障害者の地域居住支援 多世代交流やコミュニティ形成 5.高齢者・障がい者等の住まい方を支援する小地域福祉活動拠点整備事業 (選定年度:平成 22 年度) ■代表提案者:社会福祉法人半田市社会福祉協議会 ■事業場所: 「おっかわハウス」 :愛知県半田市 「なるなるの家」:愛知県半田市 高齢者 障害者 子育て 〔事業概要〕 福祉系NPO法人と社協が協賛し半田市街地で高齢者・障害者・児童を対象とした緊急 避難・宿泊体験施設を整備する事業である。また、この施設を小地域福祉活動拠点にし、 1階部分は専門職員による福祉相談、住宅改修に関するモデルハウスを展示し、地域住民 の交流施設として運営する事業である。 〔提案の評価概要〕 虐待からの一時避難所、軽度障がい者向けの施設など、ニーズを踏まえた緊急性・公共 性の高い先駆的提案であると認められる点、社会福祉協議会とNPOとの連携など社会福 祉協議会としての今後のあり方の一つのモデルを提案している点、事業展開の安定性・確 実性も見込まれる点を評価した。 (1)提案概要 ①提案時の事業背景 おっかわハウス 半田市における高齢者虐待の実態は、被虐待者 ( 「恐れ有り」の者を含む)は、平成 20 年度は 56 件、 平成 21 年度は 55 件と毎年 50 件を超えている。 また、 現在は親族(主に親)と同居しているが、5~10 年 後は在宅生活維持が困難と予想される障がい者が市 内に約 80 名いる(平成 21 年度末現在) 。さらに、介 護機器の選定や住宅改修のあり方についても、効果 的かつ経済的な運用を市民目線で検証できるモデル ハウス的なものが市内には存在しない状況にある。 ②提案時の事業概要 位置図(地理院地図より) 古民家の改修等により地域拠点を整備し、地域住民の交流並びに高齢者・障がい者が住み 慣れたまちで生活し続けることができるように必要な支援に関する事業を実施する。 宿泊訓練、虐待シェルターなど専門性の高い事業を行いたかったが、ニーズキャッチする ためには既存の相談窓口では難しく、間口を広げる必要があった。アウトリーチする先とし て、気軽に人が集まり、そして情報が集まる拠点があれば、埋もれていた問題が湧き上がっ てくるという狙いがある。 地域拠点(共生型福祉施設)を半田市内に 3 ヵ所開設し、以下の事業を行う。 ⅰ)障がい者の在宅生活支援を目的とした「宿泊訓練施設」の運営 *上記を虐待やDV被害者の一時避難所(シェルター)としても活用 ⅱ)障がいの有無や世代を問わない「多世代交流サロン」の運営 ⅲ)学童保育等の事業を行う「こどものいえ」の運営 ⅳ)NPO法人や市民活動団体に“場”を提供し、地域活動を支援する「チャレンジスペ ース」*現在、学童保育等の事業を行う「こどものいえ」を運営 (2)建築概要 ・建物 <おっかわハウス> 共生型福祉施設 ⅰ)障がい者の在宅生活支援を目的とした「宿泊訓練施設」 住宅・施設の形態 (虐待やDV被害者の一時避難所(シェルター)としても活用) ⅱ)障がいの有無や世代を問わない「多世代交流サロン」 ⅲ)学童保育等の事業を行う「こどものいえ」 敷地面積 620 ㎡ 延床面積 193.00 ㎡ 構造・階数 木造・2 階建 管理開始年月 平成 22 年 4 月 共同利用設備 多世代交流サロン 「私も何かしたい」という人が現れ、書道教室、手芸教室などが開かれている。また、 「手 をつなぐ育成会」の母親たちが子育てサロンを月2回行い、知的障害者の母親たちが、健常 児も受け入れて子育て相談に対応している。 障がい者が畑を借りて収穫した玉ねぎ、ししとうなどの野菜を宿泊訓練棟の前で無人販売 をし、精神障害への理解を進めていきたいと考えている。 ⅰ)宿泊訓練施設・シェルター 発達障がい児、知的障がい児、精神障がい児が、親のいない環境の中でも自力で生活する 体験を普通の住宅で体感するものである。宿泊訓練棟は 2 階建てであるが、古いためエレベ ーターもなく、段差も数多くあるため、身体障がいは対象外としている。 宿泊訓練に入る職員は事前に当事者、家族と頻繁に面接し、馴染みの関係作りをするとと もに、事前に障がい特性やできること、できないことを把握する。その後、個別支援計画を 立て、それに基づき訓練を実施する。利用前の準備、アセスメントと相当な手間が必要であ るため、1 ヵ月に 1 件のペースを想定している。