中国総合スーパー業界の現状と今後の見通し

HKIR.2012-25
【香港駐在報告】
2012 年 7 月
中国総合スーパー業界の現状と今後の見通し
中国経済の持続的な発展に伴い、中国の小売市場は中長期的に成長を続けると
考えられる。特に総合スーパーについては、日常的な買い物の場を提供する小売
業態として中国国内で既に定着しており、今後の動向が注目される。本稿では、
中国における総合スーパー業界の特色、日系企業への示唆等について、中国国内で
の店舗見学(※)を踏まえつつ、簡単にまとめた。
※北京・上海・広州・深セン・成都・武漢にて、地場・外資・日系を問わず、合計 52 店舗の
店舗見学を実施。
【 要
約 】
— 中国では依然として、消費者の購買力向上の余地が大きい。従って、一時的
な伸び悩みはあり得るものの、中長期的には、小売市場の拡大が続く見通し。
— 成長が見込まれる中国小売市場の中で、日常的な買い物の場として、総合
スーパーは中国の消費者の生活に既に深く根付いていることから、今後、
総合スーパー業界も成長を続けるものとみられる。
— 参入企業に目を向けると、「店舗で付加価値を提供すること」を重視した
「日系」と「低価格の商品を店に並べること」を重視した「他の外資・地場」
に大別される。コンセプトは異なるものの、両タイプのチェーン共に、全体
で見れば相応の収益を上げている状況にある。
— しかしながら、今後、「他の外資・地場」内での競合が高まると考えられ
る他、「日系」についても更なる収益力強化が求められるため、戦略的な
「新規出店」及び「オペレーション力強化」の必要性が高まるであろう。
— 採るべき戦略は各チェーンのコンセプトによっても異なるものの、具体的
には、「レバレッジが効く内陸部への出店」「付加価値提供の徹底」等が
キーワードになると考えられる。
— 「日系」にとっては、付加価値提供へのニーズが相対的に強い沿岸部への
出店も選択肢の一つではあるが、日本並みの高い売場効率は見込み難いこと
を前提に、賃料水準が高い地域への出店には慎重な対応が求められる。
— また、「日系」にとって、より重要なことは「付加価値提供への徹底的な
拘り」であり、独自のポジションを築くことが肝要と言えよう。
【目
次】
1.中国小売市場の概要
1
(1) 市場の動向
1
① 市場規模の推移
② 市場規模の中長期的な見通し
(2) 消費購買力の動向
3
① 足元の概況
② 所得層別の状況
③ 地域別の状況
2.中国総合スーパー業界の概要
5
(1) 総合スーパーの位置付け
5
(2) 総合スーパーの業態としての特徴
5
(3) 総合スーパー業界の構造
6
(4) 総合スーパー業界を取り巻く環境
① 商習慣の現状と変化の方向性
7
② 出店に関わる規定
③ 商品仕入の方法
3.大手総合スーパーの事業展開の現状
9
(1) 大手総合スーパーの出店状況
9
(2) 大手総合スーパーの店舗コンセプト
① 各チェーンによるコンセプトの概要
10
② 各チェーンのハード面・ソフト面・顧客層等の特徴
(3) 大手総合スーパーの収益力比較
12
(4) 中国と日本における総合スーパー事業の損益構造の違い
13
(5) 外資・地場大手総合スーパーの戦略
14
① 出店の強化
② 新業態の導入
③ 調達の見直し
4.今後の展望
16
(1) 中国総合スーパー業界全体の今後の見通し
16
(2) 更なる新規出店
17
① 新規出店の必要性と期待できる効果
② レバレッジが効く地域への出店
(3) 更なるオペレーション力強化
19
① オペレーション力強化の必要性と期待できる効果
② 他チェーンとの差異化に繋がる付加価値の向上
(4) 新たに進出を検討する日系企業への示唆
1
21
1. 中国小売市場の概要
(1) 市場の動向
① 市場規模の推移
◇ 足元、伸び率鈍化は見られるものの、市場の拡大が続いている
¾ 中国の小売市場は拡大を続けており、2001 年からの 10 年間、年平均伸び率
17.0%のペースで成長して、2011 年の市場規模は 18 兆元(約 225 兆円(1 元=12.5
円換算))に達した(図表 1)。
¾ 但し、足元、小売市場の成長速度は緩やかになっており(図表 2)、今後、
伸び率鈍化が更に鮮明になる可能性も否定できない。
¾ しかしながら、物価調整後で見ても、2012 年前半の中国小売市場は前年比二
桁台の成長を維持しており、市場全体が直ちに減少に転じることは想定し難い。
当面、中国小売市場は成長を続けると考えられる。
《 図表1:中国小売市場の推移(暦年ベース) 》
(兆元)
25
25%
20
20%
15
15%
10
10%
5
5%
0
0%
2001
2002
2003
2004
社会消費品小売総額
2005
2006
2007
対前年比伸び率
2008
2009
2010
2011
対前年比伸び率(物価調整後)
(資料)CEIC をもとに三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
《 図表2:中国小売市場の推移(月次ベース) 》
(兆元)
2.5
25%
2.0
20%
1.5
15%
1.0
10%
0.5
5%
0.0
0%
2007
2008
社会消費品小売総額
2009
2010
対前年比伸び率
(注)2012 年 1 月及び 2 月についてはデータなし。
(資料)CEIC をもとに三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
1
2011
2012
対前年比伸び率(物価調整後)
② 市場規模の中長期的な見通し
◇ 政府は内需を拡大させる方針であり、小売市場は中長期的に成長する見込み
¾ 近年の中国経済の牽引役は固定資本投資であるが(図表 3)、箱物に大きく
依存した成長には歪みが生じ易い。従って、中国が更なる経済発展を遂げる
ためには、消費中心の経済へと構造転換する必要がある。
¾ 実際、経済成長の目標を達成するため、2015 年までの第 12 次五ヵ年計画に
おいて、中国政府は内需拡大の必要性を訴えている。
¾ また、2012 年 1 月に発表された「商務部による第 12 次五ヵ年期間の小売業
発展促進に関する指導意見」(商流通発【2012】27 号)において、第 12 次
五ヵ年計画期間中(2011 年∼2015 年)の社会消費品小売総額の年平均伸び率
を 15%とする目標が掲げられた(図表 4)。
¾ 加えて、現時点で詳細は不明であるものの、同指導意見には税務面等で小売
業をサポートする内容も盛り込まれている。
¾ 総じて、中国政府の内需拡大に向けた供給サイドに関する方針等を踏まえる
と、中長期的にみて、中国小売市場は拡大傾向が続くと考えられよう。
《 図表3:中国における実質 GDP 成長率の需要項目別寄与度の推移 》
25%
20%
15%
10%
5%
0%
▲5%
▲10%
1990
1995
最終消費
2000
固定資本投資
2005
純輸出
2010
実質GDP成長率
(資料)CEIC をもとに三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
《 図表4:中国政府の内需拡大に向けた方針(小売業発展促進に関する指導意見) 》
発展目標
政府の指針
税務面等の
サポート
詳細内容(一部抜粋)
第 12 次五ヵ年期間中の社会消費品小売総額の年平均伸び率 15%増達成
小売業改革の加速、各業態の調和の取れた発展
条件を満たす大型小売企業集団の「財務会社」設立を支持
中小小売企業の発展促進のため、投資障害を除き、経営負担を軽減
国内関連取引の税務優遇政策の実施
地区を跨ぐチェーン企業による統一納税政策の実施
(注)指導意見の内容を一部抜粋の上、分かり易く意訳したもの。
(資料)中国商務部「第 12 次五ヵ年期間の小売業発展促進に関する指導意見」(商流通発【2012】27 号)
をもとに三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
2
(2) 消費購買力の動向
① 足元の概況
◇ 中国の消費支出は日本の 1960 年代後半の水準に過ぎず、伸び代が大きい
¾ 中国における一人当たりの年間消費支出金額の推移に目を向けると、2001 年
からの 10 年間、年平均伸び率 11.1%のペースで増加して、2011 年には一人
当たり年間 15 千元(約 190 万円)に達した(図表 5)。
¾ 但し、2011 年においても、中国の消費支出の水準は日本の 1960 年代後半と
同レベルであり、最も消費支出の水準が高い上海であっても、日本の 1970
年代前半の水準に留まっている(図表 6)。
¾ 即ち、需要サイドである消費者の購買力の観点でみても、中国の伸び代は大きく、
小売企業にとって、十分に成長を見込めるマーケットであると考えられる。
¾ なお、日本では、1972 年にダイエーが三越を抜いて売上高日本一になる等、
1970 年代は総合スーパーが隆盛を極めた時代。中国においても、総合スーパー
の今後の動きは注目に値しよう。
《 図表5:中国における一人当たりの年間消費支出金額の推移(都市部) 》
(元)
17,500
17.5%
15,000
15.0%
一人当たりの消費支出
対前年比伸び率
12,500
12.5%
10,000
7,500
10.0%
7.5%
5,000
5.0%
2,500
2.5%
0
0.0%
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
(資料)CEIC をもとに三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
《 図表6:一人当たりの年間消費支出金額の日中比較(中国:2011 年) 》
(千円)
400
300
200
100
3
1 9 7 3年
(注)1.本表は「1 元=12.5 円」にて換算。
2.XXXX 年と記載している箇所は日本の当該年における年間消費支出金額。
3.中国については、全国平均及び全国平均を上回る省級行政区のみを掲載。
