地域食品の試作と評価

平成17年度農林水産省補助事業
「農水産物機能性活用推進事業」報告書①
地域食品の試作と評価
(地域農水産物の機能性成分に着目した商品開発とその評価)
平成18年3月
財団法人 食品産業センター
まえがき
近年、健康志向の高まりにより、国産原料を使用した付加価値のある食品へのニーズが
高まっており、地域の農水産物と地域の食品企業を活用し、地域農水産物の機能性に着目
した食品を開発・育成する取り組みが求められています。
(財)食品産業センターでは平成17年度において農林水産省の補助事業として、「農水
産物機能性活用推進事業」を実施し、地域農水産物の機能性に着目した食品開発状況の調
査・分析、試作品の開発・試食評価、主な機能性成分について食品科学的見地からの概要
検討を行いました。本報告書においては、そのうち試作に係わる部分を取りまとめており
ますが、「ポリフェノール及びビタミンの機能性とその利用について」を併せてご覧頂けれ
ば全容がよりご理解いただけると考えております。
機能性に着目した食品を地域の食品企業が市場化することを支援する一助として、本報
告書が関係者の参考になれば幸いです。
当事業の推進に当たって、ご指導いただいた本検討委員会の委員の方々、及び試作に当
たってご協力頂いた方々、また調査に当たってご協力頂いた試験研究機関・大学・企業の
方々に厚くお礼を申し上げます。
平成18年3月
財団法人
食品産業センター
目
次
1.事業の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
(1)事業の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
(2)事業の内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
(3)検討委員会の構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
2.商品の試作・評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5
(1)実態調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5
①第 1 回アンケート・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5
②第 2 回アンケート・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5
③調査結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7
(2)商品の試作・評価・機能性成分分析 (地域名)・・・・・・・・・ 13
①ブルーベリーティー (青森県)・・・・・・・・・・・・・・・ 17
②柿皮ゼリー (宮城県)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24
③自然薯ゼリー(ソルベ)(宮城県)・・・・・・・・・・・・・・ 30
④金時草カステラ (石川県)・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37
⑤しおふき毛馬胡瓜 (大阪府)・・・・・・・・・・・・・・・・ 44
⑥しおふき天王寺蕪 (大阪府)・・・・・・・・・・・・・・・・ 50
⑦やまもも茶 (徳島県)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54
(3)試作品評価のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61
3.まとめ
―走りながら考えたことなど―・・・・・・・・・・・・・・・ 62
資料編
資料編①
第1回アンケート集計結果・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64
第1回アンケート調査用紙 (参考)・・・・・・・・・・・・・ 75
資料編②
第2回アンケート集計結果・・・・・・・・・・・・・・・・・ 78
第2回アンケート調査用紙 (参考)・・・・・・・・・・・・・ 86
資料編③
試食モニターコメント集約・・・・・・・・・・・・・・・・・ 87
資料編④
意見交換会概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・112
「ポリフェノール及びビタミンの機能性とその利用について」(別冊)
ポリフェノールの概要
(独)食品総合研究所
食品機能部
主任研究官
石川
祐子
ビタミンの概要
東京都立食品技術センター
主任研究員
廣瀬
理恵子
ポリフェノール・ビタミンの具体的な食品への応用について
山崎製パン(株)中央研究所
所長
山田
雄司
(本事業は農林水産省補助事業である食料産業クラスター推進事業のうち農水産物機能
性活用推進事業として実施した。)
1.事業の概要
(1)事業の目的
人口減少と高齢化が進む我が国の食料消費は、既に飽和状態にあることから、今後の食
品産業と農水産業の進展にとって機能性に着目した商品の開発・販売が極めて重要と考え
られるが、これに対応できるのは概して技術力・資本力に勝る大手食品企業であり、また、
これら企業は大量販売を基本としていることから、原料手当を海外に依存することが多く
なっている。
一方、我が国の中小食品企業は、伝統的に地域の農水産業と深く結びついてきたが、概
して技術力・資本力において劣ることが多く、地域農水産物が地場市場を喪失する傾向に
ある。
このため、地域農水産物の有する機能性に着目した食品を地域の食品企業が市場化する
ことを支援し、食品開発状況の調査・分析、機能性成分についての検討を行うとともに試
作品の開発・試食評価を行うことにより、地域の食品企業の振興と地域農水産業の進展を
図ることを目的とする。
(2)事業の内容
学識経験者、試験研究機関、食品企業及び消費者団体等の分野を代表する委員により構
成される検討委員会を設置し、以下により検討を行った。
(ⅰ)機能性成分の活用方法等の検討
①
地域農水産物に含まれる機能性成分の活用方法、食品加工に利用する上での留
意点等を整理し、今後の地域農水産物を使った機能性食品の市場化への参考とす
るため、検討委員会委員により「ポリフェノール及びビタミンの機能性とその利
用について」として「ポリフェノールの概要」
、「ビタミンの概要」、及び「ポリフ
ェノール・ビタミンの具体的な食品への応用について」の取りまとめを行った。
また、加工による機能性成分含有量の変化を確認するため、加工直前の原料形態
時及び試作品形態時のそれぞれでの機能性成分含有量を測定した。
(ⅱ)機能性成分を活用した商品の試作・評価
①
食品関係試験研究機関・大学・企業に対し地域農水産物の機能性に着目した食
品開発の実態を調査するためにアンケート調査を行い、あわせて製品の試作協力
者を募り、応募内容を審査のうえ対象案件を決定した。
②
試作の進行状況を確認し、必要に応じて技術的支援を実施した。
③
試作品について、一般パネラーを加えて試食検討・評価を行った。
④
①で実施したアンケート結果と試作希望先の推移・希望内容の変化等の比較を
行い今後の機能性に着目した商品開発の振興方策を検討するため、今年度の試作
品の状況、試作検討会の状況等をふまえて2月に再度試作希望のアンケートを実
施した。
*注)
本報告書では、アンケートへの回答・試作協力先からの報告・試食モニターによる記
載事項・意見交換会での出席者発言等については、極力そのままの状態を伝える内容と
している。
また、今回の事業では、試食品について「試作品」という位置づけから、その評価に
関し、包装・表示に関しては評価の対象外としており、内容についての詳細な検討も行
っていない。
このため、本報告書においては、用語等の定義・既存法令による規定等からは一部適
当でない表現が含まれているが、本事業の趣旨・試作者の意向等をふまえ、あえてそれ
らの整合を図っていない事に留意されたい。
<事業実施のフローチャート>
第1回検討委員会
7月上旬:アンケート発信
7月末:アンケート・試作希望集約
第2回検討委員会
9月上旬:試作依頼先決定
試作協力者報告①
(試作構想)
第3回検討委員会
試作進行状況確認・支援
試作協力者報告②
(試作品内容・分析結果)
11月末~12月初:
試食検討会・意見交換会
試食検討会結果集約・送付
第4回検討委員会
2月上旬:アンケート発信
2月下旬:アンケート集約
第5回検討委員会
3月中旬:報告取りまとめ
試作協力者報告③
(試食検討会結果を受けて)
(3)検討委員会の構成
<検討委員>
座長 小林 昭一
岩手大学 特任教授
鎌田 克幸
日本菓子専門学校 事業局長 石川 祐子
(独)食品総合研究所 食品機能部 機能成分研究室 主任研究官
廣瀬 理恵子
東京都立食品技術センター 主任研究員 関根 啓子
東京都消費者月間実行委員会 事務局長
山田 雄司
山崎製パン(株) 中央研究所
宮崎 勝昭
(社)菓子総合技術センター 常任理事 特別研究員
宮川 早苗
CMPジャパン(株)
所長
「食品と開発」編集長
<事務局>
門間 裕
(財)食品産業センター 企画調査部長
神保 肇
(財)食品産業センター 企画調査部 次長
鷺 仁子
(財)食品産業センター 企画調査部 主任
2.商品の試作・評価
(1)実態調査
①第1回アンケート
(Ⅰ)アンケート調査の概要
地域農水産物の機能性に着目して開発・研究中の食品について、実態を調査するととも
に本事業を活用した食品試作の希望を募るため以下の要領でアンケート調査を実施した。
ⅰ調査対象者
食品関係の試験研究を実施している公的機関・大学及び民間企業
(試験研究機関61、大学12、企業27)
ⅱ調査実施時期
平成17年7月
ⅲ回収状況
試験研究機関43、大学3、企業15(回収率61%)
ⅳ調査項目(調査表は資料編①(参考)参照)
・研究・開発及び商品化の状況及び具体的な内容
・一定規模の試作を行う際の状況
・本事業を活用した商品試作希望の有無及び具体的な内容
(Ⅱ)調査結果の概要
研究開発・商品化について取り組みの予定無しとしたものは回答のあった61組織中5
組織にとどまり、9割を越える組織がなんらかの形で地域農水産物の機能性に着目した加
工食品の研究開発を行っている。
研究開発の対象農水産物は地域性を有するものが多く、着目した機能性成分としてはポ
リフェノール類、取り組みに当たっての課題は原料関連との回答が多かった。
