脳損傷による視野障害者のリハビリテーションと視覚認知について 鹿児島

脳損傷による視野障害者のリハビリテーションと視覚認知について
鹿児島大学医歯学総合研究科リハビリテーション医学
緒方敦子、衛藤誠二、川平和美
key words:視野障害、リハビリテーション、視覚認知
はじめに:脳卒中患者の 20 から 50%に視覚障害が生じるとされ、視野欠損
は日常生活に影響を与えている。視野欠損に対するリハビリテーション(以下
リハ)は、日本では積極的に行われているとは言えないが、視野欠損のリハと
しては、盲視野と正常視野の境界に光刺激を呈示して視野そのものを回復しよ
うという方法と、衝動性眼球運動を拡大させて代償する、探索訓練が行われて
いる。我々は、脳卒中後の視野欠損に対して、工学部と共同研究でコンピュー
タ化視野訓練装置による視覚反復刺激を行っている。今回、その効果と、視野
障害のある者の視覚認知について報告する。
目的:視野障害者に対するリハを行い、効果を確認すること、また、視覚認
知について精査することである。
対象:脳損傷により視野障害があり、ADL はほぼ自立している者で、視野障害
のリハを希望して当センター入院、または外来通院した者である。半側空間無
視があると判断された者はそれに対するリハを優先し、視野訓練からは除外し
た。
方法:盲視野と正常視野の境界に光刺激を呈示し、光が見えたらボタンを押
すという方法で、訓練中は眼を動かさないで中心を固視した。視野測定には静
的視野測定の OCTOPUS AU-301 を用い、訓練前、2 週間後、4 週間後、6 ヶ月後に
検査を行い、比較した。
結果:訓練前に比べて、2 週後、4 週後、6 ヶ月後ともに、有意に視野が拡大
した。
視野障害者の視覚認知については、Panel D15 で色覚検査を、視覚認知機能
として、BIT、Trail Making Test、Rey の図模写と 3 分後再生、HDS-R、MMSE、
かなひろいテストを行い、必要に応じて他の検査も追加した。その結果、相貌
失認、視覚失認、大脳性色覚障害、視覚運動失調、道順障害などを合併してい
る者もおり、視野障害以外の明らかな視覚的認知に異常がなくても、全体的に
視覚的記憶が低下していた。視覚的記憶障害は、全体を一度に認知して把握す
ることが困難であるためと考えた。視野障害者では、視野の訓練とともに視覚
以外の視覚認知の精査と、それぞれに対する効果的なリハが大切であると思わ
れる。