規定による埋立免許を取得することの要否。
(三)
A地につきなされた表示登記及び保存登記の効力。
三
当局の見解
物が所有権の対象となるか否か特定人による支配が可能か否かによって決せられる
べきであり,海浜地の土地といえどもこの意味においては支配は及びうるものと考え
られる。
ところで,海浜地の土地については,春分秋分における満潮時をもって土地と公海
(国有)との境界となし,右満潮時に海没する土地は私所有権の対象とならないもの
と解されている。
右基準はあくまで原則であって,特殊の場合には海没する土地といえども所有権が
認められており(東京地裁昭和38年3月30日判決,野本治平事件,訟務月報10巻1号
3頁),かつ,現行公有水面埋立法(1条)もこのことを前提として規定している。
即ち,春分秋分の満潮時を基準として海没する土地は私所有権の対象とならないとい
う考え方は,徳川時代以来の慣習法として認容されているところであるが,特殊の事案
(ドック等)については海没する土地といえども私所有権の対象となりうるものと解さ
れている。
法務省民事局の先例は,春分秋分に海没する土地については土地所有権は認められな
いとして,これを否定的に解している(昭和36年10月4日付蔵管第2261号大蔵省管財局
長照会,同年11月9日付民事甲第2801号民事局長回答)。
しかしながら,当局としては,海面下の土地といえども特殊の事情のある場合(例,
私有地が海没したような場合)には私所有権の対象となりうるものと解し,本件事案に
ついても次のとおり考える。
(一)
A地が私所有権の対象たりうるか否か
本件土地は前述のとおり旧軍により附近一帯の土地とともに一体としてその土
地上に水上飛行機の陸揚施設(鉄筋コンクリート舗装)が造られているものであ
って,このことは当該土地の形状からみて,まさに海面を造成し海面下の部分も
一体として土地利用(土地の支配)を行なっている場合に該当するので,当該施
設のある部分は公有水面でなく,私所有権の対象となりうる土地であり,昭和37
年3月の売却前は国の普通財産であり,その管理は正当であったと考えられる。
よって,これを財務局が処分した行為には何等の瑕疵がなく,甲会社は有効に
A地の所有権を取得したものということができる。
(二)
A土地は前述のとおり公有水面でないから,甲会社がA地部分の埋立につき公
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有水面埋立法による埋立免許を取得する必要はないものと解する。
(三)
A土地につきなされた表題登記及び保存登記の効力
私人の土地所有権が認められるか否かは,法務局先例では春分及び秋分におけ
る満潮時に当該土地が海面下に没するか否かにより区別され,右満潮時に海面下
に没する土地は土地所有権は認められないもの(昭和34年6月26日民甲第1287号
民事局長通達)と解されているが,その取扱いは原則的なものであり,本件のよ
うな施設により支配の可能な土地は,海面下の土地といえども私所有権の対象と
なりうるものと解すべきであり,従って,右表題登記及び保存登記は有効である
と解する。
( 回答 )標記については,問題点(一),(二)及び(三)いずれも貴見のとおりと考える。
(12) 〔静岡地判平成13・9・14〕
常時海面下にある人工海没地と土地所有権の成否
(要旨)私有の陸地が人工的に海没した場合において,当該土地の所有権が当然に
消滅する旨の立法は現行法上存しないから,当該海没地は,人による支配利用
が可能であり,かつ,他の海面と区別しての認識がある限り,所有権の客体た
る土地としての性格を失わないものと解するのか相当である。
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(13) 〔昭和31・11・10民甲2612号回答〕
海面又は水流水面に隣接する土地の境界線
(要旨)陸地と公有水面との境界については,潮の干満の差のある水面にあっては
春分,秋分における満潮位を,その他の水流水面にあっては高水位を標準とし
て定める。(注
本件は古くからの行政実例にならったものと解される。)
(14) 〔昭和33・4・11民三203号通知〕
海面下に没する土地と私人の所有権の認否
(要旨)春分及び秋分の満潮時において海面下に没する土地については,私人の所