試作希望については、平成17年度希望が17件、平成18年度希望が22件であった。
(詳細は資料編①参照)
②第2回アンケート
(Ⅰ)アンケート調査の概要
今後同様の取り組みを行った場合の食品試作の希望を調査することにより、今後の商品
開発の振興方策を検討するためアンケート調査を実施した。
ⅰ調査対象者
第1回アンケート対象機関・企業に新たに食品開発を行っている可能性があることを把
握した機関・企業を加えた148ヶ所(試験研究機関80、大学12、企業56)
ⅱ調査実施時期
平成18年2月
ⅲ回収状況
試験研究機関48、大学3、企業26(回収率52%)
ⅳ調査項目(調査表は資料編②(参考)参照)
・今後同様の事業を行った場合の商品試作希望の有無及び具体的な内容
(Ⅱ)調査結果の概要
試作希望は、平成18年度希望が39件、平成19年度以降希望が11件であった。
試作の対象農水産物は地域性を有するものが多く、着目した機能性成分としてはポリフ
ェノール類、商品化に当たっての課題は加工関連との回答が多かった。
(詳細は資料編②参照)
③調査結果
調査表が複数回答を可とする内容であるため、集計にあたっては回収状況のみ組織数で
集約し、これ以外の項目については複数回答をそれぞれ1件として集約した。
<第1回アンケート>
(回答の詳細は資料編①、調査用紙は資料編①(参考)参照)
アンケート回収状況(組織数)
研究機関
大学
企業
計
送付先
61
12
27
100
回答数
43
3
15
61
回収率
70%
25%
56%
61%
以下原則として回答数による(1組織で複数回答有り)
問1:地域の農水産物を使った機能性食品の研究・開発及び商品化の状況
回答総数77件のうち、既に商品化済みとの回答が30件(39%)
、現在研究開発
中または近々着手予定との回答が42件(55%)であった。
一方、取り組みの予定が無いとの回答は回答61組織のうち5組織(8%)であっ
た。
問2:商品化(食品素材としての商品化を含む)されている食品について
(問1で既に商品化(食品素材としての商品化を含む)していると回答した機関対象)
ア:利用した農水産物
利用した農水産物は、地場特産品や地域独特の素材など各地域の特色を現した回
答内容となっている。
エ:回答した地域農水産物を利用したきっかけ、 着眼点等
何らかの形で「機能性に着目」したもの(回答で1.6を選択)21件、「地域性
に着目」したもの(回答で2.3.4.5を選択)16件であった。
オ:関係している機能性成分
関係している機能性成分としては、ポリフェノール類が最も多く、次いでアミノ
酸・ビタミン・食物繊維が多かった。ポリフェノールの中ではアントシアニンが最
も多かった。
カ:機能性成分の最終商品での分析状況
機能性成分分析については、有効回答50件中38件(72%)が自組織内で実
施との回答であった。
また、分析法が確立していないとの回答は1件。分析予定無しとの回答が研究機
関で5件あった。
キ:期待される作用
抗酸化作用(15件)、次いで抗アレルギー(5件)血圧調整作用(5件)が多か
った。
ク:最終的な商品の区分
最終的な商品区分は食品群(回答で1~9を選択)が54件、素材群(回答で1
0~12を選択)が3件であった。回答が多かったのは、飲料(15件)その他食
品(11件)いわゆる健康食品(10件)の順であった。
一方、乳製品・乳飲料、水産加工品、オリゴ糖との回答は無かった。
ケ:商品化するにあたって原料面・技術面で苦労した点
原料に係るものが多く、特に量的・品質的な原料確保をあげる回答が多かった。
コ:研究・開発及び商品化に際しての産・学・官の連携・協力の状況
産・学・官の連携状況では、回答56件のうち全て自力との回答は3件にとどま
り、研究機関では食品企業と連携との回答が多く、企業では大学・研究機関との連
携がほぼ同数であった。
問3:現在研究開発中または近々着手予定の食品(未商品化)について
(問1で現在研究開発中または近々着手予定と回答(2・3・4を選択)した機関対象)
ア:研究・開発に利用している(利用する予定の)地域農水産物
利用する農水産物は、地場特産品や地域独特の素材をあげるものが多かった。
エ:回答した地域農水産物を利用した(利用しようとしている)きっかけ、 着眼点等
「地域性に着目」したもの(回答で2.3.4.5を選択)28件、
「機能性に着
目」したもの(回答で1.6を選択)20件であった。
オ:関係すると思われる機能性成分
ポリフェノール類が最も多く、次いでアミノ酸・食物繊維が多かった。ポリフェ
ノールの中では、アントシアニンが最も多かった。
カ:機能性成分の最終商品での分析予定
有効回答71件中46件(65%)が自組織内で可能との回答であった。
また、分析法が確立していないとの回答は6件、分析予定無しとの回答も研究機
関から5件あった。
キ:期待される作用
抗酸化作用(20件)、血圧調整作用(7件)、整腸作用(7件)の回答があった。
ク:最終的な商品の区分
最終的な商品区分は食品群(回答で1~9を選択)が77件、素材群(10~1
2を選択)が9件であった。回答が多かったのは、飲料(20件)、いわゆる健康食
品(15件)
、菓子(11件)、その他の食品(10件)の回答があった。
ケ:商品化するにあたって、原料面・技術面で解決すべき課題
原料に係るものが多く、特に同品質の原料確保との回答が多かった。
コ:研究・開発に際しての産・学・官の連携・協力の状況
有効回答65件のうち全て自力とするものが14件あり、研究機関では食品企業
と連携との回答と大学と連携との回答がほぼ同数であった。
問4:一定規模の試作を行う際の状況
食品企業と連携している・対応してもらえる見込があるとの回答が73件中46件
(63%)であった。また、自社(機関)で対応可能との回答は10件であった。
問5:試作希望の有無、
問6:試作希望年度・利用したい農水産物・機能性成分及び作用・最終的な商品区分
(問5で試作希望と回答した機関対象)
ア:試作実施希望年度
試作希望は平成17年度希望17件、平成18年度希望22件であった。
イ:利用したい地域農水産物(平成17年度・18年度試作希望者)
平成17・18年度試作希望とも地場特産品や地域独特の素材などが多かった。
ウ:機能性成分及び作用(平成17年度試作希望者)
ポリフェノール類・抗酸化性との回答が多く、中でもアントシアニンとの回答が
最も多かった。
ウ:機能性成分及び作用(平成18年度試作希望者)
抗酸化性・食物繊維・ポリフェノール類・アミノ酸等の回答が比較的多かった。
エ:最終的な商品の区分(平成17年度試作希望者)
食品群(回答で1~9を選択)が28件、素材群(回答で10~12を選択)が
4件であった。
エ:最終的な商品の区分(平成18年度試作希望者)
食品群(回答で1~9を選択)が27件、素材群(回答で10~12を選択)が
1件であった。
<第2回アンケート>
(回答の詳細は資料編②、調査用紙は資料編②(参考)参照)
アンケート回収状況(組織数)
研究機関
大学
企業
計
送付先
80
12
56
148
回答数
48
3
26
77
回収率
60%
25%
46%
52%
以下原則として回答数による(1組織で複数回答有り)
問1:試作希望の有無
試作希望は50件であった。
問2:試作を希望する食品について
(問1で試作希望と回答した機関対象)
ア:試作実施希望年度
試作希望は平成18年度希望39件、平成19年度以降希望11件であった。
イ:利用したい農水産物
利用したい農水産物は、平成18年度・19年度以降試作希望ともに地場特産品
や地域独特の素材など各地域の特色を現した回答内容となっている。
オ:回答した地域農水産物を選んだきっかけ、 着眼点等
平成18年度試作希望では何らかの形で「機能性に着目」したもの(回答で1.
6を選択)24件、「地域性に着目」したもの(回答で2.3.4.5を選択)18
件であった。一方平成19年度以降試作希望では「機能性に着目」6件、「地域性に
着目」6件であった。
カ:関係すると思われる機能性成分
関係すると思われる機能性成分としては、平成18年度試作希望ではポリフェノ
ール類が最も多く、次いでアミノ酸・食物繊維、平成19年度以降試作希望ではポ
リフェノール類が最も多く、次いでアミノ酸が多かった。
キ:機能性成分の最終商品での分析予定
機能性成分分析については、自組織内で実施との回答が平成18年度試作希望で
は有効回答60件中41件(68%)、平成19年度以降試作希望では有効回答1
5件中10件(67%)であった。
ク:期待される作用
平成18年度・19年度以降試作希望ともに抗酸化作用が最も多く、平成18年
度試作希望では、次いで血圧上昇抑制、整腸作用が多かった。
ケ:最終的な商品の区分
最終的な商品区分は平成18年度試作希望では、食品群(回答で1~9を選択)
が65件、素材群(回答で10~12を選択)が1件であった。回答が多かったの
は、飲料(15件)菓子(13件)いわゆる健康食品(13件)の順であった。
また、平成19年度以降試作希望では16件すべてが食品群で、内訳はいわゆる
健康食品(6件)飲料(5件)の順であった。
コ:商品化するにあたって原料面・技術面で解決すべき課題
平成18年度・19年度以降試作希望ともに、加工に係わるものが多かった。
サ:研究・開発及び商品化に際しての産・学・官の連携・協力の状況
産・学・官の連携状況では、全て自力との回答は平成18年度試作希望で回答5
9件のうち7件、平成19年度以降試作希望で回答16件のうち1件にとどまり、
平成18年度試作希望においては、研究機関では食品企業と連携との回答が多かっ
た。
シ:一定規模の試作を行う際の状況
食品企業と連携している・対応してもらえる見込があるとの回答が平成18年度
試作希望で42件中32件(76%)、平成19年度以降試作希望で12件中8件(6
7%)であった。
(2)食品の試作・評価及び機能性成分分析
アンケート調査で平成17年度試作希望組織について委員会において、農水産物・地域・
試作品形態等のバランスも考慮し5組織を試作協力組織とし、7品目の試作を行うことを
決定した。(試作品一覧は表①参照)
完成した試作品については、今後の改善につなげるため試食検討会及び意見交換会の集
約結果を試作協力者にフィードバックした。
試食検討会は、11月30日~12月2日にかけて3ヶ所で実施し、委員会で検討した
モニター項目に沿って、各試作品について意見を収集した。
試食に当たっては、各試作品を試作協力先の指定した方法で試食を行いモニター用紙に
記入し、順番に7品種の試食を行った。
試食モニターは合計62名で、大きく「専門的な知見を有している」
「業務上食味試験を
