ガーナ: 貧困半減のために成長を加速

IDA の取り組み
ガーナ: 貧困半減のために成長を加速
現
在、ガーナは、アフリカでもっとも経済が好調な国家のひとつです。政策や組織の整備、イ
ンフラや基本的サービスへの投資により、1992年には52%であったガーナの貧困率は、
2003年には35%にまで減少しており、2015年までに貧困を半減させるというミレニアム開発
目標を達成し、それ以上の成果を出せると予測されています。1983年から2000年までの経済成長率
は平均4.5%でしたが、政府の改革プログラムが効を奏して、2004年には5.8%、2005年には6%に上
昇しました。国内の電力普及率は、南アフリカを除くサブサハラ・アフリカにおいて最高です。こうした
点から、2015年までにガーナが中間所得国の地位を達成することは十分に考えられます。
国別指標
1983
2001
2005a.
一人当たりGDP (ドル)
181
270
400
消費者物価指数 (変化率%)
123
21.3
14.8
対外債務(GDPに占める割合%)
--
117
48
52 (1992)
42 (1997)
35 (2003)
--
81 (2002)
92
143 (1985)
100 (2000)
95 (2003)
一人当たりGDP (ドル)
181
270
400
人口 (単位:百億人)
12.5
20.4
21.0
貧困層の対人口比率(%)
初等教育総就学率(%)
5歳未満児死亡率 (1000人あたり)
出典: ガーナ統計局(GSS)、国際通貨基金、世界銀行
a) 推定
国際開発協会(IDA)は世界銀行のグループ機関で、世界で最も貧しい国々に無利子で融資を行って
います。改革路線を維持し、国家財政の透明性を高め、問題点を分析し、電力、教育、保健、水など
の主要セクターに投資を行うというガーナの取組みに、IDAは強力なパートナーとして関わってきまし
た。ガーナが1983年に経済復興プログラムを開始して以来、IDAの拠出額は総額42億ドルに達してい
ます。
IDAとガーナとのパートナーシップは歴代の政権に受け継がれてきました。その間に、いくつかの挫折
も経験し、改革のスピードが落ちたこともありました。IDAによる支援の重要な要素は、貧困削減の重
視、および長期的には、ガーナの開発プログラムに対する国民の理解と支援を確立するための継続
的取組みです。
1
国別成果
が再び揺らぐこととなりました。こうした定期的な後
退にもかかわらず、1983年から2000年までにGDP
相次ぐ改革がガーナ経済を復活させました。
成長率は平均4.5%を達成しました。
崩壊寸前だった1980年代初頭のガーナ
2001年1月、新たな政権が選出されたとき、経済
1957年の独立後、ガーナ経済は混乱の時期を迎
は急速な悪化を続けていました。インフレ率が高
えました。1960-64年には、輸入代替政策がもた
まっており、政府や公共企業体の債務が累積した
らした急速な工業化を受けて、比較的順調な成長
ため、公共サービスや生産的な投資のための重
を遂げることができました。その後、1965年から
要な支出から財源が流用されていました。新政府
1983年までは、不安定なマクロ経済とむらのある
は、国有製油会社や公益事業会社の損失を食い
不確実な成長の時代が続きました。価格と為替相
止めるために、石油小売価格や電気・水道料金を
場の統制、脆弱な行政機関、不安定な政権、一貫
引き上げることで、マクロ経済の安定の回復を図
性を欠いた政策実行が特徴的だったのがこの時
ろうとしました。また、増税、歳出削減に加え、国有
期です。この不確実な基盤に経済ショックが打撃
資産も売却しました。しかし、2002年には、ガーナ
を与え、1980年代の初めには経済が破綻寸前の
の政策実行の遅れと予算超過が避けられないこと
状態となりました。
が明らかになりました。
政府は変革の必要性を認識