(資料)CEIC、総務省「家計調査年報」をもとに三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
上海市
1 9 7 2年
北京市
1 9 7 1年
浙江省
広東省
1 9 7 0年
天津市
1 9 6 9年
江蘇省
福建省
内蒙古自治区
全国平均
1 9 6 8年
0
② 所得層別の状況
◇ 所得層別の消費支出金額の差は拡大傾向にあり、ニーズの多様化が進展中
¾ 中国における消費支出金額の変化を所得層別に見ると、高所得者層と低所得
者層の消費支出金額の格差は拡大傾向にある(図表 7)。
¾ 即ち、中国では消費者の所得に応じて、小売業へのニーズの多様化が進展
していると推察され、中国小売市場は、①多様な業態が同時に発展する可能性
があり、②同一業態の中でも異なるニーズを持つ顧客層をターゲットとする
チェーンが共存し得る、独特なマーケットであると考えられる。
《 図表7:所得層別の年間消費支出金額の変化(都市部) 》
最低所得者層(元)
最高所得者層(元 ) 消費支出格差
2000
2005
2010
①
②
③
④
⑤
2,320
2,656
4,715
2,540
3,111
5,472
3,275
4,295
7,360
3,948
5,574
9,649
4,795
7,308
12,609
⑥
⑦
5,895 7,102
9,411 12,103
16,140 21,000
⑧
⑧÷①
9,251
19,154
31,762
4.0倍
6.2倍
6.7倍
(資料)CEIC をもとに三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
③ 地域別の状況
◇ 沿岸部が肥沃なマーケットであるが、中西部の肥沃度も高まる可能性あり
¾ 足元の消費支出金額を行政区分別(省級行政区別)に見ると、上海市や北京
市をはじめとする沿岸部の消費支出金額が多く、内陸の中西部等の消費支出
金額が少ない等(図表 8)、小売市場としての肥沃度は地域によって異なる。
¾ 但し、上位 10 省級行政区と下位 10 省級行政区の消費支出金額の格差は
拡がっている訳ではない(図表 9)。
¾ 従って、現在、消費支出金額が少ない地域であっても、中長期的に見れば、中国
全体の成長に伴い、徐々に肥沃なマーケットとなる可能性があると言えよう。
《 図表8:地域別の消費支出の多寡(2011 年) 》《 図表9:地域間の消費支出格差 》
下位10
上位10 消費支出
消費支出金額上位 10 省級行政区
(元)
(元)
格差
消費支出金額下位 10 省級行政区
2001
2006
2011
北京市
①
②
②÷①
4,239
6,718
11,475
7,026
11,139
18,528
1.7倍
1.7倍
1.6倍
(注)1.下位 10・上位 10 とは、下位また
は上位の 10 省級行政区の平均値。
上海市
2.対象 10 省級行政区は変化している。
(資料)CEIC をもとに三菱東京 UFJ 銀行
企業調査部にて作成
(資料)CEIC をもとに三菱東京 UFJ 銀行
企業調査部にて作成
4
2. 中国総合スーパー業界の概要
(1) 総合スーパーの位置付け
◇ 総合スーパーのシェアが伸びる余地は十分にあり
¾ 中国の小売市場ではチェーン化されていない専門店等の売上シェアが約 90%
と高く、総合スーパーのシェアは日本に比して低く、全体の約 2%に過ぎず。
今後、総合スーパーのシェアが伸びる余地は大きいと考えられる(図表 10)。
¾ 一方、チェーン店の業態間比較では、中国の総合スーパーのシェアは約 23%
と日本よりも高く、総合スーパーは中国人の生活に根付いた業態と推察される。
《 図表10:総合スーパーのシェア(中国:2010 年、日本:2007 年) 》
【中 国】
【日 本】
専門店含む 業態シェア
総合スーパー
百貨店
2.3% 食品スーパー
2.1% コンビニ
2.1%
0.2%
百貨店
5.8% 総合スーパー
5.6%
食品スーパー
12.9%
専門店チェーン
3.4%
コンビニ
5.3%
専門店他
58.7%
専門店チェーン
11.7%
チェーン店のみ業態シェア
専門店他
89.9%
専門店チェーン
33.2%
コンビニ
1.9%
百貨店
21.1%
専門店チェーン
28.4%
総合スーパー
22.8%
食品スーパー
21.0%
コンビニ
12.8%
百貨店
14.1%
総合スーパー
13.6%
食品スーパー
31.2%
(注)専門店他も含めた中国の業態シェアは異なるフェーズの統計から推定の上、算出したもの。
(資料)CEIC、経済産業省「商業統計」をもとに三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
(2) 総合スーパーの業態としての特徴
◇ 店舗構造等は一部異なるものの、基本的には日本の総合スーパーと似ている
¾ 中国の総合スーパーは家電の取扱いがあり、2 層式のハイパーマーケット
タイプが多い点が日本の総合スーパーとやや異なるものの、日常的な買い物の
場という意味では、中国と日本の総合スーパーは似ていると言える(図表 11)。
《 図表11:中国と日本の総合スーパーの業態としての特徴(典型的な事例) 》
商品
店舗
中国の総合スーパー
食品・衣料品・日雑・家電
大半は二層式、一部に多層式も
売場面積 8,000-16,000 ㎡
日本の総合スーパー
食品・衣料品・日雑(生活家電はあり)
多層式が多い、二層式も近年増加
売場面積 8,000-16,000 ㎡
(資料)店舗見学等をもとに三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
5
(3) 総合スーパー業界の構造
◇ 外資系企業も確固たる地位を占めている
¾ 中国連鎖経営協会の小売企業ランキングでは業態別の売上高や店舗数が不明
であるものの、総合スーパー業態を持つ小売業の顔ぶれを見ると、大潤発、
カルフール、
ウォルマート等の外資系企業も上位に位置付けられている
(図表 12)
。
¾ また、売上高上位の企業の出店地域に目を向けると、上位企業は概ね中国全
土または広域に出店している点が特徴。
¾ 一方、同ランキングでは、日系のイトーヨーカ堂やイオン等は上位 10 社に入
らないものの、各出店地域において、地元に密着しながら確固たる事業基盤
を築いていることは店舗見学等からも明らか。
¾ 出店やマーケティング戦略の違いから、中国全体で見た売上高は異なるものの、
中国は国土が広いこともあり、全国展開する総合スーパーとドミナント戦略
を重視する総合スーパーが共存し得ると同時に、実際の競合状況をみる際は
商圏単位でのきめ細かな確認等が求められる。
《 図表12:総合スーパー業態を有する中国小売企業ランキング(2011 年)》
店舗数(店 )
企業名(店名) 資 本 売上高
主な出店地域
(百万 元)
総合のみ
1
492
華潤万家
中 国 82,700 3,977
全国
聯華超市
中 国 68,076 5,221
東北、華北、華東、華中、華南
2
154
3
185
185
大潤発
台 湾 61,567
全国
4
203
203
カルフール
フランス 45,196
全国
全国
5 ウォルマート アメリカ 43,000
271
225
6
409
122
物美
中 国 33,031
華北、華東、西南
7
204
153
永輝超市
中 国 20,380
東北、華北、華東、華中、西南
テスコ
イギリス 18,000
東北、華北、華東、華南
8
121
110
9
116
n/a
新一佳超市
中 国 17,534
華東、華中、華南
10
573
n/a
山東家家悦
中 国 16,245
山東省
イトーヨーカ堂
イオン
日 本
日 本
7,486
6,662
13
30
13
27
北京、四川省(成都)
北京、天津、広東省、山東省
(注)1.「華潤万家」「聯華超市」等、食品スーパーやコンビニエンスストア等を兼営している企業
も少なくないが、本表では総合スーパー業態を有する企業は全て掲載している。
2.分かり易さを優先するため、本表の「企業名(店名)」には企業名と店名を混在させている。
3.本表の「売上高」には総合スーパー業態以外の売上高も含まれる(総合スーパーのみの売上
高は不明)。
4.本表の「店舗数」には総合スーパー業態以外の店舗数も含まれ(中国連鎖経営協会資料転記)、
店舗数欄の「総合のみ」には、別途各社の資料より判明した総合スーパー業態の店舗数を掲
載している。
5.日系企業では他に、イズミヤ(江蘇省)、平和堂(湖南省)が中国へ進出済。
6.本表では香港を含んでいないが、香港にはイオン、ユニーが進出済。
(資料)中国連鎖経営協会「中国快速消費品連鎖百強」の他、各社資料等をもとに三菱東京 UFJ 銀行
企業調査部にて作成
6
(4) 総合スーパー業界を取り巻く環境
① 商習慣の現状と変化の方向性
◇ サプライヤーに対する各種費用の要求が一般的だが、今後は減少する見込み
¾ 中国に進出してきた一部の外資系総合スーパーが持ち込んだ商習慣であるが、
中国の総合スーパー業界では、サプライヤーに対して小売チェーンが様々な
費用を要求することが一般的(図表 13)。
¾ 取引開始や販売促進に関する費用の他、総合スーパー側の事情に基づく費用
を求められることも多く、サプライヤーにとって相応の負担になっている模様。
一方、総合スーパー(日系を除く)にとっては、収益源の一つとなっている。
¾ 但し、足元、非合理的な費用徴収を取り締まる動きが出てきている(図表 14)。
¾ 実際、6 月下旬までに 71 社が違反項目を自主的に報告して、ウォルマート等
は返金を実施した他、カルフールは「無条件キックバック(販売量と無関係
のリベート費用要求)」を一部取り消すことにしたとの報道もあり、今後、
サプライヤーへの過度な費用要求は少なくなっていくものとみられる。
《 図表13:小売店からサプライヤーに対して求められる各種費用の一例 》
取引開始に
関する費用
販売促進に
関する費用
その他
名 称
アカウント開設費
バーコード費
棚代費・インストア費
販売リベート費
販促場所賃貸料
