症例検討会

症例検討会
平成 24 年 4 月 八代店
2 月 2 日岩砂病院の移転に伴い、各診療科の処方箋を応需するようになりました。婦人
科では、毎週月曜日の午後診、不妊外来が行われております。
不妊症と思われる患者の処方について、検討しました。
H.24.2.6
1ヶ月前から服用
41 歳女性
今回2回目処方
Rp. プレマリン錠 0.625mg 1T
分1朝食後
21 日分
プロゲストン 2.5mg
カウフマン療法により排卵を促進
2T
分2朝・夕食後
副作用あり:頭痛、吐き気
11 日分
させる。
*カウフマン療法とは・・・・
一般的には、生理不順や無月経の人が、規則的な月経周期を人為的に作りだして、ホ
ルモン欠落症状が起こらないようにする治療法。通常の低温期にあたる時期に、卵胞ホル
モン(エストロゲン)を投与して、高温期に当たる時期に、卵胞ホルモンと黄体ホルモン
(プロゲステロン)を投与する。人工的に正常のホルモン分泌量と同じ周期にさせ、リバ
ウンド効果で正常な排卵がおこることを期待する。連続して数周期治療を行い、その後中
止すると、反跳現象として LH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)の分泌が
高まり、正常月経周期を回復する。
不妊治療では、カウフマン療法中は、薬によるホルモン作用により、脳からの命令が
抑制され、卵巣は休憩状態にはいる。この休憩後に
卵巣機能の回復が期待できる。
自然排卵を促進する。
LH(黄体形成ホルモン)
;下垂体前葉から産出されるゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)
卵胞期には卵胞莢膜細胞の LH 受容体に作用して、アンドロゲ
ン産生に働き、排卵を誘発する。黄体期には黄体形成を促し、
プロゲステロン産生に働く
FSH(卵胞刺激ホルモン)
;LH と同じく下垂体前葉から産出されるゴナドトロピン。
卵胞期に卵胞の発育を促し、エストロゲン産生に働く。
1
前回 Do 処方
31 歳女性、33 歳女性
H24.2.6
Rp. クロミッド錠 50mg
排卵誘発法(クロミフェン療法)
1T
分1朝食後
5日分
*排卵誘発法(クロミフェン療法)とは・・・・
軽度の排卵障害に使われる方法。ホルモン中枢の視床下部に働き、排卵を誘発する。
エストロゲンに似た構造をもつクロミフェンは、エストロゲンと競合して、視床下部のエ
ストロゲン受容体に結合する。視床下部はエストロゲンの分泌が低いと認識し、GnRH の
分泌を亢進、下垂体前葉での LH、FSH の分泌が亢進し、卵巣の発育促進、排卵をおこす。
GnRH;ゴナドトロピン放出ホルモン。視床下部で産生され、下垂体前葉での LH、FSH
の産生、分泌を促進させるホルモンである。
<エストロゲンのフィードバック機構>
エストロゲンは、濃度が一定の範囲内にある場合は、濃度があがるとネガティブ・
フィードバックによってもとの濃度に戻るが、一定の濃度を超えると、ポジティブ・
フィードバックによってさらに濃度が上昇する。これによってLHサージが引き起こ
され、排卵につながる。
ネガティブ・フィードバック(NF)
視床下部
卵胞
抑制
GnRH
LH
FSH
GnRH
ポジティブ
フィードバック
前葉
ネガティブ
フィードバック
下垂体
抑制
ポジティブ・フィードバック(PF)
LH
エストロゲン
濃度が上昇すると
FSH
エストロゲン
ある一定の濃度を超えると
→NFによりもとの
濃度にもどる
→PFによりさらに
濃度が上昇する
→LHサージ