転機は2003年に訪れました。この年、ガーナは「第
世銀は、改革を目指すガーナ政府の中枢グルー
一次貧困削減戦略」(GPRSⅠ)を完成させました。
プと密接に連携し、1983年、政府は経済復興プロ
この戦略は、雇用を創出し貧困を削減するための
グラムを開始しました。このプログラムは、政府に
高度成長に重点を置いたものです。GPRSの実行
よる経済統制を緩和し、マクロ経済の安定性を再
はその年の内に始まりました。それまでの政府も、
び確立するために、複数の広範囲にわたる改革を
シビルソサエティなど国内のステークホルダーの
導入するものでした。
参画を図ってはいましたが(例えば、全国経済フォ
ーラム等を通して)、ガーナの今後の選択に関して
1990年代初頭までに、貿易制度は大幅に自由化
広範なディスカッションが行われた結果、この戦略
されました。価格と販売に関する統制は撤廃され、
に対する国民の支持が拡大されました。
為替レートは次第に市場で決定されるようになりま
した。その結果、マクロ経済の不安定さは改善さ
2番目の枠組み文書である「第二次ガーナ成長と
れ、国内のインフレは緩和されました。1984年から
貧困削減戦略」(2006年-2009年)も、このアプロ
1992年までの間、財政状況はおおむね好調でした。
ーチを継続しています。この戦略では、民間セクタ
しかし、選挙年である1992年、1996年、2000年に
ーの競争力、人間開発、ガバナンスと市民の責務
は支出が増大し、ようやく確立された安定した状況
の3つの柱を中心に、国家改革のための政府の戦
2
略的ビジョンを策定したものです。
債務救済が提供されます。2006年に発足した多国
間債務救済イニシアティブ(MDRI)は、ガーナの貧
この改革の効果が経済に現れ、堅調な成長を達
困削減戦略のさらなる推進を支援しています。
成
1980年代半ば以降、ガーナの全体的な貧困の発
2004年、2005年、2006年のGDP成長率は、約6%
生が減少
と、過去10年間の平均を大幅に上回る値です。国
内債務の対GDP比率は、2002年末には23.7%でし
ガーナは、2015年までに貧困率を半減させるとい
たが、2005年末には10.8%に改善されました。
うミレニアム開発目標(MDG)を上回る見通しです。
政府は、規制の改善や時宜を得た監査によって、
貧困層の対人口比率
国家財政の管理を強化しました。予算実行に関す
る報告は、より頻繁になり、その質も向上しました。
財政管理の強化は金利の引き下げを促し、その
結果、政府の支払利息を軽減させ、民間セクター
への融資の可能性と利用しやすさが高まりまし
た。
また、ガーナは企業に対する規制環境を迅速に改
善し、世銀グループが毎年発表する「ビジネス環
境分析」におけるランキングを上昇させました。こう
した改善は、IDAや開発パートナーの支援を受け
た政府と民間セクターの連携した取組みにより可
能となったものです。改革には、通関に必要な時
間の短縮、国際貿易に必要な手続き件数の削減、
納税所要時間の短縮、資産登記の簡易化なども
盛り込まれました。
1997年-2003年の間、貧困の減少は不平等の緩
和にも効果をもたらしました。しかし、州別の成長
ガーナの債務負担は減少しつつあります。2004年
半ばには、重債務貧困国(HIPC)イニシアティブの
パターンや政策を反映して、貧困の減少にはばら
つきが生じました。
完了地点に到達しました。この完了地点に到達す
ると、マクロ経済の安定を維持し、貧困削減戦略を
その効果は、カカオ、金、木材の生産の中心であ
実施し、必要な構造改革を推進する国家に対して、
3
る森林地帯に集中的に現れました。零細農業への
アッパーイースト州)に、より深く広く貧困状態が残
依存度がもっと高いサバンナ地方では、貧困削減
存しました。ガーナの貧困層の約40%の人々は、
は最小限にとどまりました。結果的に、慢性的に
北部のこうした過疎の州で生活しています。