行っている」「一定のモニター経験を持っている」「ほとんど経験を持っていない」の4群
に分けられる。(各モニター群の性別・年齢別分布は表②、試食検討会の結果については、
数値集計は表③、各モニターのコメントは資料編③、モニター用紙は表④参照)
)
なお、今回の試食評価にあたっては、各モニターの感覚を基準としたため、表③につい
ては、絶対値としての数字ではなく、試作品毎のあるいは評価項目毎の相対値としての比
較に用いるものである点に留意して頂きたい。
意見交換会については、12月1日に開催し、検討委員会委員・試作関係者相互に試作
品に関して更に検討が必要と思われる点等について意見交換を行った。
(概要は資料編④参
照)
また、機能性成分の分析については、試作協力先が自組織内もしくは外部に依頼して加
工直前の原料形態時及び試作品形態時のそれぞれでの含有量を測定することとした。
分析にあたっては公定法を用い、公定法のないもの及び公定法では分析が困難と思われ
るものについては、一般的に妥当と思われる方法を用いることとした。
なお、今回は統計的有意性までは求められなかったことから、分析数値の信頼度の点に
は留意が必要である。
<表①>
試作品一覧
組織名
社団法人
東通村産業振興公社
試作品
着目した機能性成分
試作品概要
連携組織
ブルーベリーティー
アントシアニジン・
ナイアシン
青森県東通村のブルーベリーの果実を利
用したティーバッグのお茶。
青森県ふるさと食品研究センター下北ブランド開発センター・
試作品は紅茶とブレンドしたものとクエン 青森県ふるさと食品研究センター農産物加工指導センター
酸を加えたものの2種類。
柿皮ゼリー
カロテノイド色素・
タンニン
宮城県丸森町の柿の皮を利用したゼリー 宮城県産業技術総合センター・
菓子。
株式会社カトーマロニエ
ポリフェノール
宮城県加美町の自然薯を利用したカップ 宮城県産業技術総合センター・
株式会社イメージパーク
入りのシャーベット。
宮城県食品工業協議会
じねんじょ
自然薯ゼリー(ソルベ)
株式会社 柴舟小出
きんじそう
金時草カステラ
けまきゅうり
しおふき毛馬胡瓜
アントシアニン
イソケルシトリン
石川県金沢市俵原町の金時草の葉を利
石川県農業総合研究センター
用したカップ入りカステラ。
大阪府南河内郡河南町の毛馬胡瓜の果
株式会社小倉屋山本
実を利用したしおふき。
大阪府立食とみどりの
総合技術センター
てんのうじかぶら
徳島県立工業技術センター
しおふき天王寺蕪
ジアスターゼ
やまもも茶
ポリフェノール
大阪府南河内郡河南町の天王寺蕪の根
株式会社小倉屋山本
部を利用したしおふき。
徳島県小松島市櫛渕町のやまももの葉を
阿波のやまもも会
利用したお茶。
<表②>
①試食モニター分類
男
29歳以下
30歳~39歳
40歳~49歳
50歳~59歳
60歳以上 合計
0
5
3
5
5
18
合計
女
7
13
8
7
9
44
専門的な知見を有している 業務上食味試験を行っている
計
7
18
11
12
14
62
男
女
0
0
0
1
3
4
計
0
0
1
2
0
3
男
0
0
1
3
3
7
女
0
0
0
0
1
1
5
3
1
1
0
10
計
一定のモニター経験を持っている ほとんど経験を持っていない
男
5
3
1
1
1
11
女
0
1
0
0
0
1
計
0
6
3
3
9
21
男
0
7
3
3
9
22
女
0
4
3
4
1
12
2
4
3
1
0
10
計
2
8
6
5
1
22
<表③>
②試食検討会モニター結果集約
(評価は1から4の4段階で行い、最も高評価のものを4として回答。)
地域
宮城
青森
青森
宮城
試作品名
ブルーベリー ブルーベリー
ティーA ティーB
柿皮ゼリー
自然薯ゼリー
石川
大阪
大阪
徳島
金時草
カステラ
しおふき
毛馬きゅうり
しおふき
天王寺蕪
やまもも茶
平均
目新しさ・独創性
2.5
2.6
3.1
3.7
3.2
3.0
3.1
2.9
3.0
食味
2.7
2.6
2.9
2.4
3.2
2.9
3.1
2.4
2.8
後味
2.7
2.5
2.7
2.3
3.1
2.9
3.1
2.2
2.7
くせが無い
3.0
2.8
2.6
2.3
3.2
2.7
3.0
2.1
2.7
食感(口当たり)*
3.0
2.7
3.1
2.5
3.0
2.6
2.9
2.5
2.8
香り
2.2
2.1
2.9
2.1
2.7
2.6
2.8
2.0
2.4
食べやすさ(飲みやすさ)*
3.0
2.6
3.0
2.3
3.1
2.8
2.9
2.2
2.7
色彩
3.2
3.4
3.0
2.4
3.4
2.2
2.5
2.9
2.9
素材が生かされているか
2.8
2.8
3.3
3.3
3.1
2.5
2.8
2.9
2.9
地場の名産になり得るか
2.6
2.6
3.1
2.6
3.0
2.7
2.9
2.4
2.7
値頃感・市場性
2.5
2.5
2.7
2.3
2.2
2.0
2.2
2.3
2.3
この機能性要素に関心があるか
2.9
2.9
2.9
2.7
2.9
2.2
2.4
2.8
2.7
開発ターゲットと合っているか
2.8
35.9
2.7
2.9
2.3
3.0
2.7
2.7
38.2
33.2
39.1
2.4
33.5
2.5
34.8
36.2
32.3
35.4
合計
*「食感」・「食べやすさ」については、飲料(ブルーベリーティーA・B、やまもも茶)では、
それぞれ「口当たり」・「飲みやすさ」という設問で評価。
<表④>
「農水産物機能性活用推進事業」試食検討会モニター用紙
年齢
29 歳 以 下 ・ 30 歳 ~ 39 歳 ・ 40 歳 ~ 49 歳 ・ 50 歳 ~ 59 歳 ・ 60 歳 以 上
性別
男・女
試食品
評価高
←
1
2
3
目新しさ
・
独創性
食味
後味
→
評価低
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
くせが無い
食感
香り
食べやすさ
色彩
素材が生か
されている
か
地場の名産
になり得る
か
値頃感
・
市場性
この機能性
要素に関心
があるか
開発ター
ゲットと
合っている
か
4・3・2・1
(4段階の評価とし最高評価を4、最低評価を1としてご記入下さい)
好ましかった点
改善してほしい点
その他
<試食品について>
利用した農産物
開発ターゲット
想定される小売価格帯
狙い・訴求ポイント
産地
利用部分
機能性成分
ブルーベリー
ブルーベリーティー(A)
ブルーベリーティー(B)
<①ブルーベリーティー>
試作協力先:社団法人 東通村産業振興公社
1.試作品について
容量又は重量
A,3.7g B,3.1g
納入数
80袋
利用した地域農水産物名
ブルーベリー
利用部分
果実
利用した地域農水産物の産地
青森県東通村
収穫時期
8月中旬
試作にあたっての着眼点
機能性成分を活かし飲みやすい形態にする
着目した機能性成分
アントシアニジン・ナイアシン
お茶(ティーバック)
商品区分・形態
高温多湿の場所を避けて保存する
保存方法
試食にあたっての留意点
150ml~180ml位の熱湯を使用する。好みに応じて砂糖、レモン、ミルク等を加える
想定される小売価格帯
1袋 40円~50円位
・アントシアニジンが溶けやすいように果実を乾燥する加工技術
・機能成分を壊さないように、濃縮する。
商品化に当たって
・飲みやすく、飽きにくいブレンド。
苦労した点
・利用しやすいパッケージング
・資材の調達
このブルーベリーは、アントシアニジンが溶出しやすく、手軽に鮮やかなブルーベリーの果色のお茶を楽しむこ
とができる。試作品Aは、ブルーベリー本来の風味に紅茶の渋みを出したもの、試作品Bは、ブルーベリーの風
味と色を強調するため酸味料(クエン酸)を加えたものである。砂糖を加えないため今まであったジャムや果汁と
試作品の特徴
違いカロリーを気にせず摂取でき、一般に市販されているフルーツフレーバーティーやハーブティーと違い普通
の紅茶のように飲みやすいのが特徴である。
青森県ふるさと食品研究センター下北ブランド研究開発センター、
青森県ふるさと食品研究センター農産物加工指導センター
連携した組織
東通村産業振興公社
試作品作成組織
試作にあたっての
スケジュール概要
果実の収穫(冷凍)
試作品作成の検討(品目の決定)
試作・加工
包装方法の決定
試作製品完成
その他特記事項
無し
2.使用原材料及び割合(1%未満のものについては原材料名のみ)
割合(%)
原材料名
原材料名
<Aタイプ>
割合(%)
<Bタイプ>
ブルーベリー
69.60%
ブルーベリー
83.50%
紅茶(ダージリン)
18.90%
サイクロデキストリン
7.10%
サイクロデキストリン
6.40%
レシチン
6.20%
レシチン
5.10%
クエン酸
3.20%
3.試作品製造工程
洗浄
水で果実を洗浄し、異物等を除く。
煮熟
蒸気釜で柔らかくなるまで煮熟する。
破砕
ミキサーで砕く。
添加
レシチン、サイクロデキストリン、を添加しよく攪拌する。
ドラム乾燥
ブレンド
包装
ドラム乾燥機(115℃、5~6RPM)で乾燥する。
ブルーベリー粉末:紅茶=8:2で混合する。(Aタイプ)
不織布のろ過袋に入れ、印刷した袋に包装する。
4.試食品評価
*ブルーベリーティー
(意見交換会)
<試作協力者説明>
東通村地域のブルーベリーは、数年後には20tを超える収穫量になると思われる。特
産品開発として現在、ジャム・ジュースが商品化されており、更にブルーベリーティーを
考えた。検討にあたっては、アントシアニジンに着目した。
現在の加工品はジャム・ジュース・乾燥果実等が販売されているが、いずれも砂糖を加え
て甘く味付けされている。ダイエットしている人や糖尿病の患者など砂糖を控えている人
向けに、低カロリーで水のように飲めるものを開発しようと考え、お茶を試作することと
した。
市販されているブルーベリー茶は紅茶に着色料や香料で色・香りをつけたもので、我々
の意図するものではなく、新たに開発を進めた。
開発のコンセプトとしては、
1.手軽にブルーベリーの鮮やかな果色のお茶を入れることができること。
2.お茶という範囲で味わえるもので、ブルーベリーらしさがあること。
3.添加物は健康に留意したものとすること。
4.砂糖の添加は行わないこと。
ターゲットは20代・30代の女性を想定した。
市販のフルーツフレーバーティーやハーブティーと違い普通の紅茶のように飲めるもの
とし、ブルーベリーの果実由来の鮮やかな赤い色が特徴の製品。
試作にあたり、苦労した点は、アントシニジンが溶けやすいように、果実を細かく砕く
方法・乾燥方法。また、飲みやすくブルーベリーらしい風味を残してどのように粘度調整
