EU 2012年法令動向レビュー

システム認証事業本部
EU 2012年法令動向レビュー
2012年よりビューローベリタスとパートナーシップを結ぶEnhesa(エンヘサ)社より、海外における法規制を
テーマに記事を連載しております。大変ご好評により、2013年も引き続き連載をお届け致しますので、是非
ご期待下さい。
新たな年が始まった今、企業が今後来るべき規制への準備を整えるために、EHS (環境及び労働安全衛生)
分野での継続的な規制の強化という意味で、常に期待を裏切らないできたEU(欧州連合)における、2012年の
規制動向を振り返ってみたいと思います。
EUは2012年、主要な指令を採択する傍ら、加盟国の国内法より優位性を持つ規則を採用することにより、域内
市場におけるEUレベルでのコントロールをより強化する方向性を明らかに示しました。指令(Directive)が加盟国
で法的効力を持つには、各国で対応する国内法が制定される必要がある一方、規則(Regulation)は加盟国に
おいて直接効力を持ちます。指令は国内法への導入というプロセスがあるために、加盟国によってその導入
内容にある程度相違が出てくることが避けられませんが、規則はEU全域で統一的な法的要求事項を適用する
ことができます。
2012 年に最終化された 3 つの主要な EU 指令
2012年には、長らく議論の的であった3つの主要なEU指令がついに最終化されました。まず夏に、電気・電子
機器廃棄物を規制する改正WEEE指令(Directive 2012/19/EU)が公布されました。次いで大規模事故災害に
関 す る セ ベ ソ III 指 令 (Directive 2012/18/EU) が 施 行 さ れ 、 11 月 に は エ ネ ル ギ ー 効 率 指 令 (Directive
2012/27/EU)が公布されました。
改正WEEE指令は、加盟国と欧州議会間の長きに渡る交渉
の結果、内容がまとまりました。2014年2月14日 までに各
加盟国で国内法に導入されることが定まっていますが、主要
な規制は2014年から2019年にかけて実際に施行されること
になります。拡大生産者責任原則が全ての電気・電子機器に
拡大され、今後数年かけて、廃棄時の回収対象となる電気・
電子機器も拡大されることになります。
セベソIII指令は2015年6月1日までに加盟国での国内法への
導入が義務付けられ、規制対象となる施設が拡大されます。
ハイリスクとされた施設は、届出書類、大規模事故災害予防方針、安全管理システム、安全報告書といった安全
管理書類に、より多くの情報を含めることが義務付けられるようになります。セベソ対象施設への立ち入り検査も
増強され、施設に関するより多くの情報が一般にも開示されることになります。
エネルギー効率指令は、2020年までの一次エネルギー消費量を、予測される通常レベルより20%(原油換算
368百万トン分)削減するというEUの目標に向けて採択されたものです。主要な要求事項の中でも特筆すべきは、
大企業が4年ごとにエネルギー監査を実施しなければならないということでしょう。初回のエネルギー監査は
2015年12月5日までに実施されなければなりません。エネルギー供給者もまた、2020年までの年間エネルギー
削減等の諸義務の対象となります。
指令で注意すべきは、国内法への導入にあたって加盟国にある程度の裁量権が与えられているということです。
指令の要求事項は最低限のもので、国によってはより厳しい規制を制定する可能性があります。例えば、指令
2009/161/ECは化学物質に対する労働者ばく露限界を定めています。ほとんどの加盟国がこのばく露限界を
そのまま導入していますが、ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、そしてラトビアでは、指令2009/161/ECで
指定するいくつかの化学物質について、指令より厳しいばく露限界を定めました。このように、EUの規制につい
て正確に理解するには、各加盟国の国内法を詳細に追うことが肝要です。
化学品及び製品に関する規制
2012年、EUは化学品及び製品の環境側面に関する規制でも、非常に積極的に取り組む姿勢を示しました。
製品規制分野では、EU全域で直接効力を持つ規則が続けて採択されており、既存の指令を置き換えていく
傾向が明らかです。
また、2012年には、これ1つで既存の化学品に関する多くの指令を置き換えた初めての包括的規則である
REACH規則(EC/1907/2006)の改正により、化学品の規制がさらに拡大されました。2012年、EU委員会が
欧州化学品庁(ECHA)の報告を踏まえ、鉛、カドミウム、フェニル水銀化合物、発がん性物質、突然変異原誘発
物質、生殖毒性物質などの化学物質に対する新たな制限を追加しました。さらに、認可対象物質が拡大され、
DIBP、TCEP、三酸化二ヒ素などを含む物質が付属書XIVに追加されました。これら追加物質の製造や使用に
は、2014年又は2015年より認可が必要となります。ECHAはまた、136物質を高懸念物質として候補リストに
追加しました。
2012年には、バイオサイド規則(EU/528/2012)と、化学物質の輸出入に関するPIC規則 (EU/649/2012) が
改正されました。バイオサイド規則は、2013年9月1日をもって加盟27カ国における国家法令を置き換え、殺生
物性物質や殺生物性製品に適用されることになります。つまり、ECHAによる統一的な認可プロセスがEU全域
で適用されるのです。PIC規則の改正は、2014年3月1日より、輸出手続の変更など化学物質の輸出入を行う
企業に適用される規制が変更され、またPIC取扱業務がECHAに移管されます。このような一連の改正により、
ECHAがEUの化学物質を管轄する機関の中で、これまでより一段と重要な役割を占めるようになります。
最後に特筆すべきは、欧州委員会が、EU全域で直接適用されるエコデザイン要件やエネルギー表示義務を
拡大する方向で着実に進んでいるということです。4つの新たな製品群(エアコン、ドラム乾燥機、照明機器、送水
ポンプ)が、EU市場で販売されるためにエコデザイン要件を満たさなければならず、またエネルギー表示義務
対象に証明機器とドラム乾燥機が追加されました。
2012 年の傾向が示唆すること
2012年は、企業にとって、EUと加盟国の双方における政策や法令の動向を追うことが重要であることを、改め
て示した年でした。この傾向は2013年も続き、施行が予定される規則を始め、2013年1月が国内法制定期限で
ある改正RoHS指令や、IPPC指令(総合的環境汚染の防止と制御に関する指令)を置き換える産業排出に関す
るIED指令(2010/75/EU)など、主要な指令の国内法制定期限が迫っており、多くの変化が起こることが予想され
ます。最新のEUと加盟国の法令動向をウォッチするために、EnhesaではEU及び各加盟国の法規制動向を
毎月配信するモニタリングサービスを提供しています。世界各地における法令の入手やコンプライアンス(法令
遵守)支援のご相談は、下記までお気軽にお寄せ下さい。
執筆:Flore Cognant (Enhesa EHS コンサルタント)
翻訳・編集:宮田 祐子 (Enhesa アジア・パシフィック地区リージョナルマネジャー)
【お問い合わせ先】
・ビューローベリタスジャパン㈱ システム認証事業本部 営業部 TEL:045-651-4785
ビューローベリタスのサービス: 遵法監査(Legal Compliance audit)
・Enhesa(日本語対応窓口)
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Enhesaは、企業のEHS (環境、労働安全衛生)法令遵守を支援するグローバルコンサルティング会社であり、
世界150の国及び地域を網羅しています。ビューローベリタスジャパン株式会社との緊密な連携により、法規制
動向のモニタリング、コンプライアンス監査代行、製品規制調査等、日本企業の国内及びグローバル市場におけ
る事業展開・事業運営、及び輸出に関する法令遵守を支援しています。
Web Site: http://www.enhesa.com/ja/