困窮している州(ノーザン州、アッパーウエスト州、
IDAの貢献
1983年以来、IDAは42億ドルの融資と助成金をガーナに提供しました。政策運営では、ガバナンス、公共支出管
理、教育、保健分野における改革の取組みが重視されてきました。投資プロジェクトは、農業、エネルギー、教
育、保健、HIV/エイズ、支線や市街地の道路、民間・金融セクターの開発、水と公衆衛生、コミュニティ中心の開
発など、幅広い分野を対象としてきました。政策改革のために分析作業が行われ、特定セクターにおける財政
支援の論拠を提供しました。
全般的に、ガーナへのIDA支援には次の特性がみられます:(i)政権交代やマクロ経済の不安定な時期を通して
継続されるパートナーシップ、(ii)基本的サービスの利用が困難な貧しく脆弱なグループに対する支援の効率的
なターゲット設定、(iii)大規模な改革において政府に主体性を持たせるオーナーシップの確立
IDAとガーナとのパートナーシップは、著しい成果の
場となりました。世銀は、2003年-2006年に、総額
達成に貢献してきました。
で5億1500万ドルに達する4回の貧困削減支援融
資(PRSC)を供与しました。
継続的な政策改革支援を提供
一方、分析・勧告作業は複数の事業の基礎を築き、
IDAは1983年以来、積極的にガーナと関わってきま
国家財政管理とガバナンス、エネルギー、健康保険、
したが、2001年には重要な一歩を踏み出しました。
電気通信および金融セクターに関する政策に、情報
この年、IDAとIMFが、外部支援による経済改革プロ
を提供しました。
グラムに関する新政府の要請を、承認したのです。
その一例として、エネルギー部門に関する世銀の分
世銀は、緊急支出基金の準備において、パートナー
析作業では石油価格の設定に関する指導を行い、
の中でも特に主導的な役割を果しました。2003年、
その結果、石油価格設定の仕組みと実行は、輸入
11のパートナーの協力により、約3億ドルを一括して
石油のコストを自動的に反映することになりました。
年間支払金として集めたマルチドナー一般財政支
これを受けて、政府による価格設定からの移行が始
援の仕組みが確立されました。このマルチドナーに
まりました。価格表は、新たな独立規制機関である
よる支援は戦略的改革における政策対話の重要な
国家石油局が、世界市場の価格動向、輸入製品の
4
価格、ガーナのテマ精油所の運営状況を検討した
占めている)が共通援助戦略を作成しました。年次
上で決定することになりました。
調和化行動計画は、このアジェンダを日々推進させ
るために活用されている実用的なツールです。
近代的なパートナーシップ枠組みを構築
成果を限定した財源
IDAは開発パートナーと緊密に協力しつつ、測定可
能な成果に限定した援助を約束する国際パートナ
ーと共に、ガーナにおける国家主導型の開発戦略
多数のドナーは、ガーナが以下のコミットメントをど
のように満たすかを見守っています。
z
民間セクターの借り入れ部分を拡大するため
に、より多くの国内債務を償却する。
インフレを抑制し金利を引き下げるため、金融
操作を強化する。
エネルギーおよび天然資源の管理を改革す
る。
初等教育の学費を引き下げ、就学児童を増加
させる。
一部の機能と財源の分散化の促進を含む、新
たな受託枠組み内での予算管理を改善する。
の推進に中心的な役割を果してきました。このアプ
z
ローチの結果、協議グループ会合は、国家予算サイ
z
クルに投入される「成果と財源」に焦点を当てた年
z
次パートナーシップ会議に形を変えました。
z
これが過去の慣行に変化をもたらしました。1980年
こうした取組みは、好ましい結果を生み出してきまし
た:
z 国内債務の対GDP比の低下によって、民間セ
クターに対する国内融資の割合が、47%(2002
年)から60%以上(2006年半ば)へと拡大した。
z 就学児童の割合は、2002-03年度には81%で
