地域における介入 社会的介入 法的介入 情報提供

◎ 積極的、かつ客観的に被害者(患者さん)の話を聞く。
◎ 被害者(患者さん)の話を信用する。
◎ 被害者(患者さん)の感情や恐怖心を認め、受け入れる。
◎ 「なぜ」のつく質問は避ける(「なぜ別れないので
すか?」「なぜこれまで警察に通報しなかったので
すか?」など)。
◎ 過去の情報、症状、所見、証拠、写真などの詳細を
記録する。
◎ 安全性および死に至る危険性をアセスメントする。
・脅しは言動によるものか、身体的なものか?
・凶器が使用されている、または手の届くところにあるか?
・暴力はひどくなっているまたは、より頻繁になっているか?
・これまでに受けた被害の中で最もひどいことは何か?
・子どもも同様に虐待を受けていたり、脅かされているか?
・パートナーは嫉妬深いか?。
◎ 安全のためのプランを共同で進めていく。
◎ 加害者のもとに残るか離れるか、いずれの場合も被
害者の決断を尊重する。
◎ 被害者が助言をすぐに受け入れなくても、ケアする
側の失敗ではないということ認識しておく。
◎ 地域の相談先を紹介する。警察、配偶者暴力相談支
援センター、ホットライン、シェルター、カウンセ
ラーなど。
◎ 教育を通し、DVについて人々の認識を高めていく。
情報提供
被害者は孤立させられています。暴力から逃げるた
めの情報や法律、制度を知らさせていないだけでなく、
社会的にも孤立させられているかもしれません。保健・
医療機関を訪れた被害者に、これらの情報を提供する
ことは、保健医療関係者の務めの一つでもあります。
以下のことを被害者に伝え、被害者の安全を確保しつ
つ、暴力から逃げるための支援が必要です。
◎ DV防止法によって、被害者への支援のために、各
都道府県に「配偶者暴力相談支援センター」が設置
されている。
◎ そこでは、DVに関する相談、保護命令のための手
続き、一時保護などを提供している。一時保護後の
自立支援、生活保護についても、具体的な情報提供
や相談にのっている。
◎ 生命や身体に危害が加えられる恐れがある場合、保
護命令の申立にあたり必要な事前相談も、配偶者暴
力相談支援センターと各地の警察署で行なっている。
法的介入
● 通報
◎ 保健医療関係者は、DVの被害によって負傷したり、
疾病にかかったと思われる患者さんを発見した時は、
配偶者暴力相談支援センターもしくは警察に通報す
ることができます。この場合、診療契約に伴う守秘
義務は解除されます。
◎ 但し、DV被害者の無断でことを進めることで本人
を危険にさらしたり、不利益を被らせたりすること
にならないために、通報に際しては患者本人とよく
相談して行うことが重要です。
◎ 保健医療関係者は、患者さんへの問診、観察、所見
などを詳細・具体的に記録することで、DVの被害
を裏付け、被害者を大きくサポートすることができ
ます。
● 保護命令
◎ DVのうち夫婦または身体的暴力があって離婚した
元夫婦の場合は、裁判所の保護命令を申し立てるこ
とができます。
◎ 初回の保護命令には、過去に身体的暴力があったこ
と、及び保護命令を出さなければ、申立人の生命身
体に重大な危害が加えられるおそれが大きいことが
必要です。
◎ DV被害者は、患者さん自身の住所地または居住地、
加害者の住所地、暴力が行われた地のいずれかの地
方裁判所に保護命令を申し立てることができます。
◎ 保護命令には、2種類あります。6ヶ月間申立人を
つきまとったり、申立人の住所・居所・勤務先など
申立人が通常いる場所の付近を徘徊したりするのを
禁止する「接近禁止命令」と、2ヶ月間相手方に共
同生活した住居から退去するのを命じる「退去命令」
です。
◎ 接近禁止命令の対象には、子ども(15歳以上は同
意が必要)をふくめることができます。
◎ 保護命令に相手方が違反した時は、1年以下の懲役
または100万円以下の罰金に処せられます。
◎ 接近禁止命令は、DV被害者の安全の確保のために
必要があれば再度得ることができます。退去命令は、
申立人と相手方の双方の事情を勘案して発令されま
す。
◎ 保護命令の申立をするには、事前に配偶者暴力相談
支援センターか警察に、DVによる身体的暴力を受
けた状況などについて相談しておき、申立時にその
ことを記載するか、もしくは公証人の前で宣誓して、
過去に受けた身体的暴力の状況と保御命令が出ない
と危険な状況を説明し、その証明書を作成してもら
ったものを添付することが必要です。
◎ 子どもに対する接近禁止命令の申立を行なう場合に
は、事前相談などで子どものことについても相談し
ておくことが必要です。
◎ 詳しくは、各地の地方裁判所か各都道府県にある配
偶者暴力相談支援センターに相談してください。
地域における介入
● カウンセリング
「虐待を受けても良い人なんて、いない」
「受けても良い暴力など、ない」
サバイバー、あるいはDV被害者の多くは、自尊心
を取り戻す上で他人の助けを必要としています。地域
の保健所や保健センター、医療施設、あるいは女性セ
ンターなどで、自尊感情を取り戻し、自分のおかれた
状況の危険性を検討し、長期的な安全計画を立ててい
くために、精神的健康の専門家(カウンセラーなど)
による助けが必要です。
● シェルター
公的な一時保護施設や民間が運営するシェルターは、
DVから逃げることを決断し、生命の危険などを回避
して自分の今後の生活を落ち着いて考えるための重要
な場所です。日本では公的な一時保護の機関(シェル
ター)としては「配偶者暴力相談支援センター」があ
ります。入所にあたっては、概ね2週間といった規則
や、中学生以上の男子とは同じ施設の入所が難しいな
どの問題はありますが、福祉や警察など、DVに関連
する他の公的機関との連携もあるので、積極的に利用
するとよいでしょう。また、公的な一時保護施設から
委託を受けてDV被害者と支援しようと活動している
民間グループが運営するシェルターもあり、被害者の
自立へのサポートを具体的に取り組んでいます。
社会的介入
保健医療関係者は、DVに対する社会の対応を積極
的に変えていく努力をしなければなりません。職場の
中だけでなく学校、PTAや地域の住民として、様々な
形で社会的、経済的または政治的に、現状が少しでも
改善されるよう、常に先を見越して行動していくべき
です。