するかという点。
紅茶については、ダージリン・アッサム・キーマンを試した結果、ブルーベリーと風味
が競合しないダージリンを選択した。クエン酸を加えたものは、ブルーベリーにさわやか
さを加えるものが欲しいということで試作した。
<質疑>(委:委員・青:青森県試作協力者)
(委)原料手当について、20tは使える量か。
(青)使える。果実の歩留まりを考えても100%近く使える。
(委)果実はかなり水分が多いが、粉末にするとどうか
(青)果実の5%程度。全てをお茶に使えるわけではないが、相当量は使える。
(委)今日は粉末だが、冷やして飲むのも清涼感があって良いと思うが、液体で保管する
のは難しいか。
(青)クエン酸を加えた方はさわやかさが出ると思うが、ダージリンを加えたほうは冷や
すことで風味・香りが落ちるので、温かいほうが良いと思う。
(委)今の時代は、液体のジュースのようなものが主流なので液体の方が販売力が出せる
ような気がする。
(委)飲料は冷たい方が面白いと思う。他に合うものはたくさんあるので、ダージリンを
中心に考えずに他の紅茶を試してみてはどうか。
(青)皮を乾燥したものを考えたが、なかなか香り等が難しい
(委)完熟だと思うが、酸味が強いと感じた。健康に良いと思えば我慢して飲めるが。
砂糖を加えれば美味しい。
(委)温かいので特に酸味を強く感じたのでは。冷やせばあの酸味は無くなるような気が
する。
(委)できれば砂糖を加えず飲みたい。
(青)ジュースも考えている。
(委)青森の水を使って、きれいな色のものが作れれば紅茶にこだわらず、いいものにな
ると思う。
(委)クエン酸はなぜ使わなければならなかったのか
(青)クエン酸を加えることで色が出やすくなる。また、もう少し酸味を加えたほうがい
いと考えた。
(委)pHはどの程度か
(青)調べていない。
(委)アントシアン系はpHで色が変わる。酸度が強ければ赤・中性ではブルー・アルカ
リではグレーから褐色になる。色にもう少し工夫が必要。
乾燥・粉砕のコストはどの程度か。
(青)コストは製造法・設備による。今回はドラム乾燥。ロールを暖めたものに粉砕した
果実を投入、熱で乾燥した。風で乾かすと色が抽出されにくいのでドラム乾燥を選
択した。
(委)ブルーベリーティー、しばらく置いておくとだんだん濁ってきた。この点が改善で
きたらと思う。
(試食検討会)
<主な意見>
ブルーベリーティーA
・好ましかった点:
色がきれい・飲みやすい・酸味がよい・口当たりがよい
・改善して欲しい点:
香りが弱い・
酸味が強い・ブルーベリーらしさが不足
ブルーベリーティーB
・好ましかった点:
色がきれい・酸味がよい
・改善して欲しい点:
酸味が強い・香りが弱い・酸味料が多すぎ・ブルーベリーらしさが不足
*A・Bの比較では、33:25で若干Aが良いとの結果
5.試作協力者コメント(試食検討会結果・意見交換会内容をうけて)
<試食結果に対する感想>
試作品 A・B 共にブルーベリーの香りが弱いという意見が多く見られました。今後、ブル
ーベリーの香りに対して改善が必要ですが、アドバイス的なコメントが欲しい。
試作品 B は酸味が強いという意見が多く見られたが、クエン酸の調整で改善できると考
えられる。
<今後更に改善が必要と考える事項>
ブルーベリーの香りが弱いので香料の添加が必要か検討する。又は、ブルーベリー本来
の香りを、ラベルで説明書きするなど考えられる。
6.機能性成分含有量分析結果
(1)加工直前の原料形態時
ブルーベリー
地域農水産物名
分析した機能性成分
アントシアニジン
分析した機能性成分
ナイアシン
分析機関
財団法人日本食品分析センター
分析機関
財団法人日本食品分析センター
分析法
比色法
分析法
微生物定量法
含有量(%)
0.140%
含有量(%)
0.000220%
分析経過
分析経過
特記事項無し
特記事項無し
(2)試作品形態時
ブルーベリー
地域農水産物名
分析した機能性成分
アントシアニジン
分析した機能性成分
ナイアシン
分析機関
財団法人日本食品分析センター
分析機関
財団法人日本食品分析センター
分析法
比色法
分析法
微生物定量法
含有量(%)
0.810%
含有量(%)
0.00117%
分析経過
分析経過
特記事項無し
特記事項無し
柿
柿皮ゼリー
<②柿皮ゼリー>
試作協力先:宮城県食品工業協議会
1.試作品について
容量又は重量
30g
納入数
80
利用した地域農水産物名
柿
利用部分
果実の皮
利用した地域農水産物の産地
宮城県丸森町
収穫時期
10月下旬~11月上旬
試作にあたっての着眼点
柿果実の渋みの除去。果皮ペーストの滑らかさ向上。
着目した機能性成分
商品区分・形態
カロテノイド色素(β-クリプトキサンチン)、タンニン
ゼリー状菓子
常温
保存方法
試食にあたっての留意点
特に無し
想定される小売価格帯
15g×2個/箱 100円
商品化に当たって
苦労した点
渋柿を加熱しただけでは渋味が抜けずむしろ増加したので,風味付けとしたスパイスを添加することで味の調
和を図った。ハードタイプゼリーにすることによって柿皮原料によるざらざら感を極力感じないように調整した。
色がもっと柿らしい黄色が出ると良かった。
試作品の特徴
柿の風味、柿皮に含まれるβクリプトキサンチン・タンニンを豊富に含むこと
連携した組織
宮城県産業技術総合センター
試作品作成組織
株式会社カトーマロニエ
試作にあたっての
スケジュール概要
10月・・・柿皮ペーストの調製実験
11月上旬・・・ゼリーの試作
11月中旬・・・ゼリーの試作品完成、成分分析
その他特記事項
特に無し
2.使用原材料及び割合(1%未満のものについては原材料名のみ)
原材料名
割合(%)
原材料名
グラニュー糖
43.9
ペクチン
水
20.2
スピリッツ酒
水飴
15.2
クエン酸
柿ペースト
14.4
スパイス
柿酒
4.2
割合(%)
1.7
-
3.試作品製造工程
原料受入
型流し
ウエイトチェック
保管
(-25℃以下)
冷却
(18℃~20℃)
箱詰
解凍
乾燥
(ホイロ50℃)
保管
(常温)
計量
カット
(カットマシン)
製品検査
調合
検品
(不良品判定)
出荷
加熱
(95℃以上)
包装
(三方シール)
BX調整
(BX78~80)
金属探知器
(Fe:2.5mm,sus:0.8mm)
4.試食品評価
*柿皮ゼリー
(意見交換会)
<試作協力者説明>
柿皮には非常に強い抗酸化性があることが判明、これをお菓子にしてみた。
丸森町では「ころ柿」(干し柿)を蜂屋柿を使って作っている。その捨てられている皮を
調べたところ抗酸化性の高いことが分かった。1年半前から日常のお菓子に出来ないか検
討していた。今回はペクチンゼリーという形で試作した。他にも試作を行っており、柿の
大福は宮城の物産に出している。
柿皮は抗酸化性は高いが、皮であるのでそのままでは菓子には使えないためペースト・
ジャム・ピューレー等第一加工を行い、ペーストのものがタンニン・βクリプトキサンチ
ンが出てくるのではないかという事でペースト状のものを用いた。
日持ちしないとお土産にするのが難しいので、糖菓子としてブリックスを上げて78度
から80度にした。甘い、という方も居ると思うが、これが本来の製法ではある。更に、
口溶け・味のふくらみという事でスパイスとしてシナモンが柿に合うので使い、少量のナ
ツメグを菓子の輪郭をキリッとまとめあげる為に使用した。
<質疑>(委:委員・宮:宮城県試作協力者)
(委)原料手当についてはどうか。
(宮)皮そのもので50t、これまでは捨てられていた。80%が水分で10t程度使用
可能。
(委)粉砕している理由は。
(宮)皮そのものを一度冷凍している。これは空気に触れると茶色く変色し、加熱しても
防げないため行っている。その後ペースト状に処理している。
(委)素材化は可能か。
(宮)素材化の為には顆粒化するか、又はもっと凝縮してサプリメント系にすることは可
能だと考える。
(委)ゼリーというより「ゆべし」ではないか。名前からイメージが出るように「柿ゆべ
しもち」「柿皮ゆべし」の方が良いのではないか。食べてみたいなという気になる。
ペクチンゼリーは糖度は上げざるを得ない。あれだけ小さいと食べやすいが、やは
り甘い。酵素糖化の水飴で砂糖の1/20位の甘さを抑えたものもある。また、高
価だが他にも甘味の少ないものがある。水飴を入れなければならないので、酵素糖
化の水飴を使う等で糖度を上げて甘味を落とすことが出来る。
表面は砂糖ではなく上南粉が良いと思う。ゆべしも粉末や上南粉を使ったものがは
やりであり、口に入れた時は甘くないが、噛んでいる間に出てくる。
ゼリーではなく「ゆべし」が東北のイメージにも合って良いと思う。
「柿皮ゆべし」
として、甘味を抑え食べるとこくが出てくるというのであれば、十分いけるのでは
ないかと思う。
使用する原料で値段の相談だと思うが、この想定価格であれば十分流通できると思
う。大変美味しかった。
(委)「ゆべし」が適当だと思う。かなり美味しいと思うが、甘いと思う。柿の形にしたら
良いのではないか。
(試食検討会)
<主な意見>
・好ましかった点:
柿の風味が生かされている・素材が生かされている・柿皮を活用している
食感がよい・食べやすい大きさ
・改善して欲しい点:
甘味が強すぎる・酸味が強すぎる・色が良くない・表面の砂糖が多すぎる
価格が高い
5.試作協力者コメント(試食検討会結果・意見交換会内容をうけて)
<試食結果に対する感想>
好き嫌いの分かれる食品である柿を、機能性成分の含有量と柿らしさを維持したままお
菓子としたため、評価が分かれることは予想していましたが、少なからぬ高評価を頂いた
ことに感謝しています。
<今後更に改善が必要と考える事項>
・渋み(収斂味)は、機能性成分であるタンニンの特徴としてわずかに残るものとして
試作いたしました。改善すべきかどうかについては検討したいと考えています。
・色彩については、明るくする方向で調整したく思います。
・ネーミングと、パッケージについては今後の課題と考えています。
・内容量(1切れあたりの重量を含む)と価格については、良く検討の上改善したいと
考えています。
6.機能性成分含有量分析結果
(1)加工直前の原料形態時
柿(果皮)
地域農水産物名
分析した機能性成分カロテノイド色素(β-クリプトキサンチン)分析した機能性成分
タンニン(可溶性)
分析機関
宮城県産業技術総合センター
分析機関
宮城県産業技術総合センター
分析法
HPLC法
分析法
フォーリン・デニス法(タンニン酸換算)
含有量(%)
6.14×10^-3
含有量(%)
4.35×10^-2
分析経過
分析経過
特記事項無し
特記事項無し
(2)試作品形態時
柿(果皮)
地域農水産物名