店舗改装費
店舗周年記念費
内 容
小売店と新規取引を開始するための費用
小売店に新商品を取り扱ってもらうための費用
商品販売のための場所を確保するための費用
小売店の販売量に応じて求められる費用
ゴンドラエンド等の良い場所を確保する費用
店舗の改装に合わせて求められる費用
店舗開店 X 周年等に合わせて求められる費用
(注)各小売チェーンによって、費用の名称・条件が異なる他、徴収していないチェーンもあり。
(資料)各種資料等をもとに三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
《 図表14:サプライヤーに対する過度な費用徴収を取り締まる動き(2011 年 12 月) 》
対象
違反
行為
中国政府から発表された取締りの内容
①最大店舗の売場面積が 6 千㎡以上、②店舗数が 20 以上、③2010 年の売上高
が 20 億元以上、の 3 条件を全て満たすスーパー、百貨店、家電量販店等
または、小売店の違反行為をサプライヤーが訴え、政府関連部門が認めた場合
小売店が優越的地位を乱用して、サプライヤーから各種費用を受け取る行為
特に禁止するのは以下の費用・行為
①契約締結及び契約継続のために受け取る費用
②使用可能なバーコードがあるにも関わらず、請求されるバーコード費用等
③サプライヤーと無関係な場所にも関わらず、店舗改装時に要求される費用等
④祝祭日、周年記念等を理由とした、販促に無関係または販促需要外の費用
⑤販売リベートの無条件提供等をサプライヤーに要求する行為等
⑥販売商品と直接関係が無く、小売店が負担すべき費用を要求する行為等
(注)原資料を一部抜粋の上、分かり易く意訳したもの。
(資料)中国商務部等による「大型小売企業によるサプライヤーに対する規則違反料金徴収の整理整頓作
業方案」(商秩発【2011】485 号)をもとに三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
7
② 出店に関わる規定
◇ 都市毎に商業施設の配置等に関する規定があり、確認が必要
¾ 中国では、多くの都市で、「都市商業ネットワーク計画」が制定されている
(図表 15)。
¾ 「都市商業ネットワーク計画」には、各都市における小売業態の定義の他、業
態別・商業地区別の将来的な開発計画等が盛り込まれている。また、都市内
の一部の地区が総合スーパー出店の非奨励地域とされている場合もある。
¾ 都市によって計画の内容は様々であるが、「都市商業ネットワーク計画」が
実質的に出店を規制している場合もあるため、出店に際しては、確認が必要。
《 図表15:「都市商業ネットワーク計画」の一例 》
青島市
成都市
広州市
規定名(期限)
青島市市区
商業網点専業計画
(2020 年)
成都市商業網点
発展計画
(2020 年)
広州市商業網点
発展計画
(2012 年)
出店に関する規定の概要
◇ 2020 年までに大型総合スーパーを 45 店とする
◇ 全体を 7 つの商業地区に分け、各地区内での業態別
店舗数を規定
◇ 全体を 9 つの商業地区に分け、各地区における奨励・
非奨励業態を規定
◇ 1 ㎢当たりの人口により、出店可能な業態を規定
◇ 総合スーパーの出店に際しては、商圏人口 10 万人を
要件とする
(注)原資料を一部抜粋の上、分かり易く意訳したもの。
(資料)対象各都市の「都市商業ネットワーク計画」をもとに三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
③ 商品仕入の方法
◇ 返品可能な消化仕入が一般的だが、将来的には買取仕入も必要になる見込み
¾ 小売チェーンによって違いがあるため、一概には言い難いものの、中国では
総合スーパーであっても返品可能な消化仕入が多い模様(図表 16)。
¾ 品目別に見ると、食品では相応に買取仕入が拡がっているものの、衣料品で
は殆どが消化仕入となっているとみられる。
¾ 今後、中国においても、消費者の購買力が更に高まり、また、消費の多様化
が進展すると、他チェーンとの差異化が必須になる見込み。即ち、自主的な
マーチャンダイジングの必要性が高まり、買取仕入ができるバイヤーの育成
がチェーンの競争力を左右するようになる可能性もあると考えられる。
《 図表16:仕入方式の比較 》
消化仕入
概 要
消費者への販売まで所有権が納入業者に残る取引
返
可
品
能
自主 MD
自由度低い
買取仕入の必要性が高まる可能性有り
買取仕入
商品を仕入れた時点で所有権が小売に移る取引
(注)中国では買取仕入であっても、返品が行われているケースもある模様。
(資料)各種情報をもとに三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
8
原則不可
自由度高い
3. 大手総合スーパーの事業展開の現状
(1) 大手総合スーパーの出店状況
◇ 沿岸部では大手総合スーパー間の競合が厳しくなっている
¾ 地場、外資を問わず、大手総合スーパーは江蘇省、広東省、浙江省、上海市、
福建省、北京市等の沿岸部を中心に多数の店舗を出店している(図表 17)。
¾ 店舗支持人口(店舗当たりの人口)を見ると、特に上海市、北京市、江蘇省、
天津市、浙江省は相応に少なく、競合が厳しいと考えられる(図表 18)。
《 図表17:省級行政区別の大手総合スーパー出店数 》
全合計 (構成比) 地場
外資
1 江蘇省 華東
346
22%
239
106
2 広東省 華南
166
11%
61
90
3 浙江省 華東
147
9%
90
57
4 安徽省 華中
107
7%
74
33
5 上海市 華東
105
7%
37
68
6 福建省 華南
85
5%
59
26
7 北京市 華北
81
5%
40
31
10 山東省 華北
51
3%
4
39
11 天津市 華北
43
3%
27
14
13 四川省 西南
35
2%
3
27
1,564
100%
799
721
全国合計
日系
1
15
0
0
0
0
10
8
2
5
44
イトーヨーカ堂
イオン
15
8
5
13
2
8
2
27
(注)1.「地場」は華潤万家、聯合超市、永輝、「外資」は大潤発、カルフール、ウォルマート、テスコ
「日系」はイトーヨーカ堂、イオン、平和堂、イズミヤを指す(大手 8 社(物美除く)+日系 4 社)。
2.対象とした各チェーンの資料を基に、2012 年 6 月時点で確認できる総合スーパー業態の店舗数を
カウント。対象企業以外のチェーンの店舗数はカウントしていない。
3.大手 8 社のうち、物美は総合スーパー業態の店舗数を確認できる省級行政区が一部のため除外。
4.P6 の図表 12 とは、一部資料の出所が異なるため、店舗数が一致しない。
(資料)各社ホームページ、各社資料をもとに三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
《 図表18:大手総合スーパーの店舗支持人口の概要(下位分布及びランキング) 》
店舗支持人口が最も少ない 5 省級行政区
店舗支持人口が次に少ない 5 省級行政区
人口/店
(千人)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
上海市
北京市
江蘇省
天津市
浙江省
重慶市
福建省
広東省
安徽省
遼寧省
陝西省
吉林省
海南省
黒龍江省
山東省
177
202
220
259
344
386
421
569
572
672
914
1,437
1,690
1,810
1,837
倍率
1.0
1.1
1.2
1.5
1.9
2.2
2.4
3.2
3.2
3.8
5.2
8.1
9.6
10.2
10.4
(注)1.図表 17 の注 1∼4 と同様。
2.右表の「倍率」とは、「各省級行政区の店舗支持人口÷上海市の店舗支持人口」にて算出。
(資料)各社ホームページ、各社資料をもとに三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
9
(2) 大手総合スーパーの店舗コンセプト
① 各チェーンによるコンセプトの概要
◇ 販売商品カテゴリーは似ているものの、コンセプトの違いは大きい
¾ 店舗見学(注)にて確認したところ、地場の総合スーパーはもちろん、日系を
含む外資系総合スーパーも地元に密着した店舗展開(外国人(日本人を含む)
向けではなく、中国人向けの店舗展開)を実施している。
¾ 但し、各チェーンの店舗コンセプトに目を向けると、チェーンにより大きく
異なり、同一業態といえども直接競合していないケースもある。
¾ 具体的には、大きく「日系(Gr1、以下同様)」と「他の外資・地場(Gr2、
以下同様)」に分けられ、「Gr2」は更に「外資と一部地場(Gr2-1、以下同様)」
と「その他地場(Gr2-2、以下同様)」に細かく分けられる(図表 19)。
¾ 価格面で見ると、「Gr1」はやや高いものの、付加価値追求に対する考え方
は「Gr2」とは比較できない異次元のレベルの高さであり、来店客も品質の
良いものを比較的手頃な値段で求める人が中心となっている。
¾ 一方、「Gr2」は概ね、現状は付加価値に対する感応度が高くない顧客が中心
となっており、付加価値の提供はあまり重視せず、販売商品を店に並べることを
重視しているチェーンが多い。即ち、特に「Gr1」と「Gr2」の店舗コンセプト
の違いは大きいと判断される。
(注)2012 年 3 月∼6 月にかけて、北京・上海・広州・深セン・成都・武漢にて、地場・外資・日系を問わず、
合計 52 店舗の店舗見学を実施。
《 図表19:主要な総合スーパーの店舗コンセプトの違い 》
重視
日系B社
日系総合スーパー
外資系(日系除く)総合スーパー
地場総合スーパー
日系A社
日系(Gr1)
アジア系A社
(Gr2-1)
付加価値
地場D社
欧米系C社
欧米系B社
欧米系A社
地場A社
他の外資・地場(Gr2)
重視せず
地場F社
地場G社
地場B社
地場C社
(Gr2-2)
高い
価格
地場E社
安い
(注)1.縦軸「付加価値」ついては、店舗見学時の定性的な評価をもとに作成。