→排卵
2
次に、産婦人科の症例を紹介します。
産科
Rp. ダクチル
3T
35歳
デュファストン 3T
Rp. パーロデル
毎食後
2T
5日分
朝夕食後 14日分
29歳 母乳分泌抑制
婦人科 Rp. セフゾンカプセル 100mg 3C
28歳
メテルギン
3T
つくしAM散
3.9g 毎食後
Rp. エストリール 0.5mg
1T
Rp. プラノバール
1T
流産予防
流産後
夕食後
5日分
子宮収縮、感染予防
7日分
就寝前 11日分
Rp. ルナベル 1T 就寝前 42日分
(21日連続服用 7日間休薬で1クール)
90歳
不正出血
32歳
生理不順
24歳
生理不順
25歳
子宮内膜症
Rp. オキコナール腟錠 1ヶ 腟内挿入
1回分
30歳 カンジダ腟炎
Rp. エストリオール腟錠 7ヶ 1日1個
腟内挿入
72歳
Rp. フロリードDクリーム 10g 1本
腟炎
10代~30代
カンジダ腟炎 外陰腟炎
Rp. ツムラ呉茱萸湯
37歳
7.5g
ツムラ当帰芍薬散 7.5g
毎食前
60日分
Rp. ツムラ七物降下湯 5g
ツムラ抑肝散
片頭痛、むくみ
61歳
5g 朝食後、就寝前 14日分
3
高血圧、認知症予防
岩砂病院処方で取り扱った薬品について、以下の表にまとめました。
内服薬
分
薬品名
類
(成分名)
エストリール錠 0.5mg
卵 (エストリオール)
常用量
適応症
1 回 0.1~1mg
更年期障害、膣炎、
1 日 1~2 回
子宮頸管炎、子宮膣部びらん
胞
ホ
子宮頸部の細胞機能の亢進等
ル
で、頸管を柔軟化させる。
モ
ン プ レ マ リ ン 錠 0.625mg
(結合型エストロゲン)
1 日 0.625mg~1.25mg
更年期障害、膣炎
~3.75mg
卵巣欠落症状、卵巣機能不全
(機能性子宮出血 or 膣炎) 機能性子宮出血
デュファストン錠 5mg
黄 (ジドロゲステロン)
1 日 5~15mg 分1~分3
切迫流早産、習慣性流早産
子宮内膜症;1 日5~20mg
体
月経困難、月経周期異常
ホ
子宮内膜症、機能性子宮出血
ル プロベラ 2.5mg
モ 後)プロゲストン 2.5mg
1 日 2.5~15mg
分1~分3
無月経、月経周期異常
機能性子宮出血
ン (メドロキシプロゲステ
黄体機能不全による不妊症
ロン酢酸エステル)
切迫流早産 習慣性流早産
卵 プラノバール配合錠
機能性子宮出血
月経困難症、月経周期異常
胞 (ノルゲストレル 0.5mg・エチ
;1 日1T
過多月経、子宮内膜症
・ ニルエストラジオール
7~10 日間連続
卵巣機能不全
黄 0.05mg)
その他;1日1T 月経5
機能性子宮出血
体
日目から3週間連続
ホ ルナベル配合錠
1日1T21日投与その
子宮内膜症に伴う月経困難症
ル (ノルエチステロン
後7日間休薬
機能性月経困難症
モ 1mg・エチニルエストラ
(28日間で1クール)
ン ジオール 0.035mg)
配
低用量ピルと同一成分
合
剤
2 剤共通 血栓症に注意 35 歳以上で 15 本/日以上の喫煙
者禁忌
副)足の浮腫、頭痛
4
子 ウテメリン錠 5mg
1 回1T
宮 (リトドリン塩酸塩)
1日3回
切迫流早産
収
縮 ズファジラン錠 10mg
抑 (イソクスプリン塩酸塩)
①1日3~6T
①切迫流早産
分3~分4
②月経困難症
制
②1 回3~8T
剤
分3~分4
共通 β刺激作用
鎮 ダクチル錠 50mg
け (ピペリドレート塩酸
1日3~4T
分3~分4
切迫流早産における諸症状の
改善
い 塩)
子宮平滑筋収縮抑制作用