あったが、2005-06年度には92%に上昇し
た。
代と1990年代初期には、ガーナの経常支出への
IDAからの外部支援は構造調整融資として供与され
ていたため、財政支援は政策条件付きで提供され
ていました。この財源と条件の順序付けは、当初の
意図と最終的な活動との間に不一致を生じることが
多く、世銀とガーナ政府との間の政策対話に緊張関
ガバナンスの強化
係を生み出していました。
ここ数年の間に、ガーナはIDAやマルチドナーグル
先行すべき作業の達成状況に応じて資金を提供す
ープからの強力な支援を受けて、ガバナンスや国家
る貧困削減支援融資(PRSC)への移行により、IDA
財政管理、調達システムを大幅に強化しました。
は、マルチドナー枠組み内で政府主導の一連の改
また、世銀は、市民との対話や討論を推進し、透明
革の実行に財政支援を提供することが、可能となり
性を高め、分散化を促すことによって、アカウンタビ
ました。
リティの環境作りに貢献し、政府サービスの受益者
をサービスの提供機関に接近させました。
関連分野では、パートナーシップ枠組みと共同作業
へのコミットメントを強化するため、IDAとその他の15
時宜を得た外部監査、議会による監視、政策とサー
の開発パートナー 1 (ガーナへのODAの90%以上を
ビス実施のモニタリングへのシビルソサエティの参
1
二国間パートナー:カナダ、デンマーク、フランス、EU、
ドイツ、イタリア、日本、オランダ、スペイン、スイス、英国、
米国など。多国間パートナー:アフリカ開発銀行、IFAD、
国連、世界銀行など。
5
加によって、予算の実行は改善された。歳出に関す
ました。ボアホール(井戸)と学校用トイレの数も、プ
る情報は、インターネット上で公開されています。
ロジェクトの目標を上回りました。
シビルソサエティへの働きかけ
エネルギー:IDAは、40年間に9件の融資活動を行
い、ガーナの電力セクターを支援してきた。ガーナの
IDAは、2003年から開発に関する一連の対話を推進
独立以来、文字通りすべての主要セクターへの投
してきました。こうした対話では、通常、ガーナ貧困
資に関する資金調達を支援したことになります。
削減戦略に関連のあるテーマを取り上げてきました。
分散化、貧しい人々を政策決定に関与させる戦略、
そのひとつとして、IDAは、アコソンボおよびポンの
汚職との戦い、そして政府、ドナー、シビルソサエテ
ダムと水力発電所の資金調達、トランスミッションシ
ィ間の新たな協力関係などです。合計で20回の「開
ステムの修復、さらにガーナ北部への送電網拡張
発に関する対話」が開催されました。5,000人近い
のため、ボルタ川開発公社(VRA)に支援を提供しま
人々が直接参加し、ラジオで全国の人々に放送され
した。IDAの資金提供により、ガーナ電力公社(ECG)
ました。
は都心部の送電網を改良し、系統だった電化プログ
ラムに沿って小都市の中心部や郡の中心都市、農
ガーナにおけるIDAの影響はあらゆるセクターに及
村部に電力を供給することができました。
んでいます。
顕著な変化
給水、エネルギー、教育、運輸、保健への投資は、
アコソンボとポンの水力発電プロジェクト、北部送電
政府の戦略枠組みに基づいて取組みを進める他の
網拡張プロジェクト、第6次電力プロジェクト、国家
開発パートナーとの綿密な調整の上で、行われてい
電化プロジェクト、火力発電プロジェクトへのIDAの
ます。
参画は、ガーナの電化率を55%に上昇させる上でと
りわけ重要であった。この電化率は、南アを除くアフ
給水:IDAは、特にガーナの最貧地域における安全
リカのサブサハラ地域で最高です。
な水へのアクセス拡大を支援しました。1994年、ガ
ーナは、新たな「コミュニティの水・衛生に関する国
家戦略」を策定しました。この戦略はその後、2つの
IDAプロジェクトの支援を受けました。この戦略の柱