2.横軸「価格」については、店舗見学時にチェックした各食品(じゃがいも、カップラーメン、
コーラ)価格の偏差値を各々算出の上、偏差値の平均値を基にグラフ化して作成(価格調査
は他の品目も行ったものの、同一アイテムがないケースもあったため、食品のみを数値化)。
3.「価格」は日系がやや高い傾向にあることは否めないものの、実際には品目毎の違いもあり、
特に他チェーンは本表ほどの差がないケースもある。但し、傾向としては、加工食品は外資
がやや安く、生鮮食品は一部の地場系が相当程度安いといった違いが見られる。
(資料)店舗見学をもとに三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
10
② 各チェーンのハード面・ソフト面・顧客層等の特徴
◇ ボリュームゾーンでの外資と一部地場の競合が今後強まる可能性あり
¾ 各チェーンのハード面・ソフト面の特徴を詳細に見ても、「日系(Gr1)」
と「他の外資・地場(Gr2)」とでは違いが大きい(図表 20)。
¾ 一方、「Gr2」に属するチェーンの違いに目を向けると、ハード面・ソフト
面の違いは「Gr1」と「Gr2」ほどの違いはない。但し、
「外資と一部地場(Gr2-1)」
と「その他地場 Gr2-2」とでは顧客の所得層が異なる傾向がある模様。
ハード
《 図表20:主要な総合スーパーのハード面・ソフト面・顧客層の特色 》
日系(Gr1)
他の外資・地場(Gr2)
(Gr2-1)
(Gr2-2)
キーワード
小売(店頭での販売方法を重視) 流通(商品を並べることを重視)
天井パネルあり
天井パネルなし(天井むき出し)
内 装
床・壁ともに明るく、素材も良
床・壁ともに相対的には簡素
メンテナンス
細部まで行き届いている
細部にはこだわりなし
店内の快適性を重視した低い棚 効率性を重視した極めて高い棚
商品棚・照明
照明明るく、間接照明も多用
照度がやや足りないチェーンも
フェース管理が行き届いている 空き棚あり、棚割りの重複あり
商品陳列
色彩感や季節感の演出が効果的
安さ訴求の派手な POP
整然とした売り場が特徴
通路に段ボールの積み上げあり
整理・清掃
クレンリネスの徹底
清掃が不十分で汚れもあり
商品加工
パック済多い、調理提案もあり
加工せず、量り売りが中心
顧 客 層
顧客の期待は異なるが、所得レベルでは大差なし 低所得層多い
ソフト
(資料)店舗見学をもとに三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
¾ また、同一グループの中でも「Gr2-1」については、チェーンによってソフト
オペレーション等についての取り組みが異なる点も見られる。
¾ 具体的には、従来、カルフール、ウォルマートが業界を牽引してきたものの、
近年、成長している大潤発(台湾系)、永輝超市(地場)はカルフールや
ウォルマートを上回るソフトオペレーション力を発揮しており(図表 21)、
今後、「Gr2-1」内の勢力図が更に変わっていく可能性もあり、注目されよう。
9 なお、他グループ含め、店舗見学情報等の詳細は巻末の付表をご参照。
《 図表21:「Gr2-1」の主要な総合スーパーの特色 》
ソフトオペレーション等の特色
◇ 生鮮食品の鮮度が良い(野菜に霧を吹きかける設備も導入)
大 潤 発
◇ クレンリネスが相応のレベルで達成されている
◇ 野菜の直売等、目玉商品に長蛇の列
◇ 店舗毎の違いは大きいが、通路に段ボールや掃除用具の放置が多い
◇ クレンリネスのレベルが十分とは言えない
カルフール
◇ ゴンドラの上の段ボールの積み上げ方が雑な店舗もあり
◇ オペレーションは全般的に標準レベルだが、細かい配慮はない
ウォルマート
◇ ゴンドラの上の段ボールの積み上げ方がやや雑な店舗もあり
◇ 清掃担当の人を多く見かけ、清潔感は相応にあり
永輝超市
◇ 生鮮食品の集客力が特に高く、生卵等の販売には行列も見られる
◇ ゴンドラの高さが比較的低い店舗もあり、快適性にも配慮あり
(資料)店舗見学をもとに三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
11
(3) 大手総合スーパーの収益力比較
◇ コンセプトの違いを背景に損益構造は異なるものの、足元の収益力は大差ない
¾ 「中国の総合スーパー事業」についてのみの損益情報の開示は少ないため、
中国における総合スーパー各チェーンの事業収益力を厳密に比較することは
困難であるが、推定も交えながら収益力の比較を行うと下表の通り(図表 22)。
¾ 「①営業利益率」に目を向けると、「他の外資・地場(Gr2(ほぼ G2-1 に相当、
以下本節では略))」はリベート等の各種費用を要求することが多いことも
あり、「日系(Gr1)」を 1.1 ポイント上回っている状況。
¾ 一方、「②売場効率(売上高/売場面積)」については、「Gr1」が「Gr2」
を上回っている。一般に売場面積が広いほど「売場効率」は低くなる傾向が
あることに鑑みると、「Gr1」の販売力は相応に高いとも言えよう。
¾ しかしながら、「Gr1」は付加価値を高めるため、販売にコストをかけるこ
とから、「③営業利益/売場面積」段階では「Gr2」と同等レベルの水準であり、
外資との比較に限れば、「Gr1」は若干低い水準となっている。
¾ 但し、実質的には、図表 22 は足元、業績を伸ばしている大潤発との比較であり、
カルフール、ウォルマート、テスコ等を含む外資系全体の売場効率 (※ 1) は
営業利益を把握可能な大潤発等の売場効率(※2)を若干下回っていることから、
「Gr1」と「Gr2 の外資系全体」の収益力は同等レベルとも推察される。
¾ 総じて、「Gr1」「Gr2」ともに、コンセプトの違いはあるものの、足元では、
両者ともに相応の収益を上げていると言えよう。
《 図表22:中国における総合スーパーの損益構造比較(2010 年度・2011 年度平均) 》
日系(Gr1)
他の外資・地場(Gr2(≒Gr2-1))
外資
地場
2.3
3.4
3.7
2.6
① 営業利益率( %)
②売上高/売場面積(元/㎡)
11,131
20,493
14,045
15,885 (※2)
20,493
12,000
8,873
営業利益不明企業も含む
14,258(※1 )
③営業利益/売場面積(元/㎡)
467
471
586
290
平均売場面積(元/㎡)
17,371
12,484
17,691
8,519
(注)1.中国の総合スーパー事業の売上高・営業利益・売場面積が判明した企業、または、売上高・営業
利益・売場面積について、相当程度の妥当性を持って推定可能な企業の数値から算出。
2.対象は「日系」がイトーヨーカ堂、イオン、「他の外資・地場」がサンアートリテール(大潤発、
オーシャンの親会社)、ロータス、聯華超市、永輝超市。また、「営業利益不明企業も含む」に
は、「他の外資・地場」として、カルフール、ウォルマート、テスコ、華潤万家も含む。
(資料)各種情報をもとに一部推定の上、三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
12
(4) 中国と日本における総合スーパー事業の損益構造の違い
◇ 低コストを背景に中国での営業利益率は高いが、販売力を高める取り組みも必要
¾ 中国の総合スーパーの「①粗利益率(営業総利益率)」は日本の総合スーパー
の粗利益率に比して、10.7 ポイント低い(図表 23)。中国では、在庫リスク
を伴う買取仕入の比率が低い他、生鮮食品の加工(カット、パック等)度合い
が低い等の要因によるものと考えられる。
¾ 一方、中国の総合スーパーの「②営業利益率」については、日本よりも 2.3
ポイント高い。販売管理費の詳細が不明であるため、数字での検証は難しい
ものの、中国では人件費や賃料等が相当程度低いことが寄与している模様。
¾ また、日系総合スーパーの中国事業の営業利益率と日本の総合スーパーの
営業利益率を比較しても、中国事業の営業利益率の方が 1.0 ポイント高い。
即ち、中国での総合スーパー事業は高い収益を上げ得るビジネスと言えよう。
¾ 加えて、「③損益分岐点比率」についても、中国の総合スーパーは日本の
総合スーパーよりも 14.2 ポイント低く、減収抵抗力が強いことが窺える。
¾ しかしながら、中国の総合スーパーの「④売場効率(売上高/売場面積)」
は日本の 1/3 以下に過ぎず、「⑤営業利益/売場面積」についても日本を
下回っており、中国が全ての面で魅力的なマーケットとは言い難い。
¾ 売場効率の格差は消費者の購買力の違いや店舗当たりの売場面積の違い(大
規模店舗ほど売場効率は低くなる)にも起因するものであり、中国の消費者
の購買力が向上するに連れて、格差は徐々に縮小へ向かう見込み。
¾ 但し、中国の総合スーパー事業の収益力を能動的に更に高めていくためには、
損益分岐点比率の上昇を抑えつつ、売場効率を上げるための取り組み(付加
価値強化等)が重要になると考えられる。
《 図表23:中国と日本の総合スーパーの損益構造比較(2010 年度・2011 年度平均) 》
中国総合スーパー 日本総合スーパー 中国−日本
中国
日系
売上比
売上比 中国/日本
86,848 100.0% 374,508 100.0%
100.0%
売上高(百万元)
17,052 19.6% 113,646 30.3% ▲10.7pt
0.0% 売
①粗利益
上
13,891 16.0% 108,761 29.0% ▲13.0pt
販売管理費
比
3,161
3.6%
4,885
1.3%
2.3pt
2.3%
②営業利益
81.5
95.7
n/a
▲14.2pt
③損益分岐点比率(%)
14,916
46,748
0.32倍
20,493 面
④売上高/売場面積(元/㎡)
積
2,923
14,179
0.21倍
n/a
粗利益/売場面積
539
605
0.89倍
467 比
⑤営業利益/売場面積
13,377
8,843
17,371
1.51倍
売場面積/店舗数(㎡)
(注)1.中国の総合スーパーは粗利益が判明しているサンアートリテール(大潤発、オーシャンの親