分析した機能性成分カロテノイド色素(β-クリプトキサンチン)分析した機能性成分
タンニン(可溶性)
分析機関
宮城県産業技術総合センター
分析機関
宮城県産業技術総合センター
分析法
HPLC法
分析法
フォーリン・デニス法(タンニン酸換算)
含有量(%)
6.39×10^-4
含有量(%)
1.84×10^-2
分析経過
分析経過
特記事項無し
原料中のタンニン含有率に、製品中の柿皮の含有率をかけた
ものより、製品でのタンニン含有率が多くなりました。
加熱による、柿渋の渋戻りと考えています。
自然薯
自然薯ゼリー(ソルベ)
<③自然薯ゼリー(ソルベ)>
試作協力先:宮城県食品工業協議会
1.試作品について
容量又は重量
80g
納入数
88
利用した地域農水産物名
自然薯
利用部分
自然薯全体
利用した地域農水産物の産地
宮城県加美町
収穫時期
10月下旬~11月上旬
試作にあたっての着眼点 自然薯の乾燥前の殺菌処理,褐変防止。自然薯の風味保持
着目した機能性成分
ポリフェノール
ゼリー状菓子
商品区分・形態
冷凍
保存方法
試食にあたっての留意点
-5℃保存で解凍前に食べる
想定される小売価格帯
80g/個 150円
商品化に当たって
苦労した点
自然薯の風味を維持するため皮を剥かず粉末したが,微生物の危険があったので殺菌工程を設けた。カット直
後冷凍し凍結乾燥して空気酸化による褐変を防止した。ソルベ製造時に自然薯粉末がダマにならないよう添加
量を調整した。
試作品の特徴
自然薯の風味を生かしたゼリーでもないアイスでもない新しい食感のデザート
連携した組織
宮城県産業技術総合センター
試作品作成組織
株式会社イメージパーク
試作にあたっての
スケジュール概要
10月・・・自然薯粉末の調整
11月上旬・・・ゼリーの試作
11月中旬・・・ゼリーの試作品完成、成分分析
その他特記事項
特に無し
2.使用原材料及び割合(1%未満のものについては原材料名のみ)
原材料名
割合(%)
原材料名
無調整豆乳
30
自然薯粉末
グラニュー糖
10
脱脂粉乳
はちみつ
5
水
増粘多糖類(サイリウムシードガム)
1.5
割合(%)
1
1
51.5
3.試作品製造工程
自然薯原料粉末工程
自然薯原料→洗浄→毛焼き(表面直火加熱,数秒)→200ppm次亜塩素酸Na,2分→洗浄→ダイスカット→凍結
→凍結乾燥→粉砕
自然薯ゼリータイプ菓子製造工程
1豆乳,水を混合
2グラニュー糖,増粘多糖類,自然薯粉末,脱脂粉乳を予め混合し自然薯粉末を分散させ,1に少量ずつ攪拌しながら添加
3はちみつを添加
4自然薯粉末,増粘多糖類による粘度を出すためしばらく攪拌,混合
5カップに充填
6ふた装着後,凍結
4.試食品評価
*自然薯ゼリー(ソルベ)(試作品仮称:やくらいの秋風)
(意見交換会)
<試作協力者説明>
機能性評価を行う中で、山芋より自然薯の方が抗酸化性が高い傾向がわかり商品化でき
ないか検討した。
自然薯を生産している現地に行ってみたところ、自然薯は商品寿命が短く、鮮度劣化が
早く、規格外のものは商品価値が下がり廃棄されるものがあることが分かった。宮城の自
然薯は自生ではなく種芋から人工的な栽培をしているが、その中でもまがったり、汚れた
りして商品価値の無くなるものがある。高価であることから何とか商品加工できないかと
の要望を受けて保留していた。今回の事業で商品開発できそうだということで、あまって
いる自然薯を使って加工に取り組んだ。
改良の余地はあると思うが、コンセプトとしては、自然薯の風味を出したいと考えた。
自然薯は、山芋と異なり皮ごとするのが風味を出すポイント。この為、この試作品でも
皮を残している。表面に浮かんでいるのは皮、増粘多糖類で分散するように検討したが、
浮かんでしまった。今回使用した増粘多糖類はサイリウムシードガムという冷水で粘性の
出るものを使用。また非加熱で加工している。その理由は、「さんちゃん会」という農業者
による直売所が発展した道の駅のような店舗があり、農業者が簡単に加工できるようにと
いうことで、非加熱のシャーベットタイプとした。
溶けてくると粘りが出るのは、温度が変わると増粘性が変わるというサイリウムシード
ガムの特徴を使い、あたかも自然薯をすった時のような食感が出せればという事を考えて
みた。もう少し良い食感・粘りを出したいと思っているが、溶けてくるとガムのような液
状というかガムのようになる特徴のある商品だと思っている。
今回のポイントは、皮ごとのため微生物・土壌菌の問題があり、殺菌をどうするかとい
う点。先ほど言ったように、どこにも加熱が入っていない。粉末にする際も凍結乾燥して
いるので、加熱が入っていない。次亜塩素酸ナトリウムの量と時間を検討し、ある程度表
面を殺菌する目的で使っている。また、地元の方が、自然薯の皮についている毛を焼くの
にあぶる作業をしている。これを真似て殺菌を兼ねてあぶる作業を行っている。
試作に当たっては、「宮城食の開発研究会」という食品企業の任意団体にデザインも含め
依頼して行った。シールはやや小さいため字が小さく読み難い点、記載漏れ等あるが、あ
くまでもダミーということであり、今後「さんちゃん会」で商品開発してゆきたいと考え
ている。
<質疑>(委:委員・宮:宮城県試作協力者)
(委)シャーベットの方が良いのではないか。ただ、シャーベットとしては氷晶が大きい。
分注してから凍結しているようだが、これだと防ぎようがない。ソフトクリームの
ようにある程度先に氷晶を作って混ざり合ったものを再凍結するのが良い。
(宮)分散しきっていない状態。
(委)分散しなくても少しずつ氷が出来た状態で混ぜてやれば、それが分散になる。氷の
粒が小さい間に混ぜてやれば良い。
好き嫌いはあると思うが、個人的にはおいしいと思う。値段もまずまずかと思う。
シャーベットで良いならシャーベットらしくした方がよい。
(委)殺菌は製品化した時に問題にならないか。
(宮)菌測定はしていないが、冷凍流通・冷凍保管を想定している。問題になるのは微生
物・土壌菌の菌数だと思う。
(委)さきほどさっと焼いているとの説明があったが、その後で加熱水蒸気でさっと吹い
てはどうか。菌が死んで、成分は残る。高温短時間でやるのが良い。
(委)地元では「やくらい」は有名なのか。東京では自然薯の方が認知度が高い。
(宮)「やくらい」は、人里離れた所にゴルフ場・温泉などのあるリゾート。ネーミングは
議論があった。自然薯ソルベも検討したが、自然薯が1%で豆乳が30%、豆乳ソ
ルベ・豆乳シャーベットの方が自然だという話になった。
(委)おいしい人には美味しいのかもしれないが、かなり厳しい。あれで食べさせたいと
思うのなら、食べにくいのでカップではない形を考えて欲しい。
(委)皮の部分が風味という点で非常に影響があるということだが、私どもも、こういっ
た製品を売る場合には、今のお客様は目が非常に厳しいので、あのような状態だと
異物混入という誤解を与えるおそれもあり、販売面で厳しいのではないかという気
がする。食感もそうだが、そういった部分も検討が必要だという気がする。
(宮)シールに異物ではないという記載はしているが、手作りなので分注等で手際の悪い
部分もあった。先ほどの委員からのアドバイスも参考にして修正して行きたい。
(試食検討会)
<主な意見>
・好ましかった点:
目新しい・今までにない食感・素材が生かされている
・改善して欲しい点:
粘りに違和感・甘すぎる・値段が高い・生臭い・食感が悪い・氷の結晶が大きい
表面の自然薯由来の黒色物質が「異物」に見える
・その他:
ネーミングの「やくらい」の意味が分からない
5.試作協力者コメント(試食検討会結果・意見交換会内容をうけて)
<試食結果に対する感想>
自然薯の特徴を出すため、風味と粘りを強調した商品を作りましたが、評価は厳しく課
題の大きいことが認識できました。
課題については異物、食感(粘り)、風味に大別されそれぞれ解決できる手段は考えてい
ますが、生産現場で製造する工程では難しいので、プロセスの再構築が必要であると感じ
ました。
様々な意見が出ていますが率直な意見が多く、結果については不満も不公平感も感じず
素直に受け止めています。
<今後更に改善が必要と考える事項>
・異物・・・自然薯の皮である黒色物(褐変物)が表面に浮いており異物と見られる状
態でした。また、デザート表面には氷晶も見られました。このことについて、対策として
は皮はあらかじめ原料段階で排除する、増粘多糖類を検討し商品中に均一に分散する、メ
ッシュサイズを小さくする、カップに満注しシールする、が考えられます。皮については
風味向上と作業労力削減の目的で排除しませんでした。商品中に分散させても異物に見ら
れることを考えると、皮は無いほうが無難だと思います。今回のようにヘッドスペースが
ある形態は特別な設備が無くても充填できる方法でしたが専用ラインで製造することを検
討すれば解決できます。
・食感・・・溶け始めた際の糸を引くような粘りがマイナス要因で目立っていました。
最終的に常温になった時に液体状になれば購入後でのトラブルの可能性があり、もっとゲ
ル性を高めつつ粘る特徴が出せる食感への改善が必要です。サイリウムシードガムの割合
を下げ他のゲル化剤(カラギーナン,ローカストビーンガム)の割合を増やせば問題は解
決すると思われます。
・風味・・・甘いという意見が大きく恐らく他の風味が弱いと思われます。自然薯単品
での味は特に強くなく必ずしも嗜好性の高いものではないので、相性の良い素材との組合
せが必要でした。ただ、風味については特に嗜好性での差が大きいので自然薯の風味を一
番よく出せる商品開発に焦点を絞りたいと思います。もしかするとデザートではなくなる
かもしれません。
<その他特記事項>
今後、商品化された際には各種広報誌などで広報して欲しい。
6.機能性成分含有量分析結果
(1)加工直前の原料形態時
地域農水産物名
自然薯
分析した機能性成分
ポリフェノール(没食子酸相当量)
分析機関
宮城県産業技術総合センター
分析法
フォーリン・デニス法
含有量(%)
0.597%
分析経過
凍結乾燥前の水分:68.6%
(2)試作品形態時
地域農水産物名
自然薯
分析した機能性成分
ポリフェノール(没食子酸相当量)
分析機関
宮城県産業技術総合センター
分析法
フォーリン・デニス法
含有量(%)
0.0234%
分析経過
豆乳由来のポリフェノールも含まれていると思われる。
金時草
金時草カステラ
<④金時草カステラ>
試作協力先:株式会社 柴舟小出
1.試作品について
容量又は重量
22~25g
納入数
90ケ
利用した地域農水産物名
金時草
利用部分
葉
利用した地域農水産物の産地
石川県金沢市俵原町
収穫時期
5月~11月