有権は認められない(当該土地が登記されているときは,所有者において土地
の滅失の登記の申請又は地積減少(地積の変更)の登記の申請をすべきであり,
登記所においても職権で滅失又は地積減少をすることができる。
(15) 〔昭和36・11・9民甲2801号回答〕
海面下の土地の所有権
(要旨)海面下の土地であっても,海面下に没するに至った経緯が天災等によるも
のであり,その状態が一時的なものである場合においては,これについて私人
の所有権は消滅しないが,かつて干拓地であったものが,一定の目的のもとに
堤塘の一部を人為的に除去することによって海水の流入を促し海面下に没する
に至らしめた場合には土地所有権は認められない。
(照会)1 昭和33年4月11日民事三発第203号,千葉地方法務局長宛民事局第三課長事務代
理通知によれば,春分及び秋分の満潮時において,海面下に没する土地については,
私人の所有権は認められないと解されているが,これは,現況において海面下に没す
る土地であれば,海面下に没するに至った経緯,その状況(水深,区劃の明確性,陸
地に復旧することの難易等)のいかんを問わず,全て私人の所有権を認めない趣旨と
解すべきか。
2
1によらないとすれば,別紙のごとき事例のA地区については国の土地所有権は認
められないとしても,B地区については認められると解してよいか。
(別紙)
事例の概要
問題の海面下の土地(64,358.08坪)は,昭和13年から昭和18年の間3回にわたり元
海軍省が民有地を買収し,海軍航空隊の水上機基地として使用していたもの(旧軍用
財産。所在,徳島県小松島市坂野町大字和田島)の一部である。本財産は海面下の土
地とも,昭和20年11月30日元海軍省から大蔵省に引継後,連合軍が接収,昭和25年6
月返還され,以後未利用のままである。
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海面下の土地はその取得の経緯及びその状況からA地区及びB地区にわけられるが,
(別添航空写真参照)その概要は次のとおりである。
1.A地区は買収当時(昭和13年)から海面であり水深(1m~8m),元海軍省は,
海面下の土地を新開地として買収し,移転登記の際,雑種地に地目変更している。
買収前に陸地であったかどうかは判然としないが,地籍にも登載されまた土地台帳
附図にも地番を附して登載されている。
2.B地区は干拓地(地目は田,宅地及び雑種地)であった土地を買収(昭和18年)
したのち,水上機の発着となったものである。現況は水深浅く,干潮時には旧堤
(とう)塘の石垣と寄洲が現れ,復旧して陸地とすることは困難ではないと解され
る。
なお,近隣において,海面下の土地について私人間で売買が行われている事例が
ある。
添付資料(航空写真)
A
昭和13年買収。買収当時から海面であった。水深1m~8m
B
昭和18年買収後,堤(とう)塘の一部を壊したため海面となった。
( 回答 )1.土地が海面下に没するに至った経緯が,天災等によるものであり,かつ,その
状態が一時的なものである場合には,私人の所有権は消滅しない。
2.所問の場合には,土地所有権は認められない。
(15) 〔昭和36・2・17民三173号通知〕
所属未定地の編入に関する疑義について
(要旨)1
公有水面埋立法の規定による免許を受けて海面を区画し,養鰻場を築
造した場合,同法24条の規定により土地の所有権を取得するものと解する。
2
養鰻場は,地目を「池沼」として,登記をすることができる。
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(16) 〔昭和36・6・6民三459号回答〕
寄州上に建築された建物の所在
(要旨)寄州は,その附合した土地の一部であるから,寄州上に建築された建物は
当該土地の地番をもって所在を表示すべきである。
(17) 〔昭和38・12・28民甲3374号通達〕
分筆錯誤を理由とする分筆登記の抹消の可否
(要旨)所有権以外の権利の登記のある土地の分筆登記をした後,当該分筆が分筆
登記申請の錯誤によりされたことを原因として分筆前の状態に戻すための分筆
登記の抹消の申請があった場合,これを受理して差し支えない。
(18) 〔東京高判昭和42・9・28〕
実体上の所有者でない登記名義人からなされた分筆登記の抹消請求の可否