会社)、ロータス、永輝超市が対象。P12 図表 22 とは対象企業が異なるため、数値も異なる。
2.日本の総合スーパーはイオン、イトーヨーカ堂、ユニー、ダイエーが対象。
3.中国日系はイトーヨーカ堂、イオンの中国事業が対象。
4.「中国−日本」「中国/日本」とは中国の総合スーパーの数値から日本の総合スーパーの数値を
減算、または、中国の総合スーパーの数値を日本の総合スーパーの数値で除算したもの。
(資料)各種情報をもとに一部推定の上、三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
13
(5) 外資・地場大手総合スーパーの戦略
◇ 出店強化・新業態導入・調達見直し等の動きが目立つ
¾ 日系を除く外資・地場大手総合スーパー各チェーンの収益力強化に向けた
取り組みの中で、特に多い戦略として「①出店の強化」「②新業態の開発」
「③調達の見直し」の 3 点が挙げられる(図表 24)。
¾ 特に「他の外資・地場(Gr2)」は付加価値を追求する店舗コンセプトでは
ないため、収益力強化の戦略として、付加価値向上による既存店活性化より
も、新規地域・領域進出による数量増を狙った取り組みが目立つ傾向にある。
《 図表24:外資・地場大手総合スーパーの足元の戦略概要(イメージ図) 》
①出店の強化
売上増強(既存売場効率×売場面積増加)
②新業態の開発
売上増強(既存チャネル+新チャネル増加)
③調達の見直し
コスト抑制(既存コスト+流通コスト削減)
(注)二重線の箇所は左側の戦略によって、効果を期待できる項目
(資料)各種情報をもとに三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
① 出店の強化
◇ 沿岸部の 2∼4 級都市の他、内陸部の 2∼4 級都市への進出も目立つ
¾ 今後の戦略として、外資・地場大手総合スーパーの多くは出店強化を掲げて
いる点が特徴。
¾ 地域別・都市別に見れば、競合が既に厳しくなっている沿岸部の 1 級都市(北京・
上海・広州等)への進出は少なく、沿岸部では 2∼4 級都市、あるいは、内陸部
でも 1 級都市(重慶・成都等)よりも、2∼4 級都市への進出が目立つ(図表 25)。
《 図表25:主な外資・地場大手総合スーパーの出店状況・計画 》
大 潤 発
◇
◇
カルフール
ウォルマート
◇
◇
◇
テ ス コ
華潤万家
◇
概 要
遼寧省鞍山、福建省永安、四川省眉山、雲南省昆明、山東省莱蕪、
江西省新余、広西壮族自治区梧州等へ出店
安徽省合肥、山西省太原、内蒙古自治区フフホト、吉林省松原、
貴州省安順などへ出店
今後 5 年間に安徽省で 10∼15 店舗、江蘇省で 6 店舗出店予定
安徽省阜陽、広東省珠海・東莞、福建省厦門、河北省邯鄲、広西壮族
自治区梧州、吉林省長春、江蘇省連運港、甘粛省蘭州等へ出店
北京、浙江省桐郷、雲南省昆明、江蘇省常州・鎮江、福建省厦門・
福州、河北省張家口、広東省江門・広州・深セン・仏山・東莞、
安徽省合肥、天津等へ出店
広東省西部、広西壮族自治区、重慶、湖南省、江西省、新疆ウイグル
自治区、雲南省、貴州省、福建省等への出店を計画
(資料)各種情報をもとに三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
14
② 新業態の導入
◇ 新しい業態の導入により、売上増強を図る動きも見られる
¾ 外資・地場大手総合スーパーの中には、新業態の導入により、販売チャネル
を増やして、売上増強を図るチェーンも見られる(図表 26)。
《 図表26:主な外資・地場大手総合スーパーの新業態導入状況・計画 》
ウォルマート
◇
◇
テ ス コ
華潤万家
聯華超市
◇
◇
◇
概 要
会員制店舗サムズクラブを上海、福建省、広東省等で展開しており、
今後、武漢等でも出店を行っていく予定
新業態「Tesco 天地」(通常よりも若干ハイグレードな商品を扱う
店舗)を瀋陽に開業
小型店舗「Tesco Express」の出店も継続的に実施
非日常的な高級スーパー「Ole’」(ほぼ全て輸入品の食品スーパー)
の出店を強化している他、ドラッグストアも展開
ドラッグストア、高級コンビニエンスストア、インターネット販売、
小型ショッピングセンター等の新規事業に取り組む方針
(資料)各種情報をもとに三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
③ 調達の見直し
◇ 農産地からの直接調達拡充、物流センター強化の動きが活発
¾ コスト抑制の観点に目を向けると、近年、中間流通コストの削減等を企図して、
生鮮食品を農家・農地から直接調達(中国語「農超対接」)する動きが活発
化している(図表 27)。
9 なお、農産地からの直接調達は食の安全性をアピールすることにも繋がり、
既存店の活性化に資する可能性もある。
¾ また、物流コストの低減を目的に、物流センターを設置・強化する取り組み
も継続的に行われている。
《 図表27:主な外資・地場大手総合スーパーの調達見直し状況 》
カルフール
ウォルマート
テ ス コ
聯華超市
概 要
◇ 新疆ウイグル自治区と農作物に関する戦略提携を締結
◇ 前海湾保税港区に物流センターを設置
◇ 農産地から直接調達したじゃがいも等の生鮮食品の販売を開始
◇ 大連に海産物を買い付けるための拠点を設置
◇ 2007 年より「農超対接」を実施しており、現在 123 の提携農産地
から 1400 品目を直接調達
◇ 厦門に自社農場を開設(上海に次いで 2 番目)
◇ 上海にて「農超対接」の動きを強化(直接調達農場 5 箇所増加)
◇ 上海嘉定に 8 億元を投じて、商品調達・保管・加工等の関連サービス
機能を持つ物流センターを建設、面積は 20 万㎡
(資料)各種情報をもとに三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
15
4. 今後の展望
(1) 中国総合スーパー業界全体の今後の見通し
◇ 業界全体の成長は続く見通しだが、各チェーンの更なる成長には打ち手も必要
¾ 中国では消費者の購買力向上の余地が大きいことから、一時的に伸び悩む可能
性はあるものの、中長期的に見れば、小売市場は拡大する見込み(図表 28、①)。
¾ また、現状、各種専門店チェーンが台頭するほどには、中国の消費は多様化
しておらず、総合スーパーは中国小売市場の中で、日常的な買い物の場と
して、業態を確立している(②)。即ち、中国総合スーパー業界の成長は
当面続くと考えられよう。
¾ 加えて、消費全体が伸びる中、所得水準の違いによる消費支出金額の格差は
拡大傾向にあり(③)、多様な業態及び同一業態内でも異なるコンセプトの
チェーンが同時に成長し得る状況となっている。
¾ 従って、全体として見れば、中国総合スーパー業界は日本よりも高い収益力
(営業利益率)を維持しながら、成長していくであろう。
︻マ クロ 環境︼
①小 売 市 場 の拡 大
《 図表28:中国総合スーパー業界の今後の見通し(イメージ図) 》
【総合スーパーの位置付け】
【総合スーパーの今後 1】
②日常的な買い物の場として定着
業界全体の成長続く
【個人消費環境の変化】
【総合スーパーの今後 2】
③消費支出の個人格差拡大
異なるコンセプトが共存
(資料)三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
¾ しかしながら、一部企業のオペレーション能力向上や沿岸部での競合の高まり、
リベートの規制強化を受け、今後、「他の外資・地場(Gr2)」内、中でも「外資
と一部地場(Gr2-1)」内の競争環境は厳しくなるとみられる(図表 29、④)。
¾ 一方、「日系(Gr1)」については、「Gr2」と店舗コンセプトが異なるため、
競争環境激化の影響は少なく、寧ろ、中国の消費者の持続的な購買力向上に
より、付加価値を重視する顧客の増加を期待できる。
¾ 但し、「Gr2」に比べて、高いとは言えない「営業利益率」や「営業利益/
売場面積」の更なる向上等は「Gr1」にとって今後の課題と言えよう(⑤)。
《 図表29:中国総合スーパーにとっての課題(イメージ図) 》
【必要となる打ち手】
■ 更なる新規出店
(Gr2 により必要)
■ 更なるオペレーション力強化
(Gr1 により必要)
一部の競争力向上
Gr2
沿岸部の競合激化
④
リベート規制強化
Gr1
収益力向上が課題
⑤
(資料)三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
16
(2) 更なる新規出店
① 新規出店の必要性と期待できる効果
◇ 売上増加に直結する戦略として、新規出店は必要不可欠
¾ 総合スーパー各社が更なる成長を遂げるためには、売上増強が欠かせず、
売上増加に直結する新規出店は総合スーパーにとって必要な戦略の一つ。
¾ 特に「他の外資・地場(Gr2)」は付加価値を重視した店舗ではないため、既存
店の活性化よりも新規出店の方が売上増強には確実性の高いオプションであり、
また、ターゲットとなる顧客の幅が広いため、「日系(Gr1)」よりも出店場所
の選択肢が多く、出店を行い易いと言える。
¾ 加えて、新規出店はバイイングパワーの強化、ひいては値入率改善にも繋が
ることから、出店コスト(賃借料・減価償却費等)の増加を相応に抑制する
ことができれば、
利益率の観点でも収益力強化に資すると考えられる
(図表 30)
。
《 図表30:新規出店による損益計算書への効果(イメージ図) 》
主要損益項目
売 上 高
売上原価
粗 利 益
販売管理費
賃 借 料
減価償却費
人 件 費
水道光熱費
そ の 他
営業利益
主な効果
売場面積の増加(新規出店)は売上増加に直結。
バイイングパワーが高まれば、ボリュームディスカウントを引き
出すことが可能となり、値入率の改善を期待可能。
新規出店による売上増加見込み額に見合った賃料・減価償却費に
抑えられることができれば、収益増強への貢献大。
合計販売数量の増加を主因に、営業利益の増加を期待可能。