は、給水管理の責任を中央政府からコミュニティに
移すことにありました。最終的に、2,014のコミュニテ
ィのおよそ75万人の人々が新たに整備された、また
は改良された給水設備や衛生設備を利用できるよ
地域レベルでは、IDAは、ガーナによる地域電力プ
ール制度である西アフリカ電力プール(WAPP)の確
立を援助しています。WAPPは、電力コストを削減し
確実性を向上させるものと期待されています。また
IDAは、ナイジェリアからの天然ガスパイプラインの
ための融資保証も支援しています。このパイプライ
ンによって、発電や工業プロセスに大気汚染が少な
うになった-当初の目標を36%も上回る結果となり
6
い天然ガスが提供されると、これもガーナ国民のエ
運輸:IDAは、1990年から2002年の間に運輸セクタ
ネルギーコストを抑制することになります。
ーに5億4770万ドルを融資しました。政策支援と運
営は、ガーナにおける道路網の整備・管理への民間
教育:IDAプログラムおよび他のドナーからの支援は、
セクターの参加拡大を推進し、今では、整備作業の
ガーナ教育戦略計画に基づいた就学児童数の増加
100%が地元企業によって行われています。道路基
を実現しました。ガーナが53の貧しい郡の教育予算
金は、現在、年間1億ドルをこのセクターに融資して
助成金を増額して以来、総就学率(GER)は、2002年
います。1996年の融資額は3,800万ドルでした。道
の70.7%から2004年には80.1%に増加しました。女
路・運輸セクターにおける体制が強化され、道路網
児の就学率も、同時期に65.5%から72%へと改善さ
の整備が改善されました。また、IDAからの支援を受
れました。生徒の英語と算数の得点は、過去10年間
けて、2000年には25,000kmだった道路網が2005年
にすべての所得層で上昇しました。
には60,000km以上に拡張されました。
IDAの貧困削減支援融資(マルチドナー一般財政支
保健:IDAは、ガーナの保健部門の改革を支援する
援に基づいて)は、教育への画期的で包括的なアプ
ため、他の二国間および多国間援助機関と協力し
ローチを導入する政府プログラムに対し、支援を行
て、財政援助や政策指導を行いました。
いました。こうしたアプローチとして、授業料の廃止、
補助金の交付、農村部における教員研修の後援、
1997年以来、IDAの援助は、セクター別アプローチ
教科書配布、郡への予算財源移管などが行われま
の枠組み(SWAPとして知られる改革)に沿って、他
した。
の開発パートナーの援助と共に共通の保健基金に
集計
プールされています。
長年にわたって、IDAは、全国の学校のおよそ3分
の1にあたる8,000の校舎の建設に融資を行いまし
た。
多重プロジェクトがもたらす細分化を避けることによ
また、子供一人ひとりに行き渡るよう英語と算数の
教科書数を増加させるため、3500万冊の教科書の
出版を援助しました。
15年前には、初等教育終了者の3分の2近くは読み
書きができなかったが、2004年には、それが5分の
1に減少しました。
世銀独立評価グループによれば、教育面でのIDA
の長期支援は「就学率および学習成果の向上に著
しい影響」をもたらし、ミレニアム開発目標のひとつ
である初等教育の完全普及に向けたガーナの前進
の「重要な要因」となりました。
って、IDAと開発パートナーは、保険省の再編、総合
的な公衆衛生計画の策定、中央および地方レベル
でのキャパシティ・ビルディングなど、問題の「全体
像」の重視を図りました。
総合的に見たガーナの中期保健戦略は、受診と妊
娠中のサービスの増加に関する目標値を上回りま
した。現在では、妊婦の98%が妊婦巡回検診の対
象となっています。また、ここ2、3年、ガーナでは、
蚊帳の使用および医療従事者が立ち会う出産が増
えています。
7
る介入策を考慮する必要性が、如実に示されてい
しかしながら、乳幼児死亡率と妊産婦死亡率は足踏