赤紫色色素(アントシアニン)は色調だけでなく機能性(抗酸化性)も高いため、商品の付加価値を高めることが期待で
試作にあたっての着眼点
きる。
着目した機能性成分
アントシアニン(ポリフェノール類)
商品区分・形態
カップに入ったカステラ
常温(脱酸素剤入り)(10日間)
保存方法
試食にあたっての留意点 カップ側面を開いて、フォ-クにてそのまま試食
想定される小売価格帯
1個当たり150~180円
①金時草色素は、従来のカステラ製造法では、その色調が変色し商品への利用が困難であった。そこで、使用す
商品化に当たって
る膨張剤を変更することにより色調を安定化することが可能となった。
苦労した点 ②商品の食感は、和菓子風のもちもち感の有るカステラをすることが従来法では困難であった。そこで、小麦粉の
代わりに米粉を100%用いることで改良できた。
①この商品の想定する購買層は、アントシアニン色素を利用していることで健康志向の高い消費者層および、地元伝
統野菜を原料とした商品として贈答用としても期待している。
②商品の色調は、金時草の色調によって従来にない紫色が出せた。
③商品の食感は、カステラ特有のふっくらした中にもっちりとした和菓子風の食感を出せた。
試作品の特徴
連携した組織
石川県農業総合研究センター
(株)柴舟小出
試作品作成組織
試作にあたっての
スケジュール概要
色素の抽出 → 試作及び検討(数回) → 試作品(11月上旬)
→ 成分分析(11月中旬) → 試作品完成(11月下旬)
その他特記事項
特になし
2.使用原材料及び割合(1%未満のものについては原材料名のみ)
原材料名
割合(%)
原材料名
米粉
19.0
ベーキングパウダー
卵黄
11.4
(メレンゲ)
グラニュー糖
7.1
卵白
サラダ油
7.1
グラニュー糖
水
7.1
金時草色素
1.5
(全量を100%として)
3.試作品製造工程
1.米粉とベーキングパウダー、金時草色素は合せて振るっておく。
2.ボールに卵黄をほぐしいれ、グラニュー糖を加えて、泡たて器でもったりするまでよく混ぜる。
3.サラダ油、水を順番に加えよく混ぜ合わせる。
4. 3の中に振るった1を入れて混ぜる。
5.別のボールで卵白を泡立てメレンゲを作る。
6. 4を再度良く練り、クリーム状にする。
7. 1/3量のメレンゲを6に加え混ぜ合わせる。
8.残りのメレンゲも加え、サックリと混ぜ合わせる。
9.カップに適量を入れ、天板に並べる。
10. 摂氏180度のオーブンで約40分焼き上げる。
割合(%)
-
33.2
14.2
4.試食品評価
*金時草カステラ
(意見交換会)
<試作協力者説明>
加賀野菜の金時草は、葉の裏が非常にきれいな紫色をしている。是非この紫色を使えな
いかということで以前から研究していた。石川県農業総合研究センターの特許も使い金時
草の葉の色素を抽出する機械も入れて抽出した。
金時草は、市場にはきれいな葉の部分しか出さないため、下葉や虫食いなど廃棄されて
いた葉を使い色素を抽出できないかということで県の協力も得て取り組み、抽出する事が
できた。金時草大福を製品化し、更に加賀野菜のレパートリーとしてもう一品何か出来な
いかということで、洋風でありながら和風のカステラのようなものが出来ないかと取り組
んだ。
苦労したのは、カステラなので卵を使うため、膨脹剤も入れるとアントシアニンの紫が
褐色に変化してしまう点。委員の助言を頂き、解決する事ができた。
これを応用すれば、地元としては加賀野菜の一つを使う地産地消の取り組みとしてやっ
ていけるのではないかと思っている。
製品化には、まだまだ色々やって行かなければならないが、石川県の協力も得て製品化
にもっていきたい。今回はカップに入れたが、中の色をもっと良い色にできないか、色を
安定したいと思い取り組んでいる。
<質疑>(委:委員・石:石川県試作協力者)
(委)あのような素朴な感じを狙っているのか。
(石)そういう部分と最近小麦粉アレルギーが言われるようになっているので、国産の米
粉を使って何とかできないかという部分がある。
(委)菓子として甘味が少ない。甘味が少ないため、パサ付いている。匂いをかいで、乳
化剤を使っているのではないかと思ったので、甘さを狙っているのなら、もう少し
しっとりしても良いのではないか。そうすれば、粒子の不揃いが一定すると思う。
カップが小さいので、乳化剤・安定剤を使わなくても大丈夫なのではないかと思っ
た。
色はきれいで食べやすいが、菓子を食べる人は甘党なので甘味に物足りなさを感じ
るのではないか。
(石)和菓子屋なので、この中にアンコを入れて、より和風にする等考えている。それも、
ただ入れるのではなく生地に練りこんでしまうといった事も考えている。そうすれ
ば、もっとしっとりするのではないか、といったところを進めている段階。
(委)和菓子屋さんであれば、「浮島」という生地を使えばそれだけで十分あんも入るし、
しっとりできると思う。
(委)原料手当についてはどうか。
(石)全体量は調べていないが、一軒の農家だけで自社が使用する分は十分まかなえる状
態。山間地で栽培面積は少ないが、更に数軒の農家と契約できればこれまで捨てて
いたものを効率よく使っていけると思っている。
(委)重曹を使うとpHが変わってしまうので、重曹を使わないで苦心をしたと思う。ノ
ウハウは㊙で言えないとは思うが。
ただ、パサつきはもう少し何とかならないか。
(石)小さなカップに入れたので、火加減等調整すれば、もう少ししっとり出来ると思う。
(委)熱を加えると白くなるタマゴが大手メーカーから出ている。それを使うと色につい
ては苦労しなくてもよくなる。
(委)米粉を使っていることが試食時の情報として無かったが、米粉を使ってこれだけの
食感が出れば出来はかなり良いと思う。自分たちも小麦アレルギーのお客様から問
い合わせがあるが、そういった点も合わせてセールスポイントにすれば、かなり魅
力的な製品になるのではないか。
(委)あのパサつきはそんなに難しくなく解決できると思う。
(委)もう少しグラニュー糖より保水性の高い糖質を使うということか。
(委)アレルゲンにならないもので保水性の高いものがあるはず。
(委)米粉を使っているのはすごくいいと感じた。国産の小麦で一生懸命パンを作ってい
るが、ものすごく高くつく。そんなことをするよりも米の粉で唐揚げを作る等を考
えた方がよいという話をしていたばかり。
(試食検討会)
<主な意見>
・好ましかった点:
色がきれい・甘さが程良い・食べやすい・おいしい
・改善して欲しい点:
価格が高い・しっとり感が不足・食べにくい包装・表面に紫色が欲しい
・その他:
金時草の認知度が低いのでアピールが必要
5.試作協力者コメント(試食検討会結果・意見交換会内容をうけて)
<試食結果に対する感想>
意見交換の時にも指摘されましたようにしっとり感がない。
又、色が表面からわかりにくいと言ったアンケート回答が多かった
<今後更に改善が必要と考える事項>
カステラのしっとり感をもっとだす為に生地の配合を改善する。
表面の色を出す為の改善が必要(蒸し物でも良いができれば焼き物で)
6.機能性成分含有量分析結果
(1)加工直前の原料形態時
金時草
地域農水産物名
分析した機能性成分
アントシアニン
分析した機能性成分
抗酸化能
分析機関
石川県農業総合研究センター
分析機関
石川県農業総合研究センター
分析法
HPLC
分析法
DPPH法
含有量(%)
1.02%(金時草色素粉末)
含有量(%)
528pmol(Trolox相当量)
分析経過
分析経過
特記事項無し
特記事項無し
(2)試作品形態時
金時草
地域農水産物名
分析した機能性成分
アントシアニン
分析した機能性成分
抗酸化能
分析機関
石川県農業総合研究センター
分析機関
石川県農業総合研究センター
分析法
HPLC
分析法
DPPH法
含有量(%)
0.0150%(乾物当たり)
含有量(%)
21.1pmol(Trolox相当量)
分析経過
分析経過
特記事項無し
特記事項無し
毛馬胡瓜
しおふき毛馬胡瓜
<⑤しおふき毛馬胡瓜>
試作協力先:大阪府立食とみどりの総合技術センター
1.試作品について
容量又は重量
100g袋入り
納入数
6袋
利用した地域農水産物名
毛馬胡瓜
利用部分
果実
利用した地域農水産物の産地
南河内郡河南町
収穫時期
11月
試作にあたっての着眼点
なにわの伝統野菜の新土産開発
着目した機能性成分
イソケルシトリン
商品区分・形態
50g/ビニール袋
常温
保存方法
試食にあたっての留意点
特に無し
想定される小売価格帯
50g/袋:600円
商品化に当たって
乾物加工に労力がかかることから、しおふき加工した伝統野菜を単独にした商品は高価格となることから、塩
苦労した点 昆布と混ぜ適切な単価設定が必要。
試作品の特徴
しおふきのおいしさに、原菜のもつ味、食感と香りが楽しめる。
連携した組織
株式会社:小倉屋山本
試作品作成組織
大阪府立食とみどりの総合技術センター
試作にあたっての
スケジュール概要
10月下旬:収穫、11月初旬:乾物加工、11月下旬しおふき加工
その他特記事項
特に無し
2.使用原材料及び割合(1%未満のものについては原材料名のみ)
原材料名
割合(%)
原材料名
毛馬胡瓜乾物
44.6%
調味料(アミノ酸等)
醤油
27.4%
還元麦芽糖
砂糖
10.4%
醸造酢
2.0%
トレハロース
5.8%
魚貝エキス
1%未満
食塩
4.1%
甘味料(甘草・ステビア)
1%未満
3.試作品製造工程
①乾物を水で戻す
②調味料を加え蒸煮する
③釜から取り出しひろげて乾燥する
④調合粉(粉末状にした調味料)をまぶしてなじませる
⑤品質保持のため脱酸素剤を同封して袋詰めにする
割合(%)
2.8%
2.1%
4.試食品評価
*しおふき毛馬胡瓜・しおふき天王寺蕪
(意見交換会)
<試作協力者説明>
大阪には独特の食文化がある。その中には「伝統野菜」もあり、毛馬胡瓜・天王寺蕪も
そのひとつで、天王寺蕪はその後長野に渡り、野沢菜のもとになったと言い伝えられてい
る。食生活の変化等で、消えかかっていたが、独特の食感があるので、もう一度復活させ
ようということに取り組んでいる。他に商品化されている伝統野菜もあるが、今回は別の
物産品の土産品として試作した。
作り方は、大阪の伝統的な製法で昆布屋さんに依頼した。
苦労した点は、原材料をカットして乾燥させるために農家で作業をするのに手間がかか
る点。特に天王寺蕪は形もカットしにくく手間とコストがかかった。
<質疑>(委:委員・大:大阪府試作協力者)
(委)大変美味しかったが、50gで600円という値段はちょっと高いか。もう少し安
ければビールのつまみにはもってこいだが。野菜の漬け物の中間水分食品である。
(委)小分けして袋に入れると嵩がでるが。