(資料)三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
¾ なお、進出国を問わず、小売チェーンにとって当然の戦略であるが、出店に
際しては「効率的な物流網の構築」「短期間での知名度向上」を図るため、
全国に展開する場合であっても、各都市における「ドミナント戦略」を重視
した出店が求められる(図表 31)。
¾ また、実際の出店に際しては、出店コストの見極めが重要となる他、ミクロ
の立地(商圏半径 3 ㎞ほど)で見た他の総合スーパーとの競合状況、ショッ
ピングセンターや食品スーパーとの競合状況等のきめ細かな確認も必要。
《 図表31:新規出店の際に留意すべきポイント(イメージ図) 》
効率的な物流網の構築に不可欠
ドミナント戦略が必要
出店計画中の個別店舗の
状況確認が必要
短期間での知名度向上に不可欠
出店コストの見極めが不可欠
他業態を含めた他店舗との競合確認が不可欠
(資料)三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
17
② レバレッジが効く地域への出店
◇ 「Gr2」を中心に内陸部への出店が続くと考えられる
¾ 中国においても、一部の地域では既に総合スーパーが多数出店している現状
に鑑み、今後の出店地域の検討に際しては、「マーケット肥沃度」「店舗間
競合度」「マーケット成長度」の視点が重要(図表 32)。
¾ 当部の試算では、北京や上海等の沿岸部は特に「市場魅力度(肥沃度×競合度)」
で足元劣っており、内陸部の方が出店地域に適していると考えられる。
¾ 即ち、足元の「他の外資・地場(Gr2)」による出店戦略は方向性として妥当で
あり、当面、「Gr2」内での競合に勝つため、内陸部への出店が続く見通し。
︻
《 図表32:省級行政区別に見た出店魅力度の概要 》
80
肥
沃 70
度
60
×
競 50
合
度 40
陝西省
レバレッジが効く出店地域
広西壮族自治区
︼︵
河南省
湖北省
湖南省
30
山東省
百
20
万
元 10
/
店 0
︶
北京市
浙江省
8%
広東省
福建省
天津市
重慶市
上海市 江蘇省
四川省
寧夏回族自治区
海南省
吉林省
遼寧省
安徽省
10%
12%
14%
【成長度】(2006年∼2011年の年間消費支出金額の年平均伸び率)
(注)1.縦軸は「年間消費支出金額/人」×「店舗支持人口」にて作成。データは P4 図表 8、P9 図表
18 と同様。
2.横軸のデータは P4 の図表 9 と同様。
3.「年間消費支出金額/人」下位 10 位内の省級行政区、該当店舗数が 1 桁の省級行政区は除外。
(資料)CEIC、各社ホームページ、各社資料をもとに三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
¾ 一方、「日系(Gr1)」は「Gr2」との競合の影響が比較的小さいことから、
店舗支持人口の少なさ(競合度)を過度に意識する必要がない他、良質な
商品を求める人が相対的に多い沿岸部での出店も選択肢の一つ。
¾ 但し、中国において日本並みの高い売場効率を実現することは困難であり、
店舗賃料の抑制は不可欠。即ち、店舗賃料が特に高い上海等での出店には、
慎重な対応が求められる(図表 33)。
《 図表33:都市別に見た商業施設の賃料比較 》
(月額 元/㎡)
2,000
1,000
0
上海
杭州
広州
北京 深セン 南京
大連
青島
武漢
瀋陽
西安
成都
天津
(注)各都市における各商業地区の平均値より作成(賃料にレンジがある場合は中間値を採用)。
(資料)DTZ の各都市についての資料(2012 年 Q1)をもとに三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
18
(3) 更なるオペレーション力強化
① オペレーション力強化の必要性と期待できる効果
◇ 売場効率の改善に資するオペレーション力の強化は欠かせない取り組み
¾ 総合スーパー各社が売上を増やすためには、新規出店のみならず、売場効率
を高める取り組み、
即ち、
オペレーション力強化に向けた施策も重要
(図表 34)
。
¾ また、付加価値を高める取り組みは粗利益率の改善にも資するものであり、
販売管理費の増加を妥当な水準に抑制できれば、収益力強化への貢献は大きい。
《 図表34:オペレーション力強化による損益計算書への効果(イメージ図) 》
主要損益項目
売 上 高
売上原価
粗 利 益
販売管理費
賃 借 料
減価償却費
人 件 費
水道光熱費
そ の 他
営業利益
主な効果
付加価値の向上による売場効率の改善は売上増加に寄与。
トータルの品質が良ければ、値入率が高くても販売可。買取仕入
比率向上、売価変更ロスや廃棄ロス削減も粗利益率向上に直結。
人員数増加・給与水準上昇等を抑制できれば、収益力は向上。
客単価上昇や買上げ点数増加を主因に、営業利益の増加を期待可能。
(資料)三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
¾ 特に「日系(Gr1)」にとっては、品質の良いものを比較的手頃な値段で求める
客層が必要となるため、出店地域の選定には「他の外資・地場(Gr2)」よりも
慎重な判断が求められる。また、付加価値の低下を招きかねないほどの無理な
出店は強みを失う可能性があるため、リスクが高いと考えられる(図表 35)。
¾ 加えて、大量出店については「Gr2」、中でも外資系大手総合スーパーの経
験値が高い分野であり、「Gr1」が出店数・出店地域の両面で「Gr2」と同様
の戦略を採ることは得策と言えない。
¾ 従って、中国経済全体の持続的な成長により、自然体で「Gr1」の顧客層の
裾野は拡がるとみられるものの、選択し得るオプションを踏まえると、
「Gr1」
には、売場効率の向上に繋がるオペレーション力の強化をより積極的に図る
ことが求められる。
《 図表35:「日系(Gr1)」にとってのオペレーション力強化の重要性(イメージ図) 》
良質な商品を求める顧客が
Gr1 にも出店は重要
存在する地域への出店が必要
但し、より重要なことは
無理な出店数増加・出店地域拡大は
付加価値の維持・向上
大量出店勝負なら
Gr2 が一枚上手
付加価値低下を招きかねない
Gr1 にとってはオペレーション力向上が Gr2 以上に求められる
(注)日系のみならず、「Gr1」を志向するチェーンにとっては本図表の考え方が当てはまる。
(資料)三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
19
② 他チェーンとの差異化に繋がる付加価値の向上
◇ 付加価値の提供を徹底することができれば、他チェーンとの差異化が可能
¾ 「日系(Gr1)」にとって、「オペレーション力の更なる強化」とは「日本的
な付加価値の提供を徹底」することであり、「日本的な付加価値提供の徹底」
は「他の外資・地場(Gr2)」との明確な差異化に繋がる。
¾ 具体的には、「①顧客サービスの更なる向上」「②マーチャンダイジングの
更なる充実」「③魅力ある売場作りの更なる深化」「④テナントリーシング力
の更なる強化」「⑤ソフトオペレーションを支える人材教育の更なる拡充」
等の取り組みが求められよう(図表 36)。
¾ 「Gr2」については、「Gr1」と店舗コンセプトが異なるため、多額の追加
コストをかけて、「Gr1」と同レベルまで付加価値を高める必要はない。
¾ しかしながら、「Gr2」の中には、現状のオペレーションの水準が相当程度低い
チェーンもあり、追加コストをかけずに、改善を図ることは可能。特に一部
チェーンについては、整理整頓レベルでの改善が喫緊の課題と考えられる。
《 図表36:他チェーンとの差異化に繋がる付加価値向上に向けた取り組みの一例 》
①顧客サービスの更なる向上
◇顧客に買い物の利便性のみならず、
快適性を与えるサービスの提供
◇顧客に対して、「おもてなしの心」
で接することの従業員への浸透
②マーチャンダイジングの更なる充実
◇POS 活用による自主 MD の高度化、
売価変更ロス・廃棄ロスの削減
◇専門性の高いバイヤー育成による
買取仕入比率の向上
③魅力ある売場作りの更なる深化
◇ビジュアルマーチャンダイジング
も取り入れた魅せる売場の実現
◇販売商品の信頼感を高めることに
繋がるクレンリネスの実践
④テナントリーシング力の更なる強化
◇顧客を飽きさせないため、定期的
なテナントの見直しを実施
◇テナントミックスを考慮しながら、
進出地域初のテナントを誘致
⑤ソフトオペレーションを支える人材教育の更なる拡充
(資料)三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
¾ なお、「日本的な付加価値の提供」とは「日本での店舗の再現」ではないこと
に留意が必要。「日本的な付加価値の提供」が中国でも高く評価されることは
店舗見学や消費者の声から明らかであるが、同時に中国の消費者に合わせた
品揃え、中国人スタッフの積極的な登用等、
「現地化の徹底」も不可欠(図表 37)。
《 図表37:付加価値を高めた店舗運営を行い際に留意すべきポイント 》
○「日本的な付加価値の提供」
≠
×「日本での店舗の再現」
「日本的な付加価値の提供」と「現地化の徹底(※)」の両立が必要
※「中国の消費者の嗜好に合わせた品揃え」「中国人スタッフの積極的な登用」等
(資料)三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
20
(4) 新たに進出を検討する日系企業への示唆
◇ 数年間の赤字を覚悟しつつも、「付加価値の向上」に徹底的に拘ることが肝要
¾ 中国の小売市場は中長期的にみて、持続的な成長を遂げる可能性が高く、消
費者の購買力も徐々に高まると考えられる。総じて、小売チェーンにとって、
中国は魅力のある市場と言えよう。
¾ 但し、本稿「3(4)(P13)」で見たように、日本の総合スーパーよりも、
中国の総合スーパーの方が「営業利益/売場面積」は小さく、「売場効率」
も低いことから、固定費が嵩むと、利益が出なくなる可能性もあるため、