子 メテルギン、パルタンM
宮 0.125mg
1回1~2T
子宮収縮促進、子宮出血予防
分2~分4
収 (メチルエルゴメトリン
縮
局所麻酔作用
副交感神経遮断作用
剤
禁;イミグラン、ゾーミッグ
マレイン酸塩)
レルパックス、マクサルト
ジヒデルゴット
剤
イトリゾール
止 アドナ錠30mg
1回1T 1日3回
不正性器出血
血 (カルバゾクロムスルホン酸 Na)
剤 トランサミンカプセル
250mg(トラネキサム酸)
排 クロミッド 50mg
1 日3~8C
分3~分4
1日 50mg
排卵障害に基づく不妊症の
排卵誘発
卵 (クロミフェンクエン酸
誘 塩)
発
抗エストロゲン作用
剤
母 パーロデル錠 2.5mg
乳 (ブロモクリプチン
1 日 1 回 2.5mg
夕食直後
産褥性乳汁分泌抑制
乳汁漏出症
分 メシル酸塩)
効果をみながら 1 日
持続的ドパミン受容体作動効
泌
5~7.5mg まで漸増
果
抑
分2~分3
下垂体前葉からのプロラ
クチン分泌を特異的に抑制
制
副)強い眠気
5
外用薬
分
薬品名
常用量
適応・作用機序
類
フロリード腟坐薬
1 日 1 回 100mg
カンジダ腟炎
(ミコナゾール硝酸塩)
腟深部に挿入
外陰腟炎
感
6 日間~14 日間投与
*冷所保存
染
症
フロリードDクリーム1%
1 日2~3回塗布
10g
オキコナール腟錠 600mg;後発
週 1 回 600mg
(オキシコナゾール硝酸塩)
真菌学的効果が得られ
先発;オキナゾールV腟錠 600mg
ない場合 更に1本
クロマイ腟錠 100mg
1 日 1 回 1本挿入
細菌性腟炎
1 日 1 回 0.5mg~1mg
腟炎(高齢者・小
腟内挿入
児等)
(クロラムフェニコール)
ホ
エストリオール腟錠 0.5mg
ル
モ
子宮頸管炎
ン
子宮頸部びらん
剤
抗
アラセナAクリーム
1 日1~4回塗布
単純疱疹
ウイ
ルス
上記薬品は、処方全体の一部分です。今後も継続して検討を続けたいと考えています。
6
不妊症について
Ⅰ
不妊症の定義
不妊症とは、夫婦が妊娠を希望し 2 年以上性生活を行っているにもかかわらず、
妊娠しない場合をいう。
Ⅱ
不妊症の原因
男性因子------精子の形成障害(造精機能障害)
精管の通過障害
副性器障害(精のう、前立腺)
性機能障害
女性因子-----内分泌、排卵因子(視床下部―下垂体―卵巣のホルモン異常)
卵管因子(女性因子の中で最多
卵管采の癒着、卵管閉塞)
子宮因子(子宮体部の異常 子宮筋腫、子宮奇形など)
頸管因子(子宮頸部 まれ 精子の進入阻害)
Ⅲ
不妊治療
不妊を疑った場合には、まず不妊スクリーニング検査を行い、不妊因子を診断する。
不妊因子が特定されたら、原因疾患の治療を行う。異常がない場合は、タイミング
指導、人工授精、ART(生殖補助医療技術)を行う。
不妊症疑い
不妊スクリーニング検査
・基礎体温
・クラミジア検査
・子宮卵管造影
(血中抗体価)
・Rubin テスト
・ホルモン付加試験
・血中ホルモン測定
・淋菌検査
・超音波検査
・精液検査
・卵管通色素検査
(核酸増殖法)
不妊因子
・視床下部-
下垂体-卵巣
の異常
・黄体機能不全
・他嚢胞性卵巣症候群
(PCOS)
・高プロラクチン・早期卵巣機能不全
血症
(POF)
・クラミジア感染症
・子宮奇形
・子宮筋腫
淋菌感染症
・Asherman
・子宮腺筋症
(卵管周囲癒着
(アッシャーマン)
・子宮内膜症
卵管閉経)
・造精機能
の障害など
症候群
・卵管留水腫
・子宮内膜症
内分泌・排卵因子
卵管因子
7
子宮因子
男性因子
8