(要旨)真正な所有者でない登記名義人の申請によって分筆登記がなされた場合,
真正な所有者は,当該分筆の登記の抹消を求めることができる。
D
参
考
<参考判例>
(1) 〔最判昭和52・12・12〕
排他的総括支配権
(要旨)1
明治4年8月大蔵省達第39号「荒蕪不毛地払下ニ付一般ニ入札セシ
ム」(荒蕪不毛地払下規則)による払下げの対象は,国がそれまで有して
いた払下地所に対する排他的総括支配権である。
2
明治初年の法制に依れば,海水の常時浸入する地所についても,これ
を払下げにより私人の取得し得る権利の対象としていたと解することがで
きるから,大蔵省達第39号によってかかる地所の払下げを受けた私人は,
これによってその地所に排他的総括支配権を取得する。
3
明治初年に私人に払下げられた海水が常時浸入する地所を対象とする
排他的総括支配権は,明治31年7月民法が施行されるとともに民法上の土
地所有権に当然に移行したものというべきである。
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(2) 〔大判昭和16・7・1〕
河川(流水下)敷地となった土地の私権の帰趨(旧河川法下)
(要旨)ある土地が社会通念上河川の(流水下の)敷地と認められる状態となった
ときは,その土地に存した私権は消滅する。
(理由)河川法ノ規定ニヨレハ河川ノ敷地ハ私権ノ目的タリ得ルモノナルカ故ニ或土地カ実
際ニ於テ社会通念上河川ノ敷地ト認メラルル状態トナリシカモ通常右敷地以外ノ状態ニ
恢復シ得サルモノト思惟セラルルニ至リタルトキハ其土地ハ河川ノ敷地トシテ私権ノ客
体タル適性ヲ喪失シ其ノ上ニ存シタル私権ハ消滅ニ帰スルモノト做ササルヘカラス本件
ニ於テ原審ノ認定シタル処ニヨレハ係争土地ハ福島町ノ石垣ノ外ニシテ河川法施行ノ山
手川及福島川ノ落合フ所ノ川中ニアリ往時水害ノ為地形ヲ変シ増水時及満潮時ニ於テハ
常ニ全地浸水スル状態トナリ明治33年頃ヨリ大正14年7月(原審カ川トナリタリト做シ
タル時)迄20余年間其状態ヲ持続シ其間数回ニ亘リ荒地トシテ大正13年迄免租ノ処分ア
リ最後ニ右免租継年期明ノ後大正14年7月20日税務官署ニ於テ川成処分ヲ為シタリト云
フニアリテ少クトモ右ノ事実(従来ノ川ト全然区別シ得サル状態ナリヤ否及右川成処分
ヲ税務官署ヨリ処分当時広島県知事並当事者ニ通知シタリヤ否ハ暫ク措キ)ハ原審挙示
ノ証拠ニヨリ決シテ認メ得サルモノニ非ス右ノ如ク本件土地(川中ニ在リテ増水時及満
潮時ニハ常ニ全地浸水スル状態ニアリシカモ20余年ノ久シキニ亘リ其ノ状態ヲ継続シテ
最終ノ免租継年期ヲ経過シタル以上社会通念上最早通常河川ノ敷地以外ノ状態ニ恢復シ
得サルモノト思惟セラルルニ至リ河川ノ敷地トナリタルモノト認ムルヲ相当トス(吾国
ノ河川ニアリテハ其敷地ハ非常ニ広クシタモ平時ニ於テ流水ノ存スルハ其ノ小部分ニ過
キサルモ増水ノ場合ニ於テハ全部又ハ大部分水ニ被ワルルニ至ルヲ普通トシ河川ノ敷地
ト為スニハ必スシモ所論ノ如ク平常其上ニ流水ノ存スルコトヲ必要トスルモノニ非ス)
サレハ原審カ本件土地ハ前記大正14年当時ニ於テ既ニ私権ノ客体タル適性ヲ失ヒ居リタ
ルモノニテ其後ニ行ハレタル譲渡行為ニヨリ上告人ハ所有権を取得シ得サルモノト做シ
タルハ結局正当ニシテ論旨ハ総テ理由ナキニ帰ス
(注)地租条例(明治17年3月15日太政官布告第7号24条)
24条
川成,海成,湖水成ニシテ免租年期明ニ至リ原形ニ復シ難キモノハ,更ニ20年以
内免租継年期ヲ許可ス。其年期明ニ至リ尚ホ原地目ニ復セス他ノ地目ニ変セサルモノ
ハ,川・海・湖ニ帰スルモノトシ,其地券ヲ還納セシム
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<用語解説>
「普通河川」
普通河川とは,河川法や下水道法など河川管理に関する特別法の適用や準用のな
い河川,運河,公共用悪水路,井溝,堀等の総称である。
この普通河川は,公図(地図に準ずる図面)上,無番地の青色で着色された長
あおせん
狭線で表示されたもの(実務上「 青線」と呼ばれる)や公図や公簿に表示のない
「脱落地たる水路等」,公共の用に供されている民有の用悪水路,井溝などの「民
有水路等」などのうち,河川法,下水道法の適用のないものである。
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