宿泊訓練は障がい者相談支援センターの相 談支援専門員が一緒に泊まり、午後 6 時から翌朝 9 時の 1 泊 2 日で行う。一人の職員が子ど もと寝るまでの相手をし、もう一人の職員が別室で母親から傾聴する。親離れ子離れができ ないケースが多いが、早い時期からなるべく距離を置きながら、子どもが自立できるように 介入できた事例もある。平成 23 年 11 月に自閉症の双子、1 月に自閉症の 11 歳の男の子と、 今までに 3 件の利用実績がある。 今までにDV2 件、高齢者虐待 1 件の相談があったが、宿泊棟(シェルター)の利用には 至っていない。シェルターは、場所が知られてはいけないため、民生委員(市内に 165 名) と市職員以外には伝えていない。着の身着のままで逃げてきた場合、生活保護の申請、保護 の決定、次の住宅を探すまで半月程度で対応できるため、利用期間は 2 週間程度を目安とし ている。 ⅱ)多世代交流サロン・ⅲ)チャレンジスペース(こどものいえ) 乳幼児から高齢者までが遊びに来て、お茶を飲んだり、話をするためのスペースである。 学童保育単体ではなく、高齢者、障がい者が集まるサロンを併設することで、多世代間の交 流が可能となる仕組みとなっている。地元の高齢者が少しずつ子どもたちの顔と名前を覚え、 子どもが外で悪いことをしていると怒るような関係もできてきている。また、住民が気軽に 来られるところに相談窓口があるべきで、保健師による子どもの健康や発達、虐待などの専 門相談が可能な体制となっており、必要に応じて関係機関につないでいる。ここが敷居の低 い行政や社協の窓口のような気軽な拠点になったおかげで問題解決に向かっている事例もあ り、人が集まることで虐待や認知症の情報も入ってくる。個人情報の保護などの課題もある が、地域のつながりが再生されれば目配りや早期発見につながるため、社協では「おっかわ ハウス」で顔見知りになり、昔のような地域のつながりが復活すれば良いと考えている。 チャレンジスペースでは、 「こどものいえ」の事業が軌道に乗り、よりよい環境を求めて移 転した場合に備えて、本事業のミッションが共有できる団体に場を提供する準備を進めてい く。 (3)提案内容の達成状況・課題 築 70 年近い古民家の改修で、主に耐震補強と柱と床の補強が工事の中心であった。なるべ く古民家の良さを残し、子どもたちは毎日、縁側を利用している。地域助け合いの会「なる なるの家」は、 「おっかわハウス」の次にオープンした地域拠点であるが、まだ実績というほ どの活動には至っていない。 「おっかわハウス」とは異なり、バリアフリー化され、電動車椅 子の脳性麻痺の方が毎日出入りしている。身体障害など要介護高齢者が様々な体験ができる よう「おっかわハウス」と機能分化で準備を進めている。 バリアフリー化されていない「おっかわハウス」を利用し、介護機器のデモンストレーシ ョンで、段差でつまずかない工夫や手摺の位置など、取付け容易なものの試行を計画。敢え て不便さを残し、子供たちが高齢者の手を引く等人の力で住みやすくすることを育む空間に したいと考えている。 〔事業実施後の評価委員の所見〕 「おっかわハウス」は、子どもから高齢者までさまざま人が出会う場である多世代交流サロ ン、NPO 法人菜の花と協働している放課後児童クラブ「こどものいえ」、障害の自立に備える宿 泊訓練施設の主に 3 つの事業からなる共生型福祉の家である。 居住安定化推進事業の対象住居は、築 70 年近い古民家を借り受け、改築したものである。 地域に根ざした場所と家で事業を展開すること、すなわちいかに地域に自然と溶け込めるかを 意味している。歴史のある乙川地区であるが、近年新興地が入り混じりニューカマーとの交流 も大きな課題であろう。サロンに集う子どもと高齢者との交流を通して、若い世代の住民と古 くからの住民の交流の機会を確保している。 市民にとっては市役所や社協での相談はハードルが高いが、地域におかれたおっかわハウス が身近な相談窓口として気軽に相談できる拠点となり、虐待等難しい事案を社協や行政につな げる新しい相談支援体制の構築が期待されている。 〔資料等〕 多世代交流サロン縁側 宿泊訓練施設 各階平面図
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