安易な中国進出は避ける必要がある。
¾ しかしながら、各種報道によれば、日本を含む全イトーヨーカ堂の店舗の中で、
成都の店舗は売上高・利益額で第 1 位を記録するほどの成果をあげている模様。
¾ 即ち、数年間の赤字を覚悟しつつも、本腰を入れた対応を行うことができれば、
大きな収益を期待することも可能であり、中国進出は検討に値しよう。
¾ 実際、中国に進出する際には、①付加価値を重視した既存の「日系(Gr1)」
スタイル、②低価格の商品を効率よく店に並べることを重視した「その他
外資・地場(Gr2)」スタイル、の選択肢が考えられる(図表 38)。
¾ 「Gr2」スタイルの場合、①沿岸部では出店余地が乏しいこと、②大量出店
が必要となるが、海外での大量出店は大手外資に一日の長があること、等は
本稿で既に見てきた通り。新規に進出する日系企業にとっては、「Gr1」
スタイルを地道に築き上げる戦略が確実性の高い望ましいオプションであろう。
¾ 「Gr1」スタイルの店舗展開を行う際、忘れてはならない点は「付加価値の
向上」に徹底的に拘ることである。拘りが中途半端な場合、販売価格が高い
だけの店舗となり、「Gr2」との競合に巻き込まれる可能性が高くなる見込み。
《 図表38:実際に中国に進出する場合に留意すべき点 》
【進出スタイルの選択肢】
付加価値重視(「Gr1」スタイル)or 低価格・効率重視(「Gr2」スタイル)
「Gr2」の場合
沿岸部の出店余地小、大量出店は外資大手の得意分野
【採るべき選択肢】
数年間の赤字は覚悟しつつ、「付加価値の向上」に徹底的に拘る「Gr1」となる
(資料)三菱東京 UFJ 銀行企業調査部にて作成
以
(2012.7
上
香港/松浦 知子 +852-2249-3031)
当資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり、何らかの行動を勧誘するものではありません。ご利用に関しては、すべてお客様御
自身でご判断下さいますよう、宜しくお願い申し上げます。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、三菱東京 UFJ
銀行はその正確性を保証するものではありません。内容は予告なしに変更することがありますので、予めご了承下さい。また、当資料は著作物
であり、著作権法により保護されております。全文または一部を転載する場合は出所を明記してください。
5. 中国小売業界の構造
発行:三菱東京 UFJ 銀行 企業調査部(香港)
6/F., AIA Central 1 Connaught Road, Central, Hong Kong
21
付表①∼店舗見学情報(三菱東京 UFJ 銀行作成、一部チェーンは情報量が少なく掲載省略)
ハー ド
店舗構造
店舗内部
ソフ ト
商品陳列
品質管理
クレンリネス
品揃え
顧
客
その他
店舗構造
ハー ド
店舗内部
商品陳列
ソフ ト
品質管理
クレンリネス
品揃え
顧
客
その他
外資:アジア系 A 社
・2 層式のハイパーマーケットタイプ
・1F:生鮮食品、加工食品、日用雑貨、2F:衣料品、家庭用品、
玩具、家電等が典型的なスタイル
・基本的に天井パネルはないが、メンテナンス等は相応に行き届いて
いる(一部に天井パネルを使用している店舗もあり)
・間接照明も有効に使いながら、明るい売場
・ゴンドラの高さは高く、効率を重視した売場なるも圧迫感はなし
・棚割りは概ね適切であり、商品のフェース管理も比較的良好
・野菜に霧を吹きかける設備を導入する等、鮮度維持に配慮あり
・生鮮食品売場の清掃も含めて相応のレベルで達成されている
・取扱商品での際立った特色はなし
・見学店舗については、いずれも入店客数が多く、比較的若い顧客
も見受けられた
・野菜の直売等、目玉商品に長蛇の列
・中所得者∼中高所得者が中心とみられる
・基本的には欧米系 A 社や欧米系 B 社と同じコンセプトの店舗で
あるが、ソフトオペレーションの質は当社の方が全般的に高い
外資:欧米系 A 社
・2 層式のハイパーマーケットタイプ
・1F:生鮮食品、加工食品、日用雑貨、2F:衣料品、家庭用品、
玩具、家電等が典型的なスタイル
・基本的に天井パネルは使用せず、ローコストを重視した店舗
・細部のメンテナンスについての拘りはなし
・間接照明も有効に使いながら、概ね明るい売場
・ゴンドラの高さは高く、効率を重視した売場であり、ゴンドラの上
の段ボールが乱雑に詰め込まれている店舗も散見され、圧迫感あり
・同一商品が異なる棚に陳列されているケースもみられる
・ゴンドラエンドはボリューム陳列で品揃えの豊富さをアピール
・フェース管理は殆どなされていない
・鮮度の悪い野菜のみが並んでいる店舗も散見される
・全般的に清掃が行き届いておらず、改善の余地が大きい
・通路に空いている段ボール、清掃用具、意味不明の商品の入った
カゴやカートが放置されていることが多い
・販売商品のレンジは広い(輸入商品も地場系に比べれば多い)
・衣料品等のプライスゾーンは低め
・全般的に販売商品の価格は安い傾向にある
・上海等の大型店舗の集客力は高いものの、他都市の店舗の中には、
競合他社比、大きく見劣りしている店舗もあり
・低中所得者∼中高所得者まで来店客層は幅広い印象
・店舗により、ソフトオペレーションの差が大きい
・全体的には、ソフトオペレーションの質は同コンセプトの店舗比、
低い傾向にある
22
付表②∼店舗見学情報(三菱東京 UFJ 銀行作成、一部チェーンは情報量が少なく掲載省略)
店舗構造
ハー ド
店舗内部
商品陳列
ソフ ト
品質管理
クレンリネス
品揃え
顧
客
その他
ハー ド
店舗構造
店舗内部
ソフ ト
商品陳列
品質管理
クレンリネス
品揃え
顧
客
その他
外資:欧米系 B 社
・2 層式のハイパーマーケットタイプ
・1F:生鮮食品、加工食品、日用雑貨、2F:衣料品、家庭用品、
玩具、家電等が典型的なスタイル
・基本的に天井パネルは使用せず、ローコストを重視した店舗
・メンテナンスについては標準的な水準
・間接照明も有効に使いながら、概ね明るい売場
・ゴンドラの高さは高く、効率を重視した売場であり、ゴンドラの上
にも段ボールがうず高く積まれている(一部積み方が雑な店舗も)
・ゴンドラエンドはボリューム陳列で品揃えの豊富さをアピール
・フェース管理はあまりなされていない
・生鮮食品の鮮度については、標準的なレベル
・清掃面で改善の余地はあるものの、概ね標準的なレベル
・通路での無意味な段ボールの積み上げ、カゴの放置等も見られる
・販売商品のレンジは広く、輸入商品も地場系に比べれば多い
・家電の取扱いが比較的多い
・今回の定点価格チェックでは安くはない結果となったが、全般的
に価格が高いという印象はない
・集客力は概ね標準レベル
・中所得者∼中高所得者が中心とみられる
・同コンセプトの店舗と比べると、全般的にソフトオペレーション
の質は標準的だが、細かな配慮はない
外資:欧米系 C 社
・2 層式のハイパーマーケットタイプ
・1F:生鮮食品、加工食品、日用雑貨、2F:衣料品、家庭用品、
玩具、家電等が典型的なスタイル
・基本的に天井パネルは使用せず、ローコストを重視した店舗
・メンテナンスについては比較的良好な水準
・間接照明も有効に使いながら、明るい売場
・ゴンドラの高さは高く、効率を重視した売場
・ゴンドラエンドはボリューム陳列で品揃えの豊富さをアピール
・フェース管理は概ね問題なく、比較的良好な水準
・生鮮食品の鮮度については、標準的なレベル
・清掃面で改善の余地はあるものの、特段の問題は感じない
・販売商品のレンジは広い(輸入商品も地場系に比べれば多い)
・競合他社比、PB 商品の販売が目立つ
・集客力は概ね標準レベル
・中所得者∼中高所得者が中心とみられる
・同コンセプトの店舗と比べると、全般的にソフトオペレーション
の質は標準よりもやや高い
23
付表③∼店舗見学情報(三菱東京 UFJ 銀行作成、一部チェーンは情報量が少なく掲載省略)
ハー ド
ソフ ト
外資:欧米系 D 社(売上ランキングでは低いため本文中では触れていない)
・2 層式のハイパーマーケットタイプ
店舗構造
・1F:生鮮食品、加工食品、日用雑貨、2F:衣料品、家庭用品、
玩具、家電等が典型的なスタイル
・基本的に天井パネルはないが、メンテナンス等は行き届いている
・間接照明も有効に使いながら、明るい売場
店舗内部
・ゴンドラの高さは高く、効率を重視した売場なるもゴンドラ上に
段ボールはあまりなく、圧迫感は感じない
商品陳列
・棚割りは概ね適切であり、商品のフェース管理も比較的良好
品質管理
・野菜に霧を吹きかける設備を導入する等、鮮度維持に配慮あり
クレンリネス ・生鮮食品売場の清掃も含めて相応のレベルで達成されている
品揃え
・取扱商品での際立った特色はなし
・顧客の入店状況は比較的良好
顧 客
・中所得者∼中高所得者が中心とみられる
・基本的には欧米系 A 社や欧米系 B 社と同じコンセプトの店舗で
あるが、ソフトオペレーションの質はオーシャンの方が高い
その他
・現在、アジア系 A 社と同一グループ下での店舗運営となっており、
全体的にアジア系 A 社の店舗と良く似ている
ハー ド
ソフ ト
外資:欧米系 E 社(売上ランキングでは低位なため本文中では触れていない)
・1 層式の倉庫型店舗(会員制ホールセールクラブ)
・天井高 20m程度の倉庫の中で、生鮮食品、加工食品、日用雑貨、
店舗構造
家庭用品、衣料品、家電等を販売
・大規模な駐車場を完備
・キャッシュ・アンド・キャリーのホールセールが基本コンセプト
のため、売場という概念はない
店舗内部
・店舗内は薄暗い(但し、メンテナンスはされている)
・ゴンドラの高さは 15m以上、フォークリフトで商品を出し入れ
・商品を陳列する概念はないが、買い物を行う上での支障はなく、
商品陳列
また、不快感も感じない
品質管理
・生鮮食品の鮮度については、標準的なレベル
クレンリネス ・清掃感は十分にあり、ゴミ等の放置は見当たらない
・大ロット販売が基本
品揃え
・輸入商品の品揃えが競合他社比圧倒的に多い
・集客力は比較的高い
顧 客
・中高所得者が中心とみられ、外国人客も多い