(委)美味しいので、食べ過ぎてしまいそうなので、今の意見のように小分けして健康に
良い量を入れて欲しい。
(委)大きい袋にたくさん入っていると高いようなイメージになるから、小さい袋なりパ
ックに入れてそれを一つの袋に入れると嵩が出て買いやすくなるのではないか。
(委)100gで1200円はちょっと高いような感じがする。
(委)安くするためには何と組み合わせるかという事だと思う。面白い課題だと思う。
(委)胡瓜の方は吸ってしまったのか粉が吹いていなかった。蕪の方は吹いていたが、最
初に胡瓜が出てきた時は自分の考えていたイメージと違っていたので、あれっと思
ってしまった。
(大)出来上がったときはしおを吹いていたが、時間とともに吸ってしまった。理由はま
だ良く分かっていない。
(委)まだ検討の余地があるという事。
(試食検討会)
<主な意見>
しおふき毛馬胡瓜
・好ましかった点:
おいしい・塩加減がよい・お茶うけや酒の肴によい・ごはんやお茶漬けに合う
・改善して欲しい点:
価格が高い・胡瓜らしさを感じられない・食感が悪い・塩味が強い
・その他:
機能性成分のイソケルシトリンの認知度が低い・関東での毛馬胡瓜の認知度が低い
しおふき天王寺蕪
・好ましかった点:
おいしい・食べやすい・香りがよい・食感が良い・お茶うけや酒の肴によい
ごはんやお茶漬けに合う
・改善して欲しい点:
価格が高い・塩味が強い・少し固い・色が良くない
・その他:
機能性成分のジアスターゼがどの程度残っているか
関東での天王寺蕪の認知度が低い・食べ方の提案をすると良い
5.試作協力者コメント(試食検討会結果・意見交換会内容をうけて)
<試食結果に対する感想>
両試作品とも、味的にはおいしいという高い評価であった。反対に、価格が高い、塩分
の取りすぎにもなるので、もう少しコンパクトサイズにして値頃感を出す必要があるとい
う意見があった。キュウリの青臭さがなくてかえって良いという意見もあった。総合的に
は新たな商品開発である点が評価された。
<今後更に改善が必要と考える事項>
しおふきと昆布を一定の比率で混ぜてコンパクト化し、商品化する。キュウリについて、
しおふきの状態になっていない点は乾燥不足なのか、表面に付着させている塩の潮解性に
よるのか、などのべたつき原因の究明と改善。
6.機能性成分含有量分析結果
(1)加工直前の原料形態時
地域農水産物名
毛馬胡瓜
分析した機能性成分
イソケルシトリン
分析機関
大阪府立食とみどりの総合技術センター
分析法
70%メタノール抽出、HPLC分析
含有量(mg/分/100g)
13.6(水分:13.7%)
分析経過
特記事項無し
(2)試作品形態時
地域農水産物名
毛馬胡瓜
分析した機能性成分
イソケルシトリン
分析機関
大阪府立食とみどりの総合技術センター
分析法
70%メタノール抽出、HPLC分析
含有量(mg/分/100g)
3.00以下(水分:41.8%)
分析経過
特記事項無し
天王寺蕪
しおふき天王寺蕪
<⑥しおふき天王寺蕪>
試作協力先:大阪府立食とみどりの総合技術センター
1.試作品について
容量又は重量
100g袋入り
納入数
6袋
利用した地域農水産物名
天王寺蕪
利用部分
根部
利用した地域農水産物の産地
南河内郡河南町
収穫時期
11月
試作にあたっての着眼点
なにわの伝統野菜の新土産開発
着目した機能性成分
ジアスターゼ
商品区分・形態
50g/ビニール袋
常温
保存方法
試食にあたっての留意点
特に無し
想定される小売価格帯
50g/袋:600円
商品化に当たって
乾物加工に労力がかかることから、しおふき加工した伝統野菜を単独にした商品は高額となることから、塩昆
苦労した点 布と混ぜ適切な単価設定が必要。
試作品の特徴
しおふきのおいしさに、原菜のもつ味、食感と香りが楽しめる。
連携した組織
株式会社:小倉屋山本
試作品作成組織
大阪府立食とみどりの総合技術センター
試作にあたっての
スケジュール概要
10月下旬:収穫、11月初旬:乾物加工、11月下旬しおふき加工
その他特記事項
特に無し
2.使用原材料及び割合(1%未満のものについては原材料名のみ)
原材料名
割合(%)
原材料名
天王寺蕪乾物
44.6%
調味料(アミノ酸等)
醤油
27.4%
還元麦芽糖
砂糖
10.4%
醸造酢
トレハロース
5.8%
魚貝エキス
1%未満
食塩
4.1%
甘味料(甘草・ステビア)
1%未満
3.試作品製造工程
①乾物を水で戻す
②調味料を加え蒸煮する
③釜から取り出しひろげて乾燥する
④調合粉(粉末状にした調味料)をまぶしてなじませる
⑤品質保持のため脱酸素剤を同封して袋詰めにする
*しおふき天王寺蕪の試食品評価は、しおふき毛馬胡瓜と一緒に記載。
割合(%)
2.8%
2.1%
2.0%
4.機能性成分含有量分析結果
(1)加工直前の原料形態時
地域農水産物名
天王寺蕪
分析した機能性成分
ジアスターゼ
分析機関
大阪府立食とみどりの総合技術センター
分析法
β-アミラーゼ活性の測定
含有量(mg/分/100g)
156(水分:12.8%)
分析経過
β-アミラーゼ活性
試料100gあたり1分間に生成するマルトース量で表す。
(2)試作品形態時
地域農水産物名
天王寺蕪
分析した機能性成分
ジアスターゼ
分析機関
大阪府立食とみどりの総合技術センター
分析法
β-アミラーゼ活性の測定
含有量(mg/分/100g)
6.03(水分:22.8%)
分析経過
β-アミラーゼ活性
試料100gあたり1分間に生成するマルトース量で表す。
やまもも
やまもも茶
<⑦やまもも茶>
試作協力先:徳島県立工業技術センター
1.試作品について
容量又は重量
50g
納入数
10
利用した地域農水産物名
ヤマモモ
利用部分
葉
利用した地域農水産物の産地
徳島県小松島市櫛渕町
収穫時期
7月
試作にあたっての着眼点
ヤマモモは徳島県の県木であり、その果実中にポリフェノール3種が確認されている。その葉を使用したお茶
にも、高い機能性が期待される。
着目した機能性成分
ポリフェノール
商品区分・形態
飲料・お茶(乾燥茶葉)
保存方法
常温
試食にあたっての留意点
茶葉30gに1ℓの熱湯を入れ、4分程度でカップに注ぎ、試飲
想定される小売価格帯
1袋50g入りで,500円位
商品化に当たって
苦労した点
熱水抽出時の抽出性向上(蒸熱時間、乾燥茶葉の微細化)
試作品の特徴
癖がなく,非常に飲みやすい。ポリフェノールを豊富に含む。
連携した組織
阿波のやまもも会
試作品作成組織
阿波のやまもも会
試作にあたっての
スケジュール概要
ヤマモモ葉収穫(7月上旬) → やまもも茶試作(8月~10月) → 個別包装(11月)
→ 試作品完成(11月下旬)
その他特記事項
特に無し
2.使用原材料及び割合(1%未満のものについては原材料名のみ)
原材料名
割合(%)
ヤマモモ葉
100%
3.試作品製造工程
ヤマモモ葉(100kg) → 煮沸(10分間)(注1) → 冷却 → 揉機(50回)(注2)
→ 漬け込み(20日間,煮汁添加)(注3) → 天日乾燥(5日間)(注4) → 粉砕器(注5)
→ 乾燥茶葉(40kg) → 個別包装(50g毎,アルミパウチ袋)
(注1):普通の茶葉では5分間だが,ヤマモモ葉は堅く,厚いため。
(注2):木とムシロの間に挟んで揉んだ。ヤマモモ葉は堅く,厚いため,捩れにくかった。
(注3):普通の茶葉と比較して,発酵しにくかった。
(注4):ヤマモモ葉は捻れにくいため,葉が重なり乾燥しにくかった。
(注5):果実(キウイ,梨)受粉用の花粉砕器を使用した。
4.試食品評価
*やまもも茶
(意見交換会)
<試作協力者説明>
徳島には、すだちとやまももという特産品があるが、今回はそのうちのやまももの葉を
使ってお茶を作ってみようということで試作した。
やまももの実は親指の先くらいの赤い実で、梅のように中心に種があり、その周りにあ
る実が赤紫色の非常に鮮やかな果実。果実には、報告書の着眼点にも記載したようにアン
トシアニン1種・フラボノイド2種のポリフェノール成分を確認している。その葉を用い
た茶にも高い機能性が期待されるということで今回の商品を企画した。
商品化にあたって苦労した点は、熱抽出時の抽出性の向上。やまももの葉は茶に比べて
葉が硬く、表面がつるつるしている為、茶を作った時にお茶の葉のように撚れてくれない
という点で苦労した。出来上がった商品は、番茶の製法で作っているので葉の形がそのま
ま残るため、地元で試飲してもらったモニターからは「ただの枯葉のように見える。商品
としてどうだろう。」という意見をもらった。そういった点で、見栄えの面でもちょっと苦
労した。
作り方としては、まずやまももの葉を煮沸し、冷却、揉み機にかける。この際、葉が厚
くつるつるしているので、撚れにくかった。その後、番茶の製法なので漬け込みを行うが、
普通のお茶なら1~2日で乳酸発酵が始まるが、やまももの場合は原因は分かっていない
が乳酸発酵が起こりにくく進みにくかった。キレイに撚れていない、発酵が甘いというこ
とで、天日乾燥に関しても葉がくっついてしまい普通のお茶よりも時間がかかった。最後
に粉砕機で荒く粉砕して、乾燥茶葉として包装している。
現在、今回の試作品に改良を加えており、葉を粉砕し、やまももの果肉を加えて乾燥し
たもので、やまもも全部を使ったやまもも茶の開発を進めている。これの問題点としては、
やまももの果肉が高いということ。この点については、やまももは、ピューレー・冷凍ジ
ュースが食品素材としてあるが、果汁製造時に遠心分離で出るパルプを濾して捨てている。
このパルプを使うことでコストを下げられないか検討している。
機能性成分評価については、化学分析法であまり精度の出る方法ではないが、ポリフェ
ノールのうちミリセチン、これはやまももの実にもたくさん含まれている成分だが、この
相当量として求めてある。ポリフェノール量としては、日本茶の葉より若干少な目かなと
いう位である。
<質疑>(委:委員・徳:徳島県試作協力者)
(委)苦労をしたと思う。
試食時に指摘した事項が、改良を進めているという説明中にいくつか盛り込まれて
いる。
加工しにくいというのは、抗菌性物質がかなりあるのではないか。そうであれば、
抗菌性を前面に出した方が良いのではないか。
発酵はかなりしにくいのか。
(徳)通常1~2日で発酵が始まるが、今回は5~6日過ぎたあたりからゆるゆると始ま
り、最終的にもお茶より発酵の進みが遅かった。
(委)おそらく、ゆるゆる発酵したときにインダクションがかかって発酵しているので、
インダクションしたところから菌を吸ってその菌で発酵していると思われる。ひょ
っとしたらもっと早く発酵できるかもしれない。発酵させたいなら専門家に聞いて