る。
み状態が続いている模様であり、ミレニアム開発目
標の重要なターゲットの達成に寄与することができ
今後の課題
ガーナが直面しているおもな課題は、現在の経済成長を加速させること、そして、成長の成果をさらに平等に分
かち合うことです。どちらの目標も、広範囲にわたる民間セクター主導型の雇用創出によってのみ実現可能で
す。
今日までの景気拡大は、官民による多額の投資と、ガーナの主要輸出商品-カカオ、金、木材-の高価格がも
たらす有利な外部環境によって推進されてきました。したがって、投資効率の上昇と国の輸出ベースの拡大は、
実質GDP成長率を維持し加速するために不可欠です。
また、経済成長とマクロ経済の安定の双方によって、この数年間に貧困削減の面では進展がみられたものの、
未だに大規模な格差が存在するため、国の一部に慢性的な貧困が永続化する恐れがあります。たとえば、アク
ラやクマシなどの大都市における貧困率は10%に満たないが、9つの郡(国内の138の郡のうち)では貧困率が
80%を超えています。
さらに、農村部の貧困は減少しつつあるが、都市部の貧困は新たな問題を浮上させています。民間セクターに
おける雇用を生み出さないかぎり、若い世代の国民を労働市場に吸収することは難しく、これが経済成長の足
かせとなって、社会の崩壊の危機にさらされる恐れがあります。
8
成長を加速し若い世代の就業機会を創出する
ために、政府は、複数の差し迫った任務を果す
必要があります。
特にエネルギーと運輸の分野において、インフ
ラサービスの提供と管理を強化すること
で役立つようであれば、今後数年間、より大規
模な外部融資を利用します。
特に以下の4つの分野が、投資拡大から利益を
得ると予測されます。
確実なエネルギー供給の需要への対応
運営と維持に配分する財源を増加し、インフラ事
業への民間セクターの参画を呼び込むことも、
そのひとつと考えられます。同時に、給水、電力、
運輸などのサービスへの貧困層のアクセスを拡
大する方法の開発も、常に優先すべきです。
農村部での新たなビジネスの発展や人間開発
の目標達成を実現するため、エネルギーへのア
クセスには、引き続き支援が必要です。
道路・支線道路網の拡大
ビジネス環境の改善を継続すること
近年の発展にもかかわらず、ガーナは依然とし
て、ビジネス環境の面では175カ国のうちの94位
に甘んじています。輸出入手続きを改善する、
民間信用情報機関制度を確立する、契約履行
および貸方の法的権利を強化する、不動産およ
び新事業の登録に要する時間を短縮し担保設
定を簡易化する等の措置によって、事業投資を
呼びこみ、好調な民間セクターを生み出し、雇用
を創出するガーナの能力は、向上するでしょう。
公共投資への財源配分において、効率性を向
上させること
公共支出に関する提案を検証し、公共支出を査
定し、大規模なインフラプロジェクトには、官民パ
ートナーシップ協定の利用を拡大します。
特に貧しい州において、教育および保健サービ
スの質とそのアクセスを改善すること
その実現のために以下の方策が考えられます:
・貧しい州の職員を増員し、既存の職員の維持
を図ります。
・保健面のニーズ(乳児・5歳未満幼児の高い死
亡率)および貧困の状況(貧困ラインに満たない
住民の割合)に応じて資金を追加提供し、貧しい
州の財政格差を是正します。
・栄養、衛生、乳幼児期の発達のために出資し
ます。
・分散化を促進することによって、地域レベルで
のサービス提供を向上させます。
政府の改革プログラム実施の継続と連結した場
合にGDP成長を促し、ガーナが今後10年間にそ
の目標である中間所得国の地位に到達する上
これは、市場に農産品を運送するコストを削減し、
カカオ以外の農業の発展における障害を緩和し、
貧困削減の進展を維持する上で、不可欠です
(一部の主要産物では、都市部での小売価格の
半分を運送コストが占めています)。
給水と衛生へのアクセス拡大