・顧客数や顧客のまとめ買い需要に対して、レジ数が不足しており、
その他
レジ前には長蛇の列
24
付表④∼店舗見学情報(三菱東京 UFJ 銀行作成、一部チェーンは情報量が少なく掲載省略)
店舗構造
ハー ド
店舗内部
商品陳列
ソフ ト
品質管理
クレンリネス
品揃え
顧
客
その他
ハー ド
店舗構造
店舗内部
商品陳列
ソフ ト
品質管理
クレンリネス
品揃え
顧
客
その他
地場:A 社
・2∼3 層式の日本の従来型 GMS に近い店舗
・1F:生鮮食品、加工食品、2F:日用雑貨、家庭用品、3F:家電、
衣料品等のイメージ
・食品売場等では基本的に天井パネルは使用されていないが、衣料
品売場等では天井パネルの使用もあり
・メンテナンスについては、店舗毎の差が大きい
・間接照明も比較的有効に使われている
・店舗の広さ、店舗の作り共に店舗による違いが大きい
・ゴンドラエンド陳列や通路内の島陳列等といった外資系のような
チェーンオペレーションの典型的なスタイルはあまり見られない
ものの、市場の延長のような活気ある売場となっている
・フェース管理等への細かな配慮はない
・生鮮食品の鮮度については、標準よりも高いレベル(鮮度管理と
いうよりも、販売している生鮮食品の鮮度そのものが良い)
・清掃面で改善の余地はあるものの、概ね標準的なレベル
・食品の品揃えは比較的豊富、決して安くはないが、比較的質の良
い商品を販売している
・生鮮食品の集客力は標準以上
・中所得者が中心とみられる
・全般的にチェーンとしての統一感、洗練度等は乏しいものの、地元
に密着した売場となっており、顧客の支持は相応に得ている模様
地場 B 社
・2∼3 層式の店舗(フロアの形状は一様でなく、複雑な形)
・総合スーパーとしてはやや狭い(売場面積 8,000∼10,000 ㎡程度)
・基本的に天井パネルは使用されていない
・間接照明は殆どなく、照明も全体的にやや暗い
・店舗の広さ、店舗の作り共に店舗による違いが大きい
・ゴンドラエンド陳列等チェーン店特有のスタイルはあまりなし
・フェース管理等への配慮はないが、大きな乱れはなし
・特に鮮度管理に気を配っているようには感じられない
・野菜の鮮度は今一つ
・汚くはないが、清掃が徹底しているという訳でもない
・総合スーパーとしての品揃えはなされているものの、食品が中心
・衣料品は実用衣料を中心であり、アイテム数も限定的
・入店客数は少ない
・低中所得者が中心とみられる
・全般的にチェーンとしての統一感、洗練度等は乏しいものの、地元
に密着した売場となっており、顧客の支持は相応に得ている模様
25
付表⑤∼店舗見学情報(三菱東京 UFJ 銀行作成、一部チェーンは情報量が少なく掲載省略)
店舗構造
ハー ド
店舗内部
商品陳列
ソフ ト
品質管理
クレンリネス
品揃え
顧
客
その他
ハー ド
店舗構造
店舗内部
ソフ ト
商品陳列
品質管理
クレンリネス
品揃え
顧
客
その他
地場 D 社
・1 層式、2 層式ともにあるが、基本的にはハイパーマーケット式の
店舗に近い構造となっている
・1F:生鮮食品、加工食品、日用雑貨、2F:衣料品、家庭用品、
玩具、家電等が典型的なスタイル
・基本的に天井パネルはないが、天井パネルがない部分の配管や天
井を黒く塗り、落ち着いたトーンを出す等の工夫も見られる(一部
の店舗では衣料品売場の天井パネルを入れている)
・間接照明も有効に使いながら、明るい売場
・ゴンドラの高さを低くしており、店内の見通し、顧客の快適性に
配慮した店舗も見られる(ゴンドラの高さが高い店舗もあるが、
全般的に圧迫感はあまり感じられない)
・棚割りは概ね適切であり、商品のフェース管理も比較的良好
・ゴンドラエンドのボリューム陳列、立体陳列、彩色に配慮した陳列
等もなされている
・生鮮食品の鮮度については、標準よりも高いレベル(鮮度管理と
いうよりも、販売している生鮮食品の鮮度そのものが良い)
・清掃員の数が他チェーン比多く、清潔感も特に問題ない(日系を
除くとレベルは高い方)
・食品の品揃えが豊富、衣料品の品揃えも多い
・外資系総合スーパーに比べれば、輸入商品の品揃えが少ない
・野菜・卵・肉類の販売コーナーには長蛇の列、食品への顧客の支
持はかなり高いと思われる
・中所得者が中心とみられる
・店員数が他チェーン比多い(態度は普通だが、有効活用の余地大)
・概ね欧米系 A 社や欧米系 B 社と同じコンセプトの店舗であるが、
ソフトオペレーションの質は永輝超市の方がやや高い
地場 E 社
・2 層式の店舗が多い
・総合スーパーとしてはやや狭い(売場面積 8,000∼10,000 ㎡程度)
・基本的に天井パネルはなく、メンテナンスは殆どなされていない
・間接照明はなく、店舗内は暗い
・ボリューム陳列、立体陳列等は殆どなされていない
・フェース管理等への細かな配慮は全くない
・衛生面で問題があるレベル、生鮮食品の鮮度も悪い
・清掃はあまりなされておらず、清潔感はない
・輸入商品は殆どなく、ほぼ国産のみの品揃え
・衣料品の他、食品の品揃えも十分とは言えない
・見学店舗については、来店客が殆どいない状況
・低所得者が中心とみられる
・全般的にオペレーションのレベルは低く、入店客数の少なさから
判断すると顧客の支持も十分に得られていないと思われる
26
付表⑥∼店舗見学情報(三菱東京 UFJ 銀行作成、一部チェーンは情報量が少なく掲載省略)
ハー ド
店舗構造
店舗内部
商品陳列
ソフ ト
品質管理
クレンリネス
品揃え
顧
客
その他
ハー ド
店舗構造
店舗内部
商品陳列
ソフ ト
品質管理
クレンリネス
品揃え
顧
客
その他
地場 F 社
・2 層式のハイパーマーケットタイプ
・1F:生鮮食品、加工食品、日用雑貨、2F:衣料品、家庭用品、
玩具、家電等が典型的なスタイル
・基本的に天井パネルは使用されていない
・間接照明はあるものの、使用されていない
・暗さを強く感じるほどではないものの、明るくもない
・ゴンドラエンドでのボリューム陳列、立体陳列等もなされている
・フェース管理は概ね問題なく、全般的に整理整頓は行われている
印象を受ける
・生鮮食品の鮮度は概ね良好(店舗内で鮮度を維持するための工夫
が特になされている訳ではない)
・比較的高い水準(日系よりはレベルは低いものの、他の外資大手
よりも良好)
・他チェーン比、目立った特色はなし
・入店客数は多い(近隣の外資大手よりも相当程度多い)
・低中所得者∼中所得者が中心とみられる
・若年層やファミリー層の入店者も多い
・洗練度等は高くないものの、地元に密着した売場となっており、
顧客の支持は相応に得ている模様
地場 G 社
・2∼3 層式の店舗(ハイパーマーケットタイプではない)
・1 フロアの面積は大きくない
・基本的に天井パネルは使用されていない
・間接照明もあり、全体的な明るさは標準レベル
・ゴンドラエンドでのボリューム陳列、立体陳列等もなされている
・フェース管理は概ね良好
・市場の雰囲気が色濃く出ており、鮮度は良好(店舗内で鮮度を維
持するための工夫が特になされている訳ではない)
・清掃の状況は概ね良好であり、大きな問題はない
・総合スーパーとして、一通りの品揃えを行っている
・家電等の取扱い品目も多い
・食品売場の客数は多いが、衣料品売場、家電売場の客数は少ない
・高齢者の割合が高い
・低中所得者が中心とみられる
・洗練度等は高くないものの、地元に密着した売場となっており、
顧客の支持は相応に得ている模様
27
付表⑦∼店舗見学情報(三菱東京 UFJ 銀行作成、一部チェーンは情報量が少なく掲載省略)
ハー ド
店舗構造
店舗内部
商品陳列
ソフ ト
品質管理
クレンリネス
品揃え
顧
客
その他
日系 A 社
・5∼6 層式の日本の従来型 GMS
・B1F:生鮮食品、加工食品、1F:化粧品、靴、鞄、2F:婦人服、
3F:婦人服、4F:紳士服、子供服、玩具、5F:家庭用品、家電等
が典型的なスタイル
・全て天井パネルあり
・間接照明も有効に使いながら、極めて明るい店舗
・ゴンドラの高さが低いため、店内の見通しが極めて良く、顧客は
快適に買い物を行うことが可能
・ゴンドラエンドのボリューム陳列、立体陳列、色彩に配慮した陳列
等が高いレベルで実現されている
・フェース管理も高いレベルで実現
・温度管理も含めて高いレベルで実施されている
・極めて高い水準(照明が床に映り込むレベル)
・パック済の商品が多いものの、肉類等では量り売りもあり
・輸入商品を始め、他店では入手できないものの販売もあり
・加工食品のアイテム数は絞り込まれている
・入店客数は相当程度多く、地元に密着しながら高い支持を獲得
・中所得者∼中高所得者が中心とみられる
・調理の実演コーナーがあり、食材提案もなされている
・プライスレンジはやや高めだが、日常で使用する品質の良いもの
を比較的手頃な値段で提供するコンセプトを具現化
日系 B 社
ハー ド
店舗構造
店舗内部
商品陳列
ソフ ト
品質管理
クレンリネス
品揃え
顧
客
その他
・1∼2 層式の店舗
・1 フロアの面積が広く、1∼2 層の中で生鮮食品、加工食品、家庭
用品、衣料品、玩具等を販売
・全て天井パネルあり
・間接照明も有効に使いながら、極めて明るい店舗
・大半の店舗はゴンドラの高さが低いため、店内の見通しが極めて
良く、顧客は快適に買い物を行うことが可能
・ゴンドラエンドのボリューム陳列、立体陳列、色彩に配慮した陳列
等が高いレベルで実現されている
・フェース管理も高いレベルで実現
・温度管理も含めて高いレベルで実施されている
・極めて高い水準(照明が床に映り込むレベル)
・パック済の商品が多いものの、肉類等では量り売りもあり
・輸入商品を始め、他店では入手できないものの販売もあり
・家電の取扱い品目は一部の生活家電に限られる
・PB 商品が多数投入され始めている
・入店客数は相当程度多く、地元に密着しながら高い支持を獲得
・中所得者∼中高所得者が中心とみられる
・プライスレンジはやや高めだが、日常で使用する品質の良いもの
を比較的手頃な値段で提供するコンセプトを具現化
以
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上