みてはどうか。自分としては、無理に発酵させなくてもとも思う。美味しくするた
めにはいろいろな手法があるので、工夫して欲しい。面白い食品だと思う。
(委)いつ頃の葉を使用しているのか。
(徳)7月のもの。やまももの実自体が梅雨時に収穫になるのでその少し後。
(委)新芽ではないということか。お茶との決定的な違いはそんなところにあるのではな
いか。相当葉が成熟して硬くなっている状態だと思う。
(委)匂いが生臭い。木の生臭さをそのまま感じる。やまももというと酸味があり、色が
ピンクのものを想像するので、果実を入れた方が香りなり酸味が出てきて良いので
はないか。
大袋だと柿の葉茶もびわ茶もあって、どこに行っても珍しくない。せっかくやまも
もという高級なものなので、青森の試食品のようにティーバッグにして値段が高く
ても高級なイメージを出してゆけば興味はもてると思う。徳用というのは今の時代
には売れない。高級感を出さないと売れない。高い果実を入れて香りなり味を楽し
めて、「やまもも、ああなるほど」と思える方が商品価値が高くなるのではないか。
試作品を飲んでみて、何でやまももなのか生臭いじゃないか、という感じを受けた。
(委)私も生臭さを感じた。機能性成分と加工処理のバランスの問題だが、温度処理をし
てそれが丁度いいと機能性成分がうまくなって、ないしは変化して機能性成分だけ
が残る。そうすると美味しくなる。悪い臭いというのは、乱暴な言い方をすれば、
煮たり焼いたりすれば薄くなる。そういう処理をすれば、良いのではないか。バラ
ンスの問題で、その処理をした時に機能性成分が無くなっては話にならない。丁度
良い中間的な条件を探して欲しい。揮発性の成分は、より弱いのでうまく良いあん
ばいで出来れば美味しくなるのではないか。専門家に聞いて勉強してみてはどうか。
(委)既に改善に向けて取り組んでいるということだが、香りの点等今日の段階では飲み
づらいと感じた。更に改良されたものを期待している。
(委)かなり厳しかった。先ほど改善案を考えられているということだったが、そういう
工程が必要だと感じた。
(試食検討会)
<主な意見>
・好ましかった点:
香りが健康に良さそう・さっぱりしている・癖がない・
・改善して欲しい点:
癖があって飲みにくい・香りが悪い・ティーバッグにしてはどうか
・その他
ポリフェノールの含有量によってはセールスポイントになる
5.試作協力者コメント(試食検討会結果・意見交換会内容をうけて)
<試食結果に対する感想>
幅広い分野・男女・年齢のモニターの意見を聴くことができ、大変参考になった。外観
に関しては、こちらも感じていたように改良が必要な事が確認できた。ヤマモモ果実の果
肉またはフレーバーを加える案も、こちらで試行中のアイデアの妥当性を裏付けできた。
味・香りに関しては、個人差が非常に大きい傾向が感じられた。今後とも、同様の方法で
試食検討を行う事業を希望いたします。
<今後更に改善が必要と考える事項>
外観に関しては、粉砕しティーバッグに入れる等の加工が必要と感じた。味・香りに関
しては個人差が大きく、味の改良とともにターゲット層の再検討が必要と感じた。今後、
時期の関係で入手できなかった新芽を使用した茶の試作およびヤマモモ果肉の添加を検討
し、ヤマモモの香りおよびイメージを強化する予定である。
6.機能性成分含有量分析結果
(1)加工直前の原料形態時
地域農水産物名
ヤマモモ葉
分析した機能性成分
ポリフェノール
分析機関
徳島県立工業技術センター
分析法
フォリン・チオカルトー法
含有量(%)
6.70%
分析経過
含有量(%)は,ヤマモモ葉(水分54.5%)中のミリセチン
相当量として求めた。
(2)試作品形態時
地域農水産物名
ヤマモモ葉
分析した機能性成分
ポリフェノール
分析機関
徳島県立工業技術センター
分析法
フォリン・チオカルトー法
含有量(%)
11.1%
分析経過
含有量(%)は,ヤマモモ茶葉(水分9.8%)中のミリセチ
ン相当量として求めた。
(3)試作品評価のまとめ
試作品については、それぞれ特色のある食品であったが、時間的な制約もあり完成度に
は差があった。特徴的であったのは、地域農水産物のこれまで市場に出荷できない等、利
用されていなかった部分を利用するという発想のものが3品あった点。地域の農水産物の
機能性に着目し、且つ従来活用されていなかったものに着目して商品化の取り組みを行っ
ている点は、注目に値する。
個々の試作品についてのモニターの評価結果を見ると、「酸味」について好ましいとする
意見と酸味が強すぎるという意見があるように、消費者の嗜好が多種多様化する中、一定
の傾向値はあるものの今回の試作品に対する評価もモニターの嗜好によりばらつく結果と
なった。
また、金時草カステラに小麦を使用せず米粉を使用している点が小麦アレルギーへの対
応や国産米の消費という面で評価を受けたように、試作品のアピールポイントを消費者の
視点から考えて行くことも商品化に向けては重要な点となる。
今回の結果では、どの試作品についても商品化に向けていくつかの課題が残されている
ことが明らかになった。また、それぞれの試作協力者が、今回の結果をうけて、あるいは
試作品の検討と並行して残された課題の解決に取り組んでいることも報告されており、今
後の商品化が期待される。
3.まとめ
―走りながら考えたことなど―
座長
小林
昭一
人間の生命維持・エネルギーの確保、生活物資の供給の面などから農業は生命・生活の
基盤産業であるはずであるが、我が国の農業の実態は極めて厳しい。そのために農林水産
省では「食料・農業・農村基本計画」を策定し、農業の振興に精力的に取り組まれている。
幅広い取り組みの中での一部として、食料の安全保障の面から自給率の増加が求められて
いるが、地域特産農水産物の高付加価値化・機能性付与などで、コストを超える価値をも
つ食品を生産できれば、自給率の増加、食品産業の振興に寄与できる可能性はある。この
中で「農水産物機能性活用推進事業」が開始されたものと理解できる。「食料・農業・農村
基本計画」の大きな柱の 1 つ、「農業と食品産業の連携」の具体化であり、地域、食品産
業と農水産業の連携、活性化を通して自給率の向上をめざし、農水産物の機能を明らかに
して市場性を評価、地域の農水産物の全国波及を狙うというものである。
ここでは、消費者が求めている機能性とはどのようなものであるかも知る必要がある。
農水産物に含まれ、食品にしてもその成分が有効であり、健康・長寿に関与する働きがあ
るものであろうか。
農水産原料中に含まれる栄養素としては3大栄養素の他にビタミン、ミネラルを加えて
5栄養素、さらに非栄養素の食物繊維、ポリフェノールを加えて、健康機能に関わる成分
の種類は極めて多くなってきている。これら栄養素、非栄養素は組み合わせによって機能
が多様に変化する可能性があり学術的な解明が進められているが未知な部分が多い。基本
的にはどのような食品成分でも機能性をもち、機能の種類と強さが異なり、毒物、薬物、
機能性成分、食品成分の順にマイクログラムから 100 グラム単位で生体と健康的に関わる
ものと推測される。
さらにこのような働きをもつ成分をどのようにして評価されたかを知る必要もある。こ
れまでの評価法としては、栄養素を引いて欠乏症、足して過剰症、健康・長寿地域の疫学
調査で成分、要因を探す。未知なときには、これまでに科学的に明らかにされたものを負
荷して状態をみて評価する。通常、何かを調査をするときには意図があり、大概、意図に
沿った結果が出る。自己に適合した結果は受け入れられやすい。認知的不協和に陥らない
ようにもしなければならない。「忙しい」時代で、考える余裕がなく、忙しい生活を送って
いる生活者を総体として考え、不足しているものを補い、余分なものを除くと、簡略化し
て対応すれば理解が得られやすい。
成分、要因の特定は単純にはできないが、先ず、隗より始めよ、ということで、どのよ
うな機能性成分があり、どのような食品ができるのか、全国関係組織から聞き取り、適当
な課題を選択し、試作して、試食し、商品化の可能性を探ることにする。この過程で地域
の食品産業への振興にも寄与できれば有難い。
予算の制約もあり品目数を限定して対応が可能な組織を選択する作業を開始した。この
ような組織を探すにはアンケートが一番であり、アンケート内容を課題に適合する組織を
見出せるように設定して集約。機能性成分は分析しなければならないので、すでに研究が
進行中で分析技術が確立しているような組織を選択することにした。さらに、農水産物原
料とその使い方に独創性がないと普通の食品製造のようになり、競争力はない。独創性と
は、これまで不可能であったことを可能にするということであり、色々な可能性を試して、
面白いものに出会えれば商品化できるかも知れない。独創性に関して、機能性については
多くの研究例があるので情報の収集に留意する必要がある。
独創的なものであっても、やはり価格の要因が極めて大きい。これを超えるだけの付加
価値をつけることができれば大きな商品になるが、そのためには行政の力が必要な場合が
多い。
地域性・原料カテゴリー・食品形態なども考慮して検討を進め、試作をお願いし、試食
により評価した。この過程と内容をまとめたものが本報告書であり、大冊になってしまっ
た。折角作ったものが大冊では、精密機器扱い書のようで、読む者はいないのではないか、
ユーザーズマニュアルのような簡便なものにまとめたものが欲しいという意見もあった。
このため少しでも使い勝手の良いように分冊とした。機能性成分の分析、試作品の評価な
ど、不十分なところが多いであろうが、可能な限りの検討はさせて頂いた。
新規事業には「道がない」。最低限、試作現場の方々に余分な負担をかけない、第三者か
ら評価されるような対応と成果を出すことを念頭に、さらに検討を続けたい。
最後に蛇足をつけさせて頂ければ、食事と健康に関して基本的には「貧すれば鈍する。
過ぎたるは猶及ばざるがごとし」と言うことであり、生命の安全が保障され、自己健康管
理すなわち「注意深い生活」や「正しい生活習慣」ができ、「心に適度なプラスのストレス
(楽しさ)を受ける」豊かな生活を送れれば、それなりに健康長寿なはずである。世界の
長寿地域の短命化は美食の原因もさることながら精神的な豊かさの喪失も考慮すべきかも
知れない。地域の文化を取り込んだ食品開発が求められ、ある小学生が偉人の寿命を調べ
て「いつの時代でも偉人の寿命は変わらない」としたものがあったが、参考にしたい。
検討委員の方々には各人の専門分野から色々な問題点、考慮すべき点などを適時適所で
出して頂いた。事務局でのまとめではご苦労があったであろう。各方面の方々の聡智を頂
いて役立つよい成果を出したいものである。