安全な水と衛生へのアクセスは健康状態に直接
関わっているため、これは、MDG達成の鍵となる
インフラ投資です。
要件
2015年までに国の85%に給水と衛生設備を整
備するというガーナの目標を達成するために
は、毎年、140万人の国民が安全な水を、160万
人が適切な衛生設備を、利用できるようになる
必要があると推定されてまする。
その実現のためには、ガーナでは、毎年、現在
の水準よりも2倍から3倍の規模の資金を調達
し、組織の能力を向上させ、コストが回収できる
水準に料金を設定して公益事業会社の支払能
力問題を解決する必要があります。
水の利用者グループへの移管を含めた灌漑シ
ステムの一新
こうした投資は、農業生産性の向上と農村部の
所得の拡大の基盤となるはずです。
これらの投資から成果を得るためには、ガバナ
ンスと公共セクター管理を強化する分野横断的
な改革を継続するための資金調達が必要となり
ます。とりわけ、分散化を進め公共財政管理をさ
9
らに強化する措置は、きわめて重要です。分散
化は、貧困層への公的サービスの提供を促しま
す。公共財政管理の継続的な強化も、資金が目
標とする対象に届くよう徹底するために不可欠
です。
IDAは、過去の経験を参考にして、効率性を向
上させる措置を講じています。
過去の国別援助戦略とクライアント調査の結果
の評価によれば、IDAは、地域のステークホルダ
ーの声に耳を傾け、財務および技術支援をガー
ナ側の優先順位と一致させ、改革のオーナーシ
ップと持続可能性を保証するために国家システ
ムとアカウンタビリティ制度を強化し、取引費用
を削減するために他の開発パートナーと協力す
ることを徹底させることで、その有効性を向上さ
せることができることが明らかです。
2007年初めに調印される予定のガーナ共通援
助戦略では、政府主導型のセクター別グループ
およびセクター別戦略の枠組み内でIDAやその
他の参加組織が協力することが、誓約される。
取引費用を削減するため、マルチドナーによる
事業支援-一般予算支援、部門別予算支援、
プール基金など-の利用は次第に拡大していま
す。
最後に、2007年の初めには、個別ドナープログ
ラムにおける選択性を拡大しプログラム間の補
完性を強化するプロセスに、IDAとガーナの開発
パートナーが参加することになっています。この
ようにしてIDAは、一般財政支援、セクター別財
政支援、キャパシティビルディング活動および投
資融資の戦略上のバランスの維持に努める所
存です。
2007 年 2 月 http://www.worldbank.org/ida
過去の経験でも、こうした点のバランスが欠けて
いるプロジェクトでは、開発目標を十分に達成で
きていません。
第1に、IDAチームは、ガーナ政府との高度で継
続的な政策対話を維持し、シビルソサエティとの
頻繁な接触や話し合いによってこれを補完する
ことによって、こうした認識に対処しています。さ
らに、この対話から、ガーナの予算サイクルに一
致した財政支援プログラムを導き出します。この
アプローチは、ガーナ政府がプロセスの主導権
および内容と改革の速度のオーナーシップを有
することが基本です。
第2に、IDAは、ガーナの第一次および第二次貧
困削減戦略(GPRSⅠおよびⅡ)にその支援を合
致させ、開発結果の管理に力を入れてきました。
IDA支援を受けている事業は、該当するセクター
別指標またはGPRS指標、ベースライン、目標値
を用い、セクター別戦略の枠組み内で展開され
ています。
同様に、協議グループレベルでも、開発成果の
達成に関する進捗状況を検証するため、GPRS
Ⅱが重視する結果に対する開発パートナーの支
援(IDAを含む)を示す成果マトリックスが、毎年
更新されています。
第3に、IDAは開発パートナーらと協力して、協
力事業、共同プログラム策定、調和化されたア
プローチの利用などの拡大を図っています。
10